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Entry 2022/06/21
Update

アニメ『スプリガン』あらすじ感想と解説評価。続編シリーズ2を原作から予測すると共に“大友克洋版”との違いも考察!

  • Writer :
  • 糸魚川悟

人類の未来を守るため、「オーパーツ」をめぐる戦いが始まる

「アンティキティラ島の機械」や「ナスカの地上絵」など、製造されたと推測される年代の技術では実現不可能な工芸品の数々。

それらは「オーパーツ」と呼ばれ、遥か過去に現代の技術を越えるような文明があったのかもしれないと言う「超古代文明」論を指し示す要素のひとつとなっています。

今回はそんな「オーパーツ」を題材としたNetflix独占配信アニメ『スプリガン』(2022)の訴えるメッセージとシーズン2の展開を原作から紐解いていこうと思います。

アニメ『スプリガン』の作品情報

【配信】
2022年(Netflix独占配信)

【監督】
小林寛

【原作】
たかしげ宙、皆川亮二

【キャスト】
小林千晃、阿座上洋平、子安武人、浜田賢二、伊瀬茉莉也、稲田徹、早見沙織、村瀬歩、菅生隆之

【作品概要】
1989年から1996年までの間「週刊少年サンデー」で連載され、単行本の累計発行部数が1000万部を突破した、たかしげ宙と皆川亮二による同名漫画を「Netflix」がアニメ化した作品。

映画『サマーゴースト』(2021)で主演を務めた小林千晃が主人公の御神苗優の声を演じ、アニメ「キズナイーバー」を手掛けた小林寛が監督を務めました。

アニメ『スプリガン』のあらすじ

『スプリガン』オープニング映像スペシャルver.

ある場所で発見された、現代の技術でも再現はおろか解析すら出来ない超古代文明による金属プレート。

そこに記載された「悪しき者より遺産を守れ」と言う言葉を信じ設立された、「オーパーツ」の保護・封印を目的とした組織「アーカム」。

高い戦闘力と揺るぎない使命感を持った「アーカム」の上位エージェントのことを人々は「スプリガン」と呼称。

高校生でありながら世界各国の組織が恐れる「スプリガン」の御神苗優は、世界各地で「オーパーツ」を守る戦いに奔走していました。

現代に蘇る傑作少年漫画

「週刊少年サンデー」の低迷期とも言われた1980年代終盤に連載が始まり、藤田和日郎による「うしおととら」や西森博之による「今日から俺は!!」と共に安定期となる90年代中盤までを支えたヒット作「スプリガン」。

連載終了から26年の月日を経て、今や知る人ぞ知る漫画となった「スプリガン」が映像配信サービス「Netflix」にて全6話の連続アニメとして映像化されました。

「オーパーツ」にまつわるエピソードをそれぞれ短編から中編ほどの長さで描いた原作漫画と、1つのエピソードを1話で完結させた連続アニメとの相性は良く、ひとつの話を観るだけで壮大なスケールの物語を体験し終えたような充足感を得ることが出来ます

皆川亮二の作画が光る原作のアクションシーンも現代アニメの技術で迫力満点に再現されており、原作の面白味を映像化としてこれ以上ないほどに引き上げていました。

大友克洋による映画版との違い

『スプリガン』制作過程 第一話『炎蛇』

漫画「スプリガン」は、1998年に『AKIRA』(1988)で漫画家としても映画監督としても世界で評価される大友克洋がアニメ映画化し話題になっていました。

大友克洋による映画版では原作の人気エピソード「ノアの箱舟編」を主軸として据え、劇場映画尺としてたっぷりと「機械化小隊(マシンナーズ・プラトゥーン)」との戦いを描いています。

実はこの「ノアの箱舟編」は連続アニメ版でも第2話で取り上げられており、2作ともを鑑賞することで時代の変化や監督による特色の変化を感じ取ることが出来ます。

連続アニメ版では45分と言う丁度良い尺であることもあり、物語は原作をなぞる形でラストまで進められます。

作品のメインとなる戦闘シーンはCGとアニメーションを織り交ぜた2020年代の技術によってとにかく派手に描かれながらも、トドメとなる攻撃は意図的に全体の動きを抑えることでキメの演出を行う拘りが見えました。

一方で映画版では、制作時期が90年代と言うこともあり現代的なCGを用いた演出こそありませんが、「童夢」で漫画界に新たな表現方法を産み出した大友克洋ならではのアクション演出が光っています。

特にスピード重視の戦闘スタイルであるジャン・ジャックモンドの戦闘シーンには現代に鑑賞しても色褪せない格好良さがあり、監督の特色を感じることが出来ます。

映画版を支えた森久保祥太郎や子安武人たちメインキャストの声優は連続アニメ版でも別キャラクターとして起用されており、両作を鑑賞することで声優の演じ分ける力を楽しむこともできます。

シーズン2の展開を徹底予想

最終話となる6話では御神苗は「スプリガン」の敵対組織に属した恩師のボーマンとの一騎打ちを勝利しますが、なぜボーマンが「スプリガン」を辞めたのかについては語られることはありませんでした。

スマホやドローンなどの現代的なガジェットが登場するものの、基本的には原作に忠実に描かれた本作はシーズン2では本格的に「アーカム」の闇に切り込んでいくことになります。

強大な力を持った「オーパーツ」を軍事利用しようとする各国政府機関の横暴を許さず、「オーパーツ」の保護と封印を行う組織「アーカム」。

しかし、「アーカム」は最新鋭化する敵への対策のため「オーパーツ」の技術を用いた装備や兵器を利用します。

悪用させないための行為であるとは言え、武力を用いてまでも他者に禁ずる行為をみずから行う「アーカム」はシーズン1中でも「欺瞞に満ちている」と評されます。

動き出した「御神苗優抹殺計画」と「アーカム」の思惑が交差し、やがて迎えることになる分断と破滅へのシナリオ。

「出来る限り人を殺さないこと」を信条とする御神苗が生かして来た敵や味方が総登場するクライマックスは、原作漫画が人気な理由のひとつでもあるため今後の展開も要チェックです。

まとめ

『スプリガン』メイキングムービー Vol.1スタジオ風景

現代の技術を越えるほどの「超古代文明」が存在したとする説では、その文明は必ず最後には破滅を迎えています。

本作『スプリガン』では「いかに人類が繫栄したとしても自然による脅威には叶わない」と言う旨の言葉が各エピソードの随所で登場し、人知を越えた領域に人間が足を踏み入れることの愚かさを描いていました。

それは古代ローマから伝えられる「メメント・モリ(死を忘ることなかれ)」と言う格言にも繋がり、抗えぬ死と言う存在があるからこそ今を楽しむべきと言うメッセージと取ることも出来ます。

1980年代の漫画でありながら、古臭さを全く感じさせずに最新のアニメーション技術をふんだんに用いて映像化されたNetflix独占配信アニメ『スプリガン』。

原作に忠実な物語で現代を沸かせてくれる、必見の令和アニメです。



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