Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2019/11/19
Update

韓国映画『未成年』あらすじネタバレと感想。女優キャストの演技力を発揮させたキム・ユンソク監督

  • Writer :
  • 西川ちょり

生きていくのは大変よ。覚悟はできてる?

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019・国際コンペティション部門にて上映され、2019年11月15日には「のむコレ3」のラインナップの一本として一回限りの上映が行われた韓国映画『未成年』は、不倫によって壊れゆく二組の家族を描いた名優キム・ユンソクの初監督作品です。

キム・ユンソク監督は、自らも出演しながら、ヨム・ジョンアとキム・ソジンという実力派女優、とキム・ヘジュンとパク・セジンという新人女優の魅力を余すところ無く引き出しています。

映画『未成年』の作品情報


(C) 2019 SHOWBOX AND REDPETER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

【公開】
2019年公開(韓国映画)

【原題】
미성년/Another Child

【監督】
キム・ユンソク

【キャスト】
ヨム・ジョンア、キム・ソジン、キム・ヘジュン、キム・ユンソク、キム・ヒウォン、イ・ヒジュン、イ・ジョンウン、ヨム・ヘラン、イ・サンヒ

【作品概要】
名優キム・ユンソクの初監督作。不倫によって揺れ動く二組の家族の姿を描いたヒューマンドラマ。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019・国際コンペティション部門上映作品。「のむコレ3」にて2019年11月15日にシネマート新宿、シネマート心斎橋にて一回限りの上映が行われた。

第39回ハワイ国際映画祭アワードガラでネットパック賞を受賞。

映画『未成年』あらすじとネタバレ


(C) 2019 SHOWBOX AND REDPETER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

女子高校生のジュリは、塾をさぼってある鴨料理屋にやってきました。背伸びをしてお店の中を伺うジュリ。

そこでは父の会社の飲み会が行われており、父の声と店主らしき女の声が聞こえてきました。2人は親密そうに言葉を交わしていました。

ジュリはなおも店の中を覗いていましたが、店主と目があったため、あわててうしろに下がった拍子に転倒してしまいます。そのまま彼女は走り去りました。

翌日、ジュリはユナという少女から呼び出しを受け、屋上に向かいました。ユナは鴨料理家の女の娘で、昨晩ジュリが転倒した際、携帯を落としたのを拾ったのです。

ジュリの父親とユナの母親が不倫をしていることを2人の少女はどちらも知っていました。

ユナが持っていたジュリの携帯にユナの母親・ヨンジュから電話がかかってきました。ユナは咄嗟に電話に出て「おばさんの夫とうちの母親が不倫をしていて母は妊娠している」と早口でまくし立てました。

ジュリは母親にはこのことを内緒にしておきたかったので激怒しますが、不倫をなかったことにしようとしているジュリに腹をたてたユナはいきなりジュリにキスし「これもなかったことに?」と怒って立ち去りました。

家に戻ったユナが母親を責めると、母は、自分は若くして結婚して夫の借金を背負うことになり、本当に苦労してきた不幸な女なんだ、なんでわかってくれないのだと言って泣き出します。

母の態度に呆れたユナは母の携帯からジュリの父親であるデウォンあてに「あなたの浮気は世間が知っている ミヒより」というメールを送りました。

翌朝メールを見たデウォンは、あわてて家を出ていこうとして妻に呼び止められますが、仕事を言い訳に逃げるように出かけていきます。

それを見たジュリは父のあとを追って飛び出しますが、追いつくことができませんでした。そんなジュリを母が追いかけてきたのでジュリはドキリとしますが、母は彼女におにぎりを持ってきてくれたのでした。

安心したのも束の間、母の足元をみると、なんと裸足でした。そのまま家に帰っていく母を近所の人が振り返ってみていました。

学校についたジュリはユナのところへ行き、2人は取っ組み合いの喧嘩を始めました。教室から廊下に出て、窓ガラスを割るほどの大げんかに教師はいったいどうしたんだ?と呆れ顔です。

クラスも違うし、家も遠いし、理系と文系だし、まったく接点がないじゃないかと教師は言い、ユナだけを先に返しました。

ユナを悪くいい、付き合う人間は選ばなければならないと説教する教師にジュリは「私が先に殴りました。なぜ陰口を? 陰口をたたく人は信用できない」と言って、部屋を出ていきました。

夫が浮気をしているらしいと悟ったヨンジュは、ミヒの店を訪ねていきました。席につくとミヒが注文を聞きにきました。するとミヒに電話がかかり、彼女は嬉しそうな顔をして会話し出しました。

会話の内容から相手は自分の夫に違いないと確信したヨンジュは、そのまま店を出ていきました。

あわてて追ってきたミヒを突き飛ばすと彼女は転倒してしまいます。スカートの裾から血がすーっと流れるのが見えました。

ミヒは早産し、生まれた子供は保育器の中でたくさんのチューブにつながれていました。ヨンジュは看護師から、早産した原因は倒れたせいだけではなく、前からなんらかの兆候があったはずですと説明されます。

知らせを聞いてユナとジュリが病院にやってきました。新生児室に入れてもらい子供を見た2人はその子があまりにも小さいので驚きます。

2人が病院に戻ると、デウォンがエスカレーターを登ってくるのが見えました。「お父さん!」とジュリが声をかけると、デウォンはあわててエスカレーターを逆行し、逃げ出しました。

夜遅くなって病院に戻ってきたデウォンは、眠っているミヒを見てしばらく佇んでいましたが、そのまま帰っていきました。

デウォンは家族に顔を合わすことができず車の中で一夜を過ごしました。

ジュリが病院に行くとミヒは目覚め、ばりばりお菓子を食べテレビを見て笑い、挙句に同室の妊婦の母親と喧嘩まで始めました。

子供の顔を見ようともしない母親に代わってユナは自分が弟を育てようと決心します。ジュリの母親が入院費を払ってくれたと聞いたユナはアルバイト先の店長に頼んで金を前借りし、ヨンジュに返済するのでした。

ようやく家に戻ってきたデウォンは妻に、知り合いが貸しペンションをしているから旅行に行こうなどといって平謝りしますが、ヨンジュはデウォンとはもう別れることを決意していました。「あなたは騙したのよ、ふたりを。いえ、4人を」

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『未成年』ネタバレ・結末の記載がございます。『未成年』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
出生届を出したユナとジュリが病院に戻ると赤ちゃんがいなくなっていました。養子に出したのね!とユナは衝撃を受けますが、実は赤ちゃんは亡くなってしまったのです。死んだ赤ちゃんの遺体を運ぶ葬儀屋のおじさんに頼んでジュリは赤ちゃんの遺体が入った箱を渡してもらいました。

デウォンから電話がきてミヒは喜びますが、彼は終始よそよそしい受け答えに終始し、ミヒはもう彼が自分を愛していないことを悟ります。

デウォンは友人が経営するペンションにやってきますが、それはとっくに倒産していました。居場所がなく、海辺の町を訪ね防波堤に座っていると、地元の女らしき人物から車の駐車代と称して金を巻き上げられ、挙げ句に地元の悪ガキからおやじ狩りにあってしまいます。

やっと家に帰ってきたデウォンですが、娘のジュリからも愛想をつかされたことを悟ります。妻はもう家を売りに出していました。

ユナは母親の母子手帳をみつけ、新生児の名前の欄に「おバカちゃん」と書かれているのに気が付きます。

ユナは「知っていたのね。だから顔も見ようとしなかった」と家に戻ってきた母親を責めるのでした。

ジュリはすっかり投げやりになっているユナを説得して火葬場に向かいました。火葬場のおじさんが「もっといい入れ物があったらよかったんだけど」と龍角散のケースに赤ちゃんの遺骨を入れて渡してくれました。

弟の骨はとてもとても小さく、彼がいかに小さかったかを2人は思い出していました。

ジュリは、父親の携帯にあった、父親とユナの母親のツーショット写真の背景に映っていた遊園地にユナを連れてきました。

既に遊園地は廃業しており、誰もいませんでしたが、2人は目一杯その遊園地を満喫しました。

2人はイチゴミルクとチョコミルクに、弟の遺骨を入れて飲み込みました。その時、ジュリのお腹の音がなりました。

「私じゃない」とジュリが言ったのでユナは吹き出しました。2人は、満面の笑みを浮かべていました。

映画『未成年』の感想と評価


(C) 2019 SHOWBOX AND REDPETER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

映画を見終えたあと、“未成年”というタイトルの持つ意味を問わずにいられなくなりました。

20歳に満たない若者たちをまだ未熟で大人には達していない世代としてひとまとめにしてそう表現しているわけですが、この作品ではむしろ、大人世代の未成熟さが際立っています。

それなりに社会に揉まれ、家庭を持ち、子供を持ち、仕事もしている彼ら、彼女たちは、一見一人前の大人ですが、不倫が発覚することで、それぞれがその未成熟さをさらしていくのです。

本作は韓国の名優キム・ユンソクの初監督作品です。キム・ユンソクは出演も兼ね、二組の家族を振り回す不倫男を演じていますが、責任から徹底的に逃げ回るなさけない男として登場しています。

愛人の見舞いに病院にやってきたところを娘にみつかり、エレベーターを逆行して逃げるシーンはコミカルで、思わず吹き出しそうになりますが、この男の卑小さをよく表したエピソードになっています。

不倫相手の女は、自身の娘に責められて子供のように泣きわめき、男の妻は、教会に懺悔に行き思わず赤ちゃんが病気なのは神様が与えた天罰だと口走ります。

不倫相手の女の元夫は、なけなしの金を博打に注ぎ、娘の年齢すら覚えていない始末です。

また、娘たちが通う高校の教師は、優等生であるジュリを特別扱いし、ジュリに「なぜ陰口を言うのか」と指摘されてしまいます。

こうした未成熟なダメ大人たちのドタバタぶりが、人間の弱さや滑稽さとして描かれていくのですが、それに比べて娘たちがとる行動はしっかりとした信念に基づく誠実なもので、観ていてしみじみと心を打たれます。

生命の誕生に驚き、その小さな命を守ろうとし、貸し借りにもきちんとけじめをつける彼女たちは、頼るべき大人がいない哀れな少女ではなく、逆に大人へ三行半を食らわす者として、孤高にスクリーンの中で立ち続けます。

最初は反発しあっていた二人が次第に心を通わせていく姿は清々しく、キム・ユンソク監督はその二人の輝きをあますところなく映し出しています。

それにしてもこの作品がこれほど身にしみるのは、これが映画だけの話ではないからです。実社会でも大人世代の未熟さを実感することが増えてはいないでしょうか。 

優れた作品はなにかしらの形で時代の空気を反映しているものですが、キム・ユンソク監督の『未成年』もまた、ひとつの社会の空気を如実に映し出しているのです。

まとめ

キム・ユンソクは映画通のシネフィルで知られ、今回、念願の監督デビューを果たしました。

『チェイサー』(2008/ナ・ホンジン)、『海にかかる霧』(2014/シム・ソンボ)、『1987、ある闘いの真実』(2017/チャン・ジュナン)などの名作で、骨太の役柄を演じてきた彼が初監督作品として選んだのは、女性や少女たちの繊細な気持ちをすくい取る人間ドラマでした。

韓国映画界は、男性俳優が織りなすアクション映画や政治ドラマなどが人気で、女性を主人公にした映画はまだまだ少数と言われています。

そんな中、キム・ユンソクは、実力ある女優たちの活躍に注目し、今回「のむコレ3」で上映されるハン・ジミン主演の『虐待の証明』(2018/イ・ジウォン)なども高く評価するなど、韓国の映画界における女性の地位向上を口にしてきました。彼がこの作品を選んだのにはそうした背景があるのです。

妻と愛人を演じるヨム・ジョンアとキム・ソジンは、揺れ動く内面を持った役柄を丁寧に演じ、その実力を遺憾なく発揮しています。

厳しいオーディションの中から選ばれた2人の新人女優キム・ヘジュンとパク・セジンがまた素晴らしく、彼女たちがラストに見せた笑顔は忘れがたい余韻を残します。

本作『未成年』は2020年6月5日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋でも公開が決定しました。ぜひ劇場でご覧ください。

関連記事

ヒューマンドラマ映画

『影の軍隊』ネタバレあらすじ結末と感想評価の解説。巨匠メルヴィルがリノ・ヴァンチュラ主演で描く“レジスタンス映画”

ナチス・ドイツに反抗したフランスのレジスタンスを描いた戦争ドラマ。 ジャン=ピエール・メルヴィルが脚本・監督を務めた、1969年製作のフランス・イタリア合作の戦争ドラマ映画『影の軍隊』。 第二次世界大 …

ヒューマンドラマ映画

映画『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』あらすじ感想評価と美術的考察の比較解説。歴史的アーティストの真実をジャック・ドワイヨン監督が描く

弟子入りを熱望した女性彫刻家カミーユ・クローデルと師匠オーギュスト・ロダンの関係を解く 2017年11月に没後100年を迎える“近代彫刻の祖”オーギュスト・ロダン。映画『ロダン カミーユと永遠のアトリ …

ヒューマンドラマ映画

『ミステリー・アリーナ』映画原作ネタバレあらすじ感想と評価解説。深水黎一郎の小説で描く謎解きの醍醐味と番組の裏の顔

深水黎一郎の小説『ミステリー・アリーナ』が映像化! 緻密なロジックとトリックで読者を魅了する本格ミステリー作家・深水黎一郎の小説『ミステリー・アリーナ』。 「ミステリー・アリーナ」とは、全国民が熱狂す …

ヒューマンドラマ映画

映画『泣くな赤鬼』あらすじネタバレと感想。感動する師との出会いは人生の宝

「先生、俺、また野球やりたい」。 努力は必ず報われる。 重松清の、先生と生徒の絆を描いた短編集「せんせい。」の中から「泣くな赤鬼」の1編が映画化されました。 短編集「せんせい。」の中でも特に泣けると評 …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】南極物語|あらすじ感想と結末評価レビュー。高倉健代表作は実話を基にした南極に置き去りにされた犬の物語

やむを得ず南極に置き去りにした15頭の樺太犬の生き様と観測隊員の葛藤を描くヒューマンドラマ 昭和33年(1958)、南極の昭和基地。昭和基地から宗谷へ第一次越冬隊員が引き上げることになり、第二次隊員に …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学