連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile045
新宿の映画館「K’s cinema」で2019年6月8日より開催される「奇想天外映画祭 Bizarre Film Festival~Freak and Geek アンダーグラウンドコレクション 2019~」。
profile044では「奇想天外映画祭」公開記念第1弾として、いかにもなカルト的な雰囲気と哀愁漂う復讐劇が見事に融合した『バスケット・ケース』(1982)をご紹介させていただきました。
そして「奇想天外映画祭」公開記念第2弾となる今回のコラムでは、世界に名を轟かし、今もなお愛されるおバカ映画『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』(1978)をご紹介致します。
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CONTENTS
映画『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』の作品情報
【原題】
Attack of the Killer Tomatoes!
【製作】
1978年(アメリカ映画)
【監督】
ジョン・デ・ベロ
【キャスト】
デビッド・ミラー、ジョージ・ウィルソン、シャロン・テイラー
映画『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』のあらすじとネタバレ
全国的に恐るべきことが起きていました。
トマトが人々を襲い始めたのです。
関係者たちは農務省の行なっている秘密実験でトマトが凶暴化したことを隠すため、ホワイトハウス報道官のリチャードソンに事態の終息を命じます。
一方、トマトに対する打開策を見つけるため、全く無名のエージェントのディクスンに部下をつけアンチトマト作戦を実行に移します。
ディクスンの部下に充てられたのは、変装のプロであるサム、水泳のプロであるグレタ、潜水の達人グレッグ、戦闘のスペシャリストであるフィンレターの4名です。
トマトによる侵攻は止まらず海水浴客もバイカーも犠牲になります。
雑誌記者のフェアチャイルドは政府がひた隠しにするトマト騒動の裏側を探るように上司に命じられます。
ラジオで「思春期の恋」と言う聞くに耐えない曲が流れる中、ディクスンたちは任務のため車を走らせます。
ディクスンはサムに、トマトに変装し敵地に潜入するように命じ、一方でグレッグは公園の噴水に潜水します。
報道官のリチャードソンは、トマトの脅威を隠すため様々な画策を行いますがあまり上手くはいきません。
ディクスンとフィンレターはホテルに宿泊しますが急な呼び出しにあい、早朝にホテルを出ることになります。
最前線でディクスンは捕らえられた大型のトマトを見ます。
小型犬ほどの大きさのあるトマトですが、科学者はこれは小型のチェリートマトだと言います。
1人森の中でステロイド入りの朝食を取っていたグレタは、車ほどの大きさのトマトに襲われ死亡します。
トマトはアメリカ全土に侵攻を広げ、トマトと口走るだけで人々がパニックに陥るほどでした。
ラジオをつけながら車を走らせるディクスンは突然大型トマトに行く道を塞がれますが、不思議なことにトマトはディクスンを襲いませんでした。
このことをディクスンは上層部に報告しますが、皆頭をひねるばかりでした。
白昼の道で銃撃されディクスンは何とか生き延びますが3人が犠牲になります。
その後もディクスンは作戦本部前で何者かに発砲されます。
間一髪避けることができましたが、結局犯人は取り逃がすことになりました。
一方、サムはトマトに変装し、野営するトマトに溶け込むことに成功していましたが、ケチャップの話題を出したことで露見してしまいます。
映画『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』の感想と評価
低予算を隠さない潔さ
1978年に制作された映画『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』。
簡単なあらすじからでも「トマトが人間を襲う」と言う極めて斬新なプロットが見える本作ですが、映画本編はプロットを数段上回る斬新さで、他の追随を許さない奇抜な作品でした。
アニメーションや特撮の基礎的な部分である「コマ撮り」がコマ数が少なすぎて、とてもトマトが動いているようには見えない襲撃シーンや、台車に乗ったような動きでスライドする巨大トマト、ただ転がっているだけに見える人喰いトマトなど、低予算を隠しもしないスタンスにより「ツッコミどころ」が多く生まれ、鑑賞者を楽しませてくれます。
もちろん物語にも「ツッコミどころ」が大量に存在しますが、一流のコメディ映画とは違い、その一切にこれと言った言及はありません。
映画の途中で地元スーパーマーケットの宣伝が入る明らかな低予算対策、説明も無しにパラシュートを常時引きずり歩く戦闘のプロなど高度なお笑い要素と、動かないトマトに絶叫する人々と言うシュールな絵面です。
続々と製作された後追い映画たち
続編『リターン・オブ・ザ・キラー・トマト』(1988)にはあのジョージ・クルーニーが出演し「黒歴史」扱いしていると言われています。
本作は続編と併せてBlu-ray化をもされた圧倒的人気を誇るカルト映画として、友達とワイワイ観たり、真剣にシュールさに浸ったりするのに最適な奇作です。
低予算ながら大ヒットを記録した本作は、後に『アタック・オブ・ザ・ジャイアント・ケーキ』(1999)や『アタック・オブ・ザ・キラー・ドーナツ』(2016)などの様々な後追い映画が製作されるきっかけとなります。
さらにジャック・ニコルソン、ピアース・ブロスナン、サラ・ジェシカ・パーカー、マイケル・J・フォックス、ナタリー・ポートマンなど映画界のビッグスターが集うSFコメディ映画『マーズ・アタック!』(1997)で物語のラストをオマージュされるなど、間違いなく映画界の歴史にその名を刻んだ映画でもあります。
まとめ
「カルト映画だと思って鑑賞すると痛い目を見るぞ!」ということは一切ないと断言できる作品ではありますが、世界が魅了された「チープ」さと「シュール」さは他の追随を許さない出来。
どうせならばどデカいスクリーンで鑑賞できる「奇想天外映画祭」で鑑賞してみるのはいかがでしょうか。
きっと色々な意味で忘れられない映画体験になるはずですよ。
「奇想天外映画祭 Bizarre Film Festival~Freak and Geek アンダーグラウンドコレクション 2019~」は新宿K’s cinemaにて2019年6月8日より開催です。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile046では、劇画とアニメーションを融合させた「ゲキメーション」で全世界を驚愕させた最新映画『バイオレンス・ボイジャー』(2019)をご紹介させていただきます。
4月24日(水)の掲載をお楽しみに!