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東京国際映画祭2019の新作紹介イベントリポート!矢田部吉彦と石坂健治によるプレビュートーク

  • Writer :
  • 石井夏子

東京国際映画祭の知られざる魅力を発掘!
“ナカ”の人が本音で語る絶対ハズせない2019年の新作映画たちを紹介。

2018年より新たに開催されている東京国際映画祭プレビューショー。

画像:矢田部吉彦(左)と石坂健治(右)

2019年も、10月28日~11月5日で開催する第32回東京国際映画祭(TIFF)の作品選定を務める矢田部吉彦(やたべよしひこ)と、石坂健治(いしざかけんじ)による、プレビュートークイベントが行われました。

2019年の開催に向け、いまかいまかと待ち構えるTIFFマニアなお客様約60名ほどを迎え、2018年に続きLOFT9 Shibuyaでの2回目の開催となりました。

プレビュートークイベントの概要

参考:東京国際映画祭のツイッター

【開催日時】
10月3日(木)19:30~

【会場】
LOFT9 Shibuya

【登壇者】
・矢田部吉彦(「コンペティション」部門、「日本映画スプラッシュ」部門他プログラミング・ディレクター)
・石坂健治(「アジアの未来」部門、「クロスカット・アジア」部門他プログラミング・ディレクター)

【MC】
松崎まこと(映画活動家)

矢田部吉彦によるおすすめポイント

参考:矢田部吉彦ディレクターのツイッター

東京国際映画祭【コンペティション部門】プログラミングディレクターである矢田部吉彦。

「日本映画スプラッシュ」部門と「ワールド・フォーカス」部門の見どころや注目作について以下のように語りました。

「日本映画スプラッシュ」部門について

画像:映画『花と雨』

(C)2019「花と雨」製作委員会 

今年は非常に特徴的な8本となった「日本映画スプラッシュ」部門。

まずは山田佳奈監督『タイトル、拒絶』。劇団を主催していて俳優としても活躍されている山田佳奈監督自身の戯曲を映画化したものです。、主役の伊藤沙莉のビジュアルが強烈だったからか、公式サイトのアクセス数がダントツナンバー1。女性の目線から見た、風俗業界の中の女性の姿を描いています。

『どうしようもない僕のちっぽけな世界は、』はにシリアスでチャレンジングな作品。日本のインディーズ映画って、どうしても自分の身のまわりに起こっている出来事を描きがちですが、この数年、もう少し自分以外の社会にも触れる作品が増えており、本作はその代表格と言えます。

『花と雨』という作品は、実在のラッパーの生きざまをダイナミックに描き、非常に特徴的です。

TIFFにはドキュメンタリー映画部門がなく、今年の目玉作品としてドキュメンタリー映画2本をこの「日本映画スプラッシュ」部門に迎える事になりました。

1つは森達也監督『i -新聞記者ドキュメント-』。話題作『新聞記者』のモデルとなった東京新聞の望月衣塑子記者を追いかけます。森監督自身が、今年一番ホットなネタをいち早く見せたい、という事で話を持ち込んんだもの。監督いわく、エンタメ作品になるとのこと。

もう一つは特別上映枠で原一男監督の『れいわ一揆』。名前で分かる通り「れいわ新撰組」の参院選での一連の動きを捉えた作品。仕上げ途中でまだ最終的に何分の上映時間になるのか分からないため、オールナイト枠での上映に決定しました。

「ワールド・フォーカス」部門について

「ワールド・フォーカス」部門はカンヌ・ヴェネツィア・ベルリンの3大映画祭の話題作を集めました。

『ファイアー・ウィル・カム』はカンヌ映画祭の中でも一番好きな作品です。山火事を起こしたという罪で服役していた男が出所して村に戻ってくる所から始まる1人の男と母の慈しみの物語。映像美と、山火事の絵の迫力が圧巻です。この山火事をどうやって撮ったかというと、実は撮影クルーが山の麓に住み込んで、山火事が起こる度にカメラを回しに行っていたという凄い裏話もあるんです。

香港のアニメ『チェリー・レイン7番地』は、実写映画ばかりのヴェネツィア映画祭で、唯一のアニメーションだったにもかかわらず、脚本賞を取った作品。60年代の香港に生きる家庭教師の男の話で、最初3D用に作ったアニメーションを、さらに2D用に描き変えることで不思議な奥行きとタッチになっているんです。60年代を舞台に、当時の香港の反英国統治デモの様子が描かれる反面、英国統治を懐かしんでいるのではないかと思わせる描写もちりばめられており、今の香港の情勢にも通ずるものがあります。

石坂健治によるおすすめポイント

東京国際映画祭【アジアの未来部門】プログラミングディレクターは、「アジアの未来」部門と国際交流基金アジアセンターpresents「クロスカットアジア」部門、「ワールド・フォーカス」部門について、以下のように語っています。

「アジアの未来」部門について

動画:映画『失われた殺人の記憶』

この部門はアジアの新人監督発掘、という意味に加えて、“世界初”の上映作品の目撃者になって欲しい、という意図もあります。

も今年はそれをやめて、本当に面白い作品たちを寄せ集めてみたら「韓国」「イラン」「香港」という、日々ニュースで目にする話題性たっぷりの地域の作品を2作品ずつ選ぶ事になりました。

韓国映画はのひとつは『エウォル~風にのせて』という、韓国にこの手の真っ当なラブロマンスを撮らせたら他に敵う国はないと思わせる作品です。

もう一つは、こちらもまさに韓国映画らしい過激なバイオレンスもの『失われた殺人の記憶』。典型的な韓国サスペンスなんですが、ちょっとヒッチコックのようなテイストです。

香港映画の『ファストフード店の住人たち』という作品は、居住地が無くてファストフード店に住んでいる主人公たちの物語で、香港の格差社会の問題が浮き彫りになった作品です。70年代の香港のアイドル的存在の女優ノラ・ミャオが、音楽教室の先生役で登場しています。ワールド・プレミア上映です。

今年のアジア映画の全体の傾向を1つ言うと“ホラー色“強めです。

そんな中、フィリピンでも面白い作品があります。マレーシア出身でフィリピン在住の監督が、多国籍スタッフたちと一緒に撮影した作品で、国際化の進むアジアのホラー映画の今年の代表格です。テイストは、わかりやすく言うとキューブリックの『シャイニング』と『エイリアン』シリーズを掛け合わせた様な感じですね。

「クロスカットアジア」部門について

動画:映画『リリア・カンタペイ、神出鬼没』

国際交流基金アジアセンターpresents「クロスカットアジア」部門は今年でシリーズ6年目。

今年は「ファンタスティック!東南アジア」と称して、実は“ファンタ”映画の宝庫である東南アジアの知られざる一面についに触れるていきます。

東南アジアは、実はJホラーへのリスペクトも大きく、各国の映画祭に行くと「NAKATA」「HIDE」と皆口を揃えて、映画祭のゲストに『リング』の中田秀夫監督を招きたいと言う人声があがります。

『Sisters』という“双子もの”のホラーは、『マッハ!』や『チョコレート・ファイター』の大作系エンタメ監督が、実はずっとホラー映画を作りたかった!と実現した作品です。

フィリピンの『リリア・カンタペイ、神出鬼没』は一番観て欲しい作品。これも、ある意味ホラー映画なんですが、モキュメンタリーとして撮られています。実在した、ギネス並の出演本数を誇る名脇役ホラー女優さんが、映画の中で生まれて初めて“女優賞”ノミネートをされてしまう、というもので。これは本国でも大ヒット、本当に現実世界では国内映画祭でこの映画での女優賞を受賞し、亡くなったという後日談もあります。

齊藤工監督の最新作も紹介。『家族のレシピ』という斎藤工出演作で監督を務めたエリック・クーが製作総指揮を務める「フォークロア」というシリーズの1つ『フォークロア:TATAMI』。齊藤監督初のホラー作品で、北村一輝が主演の話題作です。

「ワールド・フォーカス」部門について

海外映画祭ですでに受賞をしていたり、日本にはまだ来ていないけど、実は世界で超話題になっていたりする作品をいち早く観る事の出来る「ワールド・フォーカス」部門。

唯一の台湾映画『ひとつの太陽』は、家族の再生もの。1度崩壊してしまった4人家族が再生していく姿を丁寧に切り取ってます。

タイのアイドルBNK48のジェニス、ミュージックが共演した王道青春映画『私たちの居場所』も注目。タイ映画は特に“青春”が浮き出ます。

第32回東京国際映画祭の開催概要

【開催期間】
2019年10月28日(月)~11月5日(火)

【会場】
六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) 、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区)ほか

※詳細につきましては東京国際映画祭公式サイトにてご確認ください。

東京国際映画祭とは

東京国際映画祭(通称 TIFF)は日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の国際映画祭です。

1985年、日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生した TIFFは、日本およびアジアの映画産業、文化振興に大きな足跡を残し、アジア最大級の国際映画祭へと成長しました。

いまや最も熱気溢れるアジア映画の最大の拠点である東京に世界中から優れた映画が集まり、国内外の映画人、映画ファンが新たな才能とその感動に出会い、交流する場を提供しています。

東京国際映画祭のおすすめポイント

本年も200本ほどの上映本数を予定しているTIFF。忙しい合間をぬって開催9日間ですべての作品を観る事のできる人はいないでしょう。

せっかく足を運ぶのに、事前の手ほどきもなく、上映作品を決め込んでいく方が難しいかもしれません。

実は、本映画祭の意義の一つに、“世界で初めて”上映を行う映画を目撃できるという利点があります。

しかも、世界中の新作映画を1年間かけて観まくった映画ソムリエたちが厳選に厳選を重ねた作品ですから、面白さはお墨付き。

どうしてこの東京国際映画祭に、行った事もない遠い国々の映画が上映されているのか。

普段ニュースでよく見る国際情勢も、全く知らなかった民族の摩訶不思議な文化も、映画を通して裏側を垣間見るだけで、ちょっと今までより興味を持てそうな気がしますね。

まとめ

参考:東京国際映画祭のツイッター

本トークイベントは、今年の絶対ハズせない作品たちの魅力を語る事にとどまらず、映画から見る、超現実だけど本当に存在する知られざる世界や、これから絶対に来ると期待の日本人映画監督情報、そして、ちらっと今年の登壇ゲストの情報なども事前に知ることが出来るチャンスとなりました。

東京国際映画祭プレビューショーの2020年の開催も是非ご期待ください


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