SFオムニバスドラマ『ブラック・ミラー』。
シーズン1の1話である「国歌」では現代を、2話の「1500万メリット」では「完全管理」の未来を舞台に物語が描かれています。
直面している現代と全く想像の出来ない未来、それぞれの物語が私たちが迎えかねない「技術の進歩」による「弊害」と言うメッセージが込められていました。
シーズン1の最終話に当たる3話ではどのような物語が描かれているのか。
今回はシーズン1の最終話「人生の軌跡のすべて」のあらすじと魅力をご紹介します。
CONTENTS
海外ドラマ『ブラック・ミラー シーズン1 「人生の軌跡のすべて」』の作品情報
【原題】
Black Mirror “The Entire History of You”
【公開】
2011年
【監督】
ブライアン・ウェルッシュ
【キャスト】
トビー・ケベル、ジョディ・ウィテカー、トム・カレン
【作品概要】
シーズン1の最終話であり、シリーズ総監修のチャーリー・ブルッカーが脚本に関わっていない唯一のエピソード。
主演はイギリスのロッカー、イアン・カーティスの半生を描いた映画『コントロール』(2007)で英国インディペンデント映画賞で助演俳優賞を受賞し、『ファンタスティック・フォー』(2015)や『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017)など多数の映画に出演するトビー・ケベル。
海外ドラマ『ブラック・ミラー シーズン1 「人生の軌跡のすべて」』のあらすじとネタバレ
記憶チップを耳の付け根に埋め込むことで、過去の記憶をいつでも再生することが可能になった未来。
事務所再編のための面接を受けた弁護士のリアムは面接後、妻のフィオナの友人の男性、ジョナスのホームパーティーに招かれます。
面接の出来に心配を覚えるリアムは、妻に面接の一環として記憶の再生も行わないといけないと話します。
ホームパーティーの最中、記憶チップの強盗被害にあって以降、昨今では珍しく「チップ断ち」をしているハラムと言う女性が、チップをしていた時に比べ色々と気楽だと語り、彼女を全員が意外そうな目で見ていました。
主催であるジョナスは独身であることに哲学があり、その哲学を下ネタ交じりで話します。
帰路のタクシーの中で、フィオナが勝手にジョナスを家に招いたことを批難するリアムでしたが、フィオナは記憶を再生し、リアムが招いたと反論します。
自宅につき、ジョナスに夜も遅いと自宅への招待を断ったリアムとフィオナは、家政婦の女性を夜が遅いことを理由に家に泊めることにします。
パーティの最中に当てつけのように独身哲学を語っていたジョナスのことが気に喰わないリアムは、フィオナにジョナスの悪口を並べ立てます。
フィオナは、リアムが自身とジョナスとの関係を疑っていることに気が付き、リアムとの出会いの前に付き合っていたことをリアムに話しました。
しかし、そのことが初耳であったことにリアムは気分を害します。
大喧嘩となり、寝室へと行ってしまったフィオナにリアムは謝罪し、仲直りの意味をこめ2人はセックスへと及びます。
ですが、その行為の間、お互いはジョナスが言っていたように、「アツアツだったころの行為の様子を再生」しながらのものでした。
翌日、朝からお酒を飲みながら昨夜のホームパーティーの映像を見るリアムは、誰も笑わなかったジョナスのジョークにフィオナが笑ったことや、彼女がジョナスを見る時の顔の表情などに難癖をつけ、フィオナを問い詰め始めます。
先日、ジョナスとの交際期間を1週間と言っていたフィオナでしたが、実際は半年であることが分かり、リアムはジョナスがフィオナとの性行為を今も再生しているという妄想に捕らわれ始めます。
泥酔状態とすら言える状態で車を運転しジョナスの家へと押し掛けるリアム。
ジョナスは迷惑そうな表情を浮かべながらも紳士的に対応しますが、ジョナスの部屋からハラムが出てきたことを機にリアムの暴言はますますエスカレートしていきます。
業を煮やしたジョナスは無理矢理リアムを追い返そうとしますが、逆上したリアムに頭を殴られ押さえつけられます。
ハラムは警察に通報しますが、記憶チップを埋め込んでいない彼女の証言は聞き取られず、警察は現場には来ません。
押さえつけたジョナスにフィオナの映像を全て消すことを命じるリアムの指示通り、ジョナスはスクリーンに映した映像からフィオナに関するすべての映像を削除しました。
車を運転し自宅に帰る途中で木に車をぶつけ、気を失ってしまうリアム。
目が覚め、酩酊状態から解けたリアムはジョナスの家で起こした自身の騒動の記憶を再生し、失意にくれてしまいます。
海外ドラマ『ブラック・ミラー シーズン1 「人生の軌跡のすべて」』の感想と評価
前2話とは違う「少しだけ進んだ未来」を舞台に「技術の進歩」による「疑心暗鬼」の広がりが描かれている最終話。
このエピソードでは、人間の根幹とも言える「記憶」をいつでもどこでも再生し直すことの出来るテクノロジーの普及により、誰にでもある「忘れる」と言う致命的なミスの無い社会が広がっています。
しかし、様々なトラブルの源である「忘れる」現象が無い社会にも関わらず、全く理想的な社会のようには描写されていません。
主人公のリアムは妻のフィオナと元カレのことで喧嘩をし、家出をしたことがあるほどに「嫉妬心」の強い人間です。
フィオナの友人男性のジョナスのパーティで、フィオナとジョナスが喋っている映像を何度も再生し直し不自然な点をしつこくフィオナに追及していきます。
劇中ではその様子が「猟奇的」に映りますが、考えてみればリアムほどの「嫉妬心」の強い人間が、「記憶」を再生出来るテクノロジーを手にしたら、違和感のある部分を何度も再生し不安を募らせていくのは当然とも言えます。
口喧嘩に「記憶」を再生した「証拠」を使うなど、「技術の進歩」で人間関係がより複雑化してるようにすら思える未来。
人間に備わった「忘れる」と言う機能が、実は「技術の進歩」を越えたより大切なものであるのではないか、と感じさせてくれる息の詰まるようなエピソードでした。
まとめ
「猟奇的」とすら言えるにも関わらずどこか共感できる主人公の心情描写と、その分インパクトの強い物語の締め方でファンの多い今エピソード。
「アベンジャーズ」シリーズでお馴染みの俳優、ロバート・ダウニー・Jrが自身のプロダクションによる映画化に興味を示しているという話しもあり、ドラマだけでは描き切れなかった「世界観」の広がりに期待が膨らむ作品です。