2019年公開『IT CHAPTER TWO』続編ホラー映画の魅力を解説!
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は、2017年に公開されメガヒットを記録した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編です。
スティーヴン・キングの原作『IT/イット』を基に映画化。前作に続きアンディ・ムスキエティが監督を務めます。
最恐ピエロの代名詞となったビル・スカルスガルドもペニーワイズ役を続投。骨董店の店主役でスティーヴン・キングがカメオ出演しています。
CONTENTS
映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
IT Chapter 2
【監督】
アンディ・ムスキエティ
【キャスト】
ビル・スカルスガルド、ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・ヘイダー、ジェイ・ライアン、ジェームズ・ランソン、イザイア・ムスタファ、アンディ・ビーン、ジェイデン・リーバハー、ソフィア・リリス、ジェレミー・レイ・テイラー、フィン・ウルフハード、チョーズン・ジェイコブス、ジャック・ディラン・グレイザー、ワイアット・オレフ
【作品概要】
アンディ・ムスキエティは、ギレルモ・デル・トロに見出され『MAMA』(2014)で長編映画監督デビューしたアルゼンチン出身のフィルムメーカー。
本作は、ゲイリー・ドーベルマンが単独で200ページの脚本を執筆。当初4時間に上った映像をカットし上映時間は2時間50分弱。
キャストを担当した監督の姉バーバラ・ムスキエティは、本作の配役に際し3つの条件を設けました。
1:高い演技力を持つ役者。2:前作のルーザーズ・クラブを演じた子役に似ていること。3:厳しい要求を課される撮影に応じる俳優。舞台となるベリーの町はカナダのオンタリオ州がロケ地。
映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』のあらすじとネタバレ
メイン州、デリー。前作から27年後。同性愛者のカップルを見掛けた地元の不良が2人を襲撃。1人が散々殴られたあげくに川へ放り込まれます。
安否を心配したパートナーが川岸へ来ると、向こう側で金色の目をしたペニーワイズが恋人を食い殺します。大量の赤い風船が辺りを埋め尽くし、気づくとペニーワイズは恋人と一緒に消滅。
ルーザーズ・クラブの内1人だけベリーに居住を続けていたマイクは警察無線で事件を知り、メンバー全員にデリーに戻るよう連絡を入れます。
それぞれ成功を納めていた面々ですが、スタンリーはマイクと電話で話した後に自殺してしまいます。
ビバリーは、出発を反対する夫から暴力を振るわれますが反撃し、荷物を掴み結婚指輪を置いて、デリーへ向かいます。
デリーの中華レストランでルーザーズ・クラブは久し振りに再会。卒業アルバムに唯一名前を書いてくれたビバリーにずっと心を寄せていたベンは、満面の笑顔を浮かべます。
近況を報告し合い、スタンリーだけが姿を現さないことを気に掛けながらも、皆楽しい時間を過ごします。
マイクは、ペニーワイズが再び覚醒し事件を起こしていると前置きして、27年前に誓いを交わした通り始末をつけようと話します。
食後に運ばれた6つのフォーチュン・クッキーに入っていたおみくじは、スタンリーの身に何か起きたことを示唆。直後にクッキーから飛び出す人間の頭を持つ多足動物や目玉等不気味なクリーチャーが襲い掛かります。
しかし、レストランのウェイトレスの目には何も見えず、6人が大暴れしているように映っていました。
スタンリーの家に連絡し、妻から自殺したこと聞いて怯えたエディとリッチーは、町を出ると言い宿泊所へ荷物を取りに戻ります。
マイクは、見せたい物があると必死にビルを説得。同じ頃、ペニーワイズは蛍を使って幼い少女を誘い出し、頬のあざを消してあげると言葉巧みにおびき寄せて食い殺します。
一方、地元の問題児で過去にマイクやベンを虐めていたヘンリーは、父親を殺害後精神病院へ収監されていました。ペニーワイズの手助けで病院を脱走します。
司書であるマイクは、長年ペニーワイズの抹殺方法を模索していました。18世紀初頭に先住民が使っていた遺物をビルに見せたマイクは、これでペニーワイズのことが分かると説明。
隕石の落下と共に地球へ来たペニーワイズ。ビルの脳裏に、何重にも歯が生えた化け物を遺物に閉じ込める儀式の光景が見えます。
その頃、町の宿泊所へ戻った残りのメンバーは、過去にペニーワイズの口から放たれたデッドライトを浴びたビバリーに予知夢を見る能力が備わっていたことを知ります。
ビバリーは、スタンリーの死を始め、ルーザーズ・クラブ全員が死ぬ悪夢を見たと告白。
宿泊所へやって来たマイクとビルは、団結してチュードの儀式を行えばペニーワイズを倒せると皆を説得します。
27年前の過去でそれぞれ自分にとって思いが残る記念の品を見つけ図書館で合流するようマイクは全員に指示します。
映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』の感想と評価
1987年公開の『スタンド・バイ・ミー』のホラー版とも言える『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』の続編『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は、27年後それぞれ成長したルーザーズ・クラブが登場。
心に隠した偽りや挫折を克服できていないメンバーを、残忍なピエロが執拗に付きまとう姿を描きます。ペニーワイズは、人が抱える恐怖を合わせ鏡の様に化けて見せる超自然的存在。
本作では、ルーザーズが自分のトラウマを乗り越え、ペニーワイズに挑むまでの過程を軸に展開します。
X-MEN:ダーク・フェニックスの撮影中、ビバリー役のオファーを得ていたジェシカ・チャステインは、本作の監督アンディ・ムスキエティがジェームズ・マカヴォイの出演を望んでいるとマカヴォイに伝えました。
『スプリット』(2017)で度肝を抜く演技を披露したマカヴォイは、彼の世代を代表する俳優と特にフィルムメーカーから高い評価を受けています。
また、北米の大人気ドラマ『バリー』に主演し、2019年度のエミー賞でコメディ部門主演男優賞にノミネートされているビル・ヘイダーもムスキエティ姉弟が最初にキャストしたかった俳優。
そして、何と言っても本作に必要不可欠なのはビル・スカルスガルドです。ピエロのメイクでオーディションへ来たスカルスガルドは、自身の家族4人の内3人ができるペニーワイズの笑顔を披露。
ペニーワイズ役を獲得したスカルスガルドは、CG加工するはずだったピエロの斜視を「出来ますよ~」とやって見せたとムスキエティが話します。片目だけ横に流れて白くなる技を、笑顔でインタビューに応えながら実演。
191センチという長身の体を全身使う表現力と彼の演技力が作品を牽引しています。能の舞台で俳優が面の外へ演ずるキャラクターの魂を浮かび上がらせる様に、スカルスガルドは特殊メイクを超えて邪悪さを可視化させています。
本作で再登場するルーザーズ・クラブの子役達は、撮影開始直前にスカルスガルドが役へ入って行く過程が「もの凄く怖い」と口々にコメント。
本シリーズのペニーワイズは、スカルスガルドが動物のドキュメンタリーでハイエナやグリズリーを見ながら声の出し方や表情を試行錯誤して作り上げた最恐のピエロなのです。
まとめ
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は、「頭が悪い」「ブス」「太っている」そんな言葉を浴びせられる思春期に根付く劣等感や機能不全の家族環境が、子供に大きな影響を与え成長した後も尾を引くことを描写。
心に付きまとう暗い影こそがペニーワイズの餌であり、自分自身でしかトラウマは克服出来ないと言うメッセージが込められた成長物語です。
本作は、観客を怖がらせようとする監督アンディ・ムスキエティのアイデア、プラクティカル・エフェクト担当者の職人技、そして俳優陣の演技力を楽しめるホラー映画です。