映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』は2024年7月5日(金)よりシネマート新宿他で全国順次公開!
国民の90%以上が仏教徒とも言われる仏教の国タイ。近年では映画・ドラマ作品でも世界的な注目を集めるタイですが、特に「ホラー」のジャンルでは際立って人気を集めています。
『女神の継承』(2022)をはじめ、宗教が身近な国だからこそ描ける身の毛もよだつホラー映画の数々が作られ続けています。
そして、そんなタイで製作された新たなホラー映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』(2024)です。
タイの伝統的なお守りとして知られる呪術人形「フンパヨン」を題材に描かれた本作の魅力をご紹介します。
CONTENTS
映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』の作品情報
【日本公開】
2024年(タイ映画)
【原題】
Hoon Payon
【監督】
ポンタリット・チョーティグリッサダーソーポン
【キャスト】
プーンパット・イアン=サマン、プーウィン・タンサックユーン、クナティップ・ピンプラダブ、プーリパット・ウェーチャウォンサーデーチャーワット、タソーン・クリンニウム、パンナウィット・パッタナシリ、ワラティップ・キッティパイサン
【作品概要】
「のむコレ3」で上映された『祟り蛇ナーク』(2020)のポンタリット・チョーティグリッサダーソーポン監督が手がけた新たなホラー映画。
日本ではU-NEXTで配信され人気となったタイのBLドラマシリーズ「Lovely Writer The Series」で主人公の一人を演じたプーンパット・イアン=サマン、『The Gifted Graduation』『Fish Upon the Sky』のプーウィン・タンサックユーンとタイの若手スター俳優が共演を果たしました。
映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』のあらすじ
タームは出家した兄のティーに会うべく、ドンシンタム島の寺院にたどり着きました。「ティーが前の僧院長を殺して逃亡した」という噂を聞きますが、彼にはティーが人を殺すことができるとは思えませんでした。
寺に住む純粋な青年のテと知り合う中、タームは村では「ポープー」という人の形をした像が信仰されていることを知ります。
また島では人が死ぬと遺骨の一部を入れ、土の像「フンパヨン」を作って拝む習慣があり、孤独な彫刻家ジェットはフンパヨンの作り手でした。しかしタームは村の信仰に疑問を抱き、村を守る霊的な存在というよりも、盲目的な迷信だと考えていました。
ある夜、タームは怒りに任せて「ポープー」への供え物を壊してしまいます。その後、恐ろしい出来事が次々と起こり、村は恐怖に包まれます……。
映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』の感想と評価
「宗教」の描き方が秀逸なタイ映画
「国王は仏教徒でなければならない」という憲法があるほどに、国を挙げて仏教を信仰するタイですが、もちろん信仰の自由は存在し強制されているものではありません。
映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』の登場人物タームは、兄が出家した僧侶ながらも信仰心は薄く、物語の序盤では僧侶たちの信仰をどこか小馬鹿にした態度を見せていました。
実際に2000年代以降のタイでは人々の「宗教離れ」が進みつつあり、タームのように無宗教に近いタイの若者も珍しくはないとされています。本作はそんな現代の情勢を反映し、宗教観に対するメッセージが込められた場面も多々存在していました。
信仰を蔑ろにする態度を見せるタームに対し、強い信仰心を持つ若き僧侶ウルは「信じなくても馬鹿にしないで」と口にします。
一方で物語の中盤では、村の女性ミーナーが何かに取り憑かれ、村人たちは除霊のため僧侶たちに対処を依頼しますが、僧侶たちは「信仰心がないなら無理強いはするな」と忠告します。
日本でも現代では多くの人々が無宗教であり、無宗教の人にとって宗教に対するイメージは決して良いものばかりではありません。
タイという宗教が広く信仰されている国でも大切にされている、宗教の多様性に対するメッセージが、ホラーというジャンルの映画でありながらもしっかりと描かれている作品でした。
フンパヨンで島を呪う「呪詛師」は誰だ
「フンパヨン(パヨン人形)」と呼ばれる、釈迦の時代から存在するお守りを題材とした超常現象ホラーである本作。
フンパヨンは神聖な呪文を宿すことで、所持者を守護するお守りと成り得ますが、一方で邪悪な呪文を込めることで所持者に「呪い」を与える「呪物」にもなります。
本作ではある目的から意図的に呪いが込めたフンパヨンを利用し、ドンシンタム島に死と混乱を招く「呪詛師」が暗躍。タームなど呪いに立ち向かう者たちは、島の異変の真相を突き止めるべく、島民か僧侶の中に紛れ込んだ呪詛師を暴き出そうと奔走することになります。
つまり本作は、ホラー映画であると同時に呪詛師の正体を解き明かすミステリー映画の要素も含まれており、双方を組み合わせたホラーミステリーとしての面白さも内包。
ティーの失踪をはじめ、ドシンタム島で発生した一連の事件の解決もしっかりと行われるため、超常現象ホラーにありがちな「正体の分からない相手」だからこそのモヤモヤとした終わり方はしない作品となっていました。
まとめ
仏教を物語のベースとしながらも、呪物を悪用する呪詛師の正体の追求と対峙という明確な物語構成によって、誰にでも分かりやすく楽しめる作品となった映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』。
現代人に向けて作られた宗教観に対するメッセージ、そして二転三転する事件の展開とホラーミステリーにほしい要素を全て詰め込んだ、欲張りセットのような本作は、映画好きに刺さること間違いなしの1作となっています。
そんなタイ産のホラー映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』は、2024年7月5日(金)よりシネマート新宿ほかで全国順次公開。
ドンシンタム島で巻き起こる連続不審死と、フンパヨンの謎に立ち向かう人間たちの物語を、ぜひその目でご覧になってください。