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Entry 2024/11/22
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『博士の綺奏曲』あらすじ感想と評価レビュー。母国ベネズエラの澱む日常で映画監督ニコ・マンサーノが生み出した《幻想の音楽映画》

  • Writer :
  • 谷川裕美子

史上最高のベネズエラ映画『博士の綺奏曲』は2024年11月9日(土)〜渋谷シアター・イメージフォーラムで上映中!

12月6日(金)〜あつぎのえいがかんKiKi、また同発で京都シネマ&上田映劇。12月7日(土)〜第七藝術劇場、12月25日(水)〜Cine Grulla(シネ・グルージャ)で上映!

ニコ・マンサーノ監督が経済危機や大規模停電により亡命者が続出し、混乱状態に陥った2016年当時のベネズエラを背景に、5年の歳月をかけて完成させた長編監督デビュー作『博士の綺奏曲』。

人も空気も澱み続ける日常を生きる主人公が、謎の存在「ビースト」と音楽を奏で、孤高のアルバム制作に挑みます。

ロカルノ国際映画祭2023オープン・ドアに選出され、ベネズエラ映画祭では驚異の6冠に輝くなど《史上最高のベネズエラ映画》として高い評価を得た映画『博士の綺奏曲』。

澱み、濁っていく日常に抗う魂を持つ男が出会う、謎の存在「ビースト」とはいったい何者なのでしょうか。神秘的で、独特の静謐な世界観を持つ本作の魅力をご紹介します。

映画『博士の綺奏曲』の作品情報


(C)Bendita films/Cinemago

【日本公開】
2024年(ベネズエラ映画)

【監督・脚本・撮影】
ニコ・マンサーノ

【キャスト】
ヘスース・ヌネス、ガブリエル・アグエロエ、ステファニア・キハダ、アーヴィング・コロネル

【作品概要】
政治汚職や経済危機など情勢が悪化の一途をたどるベネズエラで、5年もの年月をかけて生み出されたニコ・マンサーノ監督の長編デビュー作。澱み続ける日常を生きる男が、創作の衝動とともに現れた謎の存在「ビースト」と音楽を奏で、孤高のアルバム制作を試みる姿を映し出します。

ニコ監督は『Al Pie del Volcán (火山のふもと)』をはじめ、劇中曲すべても自ら制作。カントリー、オルタナティブ・ロック調の流麗なメロディと、画面に広がるペールトーンのビジュアルによって独特の世界観を構築しています。

ロカルノ国際映画祭2023オープン・ドアへ選出され、ベネズエラ映画祭では驚異の6冠に輝くなど、世界各地の映画祭で《史上最高のベネズエラ映画》として高い評価を得た作品です。

映画『博士の綺奏曲』のあらすじとネタバレ


(C)Bendita films/Cinemago

研究所に勤めながら、オルタナティブ・ロックバンド「ロス・ピジャミスタス」のボーカルをしていたアンドレス。

汚職にまみれた政権が主催する音楽祭にメンバーたちが無断で参加しようとしていたことを知った彼は、バンドから一人で脱退します。

バンドを離れ、ソロ活動を開始したアンドレスの前に、「ビースト」という、顔のない謎めいた演奏者たちが現れました。

混乱と貧困が日常を蝕んでいくベネズエラで、アンドレスはビーストたちとともに孤高のアルバム制作を試みますが……。

映画『博士の綺奏曲』の感想と評価


(C)Bendita films/Cinemago

ベネズエラは美人が多いことで有名ですが、実際の国の内情についてはあまり日本で知られていません。中南米の中でも治安が悪く、気軽に旅行に行くことができないのが、その大きな原因の一つとなっています。

映画『博士の綺奏曲』は、私たちがなかなか見ることのできないベネズエラの自然、住環境、そこに暮らす人々の姿などが映し出された貴重な一作でもあります。

バンドメンバーの主人公アンドレスは、汚職まみれの政権が主催する音楽祭への出場を拒み、脱退することに。彼が強い意志を持つ人間であることが伝わってきます。

その後、一人きりで音楽を続けようとしたアンドレスの前に「ビースト」という顔なき謎の奏者が現れました。

「ビースト」の存在は作中でも詳細には語られず、大きな謎のままです。孤独なアンドレスの妄想なのか、あるいは彼にだけ見える聖なる存在なのか。まったく真実は明かされません。

しかし、作中で、ビーストの存在はひときわ大きく輝きます修道服にも見える淡い黄色のローブに、顔を隠す個性的な白色のベール彼らが水辺にたたずむ姿は、まるで蜃気楼のような美しさです。

ビーストとともに音楽を奏でる時のアンドレスは、心満たされているように見えます。彼は食事をする時にもビーストに語りかけ、その顔の前に垂れ下がっているベールに触れることさえあります。

その一方で、平穏な部屋の中の外には厳しい現実が待っています。海に行けば一人でいたら強盗に襲われると注意され、交通違反を取り締まる警官からはパワハラ的扱いを受けます。

急な停電で開かなくなった自宅の門を前にしても、怒ることなくただ淡々と受け入れるアンドレス。そんな彼の姿からも、この国の惨状がひしひしと伝わってきます。

重苦しい現実と、ビーストの存在する神秘的な音楽空間の対比に、思わず魅入られる作品です。

まとめ


(C)Bendita films/Cinemago

なかなか見ることのできないベネズエラという国を、内側からじっくりと見ることができる映画『博士の綺奏曲』

幻想と現実が入り交じる映像。それらはすべてアンドレスの内面を映し出しているように感じられます。

彼の内部には、受け入れざるを得ない苦しく厳しい現実と、この世から切り離された場所にある美しい音楽への希求が共存しているに違いありません

史上最高のベネズエラ映画『博士の綺奏曲』は2024年11月9日(土)〜渋谷シアター・イメージフォーラムで上映中!

12月6日(金)〜あつぎのえいがかんKiKi、また同発で京都シネマ&上田映劇。12月7日(土)〜第七藝術劇場、12月25日(水)〜Cine Grulla(シネ・グルージャ)で上映!


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