アニメ「名探偵コナン」シリーズの劇場版第24作『名探偵コナン 緋色の弾丸』。
東京で行われるWSG(World Sports Games)という4年に一度の国際的スポーツイベントをモチーフにした『名探偵コナン 緋色の弾丸』。
2020年の状況を鑑み公開が延期されました。予告編での「ワリィ、待たせちまったな」というコナン君のセリフがファンの心に刺さります。
主題歌を担当するのは「東京事変」。名探偵コナンへの参加は初ですが、実際に4年に一度の国際的スポーツの祭典にボーカルの椎名林檎がプランニングメンバーとして関わっており、彼女の歌声が流れるとその祭典への思いも伝わってくるようです。
CONTENTS
映画『名探偵コナン 緋色の弾丸』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【原作】
青山剛昌
【監督】
永岡智佳
【キャスト】
高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、池田秀一、浜辺美波、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、林原めぐみ、松井菜桜子、日髙のり子、森川智之、置鮎龍太郎、田中敦子、杉本ゆう、山口勝平
【作品概要】
例年GW前に公開されている「名探偵コナン」シリーズの劇場版。毎回特定のサブキャラクターにフィーチャーした展開が人気です。怪盗キッド、服部平次&遠山和葉、安室透。
本作は安室透とも因縁の深い赤井秀一とその家族を中心に、4年に一度のスポーツイベントとリニアライナーの開通が絡んだ豪華な内容のストーリーになっています。
“赤井一家(ファミリー)”とその周辺人物のおさらい
ちょっと複雑な人間関係を簡単に紹介します。
赤井秀一(あかいしゅういち)
FBI捜査官で凄腕のスナイパー。黒ずくめの組織に潜入していたが、それがバレてしまいコナンのアイディアで殉職を偽装。灰原哀の死んだ姉・宮野明美とは潜入捜査のためにつき合っていた。現在は沖矢昴(おきやすばる)という大学院生として工藤新一の家に居候中。ジークンドーの使い手でもあり、幼い真純に手ほどきしたことがある。コナン=新一ということに気づいている。
羽田秀吉(はねだしゅうきち)
秀一の弟でプロ棋士。七冠を達成したが現在は六冠。父の親友であった羽田康晴の家に高校卒業と同時に養子入り。義兄の羽田浩司は黒ずくめの組織によって殺害されている。実兄・秀一が生きていることを知っていて連絡を取り合っている。宮本由美警部補とは恋人同士で結婚を考えている。
世良真純(せらますみ)
蘭、園子と同級生で帰国子女。バイクを乗り回す女子高生探偵。身体が小さくなってしまった母メアリーとホテル住まいで、母の身体のことは秀吉にも秘密にしている。長兄の秀一は死んだと思っており、沖矢昴が秀一だということは知らない。コナン=新一の証拠をつかもうとしている。「世良」は母メアリーの旧姓。
メアリー
赤井一家の母で、実はイギリス情報局秘密情報部“MI6”の諜報員。夫・赤井務武に変装した黒ずくめの組織のベルモットに薬を飲まされ少女の姿に。偶然見かけたコナンが自分と同じ薬を飲まされていると推理し、手がかりを求めて真純と日本へやってきた。長男の秀一は死んだと思っている。自分のことを「領域外の妹」と表現してコナンの反応を試した。
FBI捜査官チーム
黒ずくめの組織を追い日本で捜査しているFBIの捜査官たち。以前は赤井秀一が死んだものと思っていたが、現在は共に捜査をしている。
ジェイムズ・ブラック
冷静沈着な赤井たちの上司。一度コナンに救われたことがあり、それ以来一目置いている。
ジョディ・スターリング
FBI捜査官だった父を母とともにベルモットに殺され、父の遺志をついでFBIに入った。日本での捜査のため、蘭たちの通う帝丹高校で英語教師として働いており、「先生」と呼ばれている。かつて赤井秀一とつき合っていたが、彼の潜入捜査のため別れた過去がある。
アンドレ・キャメル
卓越したドライビングテクニックを持つ。自分のミスで任務に失敗した赤井に報いるため、志願して日本へやってきた。
映画『名探偵コナン 緋色の弾丸』のあらすじとネタバレ
15年前のアメリカ・デトロイト。後ろ手に縛られた状態で走る黒人男性がモノレールに逃げ込みますが、背後から銃で撃たれ絶命してしまいます。
そして現在の東京。4年に一度開催される国際的スポーツの祭典・WSG(World Sports Games)の開会式が行われる芝浜スタジアムにほど近いホテルで、そのスポンサー企業の関係者を集めたパーティが開かれています。
鈴木財閥の令嬢・園子のコネで参加しているコナンや蘭、少年探偵団のメンバーたちは、時速1000kmで走る真空超電導リニアライナーが開会式当日に開通し、その一番列車が名古屋からスタジアムに到着するイベントがあることを知ります。
料理が運ばれてきた次の瞬間、突然会場が停電。30秒後照明が復旧すると園子の父、鈴木財閥の鈴木史郎会長がいなくなっていました。
園子は知り合いの自動車メーカーCEOジョン・ボイドに父の所在をたずねますが、なぜかジョンはあわてて出ていってしまいました。
元太のお手柄で無事に鈴木会長を発見するも、つい先日も似たような手口で鈴木会長やジョンと交流のある三塚製菓社長が拉致された事件があったことをコナンは聞き逃しませんでした。
後日、阿笠博士の家に集まったコナンたちに園子からお礼としてリニアライナーのプラチナチケットが渡されました。
でもチケットは6枚。少年探偵団5人に園子と蘭で7人。阿笠博士のなぞなぞクイズで勝敗を決め、園子がチケットをあきらめることになりました。
その帰り道。沖矢昴と合流したコナンは、頼んでおいた15年前のアメリカでの事件について話を聞きます。
WSGのスポンサー企業のトップ3人が拉致された事件。ひとりめは製菓メーカー、ふたりめは財閥系企業、このふたりは無事でしたが三人目の自動車メーカーの社長は自力で逃げ出したためか唯一殺害されてしまいました。
犯人はイシハラマコトという日本人で、動機はWSGの商業化に抗議したテロということでした。
被害にあった製菓メーカーはスポンサーを降り、テロに屈したと当時アメリカで激しく非難されたそうです。
そしてこのときのFBI長官が、今回WSG協会会長として来日予定のアラン・マッケンジーだというのです。
11年前にもこの事件と似たような事件が起こり、逮捕された犯人の自白によって模倣犯であると発表されました。
再び日本でWSGスポンサーを狙った事件が起きたのか、そうすると次のターゲットは自動車メーカーCEOのジョン・ボイドなのでしょうか?
そのジョンは毛利探偵事務所を訪れ、自分が酔って鈴木会長や三塚社長との交流についてしゃべってしまったせいでふたりが襲われたのではないかと疑い調査を依頼していました。
毛利小五郎はリニアライナー開通の日は危険だと、蘭やコナンたちに参加を取りやめるよう告げるのでした。
そのころ世良真純は、少女の姿をした母メアリーからリニアライナーのチケットを見せられていました。
ふたりには何らかの任務があるようです。すると兄・秀吉から電話があり、同じ日に名古屋にいるから会おうと言ってそそくさと切られてしまいます。
リニアライナー乗客向けの説明会に参加しているコナンたち。説明しているのは日本WSG協会広報の白鳩舞子、リニアライナー開発チーフエンジニアの井上治、リニアライナー客室担当の石岡エリーの三人です。
当日参加者は午前10時に名古屋国際空港に集合し、まず病院で健康診断を受けます。その後アラン会長も加わって新名古屋駅から東京のスタジアムへ向かうのです。
FBI長官を歴任したアラン会長は射撃の選手としてWSGに参加した経験があり、今回はWSG会長として万国旗が飛び出すサプライズを用意しているとエリーがバラしてしまいました。
FBIメンバーと合流したコナンは、赤井に本国から狙撃用弾丸の使用許可がおりたことを知り、「犯人を殺すの?」とたずねます。
その夜コナンは新一の声で蘭に電話し、リニアライナーに乗るのはやめるよう説得しますが……。
開会式当日。名古屋国際空港に降り立ったジョン・ボイドに付き添う毛利小五郎の目に、娘の蘭、そしてコナンと灰原哀の姿が映りました。
スキを見てジョンに発信器を取り付けたコナン。蘭はコナンたちに帰るように言いますが、哀は大人っぽく「帰れない。だって子どもだもの」と返すのでした。
一方園子は、リニアライナーをあきらめる代わりに手配した「仮面ヤイバーショー」を見せるため、元太・光彦・歩美に付き添って東京の芝浜にいました。
コナンは空港の駐車場で待機している沖矢と電話で連絡を取りながら、今回の犯人がイシハラマコトの家族ではないかと小五郎から参加者名簿をくすねて確認します。しかし該当する名前はありませんでした。
証人保護プログラムで氏名を変えている可能性があると沖矢は言い、FBIではなくUSMS(連邦保安官局)が担当していたら仲がよくないので照会に時間がかかると言います。
そのころ、プロ棋士の秀吉は恋人の宮本由美と名古屋城にいました。結婚相手として由美を母に紹介しようと思っている秀吉は、名古屋城近くに建設を予定している将棋会館への思いを由美に語るのでした。
映画『名探偵コナン 緋色の弾丸』の感想と評価
回を追うごとにスケールアップする「名探偵コナン」シリーズの劇場版。今回は世界的なスポーツイベントとリニアライナーの開通という贅沢な内容でした。
しかも今回は人気キャラクターである赤井秀一を丁寧に、かつ効果的に描いています。
前半はずっと変装した沖矢昴の姿で行動し、赤井秀一本人の見せ場である狙撃シーンで中盤を盛り上げ、終盤は弟・羽田秀吉が頭脳戦で赤井をサポートしつつ怒涛のクライマックスへ向かうというフルコース的な展開になっているのです。
脚本を担当した櫻井武晴は「相棒」シリーズや「科捜研の女」シリーズを多く手掛け、劇場版名探偵コナンシリーズも今回が5本目となります。
2018年、日本中に“安室の女”を大量発生させた「名探偵コナン ゼロの執行人」も櫻井が担当しています。
MRIのクエンチ、FBIとUSMSの対立、そしてリニアライナーのトンネル内の仕組みなど、観る者の知識欲を刺激するような目新しい言葉や事柄をうまく取り入れ、荒唐無稽とも思える物語に説得力を持たせる手腕には目を見張るものがあります。
そしてリニアライナーのことを“日本の弾丸”とよんだり、ニュースの中でそのスピードを弾丸に例えたり、と伏線回収マニアにはたまらない仕掛けも魅力です。
もちろん、赤井が撃った“銀の弾丸(シルバーブレット)”が赤井とコナンのコンビのことを指しているというのも嬉しいポイントです。
まとめ
700ヤード(約640m)の男、赤井秀一は自身の記録をとんでもなく塗りかえてきました。空気抵抗のない真空トンネルの中という設定なのでシルバーブレットは一直線に飛び続け、おそらく100kmくらい先まで届いたのではないでしょうか。赤井秀一、かっこいいです。
その赤井秀一(声:池田秀一)にコナンを「坊や」と呼ばせるのも、往年のファンにはたまらないプレゼントです。
また今回は新一・蘭の恋愛要素は控えめにして、コナンと灰原哀の絶妙のコンビネーションが際立つ演出になっていました。
赤井ファミリー、そして黒ずくめの組織。名探偵コナンの物語はその大きな謎に近づいてきています。灰原哀はその中でキーパーソンとなる人物なので、これからもどんどんピックアップされていくことでしょう。
さて、来年は警察学校メンバーがメイン。どんな話になるのか、楽しみです。