映画『まくをおろすな!』は2023年1月20日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開!
アイドルグループ「ふぉ~ゆ~」の越岡裕貴が映画初出演&初主演を果たした映画『まくをおろすな!』。
演劇ユニット「30-DELUX」の舞台を大胆にアレンジ・映画化した作品であり、実在した有名な人物や歴史に残る大事件を新解釈で描く、歌・ダンス・殺陣が盛りだくさんの超デラックス時代活劇です。
このたびの劇場公開を記念して、本作にて“モン太”こと近松門左衛門役を演じられた工藤美桜さんにインタビュー。
本作でモン太を演じられるにあたっての役作りをはじめ、「俳優」というお仕事に対するご自身の想い、本作へのご出演を通じて得られた学びや発見など、貴重なお話を伺いました。
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「想像のつかない映画」への出演という楽しみ
──はじめに、本作に対して工藤さんが抱かれた第一印象をお聞かせいただけますでしょうか。
工藤美桜(以下、工藤):やっぱり、「想像がつかない」というのがまず第一印象でした。
「舞台を映画化する上で、違和感が生まれないのだろうか」という疑問とともに、頭の中で映画の完成図を思い浮かべようとするんですが、それがなかなか浮かんでこない。
ただ、これまで出演させていただいた作品では完成図をある程度想像できたからこそ、「完成図が想像できない今回の映画が、最後には一体どうなるのかな?」とすごく楽しみになったので、自分もそんな本作で出演できるんだとうれしくなりました。
──その後に迎えられた実際の撮影の最中で、本作の「完成図」が頭に浮かんだ瞬間はございましたか。
工藤:正直、撮影している時も想像がつかなくて、完成した映画を観るまで、作品がどんな形となるのかは最後まで分かりませんでした。
本作はドラマやアクションシーンのお芝居を先に日光江戸村で撮影し、ラスト以外のミュージカルシーンを、2022年の8月に上演した舞台『まくをおろすな!LIVE』の舞台となった劇場で撮影しました。現場が違うと演じる感覚も大きく変わってくるので、「最終的にはどう一本の映画としてつながっていくんだろう?」と考えていました。
ですが、完成した映画を観た時には全然違和感がなくて、「こういう風につながって、こういう表現として完成したんだ!」とその面白さを噛みしめることができました。
「人生の幕は自分でおろすな」の説得力を
──本作で“モン太”こと近松門左衛門を演じられるにあたって、工藤さんはどのような役作りをされていったのでしょうか。
工藤:「近松門左衛門という歴史上の人物、それも男性を、私が演じたらどうなるんだろう?」とまず思いましたし、脚本を初めて読んだ時点では正直役のすべてを掴むことはできなくて、悩みながらも役と向き合い続けました。
ただ脚本を何度も読んでいくうちに、モン太はとても不器用だけど、物事に対してはすごく真っ直ぐなんだと気づけました。
物書きが好きで書いた物語のせいで現実に心中(ブーム)が起こってしまったことに対しても強く責任を感じていて、「心中コーディネーター」という仕事もその罪滅ぼしとして続けている。「誰一人死んでほしくない」「平和な世の中でいてほしい」と誰よりも願っている繊細さを本当は持っているけど、それを誰にも見せないようにしているんです。
ブン太(紀伊国屋文左衛門)と出会って「明るく、前向きに生きよう」と決意してから、モン太は自分の繊細な部分を表に出さず、ブン太のように振る舞おうと努力しているんですが、そのせいでブン太に対して強がってしまうことも度々あります。そこもまた、モン太の可愛いところだと思いますが。
好きなことに対して真っ直ぐで、常日頃から前向きに生きようとしている一方で、いろいろな哀しい経験も抱えながら生きている。だからこそ、「人生の幕は自分でおろすな」という言葉が生まれたんだという説得力を、ブン太を演じる中で大切にしたいと感じていました。
「苦手」から生まれた新しい目的
──小学校時代からモデルとして活動されていた工藤さんは、元々「人前での表現」に苦手意識があったこと、その苦手意識を改善されるために中学校時代に演劇部へ入られていたと伺いました。
工藤:そういう主な入部理由もあって、当初はお芝居をすること自体が楽しいとは考えてはいなかったんです。
ただ様々な作品を経験させていただく中で、変身願望といいますか、自分の心の中に元々隠れていた「自分とは違う“誰か”になれる楽しさ」が鮮明になっていったんです。
そして、自分がそれまで体験したことのなかった、いろんな感情を表現することの面白さに気づいていった中で、「もっといろんなものに出会いたい、いろんな人生を知りたい」「それらを、自分の内に落とし込んで表現したい」という新しい目的が生まれたんです。
──本作へのご出演を経た現在の工藤さんは、今後俳優としてどのような表現にも挑戦されたいとお考えなのでしょうか。
工藤:本作で演じさせていただいたモン太は、役の人間的な面を大切にしつつも、作品そのものの世界観に沿った演技でお芝居を作っていきました。
これまで出演させていただいた作品でも、そうした作品の世界観に則した演技をする機会がわりとあったんですが、その一方で、日常的なリアリティを追求したお芝居は、正直あまりしたことがないんです。
そして「自分がもし、日常的なリアリティを追求したお芝居をするとしたら、果たしてどうなるんだろう?」と思ったからこそ、自分の演技という表現をより広げていくためにも、「そもそも日常って何だろう?」という疑問も含めて研究をしていきたいと感じています。
「バディ」になれた二人と映画の世界へ
──モン太は物書きとしての「表現」を武器に人生と戦っていますが、俳優も「表現」が武器のお仕事といえます。「表現が武器の仕事」という共通点があるモン太を本作で演じ切られた中で、工藤さんは俳優としてどのような発見・学びがございましたか。
工藤:生い立ちや境遇は全然違うものの、モン太の不器用な部分を抱えながらも生きようする姿勢には、どこか私自身にもつながっているものを感じられました。それに改めて気づけたのは、ある意味では学びだったかもしれません。
またお芝居の表現そのものでいうと、この映画で初めて殺陣に挑戦したんですが、実際にやってみる中で「殺陣も、お芝居と一緒なんだな」と実感できました。
相手との呼吸が合ってないと、殺陣も動きを合わせられない。それはお芝居と一緒の感覚だなと思えたのは本当に発見でしたし、お芝居の表現そのものの可能性の広がりを感じられました。
──映画が劇場公開を迎えられる中、現在のご心境を最後にお教えいただけますでしょうか。
工藤:実は私、モン太とブン太の「バディ感」がうまく表現できているのかが、映画が完成するまで結構不安だったんです。そこがこの映画の大きな魅力の一つだと思っていたからこそ、二人が完成した映画の中でしっかりと「バディ」になれていたことは本当にうれしかったです。
また、2022年8月に上演された舞台『まくをおろすな!LIVE』をご覧になった方は映画の世界観にすぐに入ってもらえると思いますが、「LIVE版」を観ていないという方も映画を観ていくうちに、その世界の魅力に気づいてもらえると信じています。
それだけこの映画は、いろいろな方に楽しんでもらえる作品だと感じています。
インタビュー/河合のび
撮影/田中舘裕介
工藤美桜プロフィール
1999年10月8日生まれ、東京都出身。小学生の頃からモデル活動を始め、2021年4月より女性ファッション誌「with」(講談社)のレギュラーモデルを務めるなど、現在もモデルとして活躍。
その一方で、2015〜2016年に放送された『仮面ライダーゴースト』(EX)でテレビドラマに初出演。2020〜2021年には『魔進戦隊キラメイジャー』(EX)に出演。再び特撮作品に登場し、話題を集めた。2022年も連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK)、ドラマ『親愛なる僕へ殺意をこめて』(CX)など話題作に出演し活躍の場を広げている。
近年の主な出演作に、ドラマ『TOKYO MER 〜走る緊急救命室〜』(2021/TBS)、『ドクターホワイト』(2022/CX)、『彼女、お借りします』 (2022/ABC・EX)、『テッパチ!』(2022/CX)などがある。公開を控えている映画『劇場版 TOKYO MER 〜走る緊急救命室〜』は2023年4月28日公開予定。
映画『まくをおろすな!』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【監督】
清水順二
【脚本】
竹内清人
【音楽】
杉山正明
【キャスト】
越岡裕貴(ふぉ~ゆ~)、工藤美桜、寺⻄拓人、原嘉孝、高田翔、室龍太、緒月遠麻、坂元健児、田中精(30-DELUX)、椙本滋、清水順二(30-DELUX)、竹中直人、岸谷五朗
【作品概要】
演劇ユニット「30-DELUX」の舞台を大胆にアレンジ・映画化し、実在した有名な人物や歴史に残る大事件を新解釈で描く、歌・ダンス・殺陣が盛りだくさんの超デラックス時代活劇で、映画と舞台が融合したエンターテインメント作品。
“ブン太”こと紀伊国屋文左衛門役には、本作が映画初出演&初主演となったアイドルグループ「ふぉ~ゆ~」の越岡裕貴。またブン太のバディとなる“モン太”こと近松門左衛門役を、『仮面ライダーゴースト』(2015〜2016)と『魔進戦隊キラメイジャー』(2020〜2021)で二大特撮もののヒロインを務めた工藤美桜が演じる。
また共演キャストとして、舞台を中心に活躍する寺⻄拓人、原嘉孝、高田翔、室龍太らジャニーズのメンバーに加え、竹中直人、岸谷五朗といった豪華俳優陣が出演を果たした。
映画『まくをおろすな!』のあらすじ
五代将軍・徳川綱吉の時代。「心中コーディネーター」の“ブン太”こと紀伊国屋文左衛門は、相棒の“モン太”こと近松門左衛門とともに、心中希望のカップルに芝居を打たせることで彼らの命を救っていた。
ある日二人は、溜まり場であるどっぐかふぇ「いずもや」にアルバイトに来たヤスベーこと堀部安兵衛が赤穂浪士の一人で、吉良上野介義央への仇討ちを目論んでいることを知る。
仇討ちの気運は高まり続け、ついに赤穂浪士たちが江戸に集結。そこでブン太は、モン太とともに一計を案じる。心中と同じく芝居を打ち、誰の命も落とさせずに仇討ちを成功させようというのだ。
討ち入り当日。計画通りに事は進み、ブン太とモン太の大仕事は終了。しかし赤穂浪士は謀反人とされ、追われる身になってしまう。どうやらそこには10年前の由井正雪の事件が関わっているようで、ブン太とモン太もその大きな陰謀の渦に巻き込まれることに……。
さらには、その戦いの中で、思いもしなかったブン太の秘密が明らかになっていく。
ライター:河合のびプロフィール
1995年生まれ、静岡県出身の詩人。
2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、映画情報サイト「Cinemarche」編集部へ加入。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける(@youzo_kawai)。