ベストセラー作家・冲方丁(うぶかた・とう)のミステリー小説を原作とした実写映画『十二人の死にたい子どもたち』が、2019年1月25日(金)に公開されます。
『イニシエーション・ラブ』『トリック』など数々のヒット作を送り出してきた堤幸彦監督が映画化した本作。
この記事では映画『十二人の死にたい子どもたち』の監督・堤幸彦にスポットを当て、プロフィールや過去監督映画をご紹介していきます。
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堤幸彦監督のプロフィール
参考映像:堤幸彦監督の代表作『天空の蜂』(2015)
堤幸彦は1955年11月3日生まれ、愛知県出身で、高校を卒業する18歳まで名古屋で過ごしました。
高校時代からロックに傾倒し、はっぴいえんどに憧れて上京を希望し、法政大学社会学部社会学科へ進学します。
大学在学中は当時の学生運動にも参加したそうですが、3年の頃にそれが終わり、拠りどころを失くして大学を中退。
そのころ、偶然見つけた東放学園専門学校の新聞記事をきっかけに同校放送芸術科に入学し、放送業界に入ります。
東放学園を卒業後、映像制作会社でTV番組のディレクターとして働きはじめます。
その後、CMやPVを手がけ、オムニバス映画『バカヤロー! 私、怒ってます』(1988)の一編『英語がなんだ」で映画監督デビュー。
『![ai-ou]」(1991)で初めて長編映画を監督しました。
TVドラマシリーズ「金田一少年の事件簿」(1995~97)、『ケイゾク』(99)、『池袋ウエストゲートパーク』『トリック』(ともに2000)などで、独特のユーモアと映像センスでファンを獲得し、劇場版も監督。
映画『明日の記憶』(2005)では、若年性アルツハイマーというシリアスな題材を描き、日本アカデミー賞の優秀作品賞を受賞。
その後も、実写版『20世紀少年』3部作(2008、2009)や『BECK』(2010)、『はやぶさ HAYABUSA』(2011)など話題作を監督します。
『ケイゾク』と同一世界観で展開されるTVドラマ『SPEC』(2010)とその劇場版『SPEC 天』(2012)も大ヒット。
2015年に『天空の蜂』『イニシエーション・ラブ』の異なるタイプのエンタメ作品2作を手がけた手腕が評価され第40回報知映画賞監督賞を受賞しました。
映像作品のほか、舞台演出も行っています。
堤ワールド全開の映画
カットの多用、小ネタやパロディがちりばめられ、観客をくすぐり続ける堤ワールド。
“堤色”が強い作品としては、『ケイゾク』『TRICK』『SPEC』あたりが挙げられます。
いずれもドラマから映画化したヒット作で、最後に「ク」がつくのが共通点です。
その中から『トリック劇場版』と『劇場版 SPEC〜天〜』をご紹介します。
『トリック劇場版』(2002)
映画『トリック劇場版』の作品情報
【キャスト】
仲間由紀恵、阿部寛、生瀬勝久、山下真司、芳本美代子、竹中直人、ベンガル、石橋蓮司、伊武雅刀、野際陽子
【作品概要】
テレビ朝日系金曜ナイトドラマ枠史上最高のヒット作となった人気TVシリーズの劇場版。
自称売れっ子天才奇術師奈緒子と、天才物理学者上田のコンビが、超常現象を解き明かすという、シリーズの設定はそのままです。
2002年11月9日より、日劇2系他で全国拡大公開されました。
公開1週間での映画興行成績、初登場ランク1位を獲得。
4年後には、2作目の映画版となる『トリック劇場版2』(2006)が公開されています。
映画『トリック劇場版』あらすじ
300年に一度、大きな災いに見舞われるという言い伝えのある村。
無名の売れないマジシャンである奈緒子なら村民にバレないという理由で、「神様を演じて欲しい」と頼まれ大金を渡されます。
しかしそこにはすでに自ら神だと名乗る3人の男がいました。
彼らは神なのか、それともトリックなのか?
『劇場版 SPEC〜天〜』(2012)
映画『劇場版 SPEC〜天〜』の作品情報
【キャスト】
戸田恵梨香、加瀬亮、福田沙紀、でんでん、岡田浩暉、松澤一之、載寧龍二、有村架純、麿赤兒、三浦貴大、利重剛、伊藤淳史、栗山千明、浅野ゆう子、神木隆之介、椎名桔平、竜雷太、戸田恵子、山寺宏一、カルーセル麻紀、野添義弘、河原さぶ、藤田秀世、森山樹、平田広明、たんぽぽおさむ、久松信美、向井理
【作品概要】
戸田恵梨香と加瀬亮の主演で、未解決事件の捜査のため公安部に設立された「未詳事件特別対策係」=通称「未詳(ミショウ)」の捜査員が、特殊能力(SPEC)を持った犯人と対決する姿を描いた人気ドラマ『SPEC 警視庁公安部公安五課未詳事件特別対策係事件簿』の劇場版。
テレビシリーズの続編にあたる作品でもあります。
公開初週の週末2日間で35万1473人を動員し、興収4億6870万5300円を記録して興行成績ランキング初登場第1位となり、最終興行収入23.9億円を記録するヒット作となります。
2013年には『劇場版 SPEC〜結〜』が2部作として連続公開されました。
映画『劇場版 SPEC〜天〜』あらすじ
未詳の特別捜査官・当麻紗綾と瀬文焚流のもとにある日、謎めいたミイラ死体殺人事件の報せがもたらされます。
その事件はやがて国家を揺るがす事態へと発展していき…。
舞台を映像化した映画
映像演出だけでなく、積極的に舞台の演出も務める堤幸彦監督。
そんな彼が監督した、舞台作品を原作とした映画をご紹介します。
『くちづけ』(2013)
映画『くちづけ』の作品情報
【キャスト】
貫地谷しほり、竹中直人、宅間孝行、田畑智子、橋本愛、岡本麗、嶋田久作、麻生祐未、平田満、宮根誠司、伊藤高史、谷川功、屋良学、尾畑美依奈、万田祐介
【作品概要】
劇作家で俳優の宅間孝行が主催し、2012年をもって解散した劇団『東京セレソンデラックス』の名作舞台を、デビュー11年目にして映画初主演となる貫地谷しほりにより映画化されました。
知的障害者のグループホームを舞台に繰り広げられる仲間たちの温かな交流と父と娘の愛を描いたヒューマンドラマで、『東京セレソンデラックス』での上演は「舞台史上一番泣ける」との話題を呼び、小劇場公演ながら2万4000人の観客動員を記録。
物語は宅間が執筆の10年以上前に新聞の片隅で見つけた小さな事件記事をモチーフにし、埼玉県本庄市を舞台にして作られています。
映画『くちづけ』あらすじ
知的障害のため、心は7歳児のままの女性マコは、元人気漫画家の父親いっぽんに連れられ、知的障害者の自立支援グループホーム「ひまわり荘」にやってきました。
無邪気で陽気な住人たちに囲まれ、のびのびと日々を送るマコは、そこで出会った男性うーやんにも心を開いていきます。
ようやく見つけた理想の場所で娘が幸せになれば、いっぽんも漫画家として復帰できるかと思われましたが、やがてひまわり荘の一同に厳しい運命がふりかかり…。
『真田十勇士』(2016)
映画『真田十勇士』の作品情報
【キャスト】
中村勘九郎、松坂桃李、大島優子、永山絢斗、高橋光臣、駿河太郎、村井良大、荒井敦史、望月歩、青木健、石垣佑磨、加藤和樹、伊武雅刀、佐藤二朗、野添義弘、松平健、大竹しのぶ、加藤雅也
【作品概要】
堤幸彦監督と中村勘九郎がタッグを組んで大ヒットを記録した2014年の舞台『真田十勇士』を映画化。
真田十勇士を題材とした舞台作品は古くから数多く上演されてきましたが、本作はマキノノゾミの脚本で、2016年の舞台再演と映画の公開が同時期に行われました。
才蔵役を松坂桃李が舞台版に続いて演じるほか、佐助と才蔵の幼なじみでありながら彼らの命を狙う女忍び・火垂役で大島優子が本格時代劇に初挑戦します。
映画『真田十勇士』あらすじ
関ヶ原の戦いから10年後。
真田幸村は天下の名将としてその名を世に轟かせましたが、実際の幸村は奇跡的に運に恵まれ続けただけの腰抜け男で、自分の虚像と実像の差に悩んでいます。
そんなある日、幸村は抜け忍の猿飛佐助と出会います。
自分の嘘とハッタリで幸村を本物の天下一の武将に仕立てあげることを決意した佐助は、同じく抜け忍の霧隠才蔵ら9人の仲間を集め、「真田十勇士」を結成。
亡き秀吉の遺志を継いで、豊臣家復権を狙う淀殿に呼び寄せられた幸村と十勇士は、瞬く間に徳川との戦いの最前線に立つことになってしまい…。
人気小説を原作とした映画
堤幸彦監督は、漫画や小説を原作とした映画も数多く撮っています。
監督ならではの“漫画的”なはっきりとしたキャラクター作りや、細かなカット割りは、原作モノの映像化にぴたりとはまります。
『イニシエーション・ラブ』(2015)
映画『イニシエーション・ラブ』の作品情報
【キャスト】
松田翔太、前田敦子、木村文乃、三浦貴大、前野朋哉、森岡龍、矢野聖人、藤原季節、吉谷彩子、松浦雅、八重樫琴美、大西礼芳、佐藤玲、山西惇、木梨憲武、手塚理美、片岡鶴太郎、池上幸平、森田甘路
【作品概要】
松田翔太と前田敦子の共演で、乾くるみの人気小説を映画化。
原作は、最後の2行に仕掛けられたどんでん返しが評判を呼び、発表から10年以上を経て130万部を超えるベストセラーになった話題作。
映画は、1980年代後半の静岡を舞台に、「Side-A」、「Side-B」という2つの物語が並行しながら、原作とは異なるエンディングを迎えます。
映画『イニシエーション・ラブ』あらすじ
Side-A
奥手で恋愛経験のない大学生・鈴木が、合コンで知り合った女性マユとの日々を通して変化していく姿を描きます。
Side-B
就職先の会社で東京本社に転勤することになった鈴木がマユを置いて上京し、本社の同僚・美弥子との出会いで心が揺れ…。
『人魚の眠る家』(2018)
映画『人魚の眠る家』の作品情報
【キャスト】
篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加、田中哲司、田中泯、松坂慶子
【作品概要】
発売から1か月で発行部数27万部を記録した東野圭吾のベストセラー小説を原作にしたヒューマンミステリー映画です。
愛する子供に訪れた“脳死”という悲劇に直面し、究極の選択を迫られた夫婦を、初共演の篠原涼子と西島秀俊が真に迫った演技で観客の心を震わせます。
映画『人魚の眠る家』あらすじ
2人の子どもを持つ薫子とIT機器メーカーを経営する夫・和昌は現在別居中で、娘・瑞穂の小学校受験が終わったら離婚することになっていました。
そんなある日、瑞穂がプールで溺れ、意識不明の状態に陥ってしまいます。
回復の見込みがないと診断され、このまま生かし続けるか、死を選ぶか、究極の選択を迫られた夫婦。
悩み抜いた末に、和昌の会社の最先端技術を駆使し前例のない延命治療を開始することにしました。
ただ眠っているかのような美しい姿を取り戻した瑞穂の姿を見て、次第に薫子の行動は次第にエスカレートしていきますが…。
まとめ
日本を代表する鬼才、堤幸彦監督。
TV制作で培った独特のカット割りやキャラクター造形に人気があります。
また、近年は社会派ドラマの映画作品も数多く手がけ、新たなファンを獲得しています。
そんな堤幸彦監督の“トリック”満載の新作映画『十二人の死にたい子どもたち』は2019年1月25日(金)ロードショーです。
4番と13人目の“子ども”役が誰かと予想して盛り上がっている時点で、既に堤幸彦監督の手の内なのかもしれません。