細菌兵器を使用した恐るべき計画の阻止に挑む、6代目ジェームズ・ボンド最後の戦い
アクションスパイ映画の金字塔「007」シリーズ。
25作目となる映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、2006年の『007/カジノ・ロワイヤル』から6代目のジェームズ・ボンドを演じて来た、ダニエル・クレイグ最後のボンド映画となります。
ジェームズ・ボンドといえば、これまでショーン・コネリーや、ロジャー・ムーアなどの名優が演じており、どんなピンチも、颯爽と切り抜けるヒーローというイメージが強いキャラクターでした。
ですが、ダニエル・クレイグの「007」シリーズは、新たな時代のジェームズ・ボンドに挑んでおり、紆余曲折あったシリーズとも言えるかもしれません。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の魅力をご紹介すると共に、ダニエル・クレイグの「007」シリーズについても、振り返っていきます。
映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
No Time to Die
【監督・脚本】
キャリー・ジョージ・フクナガ
【共同脚本】
ニール・パービス、 ロバート・ウェイド、フィービー・ウォーラー=ブリッジ
【キャスト】
ダニエル・クレイグ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、ロリー・キニア、レア・セドゥー、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、アナ・デ・アルマス、ダリ・ベンサーラ、デビッド・デンシック、ラシャーナ・リンチ、ビリー・マグヌッセン、ラミ・マレック、クリストフ・ワルツ
【作品概要】
イアン・フレミングの小説を映像化した、「007」シリーズの25作目。
15年間、6代目のジェームズ・ボンドを演じたダニエル・クレイグ、最後のボンド映画となります。
前作から引き続き、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、ベン・ウィショーなど、シリーズお馴染みのキャストが続投している他、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)で、フレディ役を演じ高い評価を得た、ラミ・マレックが、新たな敵サフィン役で出演しています。
監督は『IT /“それ”が見えたら、終わり。』(2017)で共同脚本を務めた、キャリー・ジョージ・フクナガ。
映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のあらすじとネタバレ
MI6の諜報員で「007」のナンバーを持つ男、ジェームズ・ボンド。
ボンドは秘密結社「スペクター」を壊滅させ、「スペクター」の首領であり、義理の兄でもあるブロフェルドとも決着をつけた事で、MI6を引退します。
引退したボンドは、「スペクター」の幹部で殺し屋だった父親を持つ、マドレーヌ・スワンと共に静かな毎日を送っていました。
ある時、マドレーヌとイタリアを訪れたボンドは、マドレーヌとの未来を考え、かつて本気で愛していた女性、ヴェスパーの墓参りに行きます。
しかし、ヴェスパーの墓には「スペクター」の指輪が置かれており、突然墓が爆発し、ボンドは「スペクター」の残党に襲われます。
間一髪で逃げ出し、マドレーヌのいるホテルに逃げ帰ったボンドでしたが、自身の動きが筒抜けだったことから、マドレーヌの裏切りを疑います。
その後も「スペクター」の残党からの襲撃を切り抜け、マドレーヌと共に駅に到着したボンドは、マドレーヌを強引に列車に乗せ、永遠の別れを誓います。
5年後、あるウィルス兵器の研究所が襲われます。
研究所のウィルス兵器が盗まれただけでなく、ロシア人科学者のヴァルド・オブルチェフも何者かに誘拐されます。
一方、マドレーヌと別れたボンドは、ジャマイカで暮らしていましたが、そこへCIAの局員で、ボンドの友人でもあるフェリックス・ライターが、アメリカ総務省のアッシュと共に現れます。
フェリックスは、誘拐されたオブルチェフの捜索をボンドに依頼します。
場所はキューバで、「そこに『スペクター』の残党が集まる」とも知らされましたが、ボンドは自身が引退した身であることを理由に断ります。
フェリックスたちと別れたボンドは、ノーミと名乗る黒人女性と出会い、自宅に招きます。
ですが、ノーミはMI6の諜報員で、ボンドの「007」を引き継いでいました。
ノーミは、一連の事件が「ヘラクレス計画」と関係があることを伝え、ボンドに協力を求めますが、ボンドは再び断ります。
ですが「ヘラクレス計画」は、ボンドのMI6時代の上司、Mが携わっていた計画だった為、気になったボンドは、フェリックスの誘いを受けキューバに向かいます。
映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』感想と評価
MI6のスパイである、ジェームズ・ボンドの活躍を描いた「007」シリーズの25作目にして、6代目ボンド、ダニエル・クレイグ最後のボンド映画となる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。
ジェームズ・ボンドと言えば、どんなピンチも華麗に切り抜け、世界の危機を何度も救う、ヒーローとしてのイメージが強いかもしれません。
しかし、時代は進み、同じスパイが主人公の作品でも「ミッション:インポッシブル」シリーズや「ボーン・アイデンティティー」シリーズのように、主人公が傷つき、ボロボロになりながらも戦い続ける作品が、観客に受け入れられるようになりました。
その時代の流れから、2006年の『カジノ・ロワイヤル』から始まった、ダニエル・クレイグのボンド映画は、これまでとは違う、人間的なジェームズ・ボンドに挑んだシリーズであったと言えます。
『カジノ・ロワイヤル』は、00機関に配属されたばかりの、新人の頃のジェームズ・ボンドが描かれています。
ボンドは敵の罠に落ち、ボロボロになりながら戦い続けるだけでなく、1人の女性を心から愛し、自分の仕事に疑問を抱き始めるなど、ボンドのプレイボーイのイメージも打ち消した作品で、「007」シリーズお馴染みの秘密兵器も登場しない、これまでのイメージを一新するリニューアルを行い、大ヒットを記録しました。
続く『慰めの報酬』(2008)は、『カジノ・ロワイヤル』の1時間後の話で「007」シリーズ史上初の、完全な続編となる作品でした。
『慰めの報酬』で、ボンドは自身の過去と葛藤に決着をつけて、ここから新たなボンドの活躍が始まる、往年のシリーズに近付くかと思われましたが、『慰めの報酬』は『カジノ・ロワイヤル』と比べるとインパクトが弱い作品となってしまい、新たなボンド像が必要である事を、再認識させられた作品となってしまいました。
『慰めの報酬』の続編である『スカイフォール』(2012)では、ボンドが「今の時代に合わないロートル」という扱いになっています。
それでも、一度姿を消したボンドがスパイとして復帰し、自身の裏側とも言える存在、ラウル・シルヴァと戦い、そしてその果てに待つ悲劇など、かなり重厚なドラマが展開され、『スカイフォール』は高い評価を受けました。
2015年に公開された『スペクター』は、「007」シリーズを代表する敵キャラ、ブロフェルドが30年以上ぶりに登場し、往年の「007」シリーズに近い内容となっていました。
そして『ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、『スペクター』で知り合った、マドレーヌとの未来の為に、『カジノ・ロワイヤル』で死別したかつての恋人、ヴェスパーの墓に許しを請うという序盤からも分かる通り、ダニエル・クレイグのボンドシリーズの、集大成的な作風となっています。
ただ、ヴェスパーの墓を「スペクター」に爆破されて以降、イタリアでのカーチェイス、キューバでの銃撃戦、孤島を舞台にしたサフィンとの最終決戦など、怒涛の展開が続きます。
『ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、「007」シリーズ史上最長となる、2時間40分の上映時間なのですが、あっという間に感じる程でした。
また、サフィンの秘密基地に潜入し、ボンドとサフィンが対面して一度は話し合うなど、往年のシリーズを意識した展開だけでなく、新たな「007」が女性のスパイだったり、ボンドの子供が登場したりと、今の時代に合わせた新しい要素も盛り込まれています。
『ノー・タイム・トゥ・ダイ』は一言で表現すると「めちゃくちゃ面白い」のですが、ただ、ボンドの死をもって完結する、本作のラストは賛否両論あるのではないでしょうか?
人間的なボンドを打ち出した、ダニエル・クレイグのボンドシリーズの最後と考えると、納得できる部分はありますが、ただ、ジェームズ・ボンドには、どんなピンチも切り抜け、生き残った上で終わってほしかった部分があります。
MI6を引退して、ボンドカーで颯爽と走り去る、『スペクター』のエンディングが好きだったので、尚更そう感じるのかもしれません。
ただ『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のラストを踏まえて、もう一度『カジノ・ロワイヤル』からシリーズを見直すと、これまでとは違った味わいがあるのかもしれないですね。
まとめ
『ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、これまでの集大成的な作品ということで、過去4作品を観賞していれば更に楽しめます。
まだ未見という方は、本作は前作『スペクター』と密接した物語になっているので、最低限『スペクター』は観ておいた方がいいでしょう。
また、黒幕が細菌兵器を使った計画を企てたり、ボンドが結婚を考えたりなど、1969年の『女王陛下の007』に近い要素がいろいろ入っているので、見比べても面白いかもしれません。
ダニエル・クレイグのボンドシリーズは終わりですが、新たなジェームズ・ボンド役を、2022年から探し始めるという話も出ていますので、おそらく、また新たな「007」が誕生するのでしょう。
新たなジェームズ・ボンドは、誰が演じてどんなキャラクターになるのか?
続報を待ちながら、楽しみにしていきたいです。