Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2024/07/13
Update

『あなたのおみとり』あらすじ感想と評価考察。高齢両親の自宅療養の父と看病する母の最期を村上浩康監督が記録する|映画という星空を知るひとよ215

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第215回

⾃宅での最期を希望した⽗と看取りを決意した⺟の最後の⽇々を⾒つめた映画『あなたのおみとり』。

死を待つ日々を過ごす父と側にいて父を支える母。看取りの現実を映し出した映画『あなたのおみとり』は、2024年9月よりポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー!

本作の監督は『東京⼲潟』(2019)『蟹の惑星』(2019)の作品群で新藤兼⼈賞⾦賞、⽂化庁優秀記録映画賞などを受賞した村上浩康です。

村上監督の末期癌の⽗と⽗を家で看取る覚悟をした⺟の40⽇余りにわたる⽇々を映し出す『あなたのおみとり』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『あなたのおみとり』の作品情報


(C)EIGA no MURA

【日本公開】
2024年(日本映画)

【製作・監督・撮影・編集】
村上浩康

【整音】
河村大(スタジオ・アーム)

【挿入歌】
『私の青空』(唄:榎本健一)

【タイトル&イラスト】
岩渕俊彦(紙町銅版画⼯房)

【宣伝デザイン】
中野香

【出演】
村上壮、村上幸子

【作品概要】
『あなたのおみとり』は、不思議な爽快感にあふれた、ある看取りの記録。

『東京⼲潟』(2019)、『たまねこ、たまびと』(2022)などで、⾃然と⼈間との結びつきを描き続けてきた映画監督の村上浩康が、40⽇余りにわたる両親の看取りの⽇々をカメラに収めた作品です。

映画『あなたのおみとり』のあらすじ


(C)EIGA no MURA

「うちに帰りたい」。末期癌で⼊退院を繰り返していた⽗の⾔葉で、⺟は家での看取りを決意しました。

介護ベッドを置き、ヘルパーさんや訪問看護師さんが出⼊りする⾃宅で始まった⽗と⺟の新しい⽣活。

ベッドから動けない⽗は何かと世話を焼く⺟に「ありがとう」と⼝にするようになり、⺟はできる限り⽗の近くで時間を過ごすようになります。

少しずつ⾷事が摂れなくなり、痩せ、⽬を瞑る時間が増えていく⽗。持病の悪化で⾃⾝の健康にも不安を抱えることになった⺟。

ヘルパーさんたちは毎⽇⽗の元を訪れ、丁寧にケアを⾏い、時に⺟の相談相⼿にもなってくれます。

家族総出での看取りの40日間が静かに流れていきます。

映画『あなたのおみとり』の感想と評価


(C)EIGA no MURA

家での最期を望む父。看取りを決意した母。命のつきるその瞬間まで寄り添う夫婦の姿を、息子である映画監督・村上浩康のカメラが映し出します。

末期の病人の自宅での看護・看取りは大変だろうと想像されます。ですが、本作の母は笑顔でそれをやります。

このふたりの姿を見ると、妻に看取られて生涯を終えるというのは、なんと幸せなことなのだろうと思えます。

また本作では、庭の花などの自然描写も巧みに取り入れ、自然界の中のありのままの‟生”を映し出しています。

つらいことも多い夫婦間の看取りの日々は、監督の温かな目線での美しい自然描写によって、生きることへの賛美がしっかりと盛り込まれた作品となりました。


(C)EIGA no MURA

まとめ


(C)EIGA no MURA

これまで⾃然と⼈間との結びつきを映画で描き続けてきた村上浩康。今作では、父の最期と父を看取る母との40日間にカメラを向けました。

主役は父、なのですが、最初から最後までその父に寄り添っている母が主役ではないかと思える作品です。父の悪口を言っても、母にとって、やはり夫は夫。さりげない慈愛に満ちた看病に観客も心温まることでしょう。

⾼齢化が進み続ける⽇本での介護や看取りは、他人事ではありません。

「看取り難⺠」という⾔葉も⽣まれている現代において、‟いつ何が起こり、いつ終わるのかもわからない⽇常”を人はどう⽣きていくのでしょうか。

リアルな看取りの日々を静かな時の流れを感じる映像で映し出した本作には、こんな問いかけも込められています。

映画『あなたのおみとり』は、2024年9月よりポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー!

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


関連記事

連載コラム

『戦場0地点』あらすじ感想と評価考察。ウクライナ兵を通して映像で表す戦場の最前線の実情|だからドキュメンタリー映画は面白い96

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第96回 今回紹介するのは、2026年9月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開の『戦場0地点』。 第96回アカデミー賞長編ドキュメン …

連載コラム

香港映画『みじめな人(淪落の人)』あらすじと感想レビュー。オリヴァー・チャン登壇の舞台挨拶リポート紹介も|OAFF大阪アジアン映画祭2019見聞録15

連載コラム『大阪アジアン映画祭2019見聞録』第15回 今年で14回目の開催となる大阪アジアン映画祭。2019年3月08日(金)から3月17日(日)までの10日間、アジア圏から集まった全51作品が上映 …

連載コラム

映画『ようこそ、革命シネマへ』あらすじと感想レビュー。劇場復興を通して表現の自由が奪われた政権下の人々に笑顔を取り戻す|映画という星空を知るひとよ1

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第1回 第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門でドキュメンタリー賞と、観客賞を受賞した、スハイブ・ガスメルバリ監督の映画『ようこそ、革命シネマへ』をご紹介いたし …

連載コラム

映画『ストレンジ・ハウス』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の評価。本格ホラーミステリーで呪われた家の秘密を暴く|Netflix映画おすすめ38

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第38回 夏が近づくに連れて恋しくなるのは爽やかでありながらもどこかジメジメとした「ホラー映画」。そこに「田舎町」と「青春」の要素が加われば …

連載コラム

映画監督ジョン・キャメロン・ミッチェルのインタビュー【パーティーで女の子に話しかけるには】FILMINK-vol.14

FILMINK-vol.14 John Cameron Mitchell: Vive Le Punk オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携 …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学