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映画『マイ・サンシャイン』あらすじネタバレと感想。ハル・ベリー&ダニエル・クレイグ出演作のタイトルに込められた意味とは

  • Writer :
  • 福山京子

映画『マイ・サンシャイン』は、アメリカ史に刻まれるLA暴動の最中にある、市井に住む普通の家族の生活を描きます。

「007」シリーズでボンドガールを務めたハル・ベリーと、ジェームズ・ボンド役で知られるダニエル・クレイグ。

いつまでも母親役でも可愛いらしいハル・ベリー、そしてダニエル・クレイグはニヒルながらも深い眼差しで、その家族と実在の暴動を見つめる、真実から生まれた物語です。

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映画『マイ・サンシャイン』の作品情報

 
(C)2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES
【公開】
2018年(フランス・ベルギー合作映画)

【原題】
Kings

【脚本・監督】
デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン

【キャスト】
ハル・ペリー、ダニエル・クレイグ、ラマー・ジョンソン、カーラン・ウォーカー、レイチェル・ヒルソン
【作品概要】
ミリーに扮するのは「チョコレート」(2001年)でオスカーを獲得した後も話題作に出演し、美貌と実力を兼ね備えた女優ハル・ベリー。

そして口は悪いが温かく見守る隣人オビーには「007」シリーズのジェームズ・ボンド役でお馴染みのダニエル・クレイグ。

このふたりのスターが奇跡的な競演を果たしました。

また本作は、デビュー作『裸足の季節』(2015年)が世界で熱狂的に迎えられ、アカデミー賞(R)外国語映画賞にノミネートされたデニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの監督最新作です。

監督がシナリオハンティングで訪れたサウスセントラルで何人もの子供たちをホストマザーとして育てている女性ミリーと出会ったことから、アメリカ史に刻まれるLA暴動を、暴動主体ではなく、普通の家族の視点から描くというアイデアが生まれました。

映画『マイ・サンシャイン』のあらすじとネタバレ


(C)2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES

1991年のロサンゼルス、サウスセントラル、夜。

アフリカ系の少女が1人で歩いています。

横にある食料品店に入り、オレンジジュースを手に取ります。

韓国系の女店主が万引きと思い込み、その少女を射殺します。

少女の名はラターシャ・ハーリンズ。

この事件は「ラターシャ・ハーリンス射殺事件」として、ロサンゼルスの街のアフリカ系住民を震撼させます。

アフリカ系のミリーは、様々な事情で家族と暮らせない8人の子ども達と共に暮らしていました。

貧しいながらも、ミリーはケーキを焼き宅配する仕事で子ども達を育て、子ども達もミリーの愛情のおかげで居場所を見つけ、笑顔が絶えない日々送っていました。

ある朝ミリーがテレビのニュースを観ながら、子ども達を起こしています。

ニュースでは「ラターシャ・ハーリンス射殺事件」の起こる2週間前に26歳のアフリカ系ロドニー・キングがスピード違反でLA市警に追跡され警官数人に殴打されるという事件が起こり、一般市民がその様子を撮影した暴行映像が放映されていました。

更に「ラターシャ・ハーリンス射殺事件」の女店主トゥ・スンジャは、執行猶予付きで500ドルの罰金で釈放されたニュースが流れます。

子ども達は、テレビを観ながら呆然としています。

外では、あちこちで暴徒化した喧騒が聞こえ、隣人の白人オビーが騒ぐグループに向かって叫んでいます。

オビーは、毎日にぎやかなミリーの家に文句を言いながらも、そんな家族の日常を何気なく見守っていました。

ある日ミリーは、母親が逮捕され行き場を失った少年ウィリアムを保護し、家に連れて帰ります。

ミリーの代わりに兄弟の面倒を見ている真面目な少年ジェシーは、ウィリアムがすぐにキレたり相手に手を出すのが心配でしたが、ウィリアムは少しずつ子ども達と仲良くなっていきます。

ジェシーは、学校で白人の女教師と言い合う同級生のアフリカ系ニコールを心配しながらも見つめています。

ある夜、ジェシーは男達に囲まれているニコールを見つけ、彼女を救い出します。

ニコールも家を失い、ウィスキーを飲んで泥酔状態でした。

ジェシーは彼女を知り合いの無人のアパートに連れていき、眠りにつく彼女と目が合い、ジェシーは優しく微笑みを返します。

一方のミリーはケーキの配達中に、知り合いの少年が不当に警察に扱われている姿を見て、母親と共に止めに入ります。

「ロドニー・キング事件」の判決が長引き、アフリカ系の住民が多く暮らすこのサウスセントラルは、既にあちこちで白人による理不尽な暴行が行われ、ミリーもついに手錠をかけられたままパトカーに乗せられます。

パトカー内では、もう1人の捕まった男が紙をライターで燃やしていて、それを知った警官は、ミリーを外に出します。

手錠をしたまま彷徨うミリーを、通りかかったオビーが偶然見つけ車に乗せ、広場で手錠をハンマーで潰し、2人で家に帰ります。

子ども達もオビーと仲良くなり、ミリーはそんなオビーに心惹かれていきます。

ある朝、食べるものがなく、ウィリアムが子ども達を連れて、食料品店で大量に万引きをして帰ってきます。

万引きした食料やお菓子を子ども達が嬉しそうに食べています。

ある日、ジェシーがニコールのアパートに行くと、部屋のドアが閉じられウィリアムと2人でいることを知り、ジェシーの表情が曇ります。

1992年4月「ロドニー・キング事件」の公判で、集団暴行をした4人の警官に無罪の評決が出ます。

「ラターシャ・ハーリンス射殺事件」に続き、アフリカ系住民が犠牲になった「ロドニー・キング事件」への不当な判決に街の怒りは沸点に達しました。

白人と韓国系商店を標的とした「LA暴動」が勃発します。

以下、『マイ・サンシャイン』ネタバレ・結末の記載がございます。『マイ・サンシャイン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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ウィリアムとニコールは、暴動に加わろうとするグループと共に警察署に火を放ち、逃げ惑います。

ジェシーはウィリアムを止めようと夜道を追いかけます。

暴動で何処も殺気立つ中、ジェシーは落ちていたガラスの破片を拾い、咄嗟にウィリアムの腹部を刺してしまいます。

出血が止まらない傷口を見てニコールがパニックになり、泣きながら素手で止血します。

我に帰ったジェシーは、公衆電話で救急車を何度も呼びますが、全て警察の要請がないからと断られます。

ジェシーは、何とかしようと路上に乗り捨ててあった車に乗り込み、エンジンを掛けました。

2人でウィリアムを車内に運び、暴徒化した街を抜け病院を探します。

一方ミリーの子ども達は、テレビで暴動の殺気立つ映像と食料品を住民が奪っているシーンに刺激され、街へ飛び出して略奪を始めます。

家に戻ったミリーとオビーは、子ども達を探しつつテレビを見ていると、街の韓国系商店が次々と商品を奪われる映像にミリーの子ども達が映され、愕然とします。

すぐにミリーとオビーは、子ども達を助けに車で向かいます。

やっと店の前で子ども達を保護した途端、2人も略奪した暴徒だと決めつけられ、警察に銃を向けられます。

子ども達は車の中で隠れる一方、ミリーとオビーは店の前の照明スタンドに手錠で繋げられます。

2人は何とかして手錠を外そうと考え、ジーンズを脱いで編んだ紐をスタンドに括り付け、オビーが上までよじ登り手錠を外します。

2人は車で子どもを連れて家に戻ると、そこにジェシーが乗っている車があることを見つけます。

恐る恐るミリーがドアを開けると、息を引き取ったウィリアムを抱きしめるニコールの姿がそこにありました。

ジェシーの瞳は虚ろなまま生気を失っていました。

ミリーは、ジェシーとニコールの手を握ります。

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映画『マイ・サンシャイン』の感想と評価


(C)2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES
 本作の冒頭では、少女の射殺される衝撃的な映像から一転して、母親らしき女性が子ども達に1人ずつ優しく声を掛け、足元にキスをしながら朝の挨拶をしていく絵に描いたような幸せなひと時が映し出されます。

一体どういう事なのか。

ここから映像を一つ一つ追いながら、ハル・ベリー扮する子ども達の母ミリーと、これがあの「ジェームズ・ボンド」のダニエル・クレイグなのかと思わせるオビーの2人に釘付けとなります。

映画を全て観終わってから、少しずつ物語と事件、そしてその背景が繋がっていきます。

この映画を紐解くために、デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督自身の生い立ちと映画化した決意、そして実際に起こった二つの事件を紹介します。

デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督

「生後半年からずっとフランスで暮らしているにも関わらず、フランス人として扱われていません」

デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督が自分自身を語った言葉です。

彼女は現在トルコ国籍ですが、フランスの国籍申請を二度も却下され、パスポートも申請する度に尋問を受けています。

「愛している母国に拒絶される」という感情が、2005年の“パリ郊外暴動事件”を引き起こしたと断言します。

そのパリ郊外暴動事件は、本作と同じようにアフリカ系の若者が警察に追われ、死に至ったことで勃発した暴動でした。

当時思春期であった監督はLA暴動のことを聞き、この二つの暴動は全く異なった環境で起こったことですが、究極の絶望感が発端である点がまさに同じだという事実と湧き上がる強い思いが、彼女を映画化へと動かしました。

そのLA暴動を引き起こしたのは、本作で何度もニュースの映像として出てくる、実際に起こった二つの事件です。

ラターシャ・ハーリンス射殺事件

1991年3月16日、15歳のアフリカ系アメリカ人の少女ラターシャ・ハーリンスがサウスセントラルの食良品店で、韓国系女店主トゥ・スンジャにより射殺された事件です。

少女は口論の末に店を出ようとしたところ、背後から頭部を射撃されました。

11月15日に、執行猶予付き5年の懲役と400時間の社会奉仕、そして500ドルの罰金という軽い刑の判決が出されました。

この判決にサウスセントラルに怒りの声が溢れ出しました。

ロドニー・キング事件

1991年3月3日、26歳のアフリカ系アメリカ人ロドニー・キングが、スピード違反でLA市警から追跡され、警官数人に殴打された事件です。
一般市民がその様子を撮影した暴行映像は、当時世界を駆け巡りました。

1年後の4月29日陪審員による7日間の審議の末、4人の被告は無罪釈放されました。

その報道から2時間後サウスセントラルで暴動が勃発し、暴徒化した市民が韓国系商店を襲い、アメリカ各地に暴動や抗議が広がりました。


(C)2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES

この二つの事件は、映画の中でテレビのニュースとして、ミリーの家族の一家団欒の幸せなひと時を一瞬にして変貌させていきます。

ストーリーを追い続けていくには、あまりにも残酷で理不尽な出来事ばかりが起こりますが、そこに光を差し込んでくれるのが、ハル・ベリーが演じるミリーの愛情溢れる笑顔と子ども達の無邪気さです。

本作の邦題『マイ・サンシャイン』と翻訳したのも、彼女と子ども達がそのタイトルの如く眩い光を放っているからでしょう。

そして、見逃せないのが隣人の白人ビリーを演じるダニエル・クレイグ。

『007』のジェームス・ボンドをもう完全に忘れてしまうかのようにオビーに心を持って行かれます。

無骨で言葉も少なく、捉えどころのないごく普通のおじさんなのに、この映画に出でくる正直で正義感を持った愛情深い唯一の白人です。

ぶっきらぼうながらも心根の優しいオビーという存在があるからこそ、白人への憎悪だけで終わらない結末を迎えます

まとめ


(C)2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES

本作の原題は「Kings」です。

Kingsの1人はロドニー・キング事件のキングと分かりますが、デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督の思いが繋がるもう1人のキングは、1963年8月28日に行われたワシントン大行進での演説の一節、“I have a Dream”でも有名なマーティン・ルーサー・キングジュニア、あのキング牧師です。

映画に出てきたようなアフリカ系の子ども達は、この暴動を経験した後も同じような境遇の中、「夢を持って」未来へどう生きていくのでしょうか。

そのバトンを受け取るのは、本作をみる観客に委ねられます。

ハル・ベリーとダニエル・クレイグの魅力溢れる共演と、未来のバトンを受け取りに映画『マイ・サンシャイン』に会いに行きませんか。

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