連載コラム「邦画特撮大全」第12章
先日2018年9月2日(日)から放送が開始した平成仮面ライダー20作記念作品『仮面ライダージオウ』。
いまや“仮面ライダー”というと若手イケメン俳優の登竜門です。オダギリジョーから始まり、要潤、佐藤健、瀬戸康史、菅田将暉、竹内涼真……。数多くの人気俳優を輩出しました。
今回は『ジオウ』に出演中の俳優を中心に、平成仮面ライダーを演じた歴代のイケメン俳優の出自について分析していきます。
ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト出身者
『仮面ライダージオウ』で主人公・常盤ソウゴ/仮面ライダージオウを演じるのは奥野壮。もう1人のライダー、明光院ゲイツ/仮面ライダーゲイツを演じる押田岳。
奥野壮は昨年開催された第30回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでフォトジェニック賞、明色美顔ボーイ賞をダブル受賞し芸能界入りを果たしました。押田岳も同コンテストの第29回グランプリ。『ジオウ』に登場する仮面ライダーは2人ともジュノン・スーパーボーイ・コンテストの出身者、いわゆる“ジュノンボーイ”なのです。
ジュノンボーイが『仮面ライダー』に主演するのは4作連続となります。遡ると前作『仮面ライダービルド』(2017)の犬飼貴丈(第25回GP)、前々作『仮面ライダーエグゼイド』(2016)の飯島寛騎(第28回GP)、『仮面ライダーゴースト』(2015)の西銘駿(第27回GP)と、グランプリ受賞者が続いていました。
『ゴースト』の前作である『仮面ライダードライブ』(2014)。この作品の主人公・泊進ノ介/仮面ライダードライブを演じたのが竹内涼真です。映画『帝一の國』(2016)やドラマ『ひよっこ』『陸王』『過保護のカホコ』で人気の竹内ですが、彼はジュノンボーイ出身ではありません。
ただし『ドライブ』に登場する詩島剛/仮面ライダーマッハ役の稲葉友、チェイス/仮面ライダーチェイサー役の上遠野太洸はそれぞれ、第22回と第23回でグランプリに輝いたジュノンボーイ出身俳優でした。
『ドライブ』の前作『仮面ライダー鎧武』(2013)の主人公・葛葉紘汰/仮面ライダー鎧武の佐野岳(第24回GP)。『仮面ライダーウィザード』(2012)の操真晴斗/仮面ライダーウィザード役の白石隼也(第20回・審査員特別賞受賞)と、枚挙に暇がないほどジュノンボーイ出身者たちが数多く出演しています。
また『ジオウ』へのゲスト出演が決まっている『仮面ライダー555』(2003)の乾巧/仮面ライダー555役の半田健人、草加雅人/仮面ライダーカイザ役の村上幸平の2人。半田が第14回のファイナリスト、村上が第7回の審査員特別賞受賞者で、両者ともジュノンボーイ出身なのです。
実際ジュノンボーイ出身者がレギュラー、準レギュラーとして出演している平成ライダー作品は全20作品中なんと18作品。逆にジュノンボーイが出演していない作品は『仮面ライダー響鬼』(2005)と『仮面ライダーディケイド』(2009)の2作のみです。
つまりほとんどの平成仮面ライダー作品にはジュノンボーイ出身者が出演しているのです。
2.5次元作品出演者
『ジオウ』に登場する仮面ライダー2人はジュノンボーイ出身でした。では敵役はどうなのでしょうか。
『ジオウ』に登場する敵・タイムジャッカ―のスウォルツを演じる兼崎健太郎は、ミュージカル『テニスの王子様』出演していました。同じくウールを演じる板垣李光人もLive Musical 『SHOW-BY ROCK』に出演。2人ともそれぞれ、2.5次元作品に出演経験がある俳優です。
“2.5次元作品”とは、マンガ・アニメが原作の舞台やミュージカルの通称です。2003年から始まったミュージカル『テニスの王子様』シリーズが嚆矢となり、現在も数多くの漫画やアニメが舞台化されています。
この2.5次元作品に出演後、仮面ライダーに出演した俳優も大勢いるのです。
先述したジュノンボーイが出演していない『仮面ライダーディケイド』(2009)ですが、主人公・門矢士(かどやつかさ)/仮面ライダーディケイドを演じた井上正大、小野寺ユウスケ/仮面ライダークウガ役の村井良大は共に『ミュージカル・テニスの王子様』に出演していました。
その他、“テニミュ”に出演していた仮面ライダー俳優ですが、『仮面ライダーキバ』(2008)で紅渡を演じた瀬戸康史、『仮面ライダーW』で左翔太郎/仮面ライダーWを演じた桐山漣が、主演では有名なところでしょうか。
主演以外でも、『仮面ライダーカブト』の加藤和樹、『仮面ライダー鎧武』の久保田悠来とジュノンボーイ出身者同様に枚挙に暇がありません。ちなみに加藤和樹は第15回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストでもあります。
若手俳優ユニットと仮面ライダー
以前までは“イケメン”というとやはりジャニーズ事務所が強かったですが、現在はジャニーズ事務所以外の芸能プロダクションも若手俳優の発掘・育成に力を入れています。実際2000年代後半から若手俳優ユニットが複数結成されました。
昨年2017年にはオスカープロモーションが若手俳優ユニット「男劇団青山表参道X」を結成しました。『ジオウ』に出演中の奥野壮もこのユニットのメンバーです。
また過去にライダーに主演した飯島寛騎(『エグゼイド』)や西銘駿(『ゴースト』)もメンバーにいます。
若手俳優ユニットの代表格というと、2004年に結成されたワタナベエンターテイメントのD-BOYS。
先述の『キバ』の主演・瀬戸康史を初め、前山剛久(『ウィザード』)、白又敦(『鎧武』)など、仮面ライダー出演者が多いです。荒木宏文、鈴木裕樹、山田裕貴、志尊淳らのスーパー戦隊出演者も多いほか、前述したミュージカル『テニスの王子様』に出演経験のあるメンバーが多数います。
また2007年から2012年まで活動していたユニット・PureBoys。こちらのメンバーの多くも仮面ライダーに出演していました。『仮面ライダーキバ』に出演していた加藤慶祐と武田航平、中山麻聖。『仮面ライダーオーズ』(2011)に出演していた三浦涼介などがいます。
仮面ライダー俳優人気の理由
これまで仮面ライダーに出演してきたイケメン俳優の出自について、ジュノンボーイ出身者、2.5次元作品出演者、若手俳優ユニット所属者と3つに分けて紹介してきました。ただしあくまでこの分け方は便宜上で、これら3つは相互影響関係にあるのです。
では最後に、なぜ仮面ライダー俳優は人気になるのかについてです。
多くのTVドラマが1クール・3カ月間の放送なのに対し、『仮面ライダー』は1年間に亘って放送されます。1年間の放送となるとスケジュールの調整が難しいため、必然的に若手俳優を中心としたキャスティングとなります。
若手俳優は1年間に亘って映像制作の現場を体験し、長期間作品と向き合うことになります。また特撮ドラマは変身時のアフレコやアクションなど、一般ドラマでは経験できない要素も複数あります。こうした経験が若手俳優たちにとって、大きなスキルアップになるのです。
デビュー間もない彼らの演技がシリーズ序盤は拙いかもしれません。しかしシリーズ終盤、彼らの演技力は間違いなく大きく成長しています。『仮面ライダー』シリーズはある種、若手俳優の成長を追ったドキュメンタリーと言えるかもしれません。
そして若手イケメン俳優たちの成長していく様子が、子供たちだけではなく一緒に番組を視聴しているお母さん方にも響くのではないでしょうか。
次回の邦画特撮大全は、
より具体的に仮面ライダー出身俳優の魅力について紹介していきます。
お楽しみ。