映画『ストーンウォール』のあらすじネタバレと感想や評価をまとめました!
以下、あらすじやネタバレが含まれる記事となりますので、まずは『ストーンウォール』映画作品情報をどうぞ!
映画『ストーンウォール』作品情報
【公開】
2016年(アメリカ)
【原題】
STONEWALL
【監督】
ローランド・エメリッヒ
【キャスト】
ジェレミー・アーバイン、ジョナサン・リース=マイヤーズ、ジョニー・ボーシャン、カール・グルスマン、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジョーイ・キング、ロン・パールマン
【作品概要】
『インデペンデンス・デイ』や『GODZILLA ゴジラ』などの大作で知られるローランド・エメリッヒ監督が、1969年にニューヨークで起こった暴動事件「ストーンウォールの反乱」をとりあげ、セクシャルマイノリティの若者たちを描いた人間ドラマ。
映画『ストーンウォール』あらすじとネタバレ
1960年代当時、アメリカでは同性愛は精神疾患とみなされていました。同性愛者は非常に厳しい状況におかれ、雇用禁止をはじめ、店で酒を飲むことも禁止されていました。
1969年。ダニーという若者が、長距離バスに乗って、ニューヨークにやって来ます。彼が訪れたのはグリニッジ・ビレッジのクリストファー・ストリート。自由な雰囲気のあるこの場所は同性愛者のコミュニティがあり、アメリカ全土から自由を求めた人々が集まっていました。
ダニーは、体を売って暮しているゲイの若者たちと知り合います。リーダー格のレイは、女優のジュディ・ガーランドを敬愛していました。なんのつてもないダニーは、彼に頼り、彼らの部屋で眠らせてもらいます。大勢が狭いアパートの一室に雑魚寝です。文字通り、身を寄せ合って生きているのです。
ダニーはイリノイ州出身。高校時代はアメリカンフットボールの選手でした。彼は同級生のジョニーに恋していました。ある日、二人で車に一緒にいるところをみられてしまい、ゲイであることが発覚。学校中から冷たい視線を受けてしまいます。父親から見放され、ジョニーにも裏切られ、いたたまれず家を出てきたのでした。コロンビア大学に入学が決まっていましたが、高校を卒業していないので卒業資格をとるため夜学に通い始めます。
同性愛者たちが通うバーでダニーは少し年上のトレバーと出逢います。彼はゲイの権利向上のため、非暴力を訴え活動していました。二人は恋に落ち、一緒に住み始めます。ダニーのコロンビア大学入学も認められました。
しかし、このニューヨークにおいてすら、ゲイの暮しは過酷なものでした。バーにはたびたび警察の捜査がはいり、何かと理由をつけては逮捕され、レイたちは客から暴力を受ける日々。ダニーも警官から理不尽な暴力を受け、身も心もずたずたになってしまいます。そんな時、トレバーが別の男性とキスしているのを見てしまい、家を飛び出したダニー。再び、レイたちに助けられます。
ゲイたちが集まるバー「ストーンウォール・イン」の支配人、エドはマフィアとつながり、少年を騙しては、政府の要人に紹介するなど暗躍していました。ダニーもその餌食になりかけますが、ガサ入れにあい事なきを得ます。
ある日、ストーンウォール・インに警察がやってきました。先日も踏み込みがあったばかりではないかと皆いぶかりますが、今回はいつもの6分署ではなく別の部署の警官たちでした。彼らの狙いはエドです。エドは6分署を買収し、まんまと逮捕を逃れていたのです。警察はエドに手錠をかけ護送車に乗せますが、もたもたしているうちに逃げられてしまいます。
罪のないゲイは捕えるくせに、犯罪人は簡単に逃してしまう。これまで耐え忍んできたゲイの怒りが爆発します。ダニーが煉瓦を窓ガラスに投げつけ、それをきっかけに暴動が起こります。歴史に名高い「ストーンウォールの反乱」です。
ダニーたちは武装した警官たちに果敢に挑み、闘いました。沈静化したあとの周囲は台風のあとのような惨状でした。ダニーは晴れ晴れとした顔つきでレイに「君は僕の大切な姉さんだ」と言い、レイも「あなたは可愛い妹よ」と応えます。
ダニーは地元に戻り、ジョニーと再会します。結婚して子どももいるジョニーは戸惑いますが、二人は堅くハグして別れます。家族の中で唯一ダニーの理解者だった妹のジョーイは、彼の帰還を大変喜び、「パパとママの態度は神の教えに反するわ」と憤慨するのでした。
ダニーがニューヨーク行きのバスに間に合うよう、田舎道を歩いていると、父親の車が通りかかり停車します。ダニーはかけよりますが、車はそのまま動き出し、遠ざかっていきました。
1970年には暴動一周年を記念してニューヨークで大規模なゲイパレードが行われ、以降、毎年行われるようになります。ダニーがパレードに参加していると、沿道に笑顔の妹と母の姿が見えました。
『ストーンウォール』の感想と評価
オバマ大統領は就任第二回目の演説で、最初の女性の権利獲得のための会議である「セネカ・フォールズ」と公民権運動の舞台となる「セルマ」とともに、「ストーンウォール」に言及しました。「ストーンウォール」の反乱は、セクシュアル・マイノリティの社会運動の原点と言われています。
本作がアメリカで封切られた際には、史実と違うとの声もあったようです。映画の終わりに実在した人物たちのその後が字幕で出るのですが、主要人物のダニーやレイについては触れられません。彼らは実在した人物ではなく創作されたキャラクターなのです。まるで彼らが中心に動いたように歴史を改ざんし、実際に運動に尽力した人々を軽視しているという批判です。
しかし、ローランド・エメリッヒ監督の狙いは別にあったのだと思います。歴史的な重要人物の功績に敬意を表しつつも、彼が描きたかったのは、恐らく、耐えに耐え忍んで生きてきた多くの名も無きセクシュアル・マイノリティの心の叫びだったのではないでしょうか。歴史の裏には、そうした表には現れない人々、一人一人の魂の爆発があったのだと。
まだキャリアの浅い若手俳優がその期待に応えています。ダニーを演じたのは、スティーブン・スピルバーグ監督の『戦火の馬』の少年役でデビューしたジェレミー・アイヴァイン。田舎の朴訥な少年が都会で必死に生き成長していく様を熱演しています。
そしてレイ役のジョニー・ボーシャン。本作が長編映画デビュー作だそうですが、抜群の存在感を持った恐るべき新人です。今後の活躍が非常に楽しみです。
まとめ
冒頭、ダニーがバスから眺めるマンハッタンの景色や、グリニッジ・ビレッジの風景など、本作は60年代のニューヨークを魅力的に再現しています。また、ショッキング・ブルーの「ヴィーナス」、プロコル・ハルムの「青い影」、バート・バカラックの「小さい願い」などのヒットソングも効果的に挿入されています。
今もなお、世界の77の国でゲイは犯罪とされているなど、根深い差別意識が残っています。アメリカ人ですらストーンウォールの反乱を知らない世代が増えている中、この映画の果たす役割は大きいのです。