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『九月と七月の姉妹』あらすじ感想と評価考察。常に行動を共にする姉妹の絆と歪んだ狂気を描く

  • Writer :
  • 松平光冬

絶対的主従関係にある姉妹の歪んだ絆

2024年の第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品された映画『九月と七月の姉妹』が、2025年9月5日(金)より、渋谷ホワイトシネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国ロードショーとなります。

イギリスの作家デイジー・ジョンソンによる同名小説をベースに、生後10カ月違いの姉妹の歪な絆を描いたドラマの見どころをご紹介します。

映画『九月と七月の姉妹』の作品情報

(C)Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation, ZDF/arte 2024

【日本公開】
2025年(アイルランド・イギリス・ドイツ合作映画)

【原題】
September Says

【監督・脚本】
アリアン・ラベド

【製作】
チェルシー・モーガン・ホフマン、ララ・ヒッキー、エド・ギニー、アンドリュー・ロウ

【共同製作】
レイチェル・ダーガベル、ビオラ・フーゲン、マイケル・ウェバー、セシル・トル=ポロノウスキー

【原作】
デイジー・ジョンソン著『九月と七月の姉妹』(東京創元社)

【撮影】
バルタザール・ラブ

【編集】
ベッティナ・ボーラー

【音楽】
ジョニー・バーン

【キャスト】
ミア・サリア、パスカル・カン、ラキー・タクラー、ニーブ・モリアーティ、スージー・ベンバ、モリー・ニルソン

【作品概要】
『ロブスター』(2016)、『アサシン・クリード』(2017)など俳優としても活躍し、ヨルゴス・ランティモス監督の公私パートナーであるアリアン・ラベドの長編初監督作。

イギリスの作家デイジー・ジョンソンによる同名長編小説を原作に、強い主従関係にある姉妹セプテンバーとジュライに起こった出来事を描きます。

姉妹役のミア・サリアとパスカル・カンは本作がスクリーンデビューとなり、Netflixドラマ『セックス・エデュケーション』のラキー・タクラー、『哀れなる者たち』(2024)のスージー・ベンバらが脇を固めます。

音楽・サウンドデザインを、『関⼼領域』(2024)でアカデミー賞⾳響賞を獲得したジョニー・バーンが担当。

2024年の第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品されました。

映画『九月と七月の姉妹』のあらすじ


(C)Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation, ZDF/arte 2024

わずか10カ月違いで生まれ、幼い頃から常に一心同体だった姉妹セプテンバーとジュライ。

我の強い姉セプテンバーと内気な妹ジュライは支配関係にありながら、お互い以外はは誰も必要としないほど強い絆で結ばれていました。

しかし、姉妹は学校で起きた事件をきっかけに、母シーラに連れられてアイルランドの海辺近くにある亡父の家に引っ越すことに。

そこで新生活を始めるも、やがてジュライはセプテンバーとの関係の変化に気づき……。

映画『九月と七月の姉妹』の感想と評価


(C)Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation, ZDF/arte 2024

映画界注目のムーブメント“ギリシャの奇妙な波”

カンヌ国際映画祭審査員賞に輝く『ロブスター』、主演のオリヴィア・コールマンがアカデミー主演女優賞を獲得した『女王陛下のお気に入り』(2018)、同様に主演のエマ・ストーンがアカデミー主演女優賞を獲得した『哀れなる者たち』など、新作を発表する度に評価を得ているヨルゴス・ランティモス監督。

そのランティモスが中心となり発足した“ギリシャの奇妙な波”は、母国ギリシャの経済的不況を受け、同じ志を持つフィルムメーカーたちが映画製作のネットワークを構築したムーブメントで、経済危機や家庭内不安、社会にはびこるヘイトや暴力の実態など、従来の商業作品とは一線を画すスタイルの作風が特色となっています。

その“ギリシャの奇妙な波”の系譜を継ぐ監督として注目される1人がアリアン・ラベド。俳優としても活動し、ランティモスのパートナーでもある彼女の長編デビュー作が、本作『九月と七月の姉妹』です。

原作はイギリスの作家デイジー・ジョンソンの第二長編『Sisters』(日本語タイトル『九月と七月の姉妹』)。“ホラー小説の帝王”スティーヴン・キングの愛読者だった彼女は、ホラーというジャンルに捧げるラブレターとして『Sisters』を執筆しました。

「私の心を深く打つ普遍的なテーマ、姉妹関係、家族の絆、遺伝、思春期、欲望、権力といったものを取り上げている」と、長編デビュー作に『九月と七月の姉妹』を選んだラベド。“ギリシャの奇妙な波”を担う者としても、まさに最適な題材と言えましょう。

観る者を取り込む不安と不穏

オックスフォードでシングルマザーのシーラと暮らす、年齢差10カ月の姉セプテンバーと妹ジュライ。

我の強いセプテンバーは日常生活において、英語圏の子どもの遊び「Simon says(サイモンは命じる)…」を応用した「September says(セプテンバーは命じる)…」で、内向的なジュライを従順させます。

学校でいじめグループの標的にされるジュライと、その報復としていじめグループに仕返しをするセプテンバー。

絶対的主従関係で結ばれていた2人でしたが、ある日のいじめを発端とした事件をきっかけに、一家はアイルランドの海辺にある長年放置されていたシーラの亡き夫の実家〈セトルハウス〉に引っ越すこととなります。

前半はオックスフォード、後半はセトルハウスでの家族生活が描かれていく本作ですが、大きな特徴として、細かな描写が徹底的に省かれていることが挙げられます。


(C)Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation, ZDF/arte 2024

なぜセプテンバーはサディスティックなまでに妹を支配しようとするのか、なぜジュライは姉の命令に従う一方なのか、そして母のシーラはなぜ子育てに関するカウンセリングを受けているのか、などといった理由は具体的に描かれず、何よりも一家がセトルハウスに移った理由も、すぐには把握できません。

「観客の皆さんには、登場人物それぞれの“内なる論理”に寄り添い、目の前で展開していく物語の流れを追ってほしい」と語るラベド監督は、説明描写を省くことで、ストーリーへの関心欲を高める演出を行っています。

前半と後半で演出方法を変えているのも注目したいところ。前半は16ミリ、後半は35ミリフィルムと撮影フォーマットを切り替え、前半では使っていない劇伴も、後半では一転して観る者を不安や不穏な予兆で充たしていくメロディを多用。『関⼼領域』でアカデミー賞音響賞に輝いたジョニー・バーンの手腕が、ここでも冴えわたっています。

まとめ


(C)Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation, ZDF/arte 2024

セトルハウスでの生活のなかで、命令ゲーム「セプテンバーは命じる…」は次第に緊張感を増し、姉との関係が変化しはじめていることに気づくジュライ。

物語が終盤に近付くにつれ明かされていく、家族を取り巻く謎。はたして姉妹が行き着く先は?

原作者のジョンソンがスティーヴン・キングの愛読者だったとは前述しましたが、映画版となる本作では、そのジョンソンの意図を汲んだかのように、キングのある小説のエッセンスを上手く取り込んだ演出にも唸らされます。

新進気鋭のフィルムメーカー、アリアン・ラベドによる、緊張と不気味さを兼ねそろえた姉妹愛の物語にご期待ください。

『九月と七月の姉妹』は、2025年9月5日(金)より、渋谷ホワイトシネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国ロードショー。

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)


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