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Entry 2020/09/09
Update

Netflix映画『闇に棲むもの』ネタバレ感想と考察評価。ホラーノワールという現代的な特徴を解説|SF恐怖映画という名の観覧車119

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile119

近年、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2018)のギレルモ・デル・トロや『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2015)のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥなど、メキシコ出身の監督が映画界で活躍しています。

第91回アカデミー賞ではアルフォンソ・キュアロンによるメキシコ・アメリカ合作の映画『ROMA/ローマ』(2018)が外国語映画賞・監督賞・撮影賞の3部門を受賞する快挙を遂げるなど、その勢いは留まることを知りません。

今回はそんな映画界での活躍の場を広げるメキシコで製作され、Netflixにより独占配信された最新ホラーノワール映画『闇に棲むもの』(2020)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『闇に棲むもの』の作品情報

Netflix 闇に棲むもの

【日本公開】
2020年(NETFLIX独占配信映画)

【原題】
Fuego negro

【監督】
ベルナルド・アレラーノ

【キャスト】
テノッチ・ウエルタ、エレンディラ・イバラ、デイル・カーリー、アリアーネ・ペリセ、マウリシオ・アスペ

【作品概要】
『闇に棲むもの』は、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2020)の監督を務めるキャリー・フクナガの長編映画デビュー作『闇の列車、光の旅』(2010)で、メキシカン・ギャングのリーダーを演じたテノッチ・ウエルタ主演で製作されたNetflix独占配信映画です。

『マトリックス4』(2021)への出演も決まるエレンディラ・イバラや、ドラマシリーズ「マリア・ラ・デル・バリオ」に出演したマウリシオ・アスペなどが共演を務めました。

映画『闇に棲むもの』のあらすじとネタバレ

行方不明になった妹を探し、妹の泊まっていたホテルにやってきたフランコ。

受付で部屋を借りたフランコは受付の女性に18歳の女性を探していると言います。

フランコからチップを受け取った受付の女性は、思い当たる部屋として175号室を教え、フランコは175号室を訪ねますが、不在でした。

175号室の隣の部屋の女性が玄関を開け、フランコに歌を歌う女性に気をつけてと言います。

自身の部屋に戻ろうとするフランコは、男に暴力を受けている女性を見つけ、彼女を部屋に送り届けます。

彼女は自身をルビと名乗ると、この名前は忘れられない名前になるとフランコに言います。

ルビは近隣のバーで働いていることをフランコに伝え、何かがあったら訪ねるように告げました。

深夜、屋上で歌う女性に妹を探していることを見抜かれたフランコは彼女に興味を持ちますが、保護者らしき女性が現れ霊能力を持っている彼女と話すには、満月の日に2000ドルを払う必要があるとフランコに言います。

数日の間、老婆に襲われる夢を見るフランコはその日もうなされながら目を覚まします。

大きな物音を立てる隣の部屋へ文句を言いに行くフランコは、女性と部屋に住む老人から老人の作品である小説『闇に棲むもの』を受け取りました。

その夜、再び物音で目を覚ましたフランコは老人が女性に薬物を注入し、さらにフランコに射殺されたがっていることをフランコに話し、フランコは老人の持っていた銃を突き付けました。

その後、霊能力を持つ女性に依頼をするためのお金を手に入れる手段として強盗を行うフランコは、共に強盗を実行した女性と性行為をしている最中、再び悪夢に襲われ1人で目を覚まします。

まとまったお金が手に入ったことで霊能力を持った女性に正式に妹の場所を探す依頼をしたフランコは、女性の力で妹の場所を特定しました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『闇に棲むもの』のネタバレ・結末の記載がございます。『闇に棲むもの』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

マックスという地元マフィアのリーダーのもとで強盗を行っていたフランコ。

しかし、フランコが足抜けを望んだことに激怒したマックスがフランコの娘を誘拐したことが、霊能力を持つ女性によって分かります。

真実が分かったことでフランコはマックスの事務所を襲いますが、妹は既に別の場所に移送されていました。

フランコは自身の悪夢の中で体内にいる謎の生物の存在と、老人の書いた「闇に棲むもの」が繋がっていることを感じ取っていました。

ホテルの存在をマックスに知られ、霊能力を持った女性をさらわれたフランコは、ルビを襲っていた男性がマックスの手下であることに気づき殺害。

この関係が偶然であるはずがないと感じるフランコは、ルビがマックスの場所を知っていると確信し、彼女を脅しマックスの場所へと案内させます。

彼女はフランコと共に、この世のしがらみのない場所へ行こうと誘いますが、フランコは聞き入れずマックスとの決戦の地へと向かいます。

マックスと一騎打ちの戦いの結果マックスを殺害したフランコは、マックスの口から悪夢で見た謎の生物が出てくるのを見ると、謎の生物を射殺。

その後、マックスの手下に妹の場所へと案内させ、フランコは妹と再会します。

妹やその他のさらわれた女性を解放するフランコでしたが、突如背後からルビに撃たれます。

近づいてくるルビに最後の力を振り絞りキスしたフランコは、体内の謎の生物をルビへと移しました。

生物を移されたルビは苦しみ、フランコは命尽きる中、自身が燃えさかりながら闇に落ちていくことを感じていました。

映画『闇に棲むもの』の感想と評価

ベルナルド・アレラーノ監督によって執筆および製作された本作『闇に棲むもの』は、ホラーノワール映画として型にとらわれない独特さを感じることの出来る映画でした。

主人公のフランコが妹を探すためホテルを訪れ、奇妙な住人や「闇に棲むもの」の存在を知っていくという「ホラー映画」の要素と、妹の所在を探るうちにフランコの過去とギャングの繋がりが明らかになる「ノワール映画」の要素。

2つの要素が正に「予測不能」に絡み合い、映画ファンにも先を読ませない本作は粗削りでありながらも不思議な魅力を放っています。

暴力性を持った人間にのみ憑りつく「闇に棲むもの」とは一体何なのか。

キリスト教における「悪魔」や、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトによる「クトゥルフ神話」を思わせる、暴力と狂気に満ちた捜索劇映画でした。

まとめ

「闇に棲むものとは」、「タイトルの黒火の意味とは」など鑑賞後にも様々な憶測を生み出す本作。

「ホラー」映画に最も重要といえるおどろおどろしさを感じさせる表現に優れた本作は、怪しげなネオンや闇夜に映えるメキシコの街並みを味わえる作品でもあります。

今週は、そんなハリウッドや邦画とはひと味もふた味も違うメキシコ映画を味わってみてはいかがでしょうか。

メキシコ映画『闇に棲むもの』は映像配信サービス「Netflix」で独占配信中です。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile120では、映像作家遠藤麻衣子の描く「現在の東京」を描いた映画『TOKYO TELEPATH 2020』(2020)の魅力をご紹介させていただきます。

9月16日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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