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『運命は踊る』ヴェネチア映画祭が評価したダンス場面は必見!兵士の魅惑な踊りとは

  • Writer :
  • かりごめあき

2017年、第74回ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ受賞した、サミュエル・マオズ監督の最新作『運命は踊る』。


© Pola Pandora – Spiro Films – A.S.A.P. Films – Knm – Arte France Cinéma – 2017

映画『運命は踊る』は9月29日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

ヴェネチア国際映画祭が大絶賛し、世界中を釘付けにした“運命のステップ”。

兵士がフォックストロットを踊る本編特別映像が公開されました。

映画『運命は踊る』兵士が踊る本編映像公開

本作『運命は踊る』は、ギリシャ悲劇を彷彿とさせる三部構成で物語が展開します。

公開された映像は、第二部の兵役に就いている息子ヨナタンの赴任先が舞台で、何もない土地にぽつんとある補給路の検問所が映し出されます。ごくたまに車とラクダが通過するような、どこかシュールな空間です。

戦場でありながら間延びした時間を過ごし、暇を持て余しているヨナタンに同僚の兵士が語りかけます。

“フォックストロット”の意味を?こうやるんだ。前へ 前へ 右へストップ。後ろ 後ろ 左にストップ

三部構成のそれぞれのパートで登場人物らが語るフォックストロットのステップ。「前へ、前へ、右へ、ストップ。後ろ、後ろ、左へ、ストップ」どうあがいても、いくら動いても同じところへと帰って来るこのステップは、動き出した運命は変えることができないということなのでしょうか。

しかし、映像では突如ステップが切り替わり、兵士は夢の女を抱くように銃を抱え、空想の音楽に合わせてマンボを踊りだします。

コンテンポラリーダンスが盛んで、世界中からダンサーや演出家が集うイスラエル。本作でマンボを踊る兵士役のイタイ・エクスロードも実はイスラエルのダンサーなのです。

しなやかでキレのあるダンスに、ヴェネチア国際映画祭での上映時、世界中がスクリーンに釘付けになったに違いありません。

フォックストロットのステップはイスラエル社会の象徴


© Pola Pandora – Spiro Films – A.S.A.P. Films – Knm – Arte France Cinéma – 2017

「ホロコースト」「終わらない戦争」「人々の心に刻まれた傷」トラウマを抱えた国イスラエル。

サミュエル・マオズ監督は、現状がどうであれ、いまだ癒えないトラウマは世代から世代へと受け継がれて、我々は常に実存的な脅威と戦っていると思いこんでいるのだと語ります。

「この世代ではトラウマのループを抜けて大きくステップを踏み出すんだと思っても、結局元のところに戻ってきてしまう。原題となったフォックストロットのステップはそんな我々の社会の象徴です」

さらに、個人レベルでもトラウマは受け継がれていると話すサミュエル・マオズ監督。

「私もホロコーストを体験した母に育てられたので、『ホロコーストの体験に比べたらなんてことはない。文句を言ってはいけない』と抑圧され、辛さを封印して生きてきました」

抑圧されていた感情を爆発させるように突如マンボを踊りだす兵士のように、本作ではフォックストロットから抜けて大きくステップを踏み出そうと、登場人物らはある行動をとります。

果たしてこの不条理なトラウマの無限ループから抜け出すことはできるのでしょうか。それとも…。かすかな愛の光が彼らを照らし出します。

映画『運命は踊る』の作品情報


© Pola Pandora – Spiro Films – A.S.A.P. Films – Knm – Arte France Cinéma – 2017

【公開】
2018年(イスラエル・ドイツ・フランス・スイス合作映画)

【原題】
Foxtrot

【監督・脚本】
サミュエル・マオズ

【キャスト】
リオール・アシュケナージー、サラ・アドラー、ヨナタン・シライ

【作品概要】
監督は、デビュー作『レバノン』で第66回ヴェネチア国際映画祭(2009)金獅子賞に輝いた、イスラエルの鬼才サミュエル・マオズ。

2017年、長編2作目となる本作『運命は踊る』で、再びヴェネチア国際映画祭で審査員グランプリを受賞し、2作連続で主要賞を受賞する快挙を成し遂げ、その後も各国の映画祭で数々の賞を受賞。

サミュエル・マオズ監督自らの実体験を基に、運命の不条理さを巧みな構成でミステリアスに描き出したヒューマンドラマ。

映画『運命は踊る』のあらすじ


© Pola Pandora – Spiro Films – A.S.A.P. Films – Knm – Arte France Cinéma – 2017

イスラエル・テルアビブのアパートで暮らすミハエルとダフナ夫妻のもとに、息子のヨナタンが戦死したことを知らせに軍の役人が訪ねて来ます。

ショックのあまり気を失うダフナ。ミハエルは平静を装うも取り乱し、夫妻は悲しみに打ちひしがれました。

しかし、ヨナタンの戦死は誤報であり、生きていることがわかります。

安堵するダフナとは対照的に、ミハエルは怒りをぶちまけ、息子を呼び戻すよう要求します。

一方、戦う相手もいない前哨基地の検問所で、ヨナタンは間延びした時間を過ごしていました。

ある日、若者たちが乗った車がやって来ます。いつもの簡単な取り調べのはずが…。

父、母、息子。遠く離れたふたつの場所で、3人の運命は次第に交錯し、そしてすれ違います。まるでフォックストロットのステップのように。

まとめ


© Pola Pandora – Spiro Films – A.S.A.P. Films – Knm – Arte France Cinéma – 2017

監督自らの実体験をベースに、運命の不条理さを巧みな構成で描き出した映画『運命は踊る』。

まるでギリシャ悲劇を思わせる緻密で独創的なストーリーが、スタイリッシュな映像、圧倒的で流れるようなカメラワークと相まって、ミステリアスに展開します。

本作を読み解くキーポイントともなるダンス場面を、まるまる堪能できる本映像は必見です。

映画『運命は踊る』は9月29日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー


© Pola Pandora – Spiro Films – A.S.A.P. Films – Knm – Arte France Cinéma – 2017

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