その旅路の先に、新たな運命(さだめ)。
不死の怪物カバネとの生存を賭けた戦いを中心に、人間の生き様を描くアニメ『甲鉄城のカバネリ』。
高い評価を得たテレビシリーズの新作にあたる映画『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』が、2019年5月10日より2週間限定で劇場上映されています。
独特の世界観を持つ、『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』をご紹介します。
CONTENTS
映画『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』の作品情報
【公開】
2019年5月10日(日本映画)
【監督・脚本】
荒木哲郎
【構成】
大河内一楼
【キャラクター原案】
美樹本晴彦
【キャスト】
畠中祐、千本木彩花、内田真礼、増田俊樹、伊瀬茉莉也、逢坂良太、佐藤健輔、四宮豪、佐藤拓也、沖佳苗、マックスウェル・パワーズ、三木眞一郎、花輪英司、逢田梨香子、鷲見昂大、ボルケーノ太田、篠原孝太朗、遠藤大智、大西弘祐、大隈健太、布施川一寛、奥田寛章、東龍一、村上裕哉、桜井智、梶裕貴
【作品概要】
不死の怪物カバネに支配された世界を舞台に、カバネと人間の間の存在、カバネリになってしまった主人公、生駒の戦いを描く人気アニメの完全新作。
監督は『進撃の巨人』で知られる荒木哲郎。
テレビアニメ版『甲鉄城のカバネリ』のあらすじ
産業革命により、世界中が近代化へ移り変わろうとしていた時代。
突然、カバネと呼ばれる怪物が出現します。
カバネに噛まれた者も、死後に蘇りカバネとなり、倒すには鋼鉄の皮膚で覆われた心臓を撃ち抜くしかありません。
爆発的に増殖したカバネは、極東の島国でもある日ノ本にも押し寄せます。日ノ本の人々は「駅」と呼ばれる砦を作り、そこに閉じ籠もる事で、カバネの驚異から身を守っていました。「駅」を行き来する方法は、「駿城(はやじろ)」と呼ばれる蒸気機関車のみで、人々は「駿城」を使用して物資の輸送などを行っていました。
「顕金駅(あらがねえき)」で暮らす蒸気鍛冶師の少年、生駒はカバネに怯えて暮らす人々や、下の身分の者に横柄な態度を取る、武士に苛立ちを感じていました。
生駒はカバネに立ち向かう為に、独自に開発した「ツラヌキ筒」で戦おうとします。
ある日、「顕金駅」にカバネの群れが侵入し、生駒は「ツラヌキ筒」で応戦しますが、カバネに噛みつかれてしまいます。
自らもカバネになりかけた生駒ですが、カバネと化す原因のウィルスが脳にまで達するのを阻止できたことで、カバネと人間の間である「カバネリ」となります。
カバネによって滅ぼされた「顕金駅」を脱出する為、「駿城」の「甲鉄城」が発車します。生駒は「甲鉄城」に乗り込み、同じカバネリである少女の無名、城主亡き後「甲鉄城」のリーダーとなった菖蒲(あやめ)、菖蒲の護衛である凄腕の武士・来栖(くるす)達と共に、幕府の要害である「金剛郭」を目指します。
道中、戦う事を覚えたカバネ「ワザトリ」や、カバネの集合体である「黒煙」などとの死闘を繰り広げてゆくうちに、絆を深めていく「甲鉄城」の人達。
ただ、生駒は「弱き者は滅ぶのみ」と無名に教えた、「兄様」と呼ばれる存在を気にするようになります。
「金剛郭」を目指す道中の「倭文駅」で、生駒達はカバネを狩る特殊部隊「狩方衆」を率いる美馬と遭遇します。彼こそ、無名が「兄様」と慕う男でした。
人々に英雄と称される美馬ですが、無名に「弱き者は滅ぶのみ」と教えた美馬を生駒は信用しません。
やがて、無名をカバネリに変えた元凶が美馬である事が判明します。美馬の目的は「駅」に閉じ籠もり、戦おうとしない人々に、カバネを差し向け滅ぼす事でした。
また、美馬の手に落ちた無名は、カバネリを心臓にし人工的に作られた集合体「ヌエ」と化し、難攻不落と呼ばれた「金剛郭」を陥落させます。
美馬への怒りが爆発した生駒は、美馬と対峙し無名を救い出します。そして、無名は自らの手で、美馬の暴走を止めるのでした。
崩壊した「金剛郭」を脱出した「甲鉄城」は、土地を再生させる事を目指し、再び「顕金駅」を目指して出発します。
そして、生駒は無名を「必ず人間に戻す」と約束するのでした。
映画『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』のあらすじとネタバレ
「顕金駅」を目指して旅を続ける「甲鉄城」は、日本海に隣接し、カバネにより制圧され荒廃した駅「海門(うなと)」に辿り着きます。
重要拠点とされる「海門」を取り返す為、玄路、虎落、海門の民達は連合軍を結成、カバネとの攻防戦に「甲鉄城」も参戦する事になりました。
カバネとの戦いの中で、生駒は「海門」のカバネが統率されている事に、不気味さを感じます。
一方、無名は生駒にプレゼントする為の手袋を編んでいました。連合軍の会議の日、無名は完成した手袋を生駒に渡そうとしますが、カバネの不気味な動きが気になっている生駒は、冷たくあしらってしまいます。
連合軍の会議では、巨大な大砲「鳴神(なるかみ)」で、カバネリに覆われた城に砲撃をし、一網打尽にする作戦が決定します。
生駒は、第6地区へ集まっているカバネの、統率の取れた動きを警戒し「舵取りがいる」と忠告しますが、連合軍は生駒の忠告を聞かないどころか、カバネリである生駒が、カバネと繋がっていると疑念を抱きます。
住居に戻った生駒は、1人で第6地区を調査しようと準備を進めますが、生駒の部屋を訪ねた無名に止められます。生駒は誰も自分の忠告を聞かない事に感情的になり、無名に襲いかかりますが、警備兵に取り押さえられます。
生駒は「カバネの疑いのある者は、3日間拘束し、発症しなければ問題ない」という規則に従い、自ら独房に入ります。
様子のおかしい生駒を心配する菖蒲と来栖。しかし生駒の言葉を信じ、「甲鉄城」の乗組員で第6地区に調査へ行きます。
しかし、第6地区の調査の途中で、カバネの大群が現れ、襲いかかってきます。避難する「甲鉄城」の乗組員達を差し置いて、無名は1人で城の本丸へと突入していきます。
映画『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』感想と評価
テレビ放送版の、完全な続編となる本作。
カバネリという不死の存在に支配された世界を舞台に、描かれているのは「恐怖心」です。
主人公の生駒は、カバネに襲われた妹を、カバネへの恐怖心から救う事ができなかった過去を悔やみ、カバネの研究を独自に行い「ツラヌキ筒」によってカバネに対抗しようとします。
また、カバネに噛まれた者もカバネにされてしまう為、人々の間に疑心暗鬼が巻き起こっており、恐怖による群集心理を利用することで民衆を混乱の渦に叩き落としたのが、テレビシリーズの敵であった美馬でした。
そして、本作『海門決戦』では、カバネリと化した城主・景之に恐怖心を抱いた民衆が事の発端となっています。
人間は「恐怖心」という感情と、どう向き合えば良いのでしょうか?
それも、作品内で語られています。
妹を救えなかった生駒は、目の前の人間を何があっても救い出そうとし、痛々しくもあるその姿は、「弱き者は滅びるだけ」という無名の考えを変えていきます。
生駒が頻繁に口にするセリフ「俺の命なんてどうでもいい」というセリフに、生駒の信念や覚悟が込められています。
また、「甲鉄城」のリーダーでもある菖蒲は「武器を向けるは人ではなく、人を疑う心」と語り、疑心暗鬼が巻き起こる世界で、秩序を保つ事の重要さを解き、人々をまとめ上げます。
恐怖心とは、生駒のように克服できる感情であり、克服するには人を信頼する秩序が大事なのです。
秩序を保つには、時に戦う事も大事ですが、戦う相手は同じ人間ではありません。
本作では、これまで怪物としてしか語られていなかったカバネが実は恐怖を抱いている事、カバネも同じ人間という事に生駒は気づきます。
「甲鉄城」の人々は、故郷である「顕金駅」へ戻り、畑を耕して米を食べられる世の中を作る事を目的にしています。
今後はカバネを倒すのではなく、救う展開になるのでしょうか?
変化のあった生駒と無名の関係も含め、今後も目が離せないシリーズです。
まとめ
時代劇にゾンビを組み合わせた『甲鉄城のカバネリ』。
異色作と感じる方もいるかもしれませんが、カバネが増殖を続ける混沌とした世界で「恐ろしいのは人間」という事を描いた作品で、ジョージ・A・ロメロのゾンビ作品を彷彿とさせる内容です。
テレビ版の後半では、カバネが美馬の道具に成り下がった印象でしたが、『海門決戦』ではカバネと人間の攻防戦をしっかりと見せており、カバネの恐ろしさが強調されています。
まだ未見の方で、ゾンビ映画好きの方には、是非ともお勧めしたい作品ですよ。