中川駿監督作品『カランコエの花』
2018年の米アカデミー賞にノミネートされた『君の名前で僕を呼んで』『レディバード』、外国語映画賞を制した『ナチュラルウーマン』など、LGBTを扱った映画が普通にラインナップに並ぶようになり、さらにそのことを強く語られることなく他の映画と並んで語られている。
元祖英国美青年映画『モーリス』が、4Kでデジタルリマスターされて公開もされた。
デジタルリマスター版が公開された『モーリス』
きっかけは『ブロークバック・マウンテン』
どうしても際どい扱いをされがちなテーマの作品群がそういった色眼鏡で見られなくなったきっかけは、アン・リー監督の2005年の『ブロークバック・マウンテン』。
監督賞を含むオスカー三部門を受賞した。
この一件が大きく流れを変えて、LGBTのテーマであることが何か特殊なテーマではなく、物語を構成する一要素であると捉えられるようになった。
その後、実在のゲイの男性としてはじめてアメリカの公職に就いたハーヴェイ・ミルクを描いた『ミルク』(2008)や『キャロル』(2015)、『リリーのすべて』(2015)そして『ムーンライト』(2016)が続く。
アジア圏でも、1997年公開のウォン・カーワイの『ブエノスアイレス』があったものの、やはり、しっかりとテーマに扱われるようになったのは、近年の出来事で2017年公開の『彼らが本気で編むときは』や同年の『お嬢さん』などが登場した。
この普及のスピードが遅いと感じるか、早いと感じるかは、意見が分かれるところですが、黒人映画のハリウッドの普及、立ち位置の確立の歴史を考えるとこのスピード感は早いと思っていいのでは?
意外な形のLGBT映画『カランコエの花』
7月14日から公開の『カランコエの花』は、それらの映画の流れの中で、視点を変えた作品となっている。
今作のメインの登場人物はLGBTの当事者ではなく、それを囲む周囲の人々の姿を描いている。
メインキャストは今田美桜、石本径代、永瀬千裕、手島実憂、有佐、堀春菜などの若手女優が揃った。
この新しい視点とリアルな展開が評価され、2018年の現在、多くの映画祭で高い評価を受けている。
誰もが、めぐり合うであろう、状況を描いた物語。必見の一本。
映画『カランコエの花』のあらすじ
ある高校の2年生のクラスでは、この日、唐突に「LGBTについて」の授業が始まりました。
しかし、他のクラスではその授業は行われておらず、なぜこのクラスだけ?という思いが、生徒たちの好奇心に火をつけます。
「うちのクラスにLGBTの人がいるんじゃないか?」
生徒たちの日常は、まるで犯人探しのように波紋が広がるなか、年頃ならではの心の葛藤が起こした行動とは…。
まとめ
2018年の今、世界的に映画のひとつの題材に欠かす事ができなくなったLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの略称)。
中川駿監督の本作は、レインボー・リール東京グランプリ(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)のグランプリほか、映画祭賞のレース席巻し、5冠を含む計10冠受賞作品です。