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Entry 2020/10/30
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映画『佐々木、イン、マイマイン』感想評価と考察レビュー。藤原季節が青春時代のヒーローの思い出を演じる|映画という星空を知るひとよ35

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第35回

映画『佐々木、イン、マイマイン』は、今最も旬な俳優の一人・藤原季節を主演に招いた内山拓也監督による青春映画。

本作は、俳優の細川岳が高校時代の同級生とのエピソードを映画にしたいと、内山監督に企画を持ちかけて制作が実現したといいます。カリスマ的存在だった級友・佐々木を、細川岳が自ら演じています。

佐々木とその仲間たちの過去と現在。二度と戻らない青春時代の中、誰もの心にいる“ヒーロー”を蘇らせ、はかなく過ぎ去った日々へのほろ苦い思いを描き出します。

『佐々木、イン、マイマイン』は、2020年11月27日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開。

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映画『佐々木、イン、マイマイン』の作品情報

(c)「佐々木、イン、マイマイン」

【公開】
2020年(日本映画)

【脚本】
細川岳

【監督】
内山拓也

【キャスト】
藤原季節、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、井口理(King Gnu)、鈴木卓爾、村上虹郎

【作品概要】
初監督作品『ヴァニタス』がPFFアワード2016観客賞を受賞し、人気バンド「King Gnu」や平井堅のMVなどを手がける内山拓也監督の青春映画。

主人公・悠二役を『his』(2020)の藤原季節が演じるほか、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、「King Gnu」の井口理、鈴木卓爾、村上虹郎らが脇を固める。

撮影に『宮本から君へ』(2019)『きみの鳥はうたえる』(2018)の四宮秀俊、照明に『きみの鳥はうたえる』『さよならくちびる』(2019)の秋山恵二郎、衣裳に『サラバ静寂』(2018)の松田稜平、スチールカメラマンに『愛がなんだ』(2018)の木村和平と、日本映画を代表するクリエイターも集結しました。


映画『佐々木、イン、マイマイン』のあらすじ

(c)「佐々木、イン、マイマイン」

俳優になるために上京した石井悠二。いくつかの作品に出演したものの、27歳になる今も鳴かず飛ばずの日々を送っています。

別れた交際相手のユキとの同棲生活もズルズルと続いている状態で、仕事も私生活もケジメがない状態でした。

そんなある日、悠二はバイト先の工場で飛び込み営業に来ていた高校の同級生・多田と出会います。

その夜、多田と居酒屋でさっそく再会の場を設けました。

今の状況を多田から聞かれ、断片的にしか答えられない悠二を見て、多田は話題を変えます。

「そういえば、この間の同窓会にお前なんで来なかったんだ? 佐々木が来ていたんだぞ」

「え、佐々木?」

その瞬間、悠二は、高校時代に圧倒的な存在感を放っていた同級生・佐々木と仲間たちとの日々を思い出しました。

常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していた佐々木。

けれども、佐々木の身に降りかかる“ある出来事”をきっかけに、保たれていた友情がしだいに崩れていきます。

そんなことを思い出しながら、悠二は後輩から誘われたある舞台に出演していました。

稽古が進むにつれ、舞台の内容が過去と現在とリンクをし始めます。

そんな矢先、数年ぶりに佐々木から悠二の携帯に着信が……。悠二の脳内に「佐々木コール」が鳴り響きます。

映画『佐々木、イン、マイマイン』の感想と評価

(c)「佐々木、イン、マイマイン」

社会人になった時に、自分の夢が叶っている人はともかく、そうでない人もかなりいるのではないでしょうか。

『佐々木、イン、マイマイン』の主人公・石井悠二もそんなひとりです。

何年たっても目のでない俳優のハシクレ。それでも夢のかけらにしがみつき、ほそぼそとアルバイトをしながら、数少ない舞台にあがっていました。

そんな悠二が久しぶりに級友と出会い、かつての仲間であり、絶対的ヒーローであった男を思い出します。

彼の名前は「佐々木」。ぼさぼさ頭で風采があがりませんが、級友たちの心を虜にする爆発的な魅力を持っていました。

佐々木コールがおこれば、たとえそこが教室であろうと全裸になって踊り狂うというノリと度胸の良さを持っています。

女性には縁がなさそうなイメージの佐々木はどちらかというと硬派。昭和のカラーを色濃く映すバンカラ男です。

「バンカラ」は、言動などが荒々しいさま、またあえてそのように振る舞う人を指しますが、正義感にあふれる硬派で、誰からも慕われる存在の人にも使われます。

女性からは「何、アイツ」みたいに思われても、男性からはヒーロー扱いされるアイツ。

悠二にとって佐々木はまさしくそんな存在でした。青春時代を思い出すとき、必ずそこにいるカリスマ・佐々木は、決して色あせない大切な思い出の一部だったのです。

彼がいたから悠二の高校時代は輝いていたといえるのでしょう。

本作に出てくる佐々木は、佐々木を演じた細川岳の実際の級友だそうです。そしてストーリーもそのまま。

これが実話なら、ハチャメチャな青春を思うままに過ごした佐々木は確かに印象深い人物で、かつては確かにこのような人物がいた、と懐かしく思います。

退職した教師なんかは、たくさんいる教え子の中で、いたずらっ子とか問題児とかのことはよく覚えているといいますから、やはり佐々木のような人物は記憶に残りやすいのでしょう。

「佐々木」という存在は、誰の青春にも1人ぐらいはいるのではないでしょうか?

『佐々木、イン、マイマイン』は、おとなしく羽目を外すような子が少ないと思われる現代において、稀有な存在を知らしめる作品でもあります。

まとめ

(c)「佐々木、イン、マイマイン」

映画『佐々木、イン、マイマイン』は、俳優・細川岳の高校の同級生の物語です。

ずっと佐々木のことを作品にしたいと思っていた細川の思いを組んで内山監督が映画化しました。

佐々木を演じる細川岳。数ある学生のエピソードの中から、「佐々木」のことを描いた理由を、インタビューで赤裸々に答えています。

「自分が出会った人物の中で、一番魅力的な人物であり、僕の人生において忘れることができない瞬間を、どうしても映画として昇華したかった」

「自分が佐々木を演じることで、あの頃“あいつ”が感じた事を想像したかったんだと思います」

切ない青春の思い出を自ら演じて披露する俳優の勇気。魅力ある人物を映像に蘇らせる監督の努力。

この作品は内山監督と細川岳とがタッグを組んで作り出した、青春哀愁ドラマなのです。

鑑賞して誰もの心にいる「佐々木」を思い出し、ほろ苦い思い出に浸ってみてはいかがでしょうか。

『佐々木、イン、マイマイン』は、2020年11月27日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開。

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

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