三浦春馬が五代友厚に扮する『天外者』は2020年12月11日(金)全国ロードショー。
映画『天外者』は、故三浦春馬の主演作として最後の作品となる映画です。近代日本経済の基礎を構築し希代の“天外者(てんがらもん)=すさまじい才能の持ち主”と称された偉人・五代友厚の人生を描いた歴史群像劇。
監督は時代モノに定評のある田中光敏。激動の幕末を長崎に拠点を築いたイギリスの商人トーマス・グラバー視点から見つめています。
主演は三浦春馬、共演に三浦翔平や西川貴教、そして榎本孝明や内田朝陽といったベテラン陣も結集しました。
映画『天外者』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【脚本】
小松江里子
【監督】
田中光敏
【キャスト】
三浦春馬、三浦翔平、西川貴教、森永悠希、森川葵、迫田孝也、宅間孝行、丸山智己、徳重聡、榎木孝明、筒井真理子、内田朝陽、八木優希、ロバート・アンダーソン、かたせ梨乃、蓮佛美沙子、生瀬勝久
【作品概要】
明治初期の実業家五代友厚の生涯を描いたドラマ。五代友厚役に三浦春馬。共演に三浦翔平、西川貴教、森永悠希、森川葵、蓮佛美沙子など豪華なキャストが揃いました。
監督は『利休にたずねよ』(2013)『海難1980』(2015)など時代モノに定評のある田中光敏が務めています。
映画『天外者』のあらすじとネタバレ
黒船襲来により、250年の鎖国時代が終わった動乱の時。
長崎の海軍伝習所に将来を嘱望される一人の若者がいました。薩摩藩の五代才助、後の五代友厚です。
彼は、薩摩藩主島津斉彬や島津久光、彼らに取り立てられた大久保利通や西郷隆盛に加え、伝習所を仕切る勝海舟からも認められる才覚を発揮していました。
そんな長崎で、才助は土佐出身の志士・坂本龍馬、岩崎弥太郎、長州藩の伊藤博文と知り合い、友情を深めます。
その一方で、遊女のはると出会います。文字を学び、広い世界を見たいというはるに、いつか自分が世界を見せてみせると才助は誓います。
しかし、激動の時代の波は才助たちを翻弄。一年の長崎留学を経て帰国した開国主義であるということで、藩内でも命を狙われます。
それでも才助は上海に渡り、蒸気船を購入し、薩摩藩の軍備を増強させます。ところが、その頃、薩摩藩士がイギリス人を殺傷した“生麦事件”が起きてしまいます。
この事件はやがて薩英戦争へと繋がります。圧倒的なイギリスの軍備に翻弄される薩摩藩。才助は捕虜となってしまいます。そんな彼を救ったのは、イギリス人に見受けされたはるでした。
大きな希望を胸に抱き、野心的な発言を繰り返してきた才助ですが、実際には何もできない井の中の蛙だったこと突き付けられます。
心を入れ替えた才助はイギリス商人グラバーの支援を受けて英国留学に向かいました。
一方、坂本龍馬と岩崎弥太郎は海援隊を結成し、伊藤博文は倒幕運動に身を投じていきます。
約2年の留学を経て帰国の途に就いた才助の基に龍馬が暗殺されたという一報が届きました。
亡き友を思い涙を流す才助は、友と誓った”世界と互角に渡り合う日本を創り上げること”を改めて思い起こします。そして大政奉還、明治維新が始まりました。
映画『天外者』の感想と評価
まずはなんといっても、三浦春馬の主演作品としては最後の映画というだけでも、映画『天外者』は一見の価値はあります。
三浦春馬は日本の“ビジネスマン”の始めといわれる五代友厚の約50年間を情熱的に演じきっていました。
五代友厚といえば、朝の連続テレビ小説『あさが来た』でディーン・フジオカが演じて、大きな人気を集めたことも記憶に残っている方もいるのではないでしょうか?
映画『天外者』は、幕末に薩摩藩のホープとしてキャリアをスタートさせて、イギリス留学、明治維新に加わり、後に大阪を拠点に実業家として活躍するという生涯を、時代を彩った実在の人物たちを絡めながら描かれています。
また、多くの志士のスポンサーとして知られる英国商人トーマス・グラバーが物語の語り部となっているのも面白いところでしょう。
三浦春馬と共にW三浦と言われて本作に参加しているのが三浦翔平。三浦春馬の遺作となったテレビドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』でも三浦春馬と共演しています。
本作で2人は、幕末に大志を抱き新たな日本を目指す五代友厚と坂本龍馬を好演しています。
プライベートでも親しかったという2人の関係性がそのまま役どころに反映されていて、2人にしか出せない距離感を生み出しています。
伊藤博文を演じた森永悠希は、今までも『ちはやふる』(2016)や『あさひなぐ』(2017)などで若きバイプレイヤーとして活躍してきましたが、本作でもいい味を出しています。
また、T.M.Revolutionこと西川貴教が岩崎弥太郎役で登場。50歳になる彼ですが、持ち前の明るさと若々しさで、メインキャストと絡んでも年齢的な違和感はありません。
共演者でいえば前半と後半、それぞれで五代友厚を支えるヒロインを演じる森川葵と蓮佛美沙子の好演も印象に残ります。
森川葵が演じる遊女のはるのエピソードは、ほぼ創作ですが、まだ理想だけに生きていた五代友厚の無邪気さを引き出す役目をしています。
そして、過剰なまでに自信家だった友厚の鼻をへし折り、井の中の蛙だったことを突きつける存在となっています。
明治維新後に五代友厚の妻となる豊子を演じる蓮佛美沙子は、実業家としてビジネスの道に殉じることを決めた夫を、献身的に支える役でした。
まとめ
2021年のNHK大河ドラマは、五代友厚や岩崎弥太郎と共に明治最初期の実業家として知られる渋沢栄一を主人公にした『晴天を衝け』です。偶然にも同じ視点から幕末を描く物語が描かれることでしょう。
映画『天外者』は『晴天を衝け』の予習にもピッタリかもしれません。
敢えて注文を付ければ、上映時間が109分ということもあって、少し駆け足気味で物事がダイジェスト的になってしまっています。あと10分長くてもよかったのではないかという気がします。
ただ、幕末の諸々のエピソードや人物に関してはある程度知られていることを前提にして、ザックリと説明を省いているところはなかなか潔い演出でした。