綾野剛の男の色香漂う魅力的な作品をご紹介
モデルやバンド活動を経て、『仮面ライダー555』の怪人役で俳優デビューした綾野剛。今や”演技力化け物級”と称されるほどの演技派です。その演技力で、作品ごとに全く異なる男性の魅力を表現し、色香に酔わせてくれます。
駅伝好きだったり、芸能界でも数多くの友達がいたり、作品以外でも人間的な魅力がよく知られている彼ですが、今回はその男性的魅力をたっぷりと堪能できる5作のおすすめ作品をご紹介いたします。
CONTENTS
綾野剛出演映画おすすめ①『そこのみにて光輝く』
映画『そこのみにて光輝く』の作品情報
【公開】
2014年(日本映画)
【監督】
呉美保
【キャスト】
綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子、田村泰二郎
【作品概要】
『オカンの嫁入り』(2010)『サビ男サビ女』(2011)の呉美保監督が手掛け、北海道函館を舞台に、閉じ込められたように生きる男女が、それぞれのコンプレックスや秘密を持ちながらも、ぶつかり合うように愛し合う恋愛映画。主演は綾野剛、ヒロインを池脇千鶴が、ヒロインの弟を菅田将暉が演じました。
第87回アカデミー賞外国語映画賞部門に出品、第38回モントリオール世界映画祭最優秀監督賞、キネマ旬報ベスト・テン1位などを獲得。同じく佐藤泰志原作による『海炭市叙景』『オーバー・フェンス』と合わせて“函館3部作”と呼ばれています。
【あらすじ】
佐藤達夫(綾野剛)は、石材の採掘会社に勤め、現場で人を使う立場にありましたが、爆破事故をきっかけに退職をしてから、北海道函館のある町で、酒とパチンコ漬けで無為な日々を過ごしていました。
ある日、パチンコ屋で大城拓児(菅田将暉)と出会い、彼の家に行くことに。拓児は、海沿いのぼろぼろのバラック小屋に、父親、母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)と住んでいました。
拓児の父は脳梗塞の後遺症で寝たきりで、母親はその介護に疲れ果てていて、そして拓児には前科があるため、姉の千夏が一家を支えるために、昼は水産加工場で働き、夜はバーで男に体を売って生活費を稼いでいました。
さらには、仮釈放中の拓児に職を紹介してもらう代わりに、地元の権力者である中島の愛人にもなっていました。
達夫と千夏は身の上話をするうちに、お互いに心を寄せ合うようになりました。しかし、千夏には彼に話すことができない秘密を抱えていました。
それでも、惹かれ続け、愛を深め合う達夫と千夏。また、達夫からの影響で、拓児も人生の目標ができました。千夏も拓児もそして達夫も、それぞれが今までのコンプレックスと閉じ込められていた世界から抜け出そうとしますが……。
夏の嵐のように、人の心をかき乱す映画
冬は厳しい寒さにさらされる函館の短いひと夏を舞台に、格差社会の底辺で残酷なまでに“仕方なく”暮らす姉弟と、心に傷はあるが芯が温かい男が出会ったことをきっかけに、それぞれが心に向き合い、爆発するような変化に向かっていく姿を描いています。
この作品は、綾野剛演じる達夫のふくらはぎからクローズアップしていくシーンから始まり、怠惰な毎日にありながら、色香漂う男性であることが表現され、冒頭から一瞬で惹き込まれます。
その“無”の時の魅力から、千夏や託児との結びつきを強めていき、達夫自身の心が満たされていくことで、本来あったであろう、しかし新たな、力強い魅力が引きだされていくのです。
千夏との数々のラブシーンでは、千夏から色んなものがぶつけられていきますが、達夫はすべてを受け止め、与えていきます。言葉少なに醸し出すように表現され、その魅力に胸が締め付けられます。
綾野剛出演映画おすすめ②『シャニダールの花』
映画『シャニダールの花』の作品情報
【公開】
2013年(日本映画)
【監督】
石井岳龍
【キャスト】
綾野剛、黒木華、刈谷友衣子、山下リオ、伊藤歩、古舘寛治
【作品概要】
「生きてるものはいないのか」の石井聰亙改め、石井岳龍が、聰亙時代から温めていたオリジナルストーリーを映像化。幻想的な世界で、人間の心と生命への向き合いを描いたファンタジーヒューマンラブストーリー。第37回モントリオール世界映画祭に出品されました。また、綾野剛と共に主演を務めた黒木華は、この作品で、第56回ブルーリボン賞新人賞を受賞しました。
【あらすじ】
ごく一部の女性の皮膚に「シャニダール」と呼ばれる植物の芽が現れ、この世のものとは思えないほど美しい花が咲く、という現象が起きていました。
シンオウ製薬株式会社では、シャニダールの成分から新薬を作ろうと、シャニダール研究所を作り、研究協力金として芽が現れた女性に1億円を支払い、研究所に住まわせ栽培を行っています。
シャニダールの育成と女性たちの精神には関連性があると考えられ、研究員の他、セラピストも常駐。研究員の大瀧健治(綾野剛)は、ある日、新しいセラピスト美月響子(黒木華)に所内を案内しました。
温室のような施設で、シャニダールを胸で育てる女性たち。一方、手術室で花を切り取られた女性は、心拍を激しく乱すのですが、研究員への発表は、切除後の異常は無し、と報告されていました。
芽があるうちは研究所に居られる、花が満開になると切除される、芽や花に異常があれば退所させられる。花と自分たちの心に振り回される女性たち。
そんな女性たちと関りを持ちながら、大瀧と響子はひかれあっていき、いつしか結ばれます。しかし、そんな中、響子の胸に、シャニダールの新芽が芽吹きました。
幻想的で静謐、なのに荒々しい不思議な映画
最初は、まっすぐな研究員だからこそ、響子に「赴任をもう一度考え直した方がいい」とこっそりと忠告をするような大瀧でしたが、意見を対立させることがあっても、心を開いて話していくことで、響子との距離を徐々に近づけていきます。
その後も、シャニダールと女性たちに翻弄されながらも、響子へと静かにまっすぐに心を寄せていく大瀧。見ている私たちには、「こんな人がそばにいてくれればいいのに」と感じさせてくれます。
2人は結ばれたのに、響子の見ているものが別のもののように感じ、大瀧は受け入れることに苦悩します。綾野剛が演じるその迷いのある姿こそが、不思議な世界の中で唯一、彼を現実的な存在とさせていて、人間的魅力を感じるのではないでしょうか。
その一方で、稀有な存在感を放つ綾野剛だからこそ、この不思議な世界と絡み合って何とも幻想的な魅力を醸し出しているのです。
綾野剛出演映画おすすめ③『ピース オブ ケイク』
映画『ピース オブ ケイク』の作品情報
【公開】
2015年(日本映画)
【監督】
田口トモロヲ
【キャスト】
多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃、光宗薫、柄本佑、菅田将暉、峯田和伸、中村倫也、安藤玉恵、森岡龍、小澤亮太、山田キヌヲ、宮藤官九郎(友情出演)、廣木隆一(友情出演)
【作品概要】
ジョージ朝倉の人気漫画を、俳優としても活躍する、『アイデン&ティティ』『色即ぜねれいしょん』の田口トモロヲが映像化。
仕事も恋愛も流されて生きてきた、植物を買っては枯らす、恋愛異存体質でダメ女の主人公志乃を多部未華子が、志乃の新しいバイト先の店長を綾野剛が演じています。豪華俳優陣が送る、好きだけで進まない人間関係、好きじゃないと進まない人間関係を描くラブストーリー。
【あらすじ】
流されるまま男性と付き合ってきた梅宮志乃(多部未華子)は、なんとなく付き合った彼氏がいるのに、バイト仲間と浮気。
結果、バイト先をやめることになり、彼氏から別れも切り出され、「これではいけない」と引っ越しを決意しましたが、そう思った矢先に、隣に住む菅原京志郎(綾野剛)の笑顔と出会い、新しい恋の予感を感じてしまいます。
そして、新しいアルバイト先でも、京志郎が店長だったのです。ある日の飲み会、酔いつぶれて京志郎の部屋で志乃は寝てしまっていました。
そこに、京志郎と同居していたあかり(光宗薫)が帰宅。追い出されながらも、京志郎への恋心に気づく志乃。
アルバイト帰りに、同じアパートまでの帰り道、何気ない話を店長とすることに幸せを感じる毎日。ついに店長に告白をしますが、流されてしまいました。
そんな中、突然あかりがいなくなってしまいます。寂しさを紛らわせる為だと知りつつ、結ばれる京志郎と志乃でした。
頼りなくて信じられないが、中毒になるほどの可愛らしさ
ジョージ朝倉のマンガの特徴の一つは、その荒々しいまでのリアルな感情表現なのでしょうが、そんな生々しいヒーロー役を、見事に綾野剛が演じています。
京志郎は、彼女がいるのに隣に住む可愛い志乃にまんざらでもないし、でっかい笑顔を振りまきますし、夜遅くに帰らせるのは心配だと毎日一緒に帰ります。あまつさえ、同棲していた彼女がいなくなったら、寂しさを埋めるようにすぐに志乃にいっちゃいます。
隙を見せるにも程があるのですが……。綾野剛が演じると、とにかくキュート。志乃じゃなくても「寂しさを埋めるためでもいいから」と思わせてしまう魅力が満載です。
そして、それだけじゃない魅力が爆発するのがラストシーン。京志郎の魅力が爆発する姿は必見です。
綾野剛出演映画おすすめ④『怒り』
映画『怒り』の作品情報
【公開】
2016年(日本映画)
【監督】
李相日
【キャスト】
渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、池脇千鶴、妻夫木聡、綾野剛、原日出子、高畑充希、森山未來、広瀬すず、佐久本宝、粟田麗、ピエール瀧、三浦貴大、水澤紳吾
【作品概要】
「悪人」と同じく、原作吉田修一×監督李相日が贈る、千葉、東京、沖縄の3か所を舞台に、自分の身近な人が惨殺事件の犯人かもしれない、という状況に翻弄される人たちを描いた群像劇。
李相日監督とは、「許されざる者」でタッグを組んだ渡辺謙や、「悪人」の妻夫木聡、綾野剛、森山未來、松山ケンイチなどが共演。
【あらすじ】
東京都八王子市で、ある夫婦の刺殺死体が発見されました。その現場には「怒」と書かれた血文字が。被疑者である山神一也は逃走。1年後、警察は手配写真を公開し、広く情報の提供を呼び掛けました。
そんな中、千葉、東京、沖縄では、それぞれに過去が謎の人物が現れます。千葉の漁港では、父子家庭の槇洋平(渡辺謙)と、発達障害のある娘愛子(宮崎あおい)が暮らしていました。
3カ月前、愛子は家出をしてしまいました。家出の間、歌舞伎町の風俗店で働き、精神的にギリギリの状態の愛子を、祥平は迎えに行き、また漁港の近くの実家で共に暮らしました。
そんな中、田代(松山ケンイチ)という男が現れます。彼はこの町に住みつき、漁港で働き、愛子と親しくなっていきます。彼が以前偽名を使っていたことを知り、祥平は田代の過去が気になり始めます。
東京では、大手企業勤務で、ゲイであることを公表し、楽しく振舞っていながらも、入院している母にはカミングアウトできず、複雑な思いも抱える藤田優馬(妻夫木聡)が日々を過ごしていました。
ある日発展場に行くと、小さいスペースに膝を抱えてうずくまる大西直人(綾野剛)を見つけ、関係を持ちます。
そして、居場所のない直人を家に誘いました。2人は関係を深めあい、直人を母親にも合わせることもでき、優馬は直人と一緒にいる覚悟を持ち始めますが、知人宅に空き巣が連続で入り、素性のわからない直人が気になり始めます。
沖縄では、高校生の小宮山泉(広瀬すず)が引っ越してきました。そして、親しくなった同級生の辰哉と行った無人島の廃墟で、男性が暮らしていることを知ります。
田中と名乗った彼は「自分のことは内緒にしてくれ」というのです。
3カ所でそれぞれの人間関係が動く中、山神一也の特徴が公表されていきます。
少しの大切なものを大事にする儚さに、胸が締め付けられる
綾野剛演じる直人は、妻夫木聡演じる優馬との関係を描く東京編の「謎の男」です。3カ所それぞれに、恋愛模様が出てきますが、ここでは同性同士として恋愛関係が描かれています。
この2人のそれぞれの心の寂しさを埋めるような求めあいが、辛くて悲しくて切ないのですが、やっとそれぞれが見つかったことに対し、安心し、綾野剛演じる直人の魅力を実感します。
相手のことを思いやった直人の行動は、優馬じゃなくてもちょっと笑って嬉しくなります。しかし、優馬は直人に対し、猜疑心を強めます。
それは本当に心を寄せることに対して安心をしたいが故なのですが、直人には本当に秘密があるため、すれ違っていきます。
どんな秘密だったのか。それがわかって映画をもう一度見直したときに、綾野剛の演技に涙をし脱帽するのです。
綾野剛出演映画おすすめ⑤『新宿スワン』
映画『新宿スワン』の作品情報
【公開】
2015年(日本映画)
【監督】
園子温
【キャスト】
綾野剛、山田孝之、沢尻エリカ、金子ノブアキ、深水元基、村上淳、久保田悠来、真野恵里菜、丸高愛実、一ノ瀬ワタル、長田成哉、安田顕、山田優、豊原功補、吉田鋼太郎、伊勢谷友介
【作品概要】
『愛のむきだし』(2009)『自殺サークル』(2002)『恋の罪』(2011)などの園子温が監督、鈴木おさむが脚本を書き、テレビドラマ化もされた和久井健の漫画『新宿スワン』を映画化。
新宿の歌舞伎町を舞台に、スカウトマンとなった綾野剛演じる白鳥が、女性たちを様々な世界に送り出しながらも界隈のグループ対立などに巻き込まれながら、人間として成長をしていく姿を描いたドラマ作品です。
【あらすじ】
一文無しで新宿の歌舞伎町をあてもなく歩いていた、金髪もじゃもじゃ頭の白鳥龍彦(綾野剛)は、喧嘩を助けてもらった真虎(伊勢谷友介)からスカウトマンにならないか、と誘いを受けます。
スカウトした女性が風俗に行くのを目の当たりにし、この仕事を向いていないと真虎に話す龍彦でしたが、「風俗で働く女性が不幸だと思うのは間違い」と言われ、「これから自分が関わった女性全員を幸せにする」と決意し、真虎と同じスカウト事務所バーストに所属しました。
ライバル会社のハーレムと事件がありながらも、合併することとなります。
合併前に龍彦ともめたハーレムの秀吉(山田孝之)は、クスリで金儲けをしており、いずれ全国統一をたくらむ野心家でした。しかも、彼の身辺調査をしてみると、意外なつながりがわかったのです。
女性に対してスーパーマンでありたいという感情表現にやられる
見た目もやっていることもハチャメチャで、龍彦が実現したいことと行動が噛み合っていないことも沢山あります。
でも、彼はストレートに「女性を幸せにしたい」と表現ができます。自分の欲のためにそう思うのではなく、1人の女性のためにその身を捧げるのではなく、本当に彼は界隈の女性たちの幸せを願い、その為に自分がいると信じています。
目の前で女性が困り苦しむ姿に、対策を思案するのではなく、その場で一緒に逃げ出してくれます。もし本当に女性たちが苦境に立たされる場所に彼がいたら、まさに「王子様だ」と言われるのではないでしょうか。
恥ずかしげもなく、最高にかっこいい王子様である龍彦を演じられるのは、綾野剛だからこそなのだ、と思わせてくれます。
まとめ
多種多様な演技で、老若男女問わず、観る人の心を掴む綾野剛。
映画、TVドラマ、素晴らしい出演作品が多数ある中でも、男性の魅力で胸を押さえさせるような色香が感じられる5作品を、厳選してご紹介させて頂きました。
全く違う役柄をどんな作品のテイストで演じても、綾野剛が演じると「その役はこうでしかありえない」と思わせてくれます。そして、主演作でも助演作でも、綾野剛が演じる役の存在感に驚かされます。
型にはまらず、幅広い役柄を演じられる稀有な存在。新しい出演作が決まるたびに、まだ見ぬ綾野剛の魅力を想像し、今度はどんな色香を放つ綾野剛が見られるのかと、楽しみになります。