「日向坂46」の小坂菜緒が怖すぎる日本人形と対決!
「日向坂46」のメンバー、小坂菜緒がついに映画に初主演。そのお相手は…日本人形?
ホラー映画お馴染みの恐怖アイテム「人形」。恐ろしい念を秘めた人形は、時に人を呪い、時に動き出し人を襲います。
ところが映画『恐怖人形』に登場する、恐るべき日本人形の正体とは?この人形、マジヤベェ…。
映画『恐怖人形』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督・原案・編集】
宮岡太郎
【キャスト】
小坂菜緒、萩原利久、黒羽麻璃央、水上京香、近藤雄介、石川瑠華、福島雪菜、黒沢あすか、粟根まこと、萩原聖人
【作品概要】
怪しげな招待状に誘われ、パーティ会場であるキャンプ場に集められた人々。その前に現れた不気味な日本人形が巻き起こす、恐怖と惨劇のサイコサスペンス・ホラー。
映画初主演の小坂菜緒の相手役を、映画『十二人の死にたい子どもたち』と、ドラマ『3年A組 今から皆さんは、人質です』に出演した萩原利久が務め、若き出演者陣を黒沢あすか・粟根まこと・萩原聖人の実力派俳優が支えます。
監督はドラマ・映画に幅広く活躍する宮岡太郎。長編映画初監督作『gift』は、「SKE48」と「乃木坂46」の元メンバー・松井玲奈が、初主演を務めた作品で、続く宮岡監督作映画『めがみさま』でも主演を務めています。
その宮岡監督が自ら原案を提供した、想像を絶する人形ホラー映画が『恐怖人形』です。
映画『恐怖人形』のあらすじとネタバレ
誕生日を祝われる女の子。彼女は日本人形を大切に抱いていました。そして女の子は繰り返し人形に語りかけます。「大きくなあれ、大きくなあれ」と…。
ある夏のよく晴れた日。平井由梨(小坂菜緒)は公園で、中川真人(萩原利久)と写真を撮っていました。真人に対して、悲しいことを忘れられるような、明るい写真と撮りたいと語る由梨。
そんな彼女に真人は、撮った写真を展覧会に出品するよう勧めます。
2人は由梨の自宅に向かいます。彼女がポストを開けると郵便物があふれ出ますが、その中に赤い封筒が入っていました。
差出人は表記されず、ただ由梨の名だけが記された封筒の中には、謎の人物からのパーティーへの招待状が入っていました。
パーティーに参加すれば10万円を渡すと記された招待状。文章は“お久しぶりです”の言葉から始まりますが、由梨には送り主の心当たりがありません。
同様の招待状は真人にも送られていました。由梨にはイタズラとしか思えませんが、10万円を奨学金の返済に充てたい真人は、怪しければ逃げ帰るつもりで参加を考えていました。
由梨は真人の為に、共にパーティーに参加する事を決意します。
出発の日、荷づくりをしていた由梨は、玄関の外の物音に気付きます。ドアを開けるとそこには日本人形が置いてあり、それを目にして息をのむ由梨。
人形をそのままにして由梨は部屋を後にします。しかし背後で音がします。振り返った彼女の目に、倒れた人形の姿が目に入ります。人形の目は由梨を見つめていました。
由梨と真人は指定された場所、のどかな田舎にある弟切駅に到着します。駅前には2人と同じく、パーティーに招待された同じ年頃の男女が集まっていました。
2人はそこにいた、いかにも軽薄そうな涼太(黒羽麻璃央)、トイレに行っていた徹(近藤雄介)、派手な雰囲気の玲奈(福島雪菜)に控え目なまどか(石川瑠華)、クールな印象を与える美咲(水上京香)と声を交わします。
ただ1人年頃の異なる中年の男性、北沢(萩原聖人)も招待されていました。皆同じ招待状を受け取っていましたが、互いの面識はありません。涼太はしつこく皆に、会ったことがあると話しかけますが、誰も心当たりがありません。
一同の前に車が現れます。運転していた麻生美智子(黒沢あすか)が、彼ら8人を乗せパーティーの会場へと案内します。
どんどん山奥へ入ってゆく車。彼らが質問しても、麻生は何も答えません。やがて一行は人里離れたキャンプ場に到着します。
由梨はキャンプ場の入口で、皆から写真に撮って欲しいとせがまれます。しかしファインダーを覗いた由梨は、その中に日本人形の姿をとらえていました。驚いて彼女がカメラから目を離しますが、そこには何もありません。
麻生はこのキャンプ場の女管理人でした。麻生は皆に10万円を配り、パーティーは24時からと説明します。しかし麻生は主催者でなく、パーティーの内容も知らないでいました。
金を受けとった北沢は、パーティーに参加せず帰ろうとしますが、歩いて駅までは半日かかる距離。送迎車が出るのは明朝と聞き、やむなくこの場に残ります。
用意されたコテージに入る一同。涼太は真人に由梨と付き合ってるかを訊ねます。真人が戸惑いながら、恋人では無く幼馴染だと答えると、彼女にアタックすると宣言する涼太。
玲奈は皆にパーティーに参加した理由を聞きますが、金のためではなく、確かめたい事があって来たという美咲と、険悪な雰囲気になります。そこに涼太たちが現れ、彼女らを川遊びに誘います。
何か気になる記憶に捉われ遅れた美咲に、管理人の麻生はキャンプ場の敷地外に出ないよう注意します。この辺りは熊の生息地で、熊用のワナが残っていて危険だと言う麻生。
川遊びに興じる一同ですが、やはり由梨は何かが引っかかっていました。そして林の中で用を足していた徹は、奇妙な視線を感じます。
徹は林の中で拾った、「アメリカキャンプ村」と描かれた看板を拾ってきます。徹はその名で子供の頃、このキャンプ場を訪れたことを思い出しました。真人も由梨と共に10年前、小学3年生の頃この地のサマーキャンプに参加していました。
他の者もそのサマーキャンプに、北沢も引率者として参加していました。パーティーに招待された面々は10年前の夏、皆この場所にいたのです。
一同は管理人室にあったアルバムを借りて、10年前の写真を眺めます。写真にはここにいない、1人の女の子が映っている事に気付きます。由梨はその子の名は、よし子だと思い出します。
その幼い少女、よし子は日本人形を抱いていました。
コテージの扉を開けたまどかは悲鳴を上げます。皆が駆け付けると、そこには日本人形が置いてありました。
今朝家の外に同じ人形が置いてあった、と訴えるまどか。由梨だけでなく、皆が同じ経験をしていました。悪質なイタズラで、おそらく犯人はよし子だと考えます。
しかしその意見を美咲が否定します。なぜならよし子は、既に死んでいたのです。
SNSにあげた、玲奈がキャンプ場の入口で自撮りした写真に、多くの反応が集まっていました。確認すると、皆写真に写り込んだ日本人形に反応していました。それを知り一同は驚愕します。
コテージから出ようとすると、またも人形があります。しかも、何故か一回り大きくなっています。どこかに運ぼうとしますが、皆気味悪がって近づく事ができません。
そこに「やめろ!」と叫ぶ声がします。見るとそこには怪しい風貌の老人、和田教授(粟根まこと)の姿がありました。教授は皆に人形を触らせません。
教授はここにあるのは、本物の呪いの人形だと語ります。長年こういった現象を研究している教授は、呪いの器は人の形に近づくほど、呪いを集める事ができると説明します。つまり、人形こそ呪いを純粋に伝えることが出来る器だと力説します。
この人形の呪いのキャパシティは凄まじい、と言葉を続けた教授。呪いが膨れ上がり、人形を大きくしていると語り、一同を困惑させます。
そこに管理人が現れ、部外者の立ち入りは困ると説明しますが、教授はキャンプ場に宿泊する事で管理人を納得させます。
自分が人形を預かろうという教授。皆はその言葉を信じて人形を教授に委ねます。
よし子について気になった由梨は、事情を知っている美咲に訊ねます。美咲はよし子と同じ団地に住んでいました。
幼い頃暗く、人と付き合う事の無かったよし子。彼女は肌身離さず日本人形を持っていました。しかしよし子はあの夏のサマーキャンプの後、口をきかなく寝たきりとなり、親が看病していたものの、去年亡くなったのです。
その最期の姿は、日本人形のように真っ白になっていた、と語る美咲。
コテージに麻生が現れ、管理棟の電話が使えなくなったと告げます。他の電話の確認に現れたのですが、先程まで使えていた皆のスマホも、今は電波が無く使えない状態です。
状況が判るまで、皆一緒にいるよう指示する管理人。配線の仕事をしている北沢が、様子を見ようと提案します。北沢と麻生は管理棟に向かいます。
人形を手に入れた教授は、それをコテージのテーブルに縛りつけます。おもむろに人形にスタンガンを当てる教授。和田教授は人形に自分を恨ませる事で、更に呪いを増幅させようとしていました。
次は人形に釘を打ち込んで責め立てる教授。人形は涙を流し、それが床に水たまりを作ります。その様に狂喜する教授。
さらに責められて、ついに痙攣し始める人形。夢中になるあまり、教授は床に落ちたスタンガンが涙の水たまりに触れた事に気付きません。そして感電した教授は意識を失います。
気分を変えようと、涼太は外でのバーベキューを提案します。しかしショックを受けたまどかと、彼女を世話する玲奈は部屋に残ります。2人だけになると、まどかにキスをする玲奈。
和田教授が意識を取り戻した時、テーブルの上に縛った人形の姿はありません。呪いの力によるものと教授は更に狂喜しますが、肝心の人形の姿が見えず慌てます。
いつしか体を重ねたまどかと玲奈。事を終え、まどかはシャワーを浴びていました。するとコテージの玄関のノックする音が。玲奈が扉を開けます。
扉の外には、人よりも大きくなった日本人形の姿がありました…。
映画『恐怖人形』の感想と評価
恐怖は爆笑と紙一重
上に紹介したあらすじとネタバレ紹介に、ツッコミという名の解説を入れたくて、ウズウズしています。
『恐怖人形』の上映中、場内は静まりかえっていました。実に緊張感のある、見事な恐怖演出です。
しかし上映が終了すると、あちこちから安堵したかのような、笑いが巻き起こった映画です。この状況に勝る、この作品の紹介は無いでしょう。
冷静に考えて下さい。大の大人が入るサイズの巨大な日本人形が、襲ってくるんですよ!こんな大きなもの、絶対に家の中ではマトモに動けません。その鬱憤を晴らすかのように、野外では全力疾走しています。
しかもこの人形、ホラー映画の有名どころの殺人鬼と同じ凶器を持って襲ってきます。どう考えても笑うしかない状況です。
『恐怖人形』が笑える映画としての市民権を得て、場内の観客が安心して笑える上映があれば、まさに“爆音上映”ならぬ“爆笑上映”が可能となる作品です。
キャストの演技力が息詰まる緊張感を生む
では『恐怖人形』は、いわゆる“おバカ映画”なのでしょうか?そうでないところに、この作品の面白さが存在します。
「日向坂46」の小坂菜緒を含む出演陣は、真剣に恐怖を演じています。息抜きとなるコミカルなシーンもありません。その結果、映画全編に緊張感が漂っています。
ホラーとしてスラッシャー映画の緊迫感と、Jホラー作品の哀しさを併せ持った作品であり、それが場内に静けに包んでいました。ただし、恐怖の相手は「巨大な日本人形」ですが。
この映画には、観客を欺く仕掛けがあります。1つはこの映画がオカルトものだと強調するミスリードで、もう1つがこの映画はキャンプ場を舞台とした、典型体スラッシャー映画をイメージさせる環境です。
他の出演者が日常感の延長にある、リアルな恐怖を演じている中、前者の仕掛けを代表するのが粟根まことで、後者の仕掛けを代表するのが黒沢あすか。この2人だけは典型的な役柄をエキセントリックに演じ、観客を思い込みへと誘導します。
この仕掛けに引っかかった人が、日本人形の正体を知った時には…。それはもう、開いた口が塞がらないでしょう。
まとめ
Jホラーのスタイルで作られ、スラッシャー映画へのオマージュに満ち、緊張感を操る映画が『恐怖人形』です。
この物語の基になる原案、そして映画に漂う緊張感を編集で操った宮岡太郎監督の、狙い通りに完成した会心の作品でしょう。
クライマックスのテーブルを囲むシーン、あれはJ・リー・トンプソン監督の『誕生日はもう来ない』へのオマージュだと見ました。『誕生日はもう来ない』も、典型的な学園を舞台にしたスラッシャー映画でありながら、奇妙なオチを迎えるひねった作品です。
冷静に考えれば無茶も破綻もある、ツッコミ入れ放題の『恐怖人形』ですが、高度に計算された仕掛けと、恐怖と共に笑いを楽しむべき作品です。
そしてこのユニークな作品に真剣に向き合い、監督の期待に応える演技を披露した小坂菜緒。映画初主演作に、この映画を選んだセンスには脱帽です。
それにしてもあの場面では、皆が小坂菜緒と同じ心境になるでしょう。「あなたは、誰?」…。