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【ネタバレ】片思い世界|あらすじ感想と結末評価レビュー。横浜流星(相手役)らと広瀬すず×杉咲花×清原果那で描く‟届けたい思い”つなぐ物語

  • Writer :
  • 星野しげみ

広瀬すず×杉咲花×清原果耶のトリプル主演作!

花束みたいな恋をした』(2021)の脚本・坂元裕二と監督・土井裕泰が再びタッグを組んだ映画『片思い世界』

広瀬すず、杉咲花、清原果耶を主演に迎え、強い絆で結ばれた3人の女性が織りなす日常と究極の“片思い”を、オリジナル脚本で描きだします。

家族でも同級生でもない3人の少女が強い絆で結ばれている理由とは? そして3人が片思いを届けようとする相手とは? 

3人の共同生活にまつわる事件から12年が経ち、現在ごく普通の毎日を過ごす彼女たちですが……。

映画『片思い世界』をネタバレありでご紹介します。

映画『片思い世界』の作品情報


(C)2025『片思い世界』製作委員会

【日本公開】
2025年(日本映画)

【監督】
土井裕泰

【脚本】
坂元裕二

【プロデユーサー】
土井智生、伊達真人

【キャスト】
広瀬すず、杉咲花、清原果耶、横浜流星、小野花梨、伊島空、moonriders、田口トモロヲ、西田尚美

【作品概要】
花束みたいな恋をした』(2021)の脚本・坂元裕二と監督・土井裕泰が再タッグを組んだ作品。広瀬すず、杉咲花、清原果耶という人気・実力ともにトップレベルの俳優たちが、主役の3人を演じます。

3人と同じ記憶を胸に秘める青年・高杉典真を横浜流星が演じ、小野花梨、伊島空、ロックバンド「moonriders」、田口トモロヲ、西田尚美が共演します。

映画『片思い世界』のあらすじとネタバレ


(C)2025『片思い世界』製作委員会

ある町にあった合唱団でのこと。雪のある日、合唱団のコンクールを翌日に控える中、レッスン室で10歳の相楽美咲は音楽劇の脚本を書いていました。

友人の高杉典真がそばでピアノの練習をしていましたが、美咲が「できた」と振り返ると、その姿は消えていました。

美咲は典真を探しに行こうとしますが、そこへ他の生徒たちがやって来ました。写真を撮ろうという友人の言葉に、いまだ姿を見せない典真を気遣いながら、美咲は片石優花・阿澄さくらとともに記念写真に納まります。

ですが……悲劇はその後に起こりました。

それから12年の月日が経ちました。すっかり大人になったさくらが雑踏を抜けて、古い一軒家に帰宅しました。

ドアを開けると、美咲と優花が何やらバタバタしています。どうやらさくらの20歳の誕生日祝いをサプライズで祝おうとしたのですが、さくらにバレてしまい失敗しました。

リビングには、あの時の合唱団の記念写真が飾ってあります。家族でも同級生でもない3人ですが、今は共同生活をしていました。

3人の毎日はにぎやかに始まります。朝目が覚めると、美咲は仕事、優花は大学、さくらはアルバイトへ毎日出かけていき、帰ってきたら3人で一緒に晩ごはんを食べます。

リビングでおしゃべりをして、同じ寝室で眠り、朝になったら一緒に歯磨きをします。どこにでもあるような日常生活を、3人で送っています。

そんなある日、美咲とさくらは通勤バスの中で、寝ぐせ頭の精気のない男性を見かけます。美咲がその彼をいつもじっと見つめていることに気が付いたさくらは、彼への告白を勧めるのですが、美咲は「できるわけがない」と消極的です。

そんな時、彼が女性とデートをすることを知ったさくらは、美咲をつれて彼を尾行し、クラシックコンサートの会場へ行きました。会場内で相手の女性が二股をかけていると知ったさくらは、大怒り。会場の中で大声でその事実を叫ぶのですが、誰も何の反応もしません。

実は、美咲、優花、さくらの3人は“幽霊”でした。12年前、合唱団の練習であの記念写真を撮った後に、不審者の増崎要平が乱入し、刺殺されたのです。

被害者は彼女たち3人だけで、担架で運ばれる自分たちの姿を見てしまいます。

彼女たちは死んでしまったというのに、生きている時と同じように食べて歌っておしゃべりして、12年経った今は、身長もぐんと伸びて成長しています。

ですが、彼女たちにはお互いが見えても、普通の人々には彼女たちは見えません。声も聞こえません。空気とおなじような存在になってしまっていたのです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『片思い世界』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『片思い世界』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2025『片思い世界』製作委員会

美咲がバスの中の男性のことを気にかけている頃、優花は大学の帰りに花屋で働く自分の母親を見つけました。

こっそりと母の後をつけて、傍にいる優花。小さかった頃の思い出が胸をよぎり、懐かしさでいっぱいになりました。

大学で勉強する優花は、科学的に幽霊が現実社会に復帰できる可能性があると知り、その研究者である津永悠木を探し求めます。探し当てた彼はラジオのパーソナリティをしていましたが、その番組は架空のもので、彼自身も一度死んで現世にもどった者だと言います。

3人へ彼からラジオを通して、元の世界へ戻りたければ、その世界に生きている人に思いを届けて心が通じ合い、告げられた一定の期限までに、指定した場所へ行って報告するように言われました。

“思いを届ける人”とは、誰のことだろう……優花は母を思います。バスで見かける男性は典真だと理解している美咲は、当然彼を思います。そして、さくらにもそんな人がいると言うのです。

優花は一生懸命に母へ自分の存在をアピールしようとしますが、すでに再婚して小さな女の子がいることを知り、自分は忘れられたのではないかと不安になりました。

美咲は12年前の事件の時、典真が自分のために肉まんを買いにコンビニへ行って助かったことを知っていました。典真があの事件以来、ショックでピアノをやめていたのを知り、残念に思います。

そんな頃、合唱団の責任者から典真に「今度のコンクールで合唱団のピアノ演奏をしてくれないか」と依頼がきますが、典真は断ります。美咲は秘かに、コンクールに優花とさくらと一緒に出ようと決心しました。

一方のさくらは、自分たちを殺した増崎要平が刑期を終え、出所したことを知っていました。さくらは増崎に思いを届けようと、彼が働く工事現場へ行って彼のことを確認しました。

家へ帰り、美咲と優花に話すさくら。「あの人と会ってこわくなかったの」と聞く美咲に、「会ってなぜ私が殺されなければならなかったのか、聞きたいの」と、さくらは泣きながら言いました。

3人でもう一度増崎が働いている現場へ行くと、優花の母が増崎と話しているところでした。

優花のことを想う母の気持ちを伝えているのですが、増崎には通じません。最後に「なぜ殺したの?」と優花の母に聞かれても、何も言わずに帰ろうとします。

話がこじれた増崎は、優花の母がとりだした包丁で、逆に優花の母を刺そうとします。美咲たちは一生懸命に「逃げて」と優花の母を庇います。

大通りに出た所で、優花の母を追いかけて飛び出した増崎は、車にひかれて死んでしまいました。

優花の母と心が通じ合ったと思った美咲たちは、指定された場所に時間通りに行きますが……自分たちの身には、何の変化もありませんでした。

騙されたような気分で帰宅した美咲たちには、以前と同じような日常が待っていました。そして、美咲は通りを歩く典真を見かけ、彼の後を追いました。

典真は合唱団の責任者に、ピアノを弾くことはやっぱりできないと断りに来たのですが、レッスン室で昔弾いていたピアノを見て、ポツリポツリと弾き始めます。

傍には、美咲が書いていた音楽劇の脚本があの日のまま、置かれていました。典真はそれを見つけ、読み始めます。美咲もそばに寄って、一緒に読み始めました。

物語のラストで、こらえきれずに涙する2人。典真はそこに美咲がいるかのように抱きしめます。幽霊の美咲は典真の胸の中にいたのですが、やはり彼には見えませんでした。

その後、美咲・優花・さくらの3人は合唱コンクール用の衣装を作ったり、練習を始めました。コンクール当日、人が変わったかのような明るい表情の典真が、合唱曲『声は風』を弾き、幽霊娘3人の歌声が花を添えました。

コンクールが終わった後、美咲たちの古い家は新たな買い手が見つかったため、3人は引っ越しを余儀なくされます。

「どこへ行こうか」「海の傍がいい」「湖もいいね」

華やかで賑やかな3人の笑い声が、いつまでも聞こえています。

映画『片思い世界』の感想と評価


(C)2025『片思い世界』製作委員会

タイトルが示す“片思い”とは

10歳前後で死んだ少女たちも12年経てば、成人女性です。「片思い」というタイトルから恋愛だけの物語かと思いがちですが、そうではありませんでした。3人それぞれが選ぶ‟思いを届ける相手”が、とても深い意味を持っています

優花が選んだのは、実の母。これは家族を思えば当然のことですが、再婚もして子どももいる現在の母の姿を見て、優花は言い知れぬ寂しさを味わいました。

美咲が選ぶのは、やはり高杉典真。ですが、あの事件の心の傷を持ち続ける彼は日常生活を過ごすのがやっとの状態で、美咲の存在には気が付きません。ラスト近くでやっと心が触れ合ったようなシーンがあるのですが、思いが届いたかどうかはわからないままです。

さくらは、自分たちを殺した犯人・増崎を選びました。「なぜ自分を殺したのか」と面と向かって聞きたいと言うのです。

自分は殺されるようなことはしていないのに、なぜ死ななければならなかったのか。大粒の涙を流して訴える彼女の姿に胸を打たれます。

恋愛感情はもちろん、聞きたいこと、親への愛情など、どうしても伝えたい自分の思いが、思うように相手に伝わらないもどかしい‟片思い”

ですが、そんな‟片思い”を胸に秘めていると、いつかそれが叶うのではないかという希望がわいてきます

本作も片思いが叶うハッピーエンドではないのですが、とてもポジティブで元気の出るラストになっていて、ホッとしました。

奇跡のトリプル主演が実現


(C)2025『片思い世界』製作委員会

本作の企画は、脚本家・坂元裕二の「広瀬すずさん、杉咲花さん、清原果耶さんの3人で、お話を作れないかな」という一言で始まったと言います。

坂元裕二が再びタッグを組んだのは、ともに大ヒット映画『花束みたいな恋をした』(2021)を世に送り出した土井裕泰監督でした。

人気・実力ともに国民的俳優のトップを牽引する広瀬すず、杉咲花、清原果耶の奇跡のようなトリプル主演の実現に加えて、人気絶頂の横浜流星も起用しました。

ピアニストの卵である高杉典真を演じる横浜流星は、ピアノを一所懸命に練習したと言います。心を込めて弾くピアノに注目です。

コンクールでは、合唱曲『声は風』が流れ、主役の3人娘も声を揃えて歌います。生き生きと楽しそうに声高らかに……。

事件に巻き込まれ、別の世界の住人となった主人公たちが、伝えたい思いを歌にして精一杯伝えようとしている姿に、胸が熱くなることでしょう

まとめ


(C)2025『片思い世界』製作委員会

広瀬すず、杉咲花、清原果耶が奇跡のトリプル主演を果たした『片思い世界』をご紹介しました。

この世界でもう一度繋がりたい相手を見つけることになった3人。思うようにことは運びませんが、3人でいることの大切さを知り、「3人一緒で良かったね」という結論になります

土井裕泰監督と脚本家坂元裕二がタッグを組んだオリジナル作品ですが、本当に日本のどこかで美咲たちが楽しく暮らしているように思えます。彼女たちが幸せでありますように。



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