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映画『プラハの春 不屈のラジオ報道』あらすじ感想と評価考察。実話から描く“真実の声”という武器で権力と戦車に抗ったラジオ局員達

  • Writer :
  • 松平光冬

もしこれを放送できたら、世界が変わる――

チェコで年間興行成績および動員数1位のヒットとなった映画『プラハの春 不屈のラジオ報道』が、2025年12月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショーとなります。

1968年にチェコスロバキアで起こった民主化運動「プラハの春」で、市民に真実を伝え続けたラジオ局員たちの姿を、実話をベースに描いたドラマの見どころをご紹介します。

映画『プラハの春 不屈のラジオ報道』の作品情報

(C)Dawson films, Wandal production, Český rozhlas, Česká televize, RTVS – Rozhlas a televizia Slovenska, Barrandov Studio, innogy

【日本公開】
2025年(チェコ・スロバキア合作映画)

【原題】
Vlny(英題:Waves)

【監督・脚本】
イジー・マードル

【製作】
モニカ・クリストロバー

【撮影】
マルティン・ジアラン

【編集】
フィリプ・マラーセク

【音楽】
サイモン・ゴフ

【キャスト】
ボイチェフ・ボドホツキー、スタニスラフ・マイエル、タチアナ・パウホーフォバー、オンドレイ・ストゥプカ、マルティン・ホフマン、マリカ・ソポスカー、ボイチェフ・コテク、ペトル・ルネニツカ、ヤン・ネドバル

【作品概要】
1968年にチェコスロバキアで起こった民主化運動「プラハの春」で、市民に真実を伝え続けたラジオ局員たちの実話を描いたドラマ。

主演のボイチェフ・ボドホツキーはチェコ・アカデミー賞(チェコ・ライオン賞)主演男優賞にノミネートされ、スロバキア・アカデミー賞(Sun in a Net Awards)主演男優賞、共演のスタニスラフ・マイエルがチェコ・アカデミー賞助演男優賞をそれぞれ受賞しました。

チェコ本国では年間興行成績および動員数1位となるヒットを記録し、チェコとスロバキア両国の映画賞で多数の賞を受賞。第97回アカデミー賞国際長編映画部門のチェコ代表作品にも選出されました。

映画『プラハの春 不屈のラジオ報道』のあらすじ

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1967年10月、チェコスロバキア国営ラジオ局の国際報道部は、部長ミラン・ヴァイナーの下、政府の検閲に抵抗し自由な報道を目指して活動していました。

中央通信局に勤務し、亡き両親に代わり弟パーヤの世話をするトマーシュ・ハヴリークは、上司命令により報道部に異動に。

それは、学生運動に参加している弟パーヤを見逃す代わりに、報道部とヴァイナーを監視する国家保安部〈StB〉に協力させるためでした。

ヴァイナーや局員たちの真実を報道しようとする真摯な姿勢を間近で目にし、信頼され仕事も任せられるようになったトマーシュは、パーヤの心配と良心の呵責で葛藤します。

そんな矢先、「プラハの春」が訪れ、皆で自由化を祝うも……。

映画『プラハの春 不屈のラジオ報道』の感想と評価

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権力に抗ったラジオメディアの実話

1968年1月、チェコスロバキアで共産党第1書記に就いたアレクサンドル・ドプチェクは、国家立て直しに向けた経済改革に乗り出し、社会主義下での民主化を目指します。

同国を含むソ連の影響下にあった東欧諸国では、それまで厳しい検閲が敷かれていたものの、4月には市場経済の一部導入や表現の自由の擁護といった「行動綱領」が採択され、検閲は事実上廃止に。これがいわゆる「プラハの春」と呼ばれるムーブメントです。

ところが同年8月20日夜、ソ連主導の軍事同盟ワルシャワ条約機構軍が、チェコ事件と呼ばれるプラハ侵攻を開始します。

本作『プラハの春 不屈のラジオ報道』は、自由化を求める大規模な学生デモが起こった1967年10月31日から翌年8月のチェコ事件までを、ラジオ局員の視点で追った実録ドラマです。

監督のイジー・マードルは、大学でジャーナリズムを学んでいた際に、60年代のチェコスロバキア国営ラジオに勤務していた局員たちの物語に興味を示します。やがてフィルムメーカーとなって以降、彼ら局員たちから直接証言を聞き、脚本を執筆しました。

真実を伝えるミッション

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中央通信局に勤務していた主人公トマーシュは、突如報道部への異動を命じられます。それは、国家保安部〈StB〉に協力して、チェコスロバキア国営ラジオ局部長ミラン・ヴァイナーを監視することが目的でした。

「真実ではないことは伝えられない」と、通信社からの義務報道を度々突っぱね、StBから要注意人物とされていたヴァイナー。

それでも、ヴァイナー以下ヴェラ・シュトヴィツコヴァーらラジオ局員は、上層部の意向に反してリスナーとの距離を縮め、客観的な報道を続けます。

ヴァイナーやヴェラといった実在のラジオ局員を配しつつ、架空人物のトマーシュ(と弟のパーヤ)を主人公にしたことについて、マードル監督は「トマーシュは、1960年代の社会主義下のチェコスロバキアで生きた“市井の人々”の代表」と語っています。

社会主義国家に生まれ育ってきたトマーシュにとって、民主化の意義や自己主張をする理由が見出せない。いや、もしかしたら心の奥底にはそれらへの憧憬があったのかもしれないが、政府の検閲を恐れ表に出せないでいる――。

学生運動に参加するパーヤに危害が及ぶことを恐れ、局員たちの動向や情報をStBにリークせざるを得ない状況に葛藤していたトマーシュ。

ですがヴァイナーたちの姿勢に触れていくにつれ、「本当に守るべきもの」とは何か、「人間として実存する」意味とは何かを見出していくこととなります。

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1968年3月、ヴァイナーが時の大統領アントニーン・ノヴォトニーの裏金疑惑を突き止めて辞任に追い込んだの機に、ドプチェク政権が樹立。ついに「プラハの春」が訪れたと市民は歓喜に沸きますが、その「春」は長くは続きませんでした。

前述のように、その数ヶ月後にはワルシャワ条約機構軍が越境。中心部にあったチェコ放送局の掌握を試み、「真実ではない情報」を放送するよう軍に強要されたトマーシュは、ついに決断します。

クライマックスでの、権力と戦車に“真実の声”という武器で抗ったラジオ局員たちの姿は、マードル監督が参考にしたと公言する『アルゴ』(2012)や、『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2017)などと重なるスリリングな緊張感に満ちあふれています。

まとめ

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本作の原題『Vlny』の意味は「波」(英題は『Waves』)。これはラジオを流す「周波」はもちろん、「民主化と自由を求める波」も指します。

「プラハの春」自体は数ヶ月で武力制圧されてしまったものの、その波は周辺諸国に行きわたり、1989年のソ連邦解体、東欧革命へと発展。

またヨーロッパを越え、1979年の韓国の「ソウルの春」、2010年のアラブ諸国の「アラブの春」へと影響を与えたのです。

ロシアのウクライナ侵攻が終息の兆しすら見えない今だからこそ見逃せない作品、と言っても過言ではないでしょう。

『プラハの春 不屈のラジオ報道』は、2025年12月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)



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