伊坂幸太郎による小説『マリアビートル』が『ブレット・トレイン』という邦題で2022年9月1日(木)全国公開。
2010年に角川書店から出版された小説『マリアビートル』は、東京から盛岡へと向かう東北新幹線を舞台に、5人の殺し屋たちがバトルを繰り広げます。
映画は『ブレット・トレイン』のタイトルで、2022年9月1日(木)全国公開。ブラッド・ピット、小路アンドリュー、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソンらが出演します。
映画公開に先駆けて、原作小説である『マリアビートル』を、結末までの詳細なあらすじとともにご紹介します。
CONTENTS
小説『マリアビートル』の主な登場人物
木村
元ヤクザの中年男性。6歳の息子がいますが、デパートの屋上から転落し、昏睡状態になっています。突き落とした犯人である王子に復讐するために新幹線に乗り込みました。アルコール依存症と闘っています。
蜜柑
檸檬と二人組の殺し屋で、頭脳派。A型。裏社会の大物峰岸から、誘拐された息子の救出と身代金の運搬を依頼されています。
檸檬
蜜柑と二人組の殺し屋で、考えるよりも行動するタイプ。B型。蜜柑とは他人ですが、背格好が良く似ており、双子に間違われるほど。「機関車トーマス」に詳しく、何かというとキャラクターの話をします。
王子
自分の手を汚さずに多くの人を傷つけ、殺めてきた中学生。見た目は優しげで聡明な少年。
七尾
いつも何か大きな事件に巻き込まれる、運の無い殺し屋。通称「天道虫」。新幹線内の荷物置き場にある、トランクを持って下車する仕事を頼まれています。
真莉亜
七尾に仕事の伝達をする女性。
鈴木
塾講師。前作『グラスホッパー』の登場人物。
小説『マリアビートル』のあらすじとネタバレ
木村と王子
元ヤクザの木村は、今は足を洗って警備員として働いています。彼は、別れた妻が残していった、6歳の息子・渉を育てていましたが、ある日たまたま、「王子」という中学生と、彼に従う中学生たちと関わってしまいます。
王子は人を精神的に操る術に長けており、自分の手を汚さずに何人も死へ追い詰めてきました。
そんな彼が目をつけたのは幼い渉。デパートの屋上に連れ出し、フェンスから下を覗くように言い、渉を突き飛ばします。それ以来、渉は昏睡状態で病院に入院。王子は疑われもせずに暮らしています。
王子が東北新幹線「はやて」の7号車に乗っていると情報を得た木村。王子に復讐をしようと彼に近づきますが、スタンガンを当てられ、気絶したところを縛られてしまいます。
王子自身が情報を流して、木村を新幹線までおびき寄せていたんです。渉の病院の近くには、王子の雇った人物が待機しており、王子に何かあれば渉を殺す算段になっているそう。
木村は仕方なく王子と行動を共にすることになります。
蜜柑と檸檬
二人組の殺し屋・蜜柑と檸檬は、闇社会の大物・峰岸から、誘拐された息子の奪還と、身代金を持って盛岡駅まで来るよう依頼されました。
無事に息子を取り戻し、身代金の入ったトランクとともに、東京駅から東北新幹線「はやて」の3号車に乗り込みます。
ですが、檸檬はトランクを手元には置かず、車両の間にある荷物置き場に置いており、それを知った蜜柑が荷物置き場へ向かうも、トランクは消えていました。
さらには、目を離した隙に息子も誰かに殺されていて、大ピンチ。
トランクを盗んだ犯人は上野で降りるだろうと、降車する人物を確認しますが、見当たりません。
つまり、犯人はまだ車内にいるはずです。
次の停車駅である大宮駅では、峰岸の部下たちが、途中経過を確認する手筈になっています。
檸檬と蜜柑はなんとしてもトランクを見つけ出さなければなりません。
七尾と真莉亜
不運な殺し屋、七尾は、仲介業者である真莉亜から、携帯電話で指示を受け、東京駅で「はやて」の4号車に乗車。
今回の依頼は、荷物置き場に置かれたトランクを奪い、上野駅で降りること。
荷物は指示通りの場所にあり、何事もなく任務が終わるかのように見えましたが、それが今回の不運の始まりでした。
上野駅のホームで、七尾に恨みを持つ殺し屋「狼」と遭遇。車内デッキで揉み合ううち、七尾はうっかり狼の首を折って殺害してしまいます。
新幹線も七尾を乗せたまま上野を発車。狼の死体とトランクをどうしたものかと悩む七尾の前に、トイレに向かう途中の王子が現れました。
王子は無垢で親切な少年のふりをして、七尾に大丈夫かと声をかけます。七尾は狼が酔っ払ってしまったと嘯きますが、王子には死体だとお見通し。
ですが王子はこれから起こる面白い出来事を予感して、無垢な少年のふりをしたまま立ち去りました。
七尾はトランクの隠し場所を探します。ダストボックスの脇の壁に突起があり、そこをいじると大きな空間が現れました。
七尾はトランクをその空間に隠し、狼の死体とともに、狼の指定席である6号車へ向かうことにします。狼の死体は席に座らせ、眠っているかのように細工しました。
小説『マリアビートル』の感想と評価
2004年に出版された小説『グラスホッパー』の続編として書かれた本著『マリアビートル』。
『グラスホッパー』は、生田斗真、浅野忠信、山田涼介をメインキャストに迎えた実写映画が2015年に日本で公開されました。
本著『マリアビートル』にも、『グラスホッパー』の登場人物たちが顔を出しますが、本著単品でも十二分に楽しめます。
新幹線の中にいるのはほぼ全員殺し屋という突飛な発想ながらも、人物描写が繊細で、伏線回収も見事。伊坂幸太郎のエンターテインメント性が冴え渡っています。
本作で描かれるのは、殺し屋たちと、残酷な中学生・王子の駆け引き。
この王子が本当に憎たらしくて、殺し屋たちの犯行が霞むほど。中でも、木村の回想で登場する、悪意に塗れた王子の恐ろしさには鳥肌が立ちました。
さらに彼は、その知能の高さと演技力と強運でするりとピンチを切り抜けていき、正体に感づいた人物を次々と葬っていきます。
中でも、コミカルな名コンビ蜜柑と檸檬が、王子に手をかけるまでもう少しというところで死んでしまったのはとても残念でした。
「はやて」に乗っていた殺し屋たちで、最後まで王子の正体に気づかなかったのは七尾ひとり。不運だらけの七尾が、王子の幸運を無意識に食い潰していくさまは痛快です。
タイトルの意味は?
タイトルの『マリアビートル』とは、てんとう虫のことです。
てんとう虫は英語で、レディバグ、レディビートル。そのレディとは、聖母マリアのことなのだそう。
聖母マリアの七つの悲しみを背負って、太陽に向かって飛ぶ虫。だから、てんとう虫は、レディビートルと呼ばれています。
殺し屋業界で「天道虫」と呼ばれている七尾。そして、彼に仕事の指示をだすのは真莉亜。
本著は群像劇ではありますが、タイトルを見れば主役は七尾と、影の相棒・真莉亜ということがわかりますね。
不幸と不運続きの七尾ですが、それはまわりの人間をの不幸を肩代わりしているからだと真莉亜は言います。
緊迫した空気をガラッと変える力を持った不幸ぶりと、殺し屋としての腕の良さのギャップは秀逸です。
活躍をもっと見たいと思わせる、魅力的なキャラクターになっています。
映画『ブレット・トレイン』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Bullet Train
【原作】
伊坂幸太郎『マリアビートル』(角川書店)
【監督】
デヴィッド・リーチ
【キャスト】
ブラッド・ピット、小路アンドリュー、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ザジー・ビーツ、マシ・オカ
【作品概要】
『デッドプール2』『ワイルド・スピード スーパーコンボ』のデビッド・リーチ監督が、伊坂幸太郎の『マリアビートル』を、ブラッド・ピット主演で実写映画化。
『キスから始まるものがたり』『見せかけの日々』のジョーイ・キング、日系俳優の小路アンドリュー、『TENET テネット』「キック・アス」シリーズのアーロン・テイラー=ジョンソンも出演予定となっています。
映画『Bullet Train(原題)』のキャスト配役
参考:ジョーイ・キングの公式インスタグラム
『マリアビートル』の実写化は、現時点で発表されている限りでは、ブラッド・ピットが出演するハリウッド版が初となります。
舞台も日本の新幹線(Bullet Train)の設定のよう。
発表されているキャストは、ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、小路アンドリュー、アーロン・テイラー・ジョンソンとブライアン・タイリー・ヘンリー、ザジー・ビーツ、マシ・オカ。
ブラッド・ピットがレディバグこと天道虫(七尾)、アーロン・テイラー・ジョンソンがタンジェリンこと蜜柑を演じるようです。
そして、ジョーイ・キングはカメオ出演レベルの登場とされているものの、どうやらプリンス(王子)役らしいです。
個人的には、ブラット・ピットが木村、アーロン・テイラー・ジョンソンが七尾なイメージでした。
どう見てもブラピの七尾は強そうです。「キック・アス」でのヘタレヒーローぶりから、アーロン・テイラー・ジョンソンこそ七尾だろうと考えていました。
そして、女優であるジョーイ・キングが、カメオレベルでの出演なのに、王子役とは…?
原作とは違った、新たなキャラクターとストーリーになりそうですね。
映画『Bullet Train(原題)』は、2020年10月にロサンゼルスで製作を開始したとのことで、完成が待ちきれませんね。
まとめ
個性的なキャラクターが次々と登場し、惜しげもなく退場していく『マリアビートル』。
無意味と思われた「機関車トーマス」などの細かなエピソードがクライマックスに効いてくる、計算され尽くされた物語に、ぜひ引き込まれてください。
小説『マリアビートル』は、映画『ブレット・トレイン』として、2022年9月1日(木)全国公開。