2016年に2部作で公開され大ヒットを記録した青春映画が遂に完結!
主演の広瀬すずを始め、日本映画界のこれからを担う若手俳優が総出演。
日本映画史に残る永遠の輝きを見逃すなかれ。
3月17日(土)より公開中の『ちはやふる -結び-』をご紹介します。
CONTENTS
1.『ちはやふる -結び-』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督・脚本】
小泉徳宏
【キャスト】
広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、優希美青、佐野勇斗、清原果耶、松岡茉優、賀来賢人、清水尋也、坂口涼太郎、松田美由紀、國村隼
【作品概要】
“競技かるた”を題材にした国民的大ベストセラー漫画『ちはやふる』。
2016年に2部作の『上の句』『下の句』として実写映画化され、200万人を超える観客動員数を記録。
公開されるや数々の映画賞に輝き、出演したフレッシュな若手キャストを全国区に押し上げると同時に、大人も感動できる青春映画の金字塔として話題となりました。
監督は小泉徳宏が前作から続投。
主題歌は前作から引き続き、自身たちも熱狂的な“ちはやファン”だと公言しているPerfumeが担当します。
2.『ちはやふる -結び-』のあらすじとネタバレ
<名人戦とクイーン戦>
名人戦とクイーン戦の戦況を見つめる面々。
千早は中学3年生の我妻に惜しくも敗れ、元北央学園の須藤と共に補佐として戦況を見つめます。
名人戦は周防が原田先生を圧倒し5連覇、クイーン戦は詩暢が我妻に勝利し3連覇。
5連覇を達成した名人の周防は他を寄せ付けない圧倒的な強さのためかるたに興味を失っており、今回で引退をすることを宣言。
それを見ていた新は「来年まで待ってくれ」と周防に頼みました。
新の言葉を聞き入れた周防は、あと1年だけかるたを続けると前言撤回。
一方、千早は会場を後にする詩暢に対し、来年の対戦を誓いました。
新に挨拶をしにいった千早はそこで新から好きという気持ちを唐突に伝えられます。
新のいきなりの告白に固まる千早。
太一は新が千早に対し何か言ったことに気付きました。
<新入生の加入と藤岡東高校かるた部の創設>
千早たちの都立瑞沢高校は昨年全国大会3位。最後となる今年は全国制覇を狙っています。
昨年は新入部員ゼロだったため部活動発表会を張り切って行う千早たち。
その甲斐あって今年は、太一に一目惚れした花野とかるた経験者の筑波の2人が入部。
一方、新は福井の藤岡東高校でかるた部を創設。新を慕うかるた会の後輩4人が集いました。
その中には新のことを好いている準クイーンの我妻がいます。
<太一の苦悩>
3年生になった千早たちは、進路を考える時期にきていました。
千早は第一志望にクイーンと書き殴り、具体的な将来に対してまだ何も見えません。
常に学年トップの太一は東大の医学部を志望していました。
ある日、太一は須藤の紹介で東大かるた館を訪れます。するとそこには周防の姿が。
周防と対戦した太一はその圧倒的な早さを前に惨敗するも、どこか違和感を感じていました。
周防からも迷いがあると指摘された太一は、勉強と部活の両立に苦しんでいます。
そんな時太一は、新が千早に告白し、その返事に対し千早がきちんと答えようとしていることを花野から聞かされました。
悩む太一は勉強と部活のどちらにも身が入らず、遂に学年トップの座から落ちました。
<東京都予選>
予選当日、いつまでたっても姿を見せない太一。
千早は太一と連絡がつかず焦っています。
実は太一は千早に内緒でかるた部を辞め、受験に専念していました。
そのことを知った千早は激しく動揺し、本来の力を発揮できません。
しかし、千早以外の部員も成長を遂げた瑞沢はなんとか決勝に進出。
決勝は瑞沢・北央・海明・冨原西の4校による総当たり。全国に進めるのはその内の2校。
瑞沢は冨原西に勝利するも、海明に敗北。
最終戦の北央に勝たなければ全国への道はかなり厳しいものになってしまいます。
北央と対戦するメンバーは肉まんくん・机くん・奏・筑波・千早の5人。
千早はいつもの掛け声でチームの士気を高めようとしますが、独りよがりの筑波はそれを無視。
試合は北央ペースで進み、瑞沢は1勝2敗と追い込まれました。
逆転で勝利するには、まだ残っている肉まんくんと筑波の勝利が絶対条件。
両方の対戦は共に残り2枚、運命戦へと突入します。
どちらかで勝てば全国が決まる北央は、2人で1勝を狙いに行く作戦を取り、札合わせを行います。
団体戦が初めてだった筑波は周りが見えておらず、そのことに全く気付いていませんでした。
結果、チーム力の差で北央に敗れた瑞沢。
しかし、その他の3校が共に1勝2敗で並んだためまだ全国への道は途絶えていませんでした。
その場合は各校の1番手から順に勝ち数で比較していくことに。
瑞沢の4番手の机くんの勝利数が他校を上回ったため、瑞沢は準優勝で全国大会出場を決めました。
大会からの帰宅途中に太一に偶然会った千早はかるた部を辞めた理由を問いただします。
太一は「お前のためにかるたをやっていたけどもうこれ以上できない」と答え、その場を去りました。
一方、花野は自分が余計なことを言ったせいで太一が部活を辞めたのではないかと自責の念にとらわれています。
奏は恋心を歌った二つの名歌「恋すてふ」と「しのぶれど」を引き合いに出し、花野を慰めました。
3.『ちはやふる -結び-』の感想と評価
まず前提として、この作品は2016年に公開された『上の句』と『下の句』、そして今回の『結び』の3つを通して完結する作りになっていますので、未見の方は前2作をチェックしてから本作を鑑賞することをオススメいたします。
ヒット作が生まれにくい今の日本映画界において、3作とも映画としての高い水準を保ちながらきっちりとヒットさせているのは本当に奇跡的なことだと思います。
では、この映画を観ていて筆者が感じた魅力を3つに分けて挙げていきましょう。
見どころ1.若さ溢れる役者陣がとても魅力的!
今や国民的な女優となった広瀬すずの素晴らしさはもちろんのこと、劇中のセリフのようにまさに彼女の輝きに引っ張られるかのごとく、周りの俳優たちも大きな魅力を放ち活躍を広げています。
肉まんくんを演じた矢本悠馬は高いコメディセンスを発揮し、その後はTVドラマをメインにCM等にも出演し、知名度は一気に上昇。
机くんを演じた森永悠希も繊細な演技が評価され、TVドラマを中心に多数出演。『あさひなぐ』や『セトウツミ』などでも印象に残る役を演じています。
奏を演じた上白石萌音は同年の『君の名は。』効果も合わさって特大ブレイク。TVドラマで主演を飾り、『舞妓はレディ』でも披露した歌声を生かし歌手活動も行っています。
新を演じた真剣佑は、千葉真一の息子として一躍注目を集め、本作の活躍で圧倒的な支持を獲得。格好良い不良役から『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』のハジけた役までをしっかりと演じきり、確実に役者として演技の幅を広げています。
ドSの須藤を演じた清水尋也は1月クールのTVドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』(野村周平と再び共演)と『anone』(ハリカちゃんと彦星くん!)に出演。演技の幅が広く様々な役をこなせるので、これからさらに目にする機会が増えていくに違いない注目の俳優です。
太一を演じた野村周平は元々主演を務める売れっ子でしたが、その後はより多くの映画やTVドラマに出演するようになり、昨年大ヒットを記録した『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』でも重要な役を任されていました。
詩暢を演じた松岡茉優はちょっとした視線や表情で感情の機微を表現するのが非常に上手い演技派。初主演映画『勝手にふるえてろ』が興行的にも批評的にも成功を収め、ノリに乗っています。
真剣佑が新田真剣佑に改名した理由も本作の綿谷新という役名からというエピソードが示すように、彼らにとってこの作品との出会いは特別なものとなり、実際に現実世界での強い結びつきをも生み出しました。
その絆や楽しい雰囲気というのが映画内にも反映されることで、より大きなリアリティを生み出し、それが本作の語るテーマと完全に合致。
青春とは人生における一瞬のきらめき、しかしそれをとどめて後世に伝えていくことで永遠に色褪せない輝きとなる。
2年の間隔をおいて再始動したこの作品をこの時間を大切にしようと、演じた役者自身が本当にそう思っているからこそ、この作品のキャラクターたちは本当に生きているかのごとく躍動しています。
3人の新入生を演じた優希美青、佐野勇斗、清原果耶の好演もさることながら、今回は周防を演じた賀来賢人が強烈な印象を残します。
調子の良いおちゃらけたキャラクターを演じることの多い彼が、チャーミングかつ圧倒的な強さを兼ね備えたこの難役をきっちりと表現していたのには驚きました。
そして前作に引き続き原田先生というメンターの役回りを名優の國村隼が演じて脇を固める盤石ぶり。
これだけ多くの個性豊かなキャラクターが登場しているにも関わらず、決してそれぞれが潰し合うことなく、全役者の確かな魅力が引き出されています。
見どころ2.映像的な格好良さもバッチリ!!
競技かるたはいかに相手より速く手札を取るか。その一瞬の攻防が勝敗を分けます。
スローモーションは、時間の流れをゆっくりに見せることでよりその瞬間の緊迫度や重要度を増すのに効果を発揮します。さらに、今回は時の移ろいがテーマになっているのでそことの親和性も抜群でした。
まずもってこの相性の良さが大きな効果を発揮し、競技かるたの格好良さをより映像的に表現することに成功しています。
さらに本作では、臨場感を増すウェアラブルカメラによる映像や手札を光らせるゲーム的な見せ方にアニメーションなど、いくつもの飽きさせない工夫が施されているので、映像的にはより満足度が高いものになっていると思います。
ちゃんと格好良いものになっているのか、観ていてやりたくなるような魅力を伝えられているのか、この部分こそが映画化する際の一番のポイントになってきますが、そこはしっかりと押さえられていました。
見どころ3.熱すぎる王道展開だがやはりそれがいい!!!
話の展開が読めるからつまらないとか、そんな都合よくいくかよとか、そんな野暮なことはどうでもいいというくらいにど直球。
本作は、かるたにおいては凡人である太一が再び己と向き合い、将来や恋や友情に対して自分なりの答えを見つけ出す物語になっています。
前作では足を引っ張っていたはずのアイツが瑞沢を全国に連れて行き、自己中だったはずの新入生が先輩を励ますために真っ先に声を出す等々。
前2作以上に胸が熱くなる展開のオンパレードかつ話がかなり凝縮されているので、観ていて間延びする瞬間は全くありません。
小泉監督は、新たな要素を足して盛り上げつつ、前2作の場面やセリフを響き合わせることでより映画としての密度を高めることにも成功するという離れ業のようなことを成し遂げてみせました。
今回の『結び』という副題が表すように、3本で一つの作品ということが強調された作りになっています。
まとめ
『ちはやふる』3部作は日本の青春映画史に残る傑作です!
なんてことを『リバーズ・エッジ』の記事でも書きましたが、今年は青春映画の当たり年になるのではないでしょうか。
8月31日(金)に公開される大根仁監督の『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は、韓国の傑作青春映画『サニー 永遠の仲間たち』を90年代の日本を舞台に置き換えて作られる作品です(この作品にも広瀬すずは出演)。
可愛いだけなんて見方はとうに過ぎ去り、類稀なる華やかさと演技力を併せ持つとんでもない女優に成長した広瀬すず。
この企画は間違いなく彼女ありきのものであり、それに相応しいだけの輝きを放っていました。
この3部作は将来日本映画史に名を刻む名女優の代表作として永遠に残っていくことでしょう。