連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第143回
韓国映画としては、ポン・ジュノ監督の『グエムルー漢江の怪物ー』(2006)以来となる、第47回トロント国際映画祭ミッドナイトマッドネス部門に正式出品された、キム・ホンソン監督の『オオカミ狩り』。
凶悪犯たちを搬送中の船で事件発生。脱走をはかる凶悪犯と刑事たち、さらには船内で眠っていた謎多き「怪物」も加わり、生死をかけた戦いが始まります。
容赦なく描かれる残虐な暴力描写に、本国韓国ではR18+に指定されたという、サバイバルアクションです。
映画『オオカミ狩り』は2023年4月7日(金)新宿バルト9ほか全国公開!。映画公開に先駆け、『オオカミ狩り』をご紹介します。
映画『オオカミ狩り』の作品情報
【日本公開】
2023年(韓国映画)
【英題】
Project Wolf Hunting
【監督・脚本】
キム・ホンソン
【キャスト】
ソ・イングク、チャン・ドンユン、ソン・ドンイル、パク・ホサン、チョン・ソミン、コ・チャンソク、チャン・ヨンナム、チェ・グィファ
【作品概要】
『オオカミ狩り』は、凶悪犯たちの護送船の中で繰り広げられる生死をかけた戦いの行方を、残虐極まりない暴力描写で描いた韓国製サバイバルアクションです。
監督は、『メタモルフォーゼ 変身』(2019)のキム・ホンソン。2017年の韓国人犯罪者47人がフィリピンから集団送還されたニュースから着想を得ています。
第一級殺人の国際手配犯ジョンドゥをソ・イングクが演じ、ナイフ使いの寡黙な犯罪者ドイルは、チャン・ドンユン。さらに、海洋特殊救助団のチーム長にベテラン俳優のソン・ドンイルが扮して脇を固めています。
映画『オオカミ狩り』のあらすじ
2022年。フィリピンで逮捕された韓国の凶悪犯罪者たちを乗せた貨物船“フロンティア・タイタン号”が、釜山港へ向けて出航しました。
船内には凶悪犯罪担当のベテラン刑事約20人を配置し、釜山では海上交通管制センターで海洋監視システムを設置しています。
こうした万全と思われる体制で、プロジェクト名「オオカミ狩り」と呼ばれる韓比共同護送計画が展開されます。
しかしその夜、密かに脱走を企んでいた凶悪犯ジョンドゥが、刑事として紛れ込んだ仲間とともに反乱を起こしました。
脱走を企てて施錠のかかった部屋から逃げ出した犯罪者たちは、刑事たちに次々に襲い掛かります。船内は武器を手にした犯罪者たちで溢れかえる事態に……。
さらには、船底のある部屋でクスリで眠らされていた「怪人」が目を覚まし、想像を絶する戦いが幕を開けます。
映画『オオカミ狩り』の感想と評価
物語は、フィリピンに逃げた犯罪者たちを韓国へ送り届けるために、貨物船“フロンティア・タイタン号”に乗船させるところから始まります。
いやいやながらも大人しく乗船する者や顔見知りの刑事を見つけてたてつく者など、犯罪者たちもさまざまですが、その中にトップクラスの国際手配犯ジョンドゥがいました。
犯罪者も一目おく凶悪犯のジョンドゥを演じるのは、『パイプライン』などで爽やかな演技を魅せたソ・イングクです。
今回、初の悪役を演じるにあたり、16キロの増量と全身にタトゥーを入れて役作りをしたと言い、その大胆なイメージチェンジに驚かされます。
片や、同じ護送船にいたナイフ使いの寡黙な犯罪者ドイルを演じるのは、次世代俳優のチャン・ドンユン。
鮮やかなアクションも魅力ですが、影のある眼差しで演じる役柄に魅かれるファンも多いことでしょう。
そんなイケメン俳優が扮する凶悪犯たちが、死闘を繰り広げる本作。
数分おきに血しぶきがあがる格闘シーンが多いのですが、脅威の破壊力を持つ「怪物」が眠りから目覚めると、事態はさらに悪化し、船内は‟血の海”となります。
「怪人」の正体は何なのでしょう。ラストでその正体がわかるまで恐怖にかられますが、物言えぬ「怪人」が訴える「怪人」誕生の秘密にも注目。
暴力で始まり暴力で終わる物語の中で、人としての倫理も考えさせられます。
まとめ
狭い船内で繰り広げられる凶悪犯たちと刑事、それに不気味な「怪人」も加わり、3つ巴の非道な戦いが繰り広げられる『オオカミ狩り』。
作品の中では、手や足が切り取られ、鮮血が飛び散るという、ショッキングな映像が延々と続きます。
その残虐さに目を覆いたくなりますが、「怪人」に襲われ、恐怖におののく凶悪犯や刑事たちからは、やはり人間は弱い生き物だということが分かります。
謎の「怪人」の正体がわかった時は、人間としての倫理を改めて思い知らされることでしょう。
映画『オオカミ狩り』は2023年4月7日(金)新宿バルト9ほか全国公開!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。