原作:岩井俊二×脚本:大根仁×総監督:新房昭之
今をときめく広瀬すずと菅田将暉が声優を務めたこの夏最大の話題作!
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』をご紹介します。
以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の作品情報をどうぞ!
CONTENTS
1.映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の作品情報
【公開】
2017年(日本映画)
【総監督】
新房昭之
【キャスト】
広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、松たか子、浅沼晋太郎、豊永利行、梶裕貴、三木眞一郎、花澤香菜、櫻井孝宏、根谷美智子、飛田展男、宮本充、立木文彦
【作品概要】
原作は『Love Letter』『リップヴァンウィンクルの花嫁』の岩井俊二。
脚本は『モテキ』『バクマン。』の大根仁。
刺激的な作品の数々で観客を魅了し続ける二人が綴るのは、“繰り返される夏の一日”を描くラブストーリー。
総監督を務めるのは社会現象化した『化物語』『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之。
独創性溢れる演出と映像表現でアニメ界に多大な影響を与える奇才が、アニメーションスタジオ「シャフト」と最強タッグを組み、イマジネーション豊かな世界を紡ぎ出す。
声の出演は、話題作への出演が相次ぐ広瀬すず。声優初挑戦となる菅田将暉。
同世代のなかでも圧倒的な人気・実力を誇る二人のほか、声優界のトップランナー・宮野真守、国民的女優のひとり、松たか子と、ジャンルの垣根を越えた豪華キャストが集結。
そして切なくも美しいメロディでラストを飾るのは、本作のためのコラボレーション、“DAOKO×米津玄師”による主題歌「打上花火」。
「もしも、あのとき…」「もう一度、時間を戻せたら…」
2017年夏、最高峰のスタッフ・キャストが、未体験の恋の奇跡を打ち上げる。
2.映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のあらすじとネタバレ
夏休み、とある海辺の町。
花火大会をまえに、「打ち上げ花火は横からみたら丸いのか?平べったいのか?」で盛り上がるクラスメイト。
そんななか、典道が想いを寄せるなずなは母親の再婚が決まり転校することになった。
「かけおち、しよ」
なずなは典道を誘い、町から逃げ出そうとするのだが、母親に連れ戻されてしまう。
それを見ているだけで助けられなかった典道。
「もしも、あのとき俺が…」
なずなを救えなかった典道は、もどかしさからなずなが海で拾った不思議な玉を投げつける。
すると、いつのまにか、連れ戻される前まで時間が巻き戻されていた…。
何度も繰り返される一日の果てに、なずなと典道がたどり着く運命は?
3.映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の感想と評価
ネットの評判を見るとかなりの部分で批判的な意見が見受けられます。
これは昨年、特大ヒットを記録した『君の名は。』の存在が大きいでしょう。
現実を変えるため(好きな女の子を救うため)に物理法則を無視して、必死に行動する。主人公の行動原理がとてもよく似ています。
アニメであること、主演が俳優であること、配給が東宝であること、そしてすっかり有名になった川村元気がプロデュースしていること。
ここまで類似点があると観る前から意識せざるを得ません。
原作は「if」をテーマにしたドラマがあまりにも好評で後に映画化もされた岩井俊二の同名作。
岩井俊二はその独特な映像表現が岩井美学と称され、多くのファンを獲得しています。90年代後半から00年代前半を代表する監督です。
個人的には近年手掛けたドラマ『なぞの転校生』や『リップヴァンウィンクルの花嫁』も好みでした。
脚本を担当した大根仁は元々バラエティ出身の人。深夜ドラマをいくつか手掛けていましたが、『モテキ』が人気を博しこちらもやはり後に映画化されました。
その後は、『恋の渦』や『バクマン。』に『SCOOP!』などを監督し、こちらは2010年代を代表する映画監督と言っていいでしょう。
9月には『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』の公開も控えています。
総監督を務めた新房昭之とアニメーション制作のシャフトによるタッグは、『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズや「物語」シリーズといった人気作品をいくつも生み出してきました。
問題はそれぞれに一定のファンがいて、独自の表現を得意とするこの布陣が噛み合っているかどうか。
率直に書いてしまえばかなり歪なバランスでした。
それぞれのファンがそれぞれの感覚で気になる部分が積み重なり、相対的に満足度が低くなってしまっているのだと思います。
アニメ好き、映画好き、サブカル好き、俳優好きなど全方位に満遍なく向けたせいでその食い合わせの悪さが余計に際立ってしまっていた印象でした。
確かに菅田将暉の声優は慣れていない感じが浮いてしまっていましたが、広瀬すずは『バケモノの子』で経験済みのため、さすがの一言。
彼女の少女性と大人っぽさを行き交う声の魅力は素晴らしいと思います。
決してお話としては悪くないと思います。
原作では一回きりだったやり直しを、“もしも球”によって何度か繰り返していくという設定が間違いなく今作の面白い部分です。
そのことによってノスタルジーさを失ったとしても、突き抜けていくエモーションが表現出来ればそこに新たな『君の名は。』が生まれる可能性はありました。
しかし、本作は原作と道を変えそのままよりぶっ飛んだ方向へと加速していくのかと思いきや、割と無難な結末に着地します。
要するに、青春時代は誰しもが無限の可能性(if)を秘めていて、それはあなた次第でどうにでもなるよということ。
実際、最初になずなときちんと向き合うことすら放棄した祐介はその可能性を自ら狭めてしまったわけです(それでもまだifがありますが)。
不可逆性という青春の持つ美しさをかなり薄めてまで描いた結末がこれというのはおそらく『君の名は。』を経験した今には物足りなく感じるでしょう。
決して悪くないしメッセージも納得のいくものなのに、突き抜けたものを感じることはできないのは確かです。
改めて映画をヒットさせる難しさについて考えさせられます。
公開時期のベストなタイミングや着地のバランス感覚、これはその時代によって変わるので本当に読めないし難しいものです。
まとめ
打ち上げ花火が平べったいのか、それとも丸いのか。
この議論は恐らく女性というものを暗示しています。
女心と秋の空という言葉があるように女性は、男にとって真の意味では理解することができない対象です。
特に中学生の頃なんて妄想ばかりでその極致でしょう。
平べったいのか、丸いのか。
それを考えるのがまた楽しかったりもするのですが。
学生時代は男も女もまだ定まりきっていない、何者でもないからこそ、逆に言えば何にでもなれる可能性を秘めている。
青春映画としては正しく着地をしてみせた本作は、やっぱりそんなに痛烈な批判を浴びるほど酷いのかとまた悩んだり。
観る角度によってその姿をコロコロと変える。
映画とはやはり面白いものです。