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Entry 2020/07/15
Update

【松村龍之介インタビュー】映画『BLOOD CLUB DOLLS 2』原作アニメと通底する世界観といま再び関わる意味

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『BLOOD-CLUB DOLLS 2』は2020年7月11日(土)に全国順次ロードショー!

Production I.G/CLAMP原作の大人気コンテンツ「BLOOD」シリーズの最新スピンアウト作品にして、実写化二部作『BLOOD-CLUB DOLLS』の後編となる映画『BLOOD-CLUB DOLLS 2』。

前編『BLOOD-CLUB DOOLS 1』に続き、夜な夜な多くの観客が集う謎の地下闘技場「BLOOD-CLUB」をめぐって死闘を繰り広げる男たちと、その裏で蠢く権力者たちの暗躍を描いた壮大な作品です。


(C)Production LG/CLAMP・ST/BCD FILM PARTNERS

今回、本作で主人公・蒼炎役として主演を務めた松村龍之介さんにインタビュー。このシリーズに対する印象や演技へのアプローチなどとともに、自身の役者という仕事への向き合い方などを語っていただきました。

長きシリーズの世界へと関わる意味


(C)Production LG/CLAMP・ST/BCD FILM PARTNERS

──「BLOOD」シリーズが紡いできた世界に携わるにあたって、松村さんはどのような思いを抱かれましたか?

松村龍之介(以下、松村):このシリーズで初めて観たのは『BLOOD+』(2005〜2006)というアニメ作品で、僕がまだ小学校くらいの頃でした。そして『BLOOD+』以前にもシリーズ作品が制作されていたこと、その後も『BLOOD-C』など長い間シリーズが続いてきたことを後から知って、とにかくスゴイなと思っていました。

だからこそ、このシリーズに携われるのは非常に嬉しく思いました。作品としては、非常に世界観が独特。シリーズを通して共通するキャラクターの小夜、文人といった登場人物がいますが、輪廻転生的なイメージの中で作品ごとにいろんなキャラクターと関わっていく展開も相まって、ある種のダークヒーロー的な存在感を覚えました。

シリーズ物の作品からは、それぞれに形は違っても共通項としてのイメージを感じられることがあるんですが、この「BLOOD」シリーズはその共通項が極めて少ない印象を持っています。さまざまな時代や世界をまたいで展開される作品構成も斬新だし、新鮮で面白いと思いました。

──シリーズを通して描かれているその世界観に対し、松村さんご自身が共感を得られる部分はありましたか?

松村:例えばもし自分が仮に、”古きもの”(作中に登場する、人間界にはびこる特殊な力を持った存在)みたいな人知を超えた力を得られたら、と考えたことはあります。劇中で彼らがそんな力を得たくなる環境下に置かれる場面で、自分がそうなったらどうするだろうか。置かれた環境によっては僕でも手を出してしまいかねない、そう思わせる部分があると思うんです。

人を超え人であることを諦めた者たちの心情、例えばシリーズのメインキャラクターである小夜はまさにそうですが、その心情を100%理解できるかは断言できないけど、そういう選択も考えうると思えてしまう描写の仕方は「BLOOD」シリーズの魅力でもあると思います。

また物語では常識・非常識というものが紙一重の存在として捉えられていて、日常で当たり前のものが裏では全く違ったり、おどろおどろしく狂ったように見えるものが実は正義と認識されていたりと、一種の社会へのアンチテーゼ的なニュアンスも含まれている気がします。

蒼円/蒼炎と自己のつながり


(C)Production LG/CLAMP・ST/BCD FILM PARTNERS

──松村さんは「BLOOD」シリーズの実写舞台作品『BLOOD-C The LAST MIND』(2015)にも出演されていますね。

松村:僕はその作品で、“蒼円”という役柄を演じました。“蒼円”と今回の“蒼炎”は名前からして全く異なる人物なんですが、蒼円は僕がこれまで演じてきた役柄の中でもかなり気に入っていた役で、かつ同作は舞台での経験を通じて役者の仕事をかなり勉強させていただいた作品でもありました。そういった意味でも、今回『BLOOD CLUB DOLLS』二部作を通じて再びこの世界に関われる機会を得られたことはとても嬉しかったです。

一方で、今回演じることになった蒼炎とはどんな人物なのか、奥監督やプロデューサーの方々と話し合い、脚本を読み込んでいく中でだんだんと理解していきました。ですが、かつての経験をふまえた上でこのシリーズに再び関わっていったという点では、“蒼炎”という“蒼円”と似た名前を持つ役には、奥監督からの挑戦状という意味も込められていたのかもしれないと感じています。

──松村さんは今回演じられた蒼炎という役をどのように解釈されたのでしょうか?

松村:演じた上での視点ですが、一見非常に冷酷で冷淡。生きることも器用そうであまり心を表に出さないような人物に感じられますが、内面はむしろ不器用で、ただ直情的な性格ではないだけ。ですがそれらの人物像は、彼が直情的に「なれない」点に深く関わっているんだと思いました。

彼は裏の世界でのし上がっていく過程で、そういったものを削ぎ落としてしまった。余計な感情、自分が好きにならないような行動など、人間が普通に生活していて得られるような過程や行動をとらなくなってしまったがゆえに、蒼炎は上に行けばいくほど自由がなくなり、物事に対して振り切れない弱さを持つ一面が生まれてしまったんだと解釈しています。僕にも似た点はある気もするけれど、一方で冷淡になれない点もあるので、ああいった役柄を演じるときにムズムズすることはあります(笑)。僕はどちらかというと「みんなで一緒に頑張ろう!」と寄り添いたい感じですから。

役者としての能力を鍛え上げられた撮影


(C)Production LG/CLAMP・ST/BCD FILM PARTNERS

──撮影にあたり、奥監督からは演出に関してどのようなリクエストがありましたか?

松村:結構その日の撮影ごとに内容が変わったり、追加シーンが入ったりしていたんですが、その摺りよせ的なところでリクエストは多かったですし、「このシーンの意図はこうしてほしい」みたいな要望はよくうかがっていました。そういった面からは、特に奥監督はそういった空気感、雰囲気を大切にするという気持ちを強く感じました。

多分奥監督のやりたいこと、世界というのはやっていく中で固まっていったと思うのですが、そういうものに合わせてリクエストは随時ありました。また蒼炎の役柄としてテンポ的も結構ゆっくり目で言うことや、間の長さみたいなところを要求されることもありました。

──撮影で苦労したのはどのようなところで?

松村:奥監督の現場は撮影時間が結構いつも長めだったんですが、こだわりがすごくあるので結構台本に変更もいろいろあったり、カットも増えてくる。その中で集中力を切らさないように作っていくのが毎回の課題でもあり、苦労したところでもありました。

例えば今回の作品もカット割りも多く、シーン数もかなり多いので、芝居のメンタリティーを維持するのも大変。反面、相当鍛えられますね(笑)。でも奥監督と関わる以上は覚悟してやるしかない!という気持ちで臨みました。ここでこんな経験をさせていただいたおかげで集中力や忍耐力がかなり培われたと思います。

奥秀太郎監督の目指すこだわりの世界観


(C)Production LG/CLAMP・ST/BCD FILM PARTNERS

──『BLOOD-CLUB DOLLS』二部作で描かれる世界観には、奥秀太郎監督ならびにスタッフ陣の強いこだわりを感じられました。

松村:現代的だけど現代劇ではない、「ファンタジー」という一言では表現しがたい異様な雰囲気が映画にはあり、それこそが奥秀太郎監督の作りたい世界ではないかと思うんです。

また、劇中ではいろいろな対比が登場します。衣装や小物などで和テイストの意匠がちりばめている一方で、実際に展開される物語や登場する設定は洋画的であり、異文化が混ざり合ったやはり一言では表現できない雰囲気を持っています。またその中でも、「BLOOD」シリーズが長年描き続けてきたテーマも保ち続けている。撮影中には気づけなかったんですが、そういった「アンバランスな空間がバランスをもって保たれている」という状態を描くことが奥監督のやりたいことなのではないかと思いました。

二部作の最大の特徴として「明言しない」という点があります。無論「BLOOD」シリーズ自体もさまざまな謎に対しての答えを明確には提示していませんが、それは奥監督自身が「答えを出した途端に、作品は面白くなくなってしまう」という考えのもと、敢えてそうしているとも思えるんです。ですから、まずは作品から漠然としたものを受け取り、それらを読み解き、自分なりに噛み砕いて理解しようとする思いを持つことが、この映画の楽しみ方としては正解ではないかと思います。そうしていろいろと考える過程が一番楽しい瞬間であってほしいし、広がっていく世界観を各々の楽しみ方で楽しんでほしいです。映像美と音楽、世界観へのこだわりが「BLOOD」シリーズの世界であると同時に「ザ・奥秀太郎監督」の世界ともいえる形で仕上がっていると思っています。

自身が思う「役者」という仕事


(C)Production LG/CLAMP・ST/BCD FILM PARTNERS

──演じるということにあたり「2.5次元」と呼ばれるジャンル的な意識を強く持たれたりすることはありますか?

松村:大きい意味で考えれば、ジャンルという点で特に違いのようなものを感じることはありません。言葉として「2.5次元」と呼ばれるジャンルは確かにありますが、そもそも昔から日本で制作されているドラマや映画作品も、小説や漫画などの原作があったり、何らかの題材があって作られているものがほとんどですから。正直、広い目で捉えると非常に曖昧な線引きなのではと感じています。そのためにも、今後もフラットにさまざまな作品と向き合っていきたいと考えています。

ただ、アニメ作品など別の映像化を通じてすでに明確なキャラクターが表現されている役を演じる際には、そうした先駆者の存在に対するリスペクトを常に意識するようにはしています。そしてその役を愛した上で、さらに自分なりに役柄を解釈することを心がけています。

──本作では八嶋智人さんや池田成志さんらベテラン俳優陣も出演されていましたが、彼らから役者としての刺激を受ける場面もありましたか?

松村:もちろん刺激はたくさん受けました。演技において厳密な正解は存在しないけれど、八嶋さんと池田さんは彼らならではの味といいますか、その役柄の魅力を自身の人間性と組み合わせることでより上手く表現し引き出すことができる。

それは経験の差にあると思いますが、その差は非常に大きいです。また脚本の読み解き方、どう人物を作り上げていくかという過程が多分僕とは違うと思いましたし、役柄への理解の仕方や勘、センスといった部分には大いに刺激を受けました。

──今後、松村さんはどのような役者になりたいとお考えでしょうか?

松村:かつて僕という一人の人間を生み、これまで育ててくれた岩手や活動を応援してくれる地元の方々、また東京都ないし全国で僕のことを知って応援してくれる方々。そして何よりも、自分の家族が僕が役者をやっているということを誇りに思ってくれる。そんな存在になりたいと思うんです。

「地元の星」なんて言葉がありますよね。僕の地元の人なんかは、やっぱり同じ職場や自分の近くの人が公で活躍する、注目を受ける存在になると嬉しくなるんです。誇らしくなるし、応援したくなる。ただ舞台だけだと中々地元の人も知る機会がないので、映画やドラマなど幅広い仕事を通して皆さんに知っていただき、誇りと思えるような俳優、人間になりたいと思っています。

インタビュー・文/桂伸也

松村龍之介のプロフィール


(C)Production LG/CLAMP・ST/BCD FILM PARTNERS

1993年生まれ、岩手県出身。2013年に舞台『巴御前』でデビューし、以降音楽とプロレス、演劇を組み合わせた総合エンターテインメント『魔界錬闘会~魔界撩乱~(第参・四・伍回)』、『舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The WINNER』、『黒子のバスケ THE ENCOUNTER』、『舞台 青の祓魔師 京都紅蓮篇』などの舞台作品に数多く出演しています。

「戦国BASARA」シリーズの真田幸村役では5シリーズに出演、2016年には『斬劇 戦国BASARA4 皇 本能寺の変』では同役で主演を果たしました。「BLOOD」シリーズには2015年の舞台『BLOOD-C The LAST MIND』、2017年の映画『阿修羅少女〜BLOOD-C異聞〜』に出演。本作の前編作となる『BLOOD-CLUB DOLLS 1』で映画初出演を果たしました。

映画『BLOOD-CLUB DOOLS 2』の作品情報

【公開】
2020年(日本映画)

【原作】
Production I.G/CLAMP

【監督・脚本】
奥秀太郎

【脚本】
藤咲淳一

【キャスト】
松村龍之介、北園涼、宮原華音、黒崎真音、南圭介、岐洲匠、高崎翔太、朝倉あき、八神蓮、友常勇気、安里勇哉、田中涼星、郷本直也、河原田巧也、内海啓貴、白柏寿大、磯村洋祐、富田翔、芹沢尚哉、吉川麻美、桜井理衣、坂本康太、前田剛史、ベルナール・アッカ、池田成志、八嶋智人

【作品概要】
アニメで絶大な人気を誇り、大きくメディアミックス展開をおこなっている『BLOOD-C』シリーズをベースとして実写映画化した『BLOOD-CLUB DOLLS』2部作の後編。謎多き地下闘技場「BLOOD-CLUB」を舞台に、さまざまな思惑を持つ者たちが繰り広げる死闘を描きます。

これまで『BLOOD-C』の舞台、実写映画版シリーズを手掛けてきた奥秀太郎が監督、「BLOOD」シリーズ全作を手掛けてきた藤咲淳一が脚本を担当。

「BLOOD-CLUB」を取り仕切る主人公・蒼炎役には、ミュージカル『英雄伝説閃の軌跡』、舞台『戦国BASARA』などの松村龍之介。さらにヒロイン・小夜役を宮原華音が担当するほか、人気シンガーの黒崎真音らに加え北園涼、南圭介、八神蓮、高崎翔太、友常勇気、安里勇哉、岐洲匠ら「2.5次元系」作品の最前線で活躍する豪華俳優陣が花を添えます。

映画『BLOOD-CLUB DOOLS 2』のあらすじ


(C)Production LG/CLAMP・ST/BCD FILM PARTNERS

「勝ち残れたら望みが叶う、負けたら死ぬだけ」前作で閉鎖されたはずの地下闘技場「BLOOD-CLUB」は、場所を変えてひっそりと営業を続けていました。そこでは今を時めくアイドル・桜木も剣闘士として加わり、さらなる激しい死闘が繰り広げられていました。

闘技場のVIPルームに出入りするのは、官房長(池田成志)らの国政トップと、各登場を取り仕切る蒼炎(松村龍之介)ら裏社会を統べる者たち。しかしこれまでになく強大な権力を得んと暗躍する彼らに、警視庁刑事・水戸(八嶋智人)らの捜査の手が迫っていきます。

さらに剣闘士の藍刃(北園涼)を救出せんと、部下と七原へ向かった有栖川(黒崎真音)。彼女に魅入りつつも手をかけようとする蒼炎。そして交錯する男たちの記憶、重なる少女の面影。

書き換えられる怪事件「32人殺し」の真相、そしてその背後に見え隠れする「古きもの」の血……不確かな出来事が交差する中、制服の少女・小夜(宮原華音)が刀剣を振り回し、それら全てを攪乱します。小夜と七原(南圭介)をめぐる、血で血を洗う残虐な歴史の行方やいかに?

映画『BLOOD-CLUB DOOLS 2』は2020年7月11日(土)より全国順次公開!


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