Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ホラー映画

Entry 2020/09/21
Update

【事故物件の映画考察】なぜ4軒目入居で“黒い悪霊”に襲われたのか⁈不動産屋で変死する横水の理由も解説

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

殺人や自殺など何かしらの死亡事故が起きた、いわくつきの部屋を指す「事故物件」。

この事故物件に住み、自身の体験を書籍にしている「事故物件住みます芸人」である、松原タニシの原作を、中田秀夫が映像化した『事故物件 恐い間取り』。

今回は、後半の展開に着目し「何故、山野は4軒目で襲われたのか?」を考察していきます。

映画『事故物件 恐い間取り』のあらすじ


(C)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会
お笑いコンビ「ジョナサンズ」として活動している、山野ヤマメ。

山野は、相方の中井とコンビで活動していますが、10年やっても売れない為、中井に解散を突き付けられます。傷心のまま、帰宅しようとした山野に、ライブを見ていた小坂梓が話しかけます。

「ネタが面白かった」と絶賛する梓に、山野は「もう使わない」と、コントで使ったビニール傘を渡します。

一方でテレビ番組プロデューサーの松尾にも挨拶に行った際、中井が新たに放送作家として活動を開始する事を知った松尾は、視聴率が低迷している自身の番組の企画案を出させます。

ですが、中井の提案は使えない企画ばかりで、がっかりした松尾は、その場を退席しようとします。何とか松尾を引き留めたい、中井が提案したのは、同期の芸人から聞いた事故物件の話です。

ある事故物件に住んだ芸人が、精神に異常をきたし、最後は芸人を辞めて実家に帰ってしまったという話なのですが、それを聞いた松尾は、ピンで仕事も無い山野に、事故物件に住んで、その様子を撮影させるという企画を考えます。

最初は戸惑っていた山野ですが、松尾が事故物件を見つけて来たので、仕方なく事故物件に住む事になりますが、それがすべての恐怖の始まりでした…。

映画『事故物件 恐い間取り』感想と評価


(C)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

映画『事故物件 恐い間取り』では、テレビ番組の企画で、無理やり事故物件に住む事になった芸人、山野ヤマメが遭遇する数々の恐怖を描いています。

そして、一見すると無関係に思える、4つの事故物件エピソードを、謎の黒装束姿の男が1つに繋いでいる事が、本作の特徴です。

黒装束姿の男は、一軒目からその姿を見せていますが、霊感の強い梓しか、その存在を感じる事はありませんした。

しかし、事故物件4軒で、黒装束姿の男は、山野の前にハッキリを姿を見せて襲い掛かってきます。

何故、黒装束姿の男は山野に4軒目で襲ってきたのでしょうか?

それは、山野が事故物件に関する感覚が麻痺してしまい、「あの世に連れて行かれる」条件が揃った為と思われます。

事故物件の1軒目


(C)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

まず、事故物件1軒目では、山野は自分が住むマンションに貼られている「6階立ち入り禁止」の張り紙に反応するなど、かなり事故物件を恐れていました。

いわくつきの場所になんて、ほとんどの人が住みたくないはずなので、これは当然の反応でしょう。

ですが「事故物件芸人」として需要が増えていく中で、山野は事故物件に住む事を「ネタ」として考えるようになります。

1軒目の事故物件で、交通事故に遭った時点で、普通は怖くなり辞めますが、世間の反響が大きかった事で、山野は逆に手応えを感じるようになります。

さらに山野の事故物件に関する恐怖が、麻痺している事が分かる印象的な場面があります。

事故物件の2軒目


(C)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

2軒目の事故物件で、中井の携帯電話に入っていた謎のメッセージが、前にこの部屋で亡くなった老婆の、最後の言葉と分かり「これはネタになるぞ」と呟く場面です。

この時点で、山野は事故物件での怪現象から、逃げる事を考えるどころか「事故物件芸人として、ネタになるか?どうか?」の判断しかしなくなっているのです。

「事故物件慣れ」をし始めた事で、一般の人間と感覚がズレ始めている事が分かりますね。

事故物件の3軒目


(C)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

そして3軒目で、山野は無意識に首にベルトをかけて、前の住人と同じように首つり自殺を図ります。

梓により助かりますが、山野が事故物件に住み続ける事で、徐々に精神が病んでいっており「あの世との波長が合い始めた」そんな印象すら抱きます。

急展開する4軒目の事故物件


(C)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

そして、問題となる4軒目の事故物件で、山野が恐怖に対して、感覚が麻痺している事が露呈されます。

引っ越してすぐに、誰もいない場所でセンサーが反応して、ライトが点灯したり、部屋のドアが勝手に開いたりするのですが、山野は気にする様子を見せません。

それどころか、事故物件の中から、ライブ配信を始めるという行動に出て、完全に霊現象をネタにするようになります。

山野と距離を置くようになっていた梓が、そのライブ配信を見て異常な空気を感じますが、この時点で、山野は「事故物件の住人」として馴染んでしまい、幽霊に近い側の存在となってしまっているのです。

そして、そのタイミングで、黒装束姿の男が現れ、山野を「あちら側」に連れて行こうとしたと読み取れます。

映画『事故物件 恐い間取り』は、4軒の事故物件での恐怖を、オムニバスのように見せる作品ですが、山野が事故物件に対して、警戒心が無くなり、心が病んで、あの世に連れて行かれる条件が揃っていく様子を、一貫して表現していたのです。

4軒目という数字が「死」を暗示させる為、そこも不気味な感じがしますね。

まとめ(不動産の女社員・横水の変死を解説)


(C)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会
本作で黒装束姿の男に、狙われるキャラクターがもう1人います。

事故物件を専門に扱っていた不動産の社員、横水です。

事故物件は、一度でも人が住めば告知義務が無くなる為、横水は山野に事故物件を勧めまくっていました。

他所から見れば、とんでもない事をしているように見えますが、最後に中井が山野の所へ駆け付けたのは、横水の指示でした。

もしかすると、横水は黒装束の男の存在に気付き、どこかで除霊を狙っていたのかもしれません。

そして、その除霊の為の囮として、山野を使い続けていたとも解釈できます。

そう考えると、ラストで黒装束の男によって、命を奪われた横水は、完全に敗北してしまったと言えます。

事故物件は、創作物ではなく、実際に存在している物件です。

そこには、人間では太刀打ちできない、特殊な存在がいるのかもしれません。

面白半分で事故物件に関わって、作中の山野のように、幽霊と波長が合わないように気を付けましょう。

関連記事

ホラー映画

映画『マーダー・ミー・モンスター』あらすじと感想レビュー。ホラーを愛するアレハンドロ・ファデルがアンデス山脈で描いたモンスターとは

映画『マーダー・ミー・モンスター』は2019年11月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて、【WEC2019ワールド・エクストリーム・シネマ2019】作品としてロードショー! ヒューマントラ …

ホラー映画

映画『地獄少女』ネタバレ感想とレビュー評価。恐い実写化とアニメ版との比較考察

2019年11月に公開された映画『地獄少女』実写化とアニメ版との比較 契約する事で恨みを晴らしたい相手を地獄送りにしてくれる「地獄少女」の都市伝説を巡る、さまざまな人間のドラマを描いた、映画『地獄少女 …

ホラー映画

映画愛憎『ゴーストマスター』感想評価【カメラを止めるな類似比較】と“似て非なる親子世襲”を徹底解説

映画『ゴーストマスター』は2019年12月6日(金)より、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー! ホラーコメディとして始まりながら、“究極の映画愛”を描いた作品として話題沸騰中の映画『ゴーストマス …

ホラー映画

映画『怪怪怪怪物!』ネタバレ感想と結末あらすじ解説。学園ホラーをギデンズ・コー監督のオリジナル脚本で描く

“怪物”が学校にやってきた!いじめられっ子のリンはいじめっ子達の悪事に巻き込まれ、ひょんな事から怪物を捕まえます。 怪物を中心に少しずつ変わっていく彼らの日常。果たしてリンはいじめっ子と和解できるのか …

ホラー映画

【ネタバレ】映画『らせん』あらすじ結末感想と考察評価。 Jホラー・リング続編で”呪いのビデオ”を医学的に解き明かす

見ると死ぬという呪いのビデオ……Jホラーの金字塔『リング』の続編 見ると死ぬという呪いのビデオが巻き起こす惨劇を描いた鈴木光司のベストセラー小説をもとに中田秀夫監督が高橋洋脚本で映画化した『リング』( …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学