加門七海のホラー小説『祝山』が映像化!
呪術や民俗学に造詣が深く、数々の傑作ホラーを世に送り出してきた加門七海。このたび加門七海自身の実体験を下敷きに綴ったロングセラー小説『祝山』が映画化されます。

(C) 2026映画「祝山」製作委員会
本作は、決して足を踏み入れてはならない場所にまつわる忌まわしい記憶と、そこへ踏み入った者たちに降りかかる理不尽な災いを描く衝撃作です。
肝試しと称して、群馬県の山の中にある工場跡地(製材所跡地)を訪れたあるグループに奇妙なことが起こり、帰りに見つけた神社でお祓いをしたところ、帰宅してからも不可思議な現象が次々と彼らを襲いました。
我慢しきれなくなったメンバーの一人が、知人のホラー作家・鹿角に話を聞いてほしいと相談を持ち掛けます。あまり乗り気でない鹿角ですが、話を聞いているうちに、彼女までも恐ろしい災いに引き込まれて……。
2026年6月12日(金)の映画公開に先駆けて、ホラー小説『祝山』をネタバレありでご紹介します。
小説『祝山』の主な登場人物
【鹿角南】
ホラー作家。肝試しをしたグループから怪奇現象の相談を受ける
【若尾木綿子】
肝試しのグループ参加者。
【矢口朝子】
肝試しのグループ参加者。
【田崎正人】
肝試しのグループ参加者。
【小野寺淳】
肝試しのグループ参加者。
小説『祝山』のあらすじとネタバレ

加門七海『祝山』(光文社文庫)
オカルトものだけを書き続けてきたホラー作家の鹿角南。今回は「肝試し」をテーマにした小説を執筆中ですが、筆の進み具合が悪く四苦八苦していました。
正直なところ、鹿角は肝試しに行く者は、完全な馬鹿だと思っていましたから、小説のキャラクターに対する自分自身の批判的な視線が、執筆の進まない原因でした。
そんなある日、大学時代の友人との共通の知人である矢口朝子から、久しぶりにメールが届きました。
はじめは食事の誘いでしたが、その後のメールで、友人たちと「肝試し」に行き、気持ち悪いことがあったので帰りにお祓いをしたけれど、そのあとから変なことが立て続けに起こっているから相談に乗ってほしいと頼まれました。
鹿角は自業自得だと思いつつも、小説のネタになるのではと思い、取材をかねて矢口たちに会うことにします。
翌週の木曜日、鹿角は指定された中華料理店へ行きました。鹿角を待っていたのは、田崎正人、小野寺淳、若尾木綿子、そして矢口朝子の4人の男女でした。
口火をきった田崎の話によると……、
彼らは肝試しで群馬県の山中にある製材所の跡地に、ゴールデンウイークの直後に行きました。長瀞で遊んだあと、夕刻前に現地に向かったと言います。
現地の製材所には作業場と事務所らしき建物がありました。事務所の中は荒れ放題に荒れていました。
彼らは‟出る”という場所を求めて、奥の住居の方へ行きました。そこには朽ち果てた縁の下から畳を突き抜けて、竹や樹木が生えています。
彼らもっと奥へ進もうとしたとき、参加者の若尾が突然逃げ出し、他の3人も奥に黒い仏壇とそこにころがっている3つの位牌を見て、慌てて若尾の後を追って建物の外へ出ました。
やぶ蚊にも襲われ、気味が悪くなった4人は近くの神社で祝詞を唱え、それで悪いものを祓ったつもりだったと言います。
ところがその帰り道で、車のスピードが出なくなったり、帰ってから若尾が熱を出して寝込んだりと、おかしなことが続いたのだそうです。
その中でも4人は変な写真が撮れたことを気にしていて、鹿角も確認のために写真を見せてもらいました。
写真にはオーブと呼ばれる心霊現象が映っているように見えましたが、すぐに撮影時の手ブレだと分かって、一同一安心をします。
食事会はその後、お開きになりました。鹿角はそこで、若尾だけが本当に怯えていたことが気になり、連絡をとってみることにしました。
後日、再び会った若尾は、あの住居跡で一番先に逃げ出したのは、奥の床の間にあった床柱が突然ぐにゃっと曲がったのを見て怖くなったからで、仏壇などなかったと言います。
明らかに矢口たちとは見えるものが違う若尾。もしかすると、若尾も霊に敏感な体質かもしれません。
小説『祝山』の感想と評価
これまで数々の傑作ホラー小説を生み出してきた加門七海。2007年に出版された本作は、廃墟での肝試しをきっかけに怪異に巻き込まれる人々を描いたホラーで、作者の実体験を基にしたリアルな恐怖を描いています。
主人公のホラー作家鹿角は、霊に敏感な体質を持っています。また、霊的な存在には触れてはいけないと思っていますし、入ってはいけない場所である禁足地には絶対の敬意を払います。
そんな謙虚な気持ちの主人公でさえ、話を聞いただけでその怪異に巻き込まれていきました。
解決策をやっと見つけ出し、山から持ち出した木切れを元の場所に返そうとします。
無事に返納した人はまだ救われますが、投げ入れるという乱暴な行為で返した人には、まだまだ呪いはかかっていたようです。
鹿角は霊の存在を感じるだけで、これといった能力を持っていませんが、‟自らの日常を脅かされる恐怖”に飲まれながらも、その怪異ときちんと対峙します。そして、人として決してやってはいけないことは理解しています。
土地に根付く不浄なものを軽視する人々の愚かさと、それに対する山の怒りという恐怖は、身近にも存在するものです。
作者は自分の実体験から、このことを強くアピールしたかったのでしょう。
読み終わって、作品全体に漂う不気味で薄気味悪い世界観にぞっとするのに違いありません。
映画『祝山』の見どころ
映画『祝山』の脚本・監督を務めるのは、これまでホラー作品で数々の映画祭受賞をし、本作が劇場長編デビューとなる武田真悟です。
ホラー作品のプロが、原作の持ち味である不穏な雰囲気をどこまでリアルに映像化できるのかと期待は高まります。
また、主人公の鹿角南を演じるのは、『さよならドビュッシー』(2013)や『早乙女カナコの場合は』(2025)などに出演した橋本愛です。
ここ数年、大河ドラマなどでも活躍する橋本愛が語る本作の魅力は、何といっても「山のパワーの凄さ」!。
インタビューでは、「祝山」というめでたい名前の真相に驚き、見たまま景色の一部となっている恐怖を訴えます。そして、「どうかこの映画を見た人が、感染しないようにと祈るばかりです」とも語りました。
「祝山」の恐怖を感じる映像も十分期待できますが、『貞子3D』(2012)で‟貞子”を演じた橋本愛が魅せる、‟霊を感じることのできる小説家”という、‟貞子”とは対照的な演技も見どころの一つと言えるでしょう。
映画『祝山』の作品情報

(C) 2026映画「祝山」製作委員会
【日本公開】
2026年(日本映画)
【原作】
加門七海『祝山』(光文社文庫)
【監督・脚本】
武田真悟
【キャスト】
橋本愛、石川恋、久保田紗友、草川拓弥、松浦祐也、利重剛
まとめ
2026年6月12日(金)に映画公開されるホラー映画『祝山』の原作小説をネタバレありでご紹介しました。
安易な気持ちから廃墟あとの「肝試し」を試みたグループのメンバーたちが、次々と怪異に襲われます。相談を受けたホラー作家にもそれは連鎖していきました。
足を踏み入れてはならない「禁足地」。そこには「禁足地」となるだけの理由があり、それを脅かすものには「祟り」ともいえる現象が襲い掛かるのです。
現実世界でみられる非科学的な超自然現象には、崇拝の念を持って接した方がいいのかもしれません。

































