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Entry 2020/01/06
Update

映画『エスケイプ・ゲーム』あらすじネタバレと感想。サイコな犯人を生んだ環境が胸に刺さる|未体験ゾーンの映画たち2020見破録3

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第3回

映画ファンを正月明けから騒がせる、劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020」が、今年も1月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷で開催。2月7日(金)からはシネ・リーブル梅田でも実施、また一部上映作品は青山シアターで、期間限定でオンライン上映されます。

さて、前年の「未体験ゾーンの映画たち2019」の全58作品のすべてを見破し、紹介させて頂きました。

今年も完全制覇に挑戦する、「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第3回で紹介するのは、ベルギー発の脱出ホラー『エスケイプ・ゲーム』

ベルギー出身のジャッカス・クルーガーは、パリの大学で学んだ後デジタル通信の世界に職を得て、web製作の世界で活躍する一方、映像制作会社を設立し、テレビドラマ『All Wrong』を製作します。その彼の初の長編映画監督作です。

勝者に高額の賞金が与えるリアル脱出ゲームが、命がけの危険なものへと変貌する。そして、驚くべき事実が隠されていた…。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

映画『エスケイプ・ゲーム』の作品情報


(C)2018 NEXUS FACTORY – BOBURST PRODUCTIONS – KLUGER PARTNERS – PROGRAM STORE

【日本公開】
2020年(ベルギー映画)

【原題】
Play or Die

【監督】
ジャッカス・クルーガー

【キャスト】
チャーリー・パーマー・ロスウェル、ロクサーヌ・メスキダ

【作品概要】
謎の主催者が仕掛ける、勝者は賞金100万ユーロが獲得するリアル脱出ゲーム“パラノイア”。恐怖の殺人ゲームに挑む男女の姿を描く、新感覚ホラー映画。

天才的な頭脳と複雑な過去を持つ主人公を、「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2019」で上映された、『ハロウィーン』に出演のチャーリー・パーマー・ロスウェルが、彼のパートナーとなる謎を秘めた女を、殺人タイヤ(!)が大暴れする映画『ラバー』、「未体験ゾーンの映画たち 2015」で上映された吸血鬼映画『美しき獣』のロクサーヌ・メスキダが演じます。

原作はフランスのベストセラー作家、フランク・ティリエの「PAZZLE」。彼の小説で翻訳・出版された「死者の部屋」は、メラニー・ロラン主演の『スマイル・コレクター』として映画化されています。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2020」上映作品。

映画『エスケイプ・ゲーム』のあらすじとネタバレ


(C)2018 NEXUS FACTORY – BOBURST PRODUCTIONS – KLUGER PARTNERS – PROGRAM STORE

森の中で、落ち葉の上に横たわる死体。一体何があったのだろうか…。

勤務先の店のカウンターで、接客よりゲームに夢中の男ルーカス(チャーリー・パーマー・ロスウェル)。彼はクロエ(ロクサーヌ・メスキダ)からのメッセージを無視します。

職場から帰宅中のルーカスがバイクを止めると、横に警察の護送車が停まります。彼が車に目をやると金網の付いた窓越しに、護送されるマスクをつけた男が見えました。思わず息を飲んだルーカスを残し、車は走り去ります。

帰宅しベットに横たわるルーカスですが、玄関のベルが鳴らされます。ドアを開けるとクロエがいました。彼女はルーカスを心配し、様子を見に来たと語ります。

彼女は本題を切り出します。脱出ゲーム“パラノイア”の最終章が開催されると。ゲームでここまで来たのはあなただけとクロエが告げるや、出ていけと言うルーカス。しかしクロエは彼に迫り、2人は愛を交わします。

かつて参加していた“パラノイア”を、最後までやり遂げ勝者となれば100万ユーロが手に入ります。クロエは共にゲームに参加する事を望んでいましたが、2人が別れる原因となったゲームに戻る事を、ルーカスは恐れていました。

かまわずクロエはルーカスに説明します。マンチェスターの動物園から2羽の黒鳥が消えた、との記事が出た。その動物園に元々黒鳥はいない。2羽の黒鳥は、“パラノイア”のエンブレムだと。

脱出ゲーム“パラノイア”に参加を望む者は、主催者の出した告知の隠された暗号を読み解き、自力でその会場を突き止めるしかありません。クロエが問い合わせると、「24に注意して下さい」との返事が送られてきました。

謎を与えられたルーカスは、興味を覚え解き始めます。2と4をアルファベットの順に当てはめるとBとD。アルファベット2つは、イギリスの郵便番号の頭2つです。「注意して下さい」(Be careful)の頭2つはBとC。今度はアルファベット順を数字に当てはめ2と3。

BD23はスキップトン市の郵便番号だと、瞬く間に解き明かしてゆくルーカス。この調子でネットを検索し、“パラノイア”参加への入口となるレイブ(特定の場所で1回限り開かれる音楽イベント)を突き止めます。

既にルーカスもゲームの虜になっていました。クロエの言う通りゲームに勝ち残るには、彼の天才的な頭脳が必要でした。レイブは今夜実施されます。ルーカスは母親の部屋に行くと、クロエとドライブに行くと伝えます。彼女が僕を傷つける事を、心配してくれるのは判るけど。

そうルーカスが語りかける母のベットには、誰の姿もありませんでした。

車を走らせ、レイブの会場に向かった2人。ルーカスは車にあった資料から、彼女が心を病み精神病院に入院ていたと知ります。

目的の場所は、黒鳥のマークが掲げられた廃屋でした。2人は中に入りますが、この音楽イベントの場が、脱出ゲームの会場とは思えません。しかしこの場所で今まで“パラノイア”を勝ち残った参加者、ナオミの姿を見つけます。

2人はやはりこの場所が、ゲーム会場への入口だと確信します。会場の大音量で響くテクノ音楽に紛れ、「白鳥の湖」の曲が流れていることに気付いたルーカス。

その音色を頼りに奥へと進む2人。そこにはジョイスティックが1つだけの、古い格闘アーケードゲームがありました。コンピューターと対戦しルーカスは破れますが、クロエが勝つと“パラノイア”会場のGPS座標が表示されました。2人は会場へと車を走らせます。

脱出ゲーム“パラノイア”の会場は、廃墟と化したホワイトロック精神病院でした。車を降りた2人は、現れた看護婦の後について会場に入ります。

廃病院にはゲームを監視する、無数のカメラが設置されていました。案内された部屋にプレイヤーが待機していました。レイとマキシン、ナオミとジャブロウスキ、そしてクロエとルーカス。3組の男女がゲームの参加者です。

“パラノイア”へようこそ、とメッセージが流れます。数千人の参加者から勝ち残った者も、ここで自分の弱さに直面するだろうと言葉が続きます。

病院全体がゲーム場であり、プレイヤーは部屋で与えられた謎を解くと、次の部屋へと進む事ができます。各部屋の謎を解き脱出し、勝者となった者が賞金を獲得します。

ゲームから抜ける最後のチャンスでしたが、誰も退場しません。そしてルーカスが目覚めた時、彼は部屋で1人、手錠でパイプとつながれていました。

全員が別々の部屋にいました。メッセージはゲーム開始を宣言し、続行するにはまずパートナーを見つける必要があると伝えます。

声を出し合ったルーカスとクロエは、隣室に監禁されていると知ります。2つの部屋はダクトでつながっていました。部屋に隠された鍵を探し出し、相手が使える鍵はダクトを通じて渡す事で、ようやく2人は脱出に成功します。

2人には7号室を探せとの、メッセージが与えられていました。7号室に入ると扉が閉まり監禁されます。次の部屋に移動するには、ドアを開けるコードを入力するしかありません。

またベットに横になり、体をベルトで縛りつけろとのメッセージもあります。ルーカスは嫌な予感を覚えますが、クロエはかまわずベットに横たわります。

すると2分の制限時間で、上からベットに刃物が降りてきます。これを止めるには、壁に貼られた黒鳥の絵のパズルを完成させるしかありません。

焦りながらパズルに挑むルーカス。クロエは彼の能力を信じ励ましますが、刃物の裏に何か数字が書いてあると気付きます。ギリギリまで刃物が降りた段階でルーカスはパズルを完成させ、顔が傷付くのも構わず数字を読み取るクロエ。

記された数字の1行目は5、30、6。2行目は3、( )、7。5×6は30で3×7は21。よって欠落部分は21。ルーカスが入力するコードを解読し、2人は部屋から脱出します。

次は11号室に向かえとの指示です。クロエが死んでいたかもしれない状況に異常性を覚え、ルーカスはゲームの続行をためらいますが、彼女は構わず先に進みます。会場では助けてくれと叫ぶ、マキシンの声が響いていました。

11号室に向かった2人ですが、先にナオミとジャブロウスキの組が入り扉は閉じられます。ならば別の部屋を探そうと考えた2人に、ピアノの音色が響いてきます。

その音を手掛かりに進むと、男がピアノを演奏している部屋がありました。そこにはダイヤル式の南京錠と、3段の本棚に入った数々の楽譜、そしてエドガー・アラン・ポーの小説「盗まれた手紙」がありました。

2人は演奏する男を無視して、楽譜や作曲家名をヒントに南京錠を解く数字を導き出そうとします。しかしどれも異なります。いつの間にか男は姿を消し、部屋は炎に包まれ始めます。焦るルーカスを、あなたは神童と呼ばれた天才だ、と励ますクロエ。

何かを悟ったルーカスはピアノに向かいます。ポーの小説「盗まれた手紙」は、“隠したいものを、あえて隠さない”ことをトリックにした物語。怪しげで人目を引くピアノこそ脱出の鍵。2人は炎の中から間一髪逃れます。

次に与えられたメッセージは「人はその前で平等」。それは死だと考えたルーカスは、解剖室に向かいます。解剖台にはシーツをかけられたものが横たわっていました。

クロエがシーツを取ると、それはピエロの人形でした。そして部屋にはキーパットとトランプが。トランプに隠された符号を、キーパットに入力すれば脱出できるはずです。

謎に挑むルーカス。ところが部屋にプレイヤーの1人、レイの死体があると気付きます。そして部屋のドアを何者かが叩く音が。ルーカスは慌てて解剖台でドアを塞ぎます。

もはや間違いなく、ゲームの主催者はプレイヤーの命を奪っています。ルーカスはトランプの全てのカードを正しく重ねて、横から見るとアルファベットと数字が記してあると気付きます。それを読もうとした時、騒ぎでカードが崩れました。

記憶を頼りに何とかクロエに符号を伝えたルーカス。2人は部屋から逃れますが離れてしまい、ルーカスは何者かに捕えられ意識を失います…。

以下、『エスケイプ・ゲーム』ネタバレ・結末の記載がございます。『エスケイプ・ゲーム』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2018 NEXUS FACTORY – BOBURST PRODUCTIONS – KLUGER PARTNERS – PROGRAM STORE

ルーカスが目覚めた時、彼は電気椅子に縛り付けられていました。そしてメッセージが流れます。記憶力向上の試みと称し、これから11組の名詞と形容詞の組み合わせを読み上げる。その後1つずつ形容詞を読むので、対になる名詞を答えよと。

5つ正解すれば解放されるが、間違えると罰せられる。電流が流され、間違える度に強くなります。ルーカスは間違いを重ね、度重なる電撃に意識がもうろうとします。

ルーカスはついに、脱出の可能性が消える問題にも間違えます。看護婦が死に至る電流の準備を行う中、最後の力を振り絞り、電気椅子のコードを外して看護婦に押し付け、電撃で彼女を殺したルーカス。

すると脇のテーブルが開き、ヒントを書いた紙が現れます。それを手に部屋を抜け出すルーカス。もう1人の看護婦は、ただ無表情に見つめていました。

追手から逃れ、廃病院の調理場のコンロに火を付け、暖をとっていた脱出ゲーム“パラノイア”の参加者の1人、マキシン。突然彼は何者かに襲われ、その火で顔を焼かれます。

ルーカスはその調理場でクロエと再会します。もし私のゲームへの誘いを断っていれば、ここにいなかったと口にするクロエ。ルーカスは彼女に、なぜ精神病院に入院していた事を教えてくれなかったのかを訊ねます。

誰かが彼女の家のドアに十字架をかける。それが毎日、何カ月も続き、クロエは追い詰められ、精神を病んだと語ります。一方彼女は、なぜルーカスが母の死を教えてくれなかったのかを訊ねます。

ルーカスが16歳の時、母は強盗に殺されました。その時彼は家にいましたが、パーティーから酔って帰って眠っており、それに気付かなかったのです。母はルーカスの知らない、何か大切なものを地下室に隠していましたが、それは強盗に持ち去られました。

互いの傷付いた心に気付いた2人は、キスを交わします。

廃病院に残されたカルテに、ゲーム“パラノイア”のライバル、ナオミの名があることに2人は気付きます。彼女は危険な患者で、尖った物を持たせるなと書いていました。そして2人は壁にはり付けられ、ドライバーが突き立てられたマキシンの死体を見つけます。

「汝は天に昇る」のヒントを得ていた参加者、ジャブロウスキは1人その謎に挑んでいました。彼と出会った2人はナオミの行方を尋ねますが、彼は知りませんでした。

2人はレイとマキシンの死を伝えて危険を訴えますが、ゲームに勝利する事に夢中のジャブロウスキは、耳を貸さず去って行きます。

仕方なくルーカスとクロエも、「汝は天に昇る」の意味を解くことにします。宗教的な意味なのか。ルーカスは電気椅子の部屋でこのヒントを手に入れました。はたして自分はあの部屋で知性を、それとも看護婦を殺す殺人の能力を試されたのか。

クロエが見つけた廃病院の、患者の描いた絵はルーカスの家の部屋の様にも見えます。様々な謎に、ルーカスは悩まされます。

護身用に鉄パイプを手にした2人は、ナオミと出会います。彼女はドライバーを持っていました。ルーカスは彼女をなだめますが、ナオミを殺人鬼だと責め立てるクロエ。

追い詰められたナオミは、自らの頭部にドライバーを突き立て命を断ちます。ルーカスはクロエの態度を非難しますが、彼女は構わず先に進み2人は別れてしまいます。

ジャブロウスキは「汝は天に昇る」は「三位一体」を示すと考え、そのサインのある歯科室に入りますが、何者かに襲われます。意識を取り戻した時、彼は診療用椅子に縛られていました。何者かが彼に自ら3本歯を抜くよう強要し、そしてドリルを突き立てます。

廃病院の礼拝堂に着いたルーカスは、そこでクロエと、ジャブロウスキの遺体を目にします。クロエは血まみれでしたが、まだ生きていたジャブロウスキを救おうと試み、その結果血が付いたと説明します。

ジャブロウスキの遺体はタロットカードを持っていました。この場所が示すヒントから、「ヤコブの梯子」のタロットカードだと推測したルーカス。クロエが礼拝堂の絵に描かれた、ヤコブに手をかざすと、ある場所に光があたります。

そこに縄梯子が下がっていました。登り出すクロエの後に続くルーカス。突然彼女はルーカスを蹴り落とします。彼は傷付きながらも立ち上がり後を追います。その隙にクロエは最後の扉のコードを入力し、建物から外へ出ます。

怒ったルーカスが外に出ると、そこに瀕死のクロエが横たわっていました。自分を許して、病院にいると、正気を失ってしまうと語るクロエ。必死に声をかける彼にクロエは自分を残し、あなたは行くの、と語ります。

そして、人生と向き合いなさい、と告げた彼女の声は、ルーカスの母の声と重なりました。クロエは死に、ルーカスは泣き崩れます。

クロエを殺した相手を探し求めるルーカス。その前にオレンジの囚人服を着た、警察の護送車の中で見かけた、マスクを付けた男が現れます。男と激しく争うルーカス。男に腹を刺され深く傷つきますが、ついに男を組み伏せます。

マスクを外せ、お前の本性が判ると告げる男。俺に着せた罪を自分の物だと認めろ、そう言い放つと男はマスクを取ります。現れたのはルーカス自身の顔でした。

お前は真実を隠してきた、クロエを傷つけ去らせたのもお前だと告げる男。ルーカスに精神病院にいた頃の記憶が甦ります。入院中の彼の傍らに、脱出ゲーム“パラノイア”を見つめていた看護婦の姿があり、ルーカスは看護婦にドライバーを突きつけていました。

ルーカスは自分の顔をした男を絞殺します。よろよろと歩き出した彼の脳裏に、過去の記憶が甦ります。息子を秀才に育てたかった母は、ルーカスを地下室に鎖で縛って閉じ込め、勉強を強要する異常な環境で育てていました。

警察は廃病院の外で、レイとマキシン、ナオミとジャブロウスキの死体の傍で、助けを求める傷付いたルーカスを発見します。オレンジの服を着た男に襲われた、と証言する重傷のルーカス。しかし救急車で運ばれる時、彼は笑っていました。

退院し自宅に戻ったルーカス。ベットに横たわった彼にあの日の記憶が甦ります。自分の手を傷付けてまで鎖から手を抜き、地下室から逃れたルーカスは、ドライバーを手に階段を上ります。

自室に現れた彼を見て、やっと出たのね、と平然と言う母。その時「白鳥の湖」の音楽が流れていました。そして冷たく、人生と向き合いなさい、と言い放ちます。それを聞いたルーカスは、その首にドライバーを突き立てます。

その日彼は壊れました。精神病院に入院しても治ることはなく、以来狂気に囚われ他人を傷つける者として生きていたのです。

そのルーカスの家に地下室に、母とクロエの遺体が横たわっていました。

映画『エスケイプ・ゲーム』の感想と評価


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謎が解ける訳だよ、この脱出ゲーム!

主人公の天才的な閃きが、次々謎を解く脱出ゲーム。早すぎてどうやって解いたか、一度見ただけでは理解できないでしょう。それを頑張ってあらすじで紹介しましたが、実はネタバレに書いた事情があったと知ると…そりゃどんな謎でも解けるよな、と空しくなりました。

『ソウ』のような、ソリッド・シチュエーションスリラーを期待した方は、あれっ、と拍子抜けしたかもしれません。しかし主人公が別の意味の迷宮に閉じ込められた、その迷宮の名が“パラノイア”であると受け取れば、実に見事なサイコホラーではないでしょうか。

上映時間が短く展開が早いので、少々理解しにくい難はありますが、メタフィクション的な映画が好きな方は、きっと気に入るでしょう。

そして仕掛けを知った後、登場した各ゲームを振り返ると…。電気椅子に座ってのゲームは、将にサイコな犯人が誕生する過程の再現。原作小説によるものかもしれませんが、見事な描写です。

サイコな犯人を生んだ環境が胸に刺さる


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映画に登場する多くのサイコ犯に、取って付けた様な設定が与えられている事を思うと、本作の犯人は“毒親”に心を壊され誕生したと説明されています。親の影響の程度はさておき、その描写がなぜか身に染みる方もいるかと思います。

この“毒親”の存在を踏まえて映画を振り返ると、脱出すべき対象、そして主人公が対決した相手の正体も、改めて深い意味を持ち始めます。

とはいえ本作の真犯人を生んだ環境は、前半で多少匂わせているものの、最後に後出しで紹介した感もあり、不親切な印象も否めません。

通常“脱出ホラー”は、リアルタイムで過程を楽しみ、脱出できて良かったね、脱出できずにバットエンド、として終わるものです。しかし本作は鑑賞中に登場人物と共に、リアルタイムで謎を解く映画ではなく、むしろ鑑賞後に振り返って楽しむ映画です。

『エスケイプ・ゲーム』を“脱出ホラー”と思って見た人は、このギャップにも違和感を覚えるでしょう。しかし“サイコホラー”として振り返れば、見事な仕掛けを持つ作品です。

まとめ


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本作の最後に登場するゲームの鍵は、旧約聖書に登場する“ヤコブの梯子”。天国につながる梯子を意味します。

主人公は脱出ゲーム“パラノイア”から逃れるために、“ヤコブの梯子”を登ります。その行為の意味、そしてその登った先の出来事を考えると、また物語の内容が深まってきます。

ところで“ヤコブの梯子”の、別の呼び名が“ジェイコブズ・ラダー”。「未体験ゾーンの映画たち2020」では、かの有名なサイコホラー映画のリメイク作である、『ジェイコブズ・ラダー』が上映されます。

2本の映画の、偶然にしても奇遇な組み合わせ。いずれにせよ“ジェイコブズ・ラダー”が映画に限らず、キリスト教圏での文学や音楽に、様々な形で登場している証です。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…


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次回の第4回は銃乱射事件の犯人を巡り繰り広げられる、心理戦を描いたクライムスリラー映画『スパロークリーク 野良犬たちの長い夜』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

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