映画『Our Friend/アワー・フレンド』は10月15日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!
妻の死に向き合う家族と、彼らを支えようとする親友との、愛と葛藤の姿を描いた『Our Friend/アワー・フレンド』。
アメリカの一流雑誌に掲載されたエッセーを原作とした本作は、妻の死に向き合う夫、子供たちと、家族を支える決心をした夫婦の親友との、心の交流を綴った物語です。
作品を手掛けたのは、ドキュメント作品で高い評価を得て頭角を現した新鋭ガブリエラ・カウパースウェイト監督。ケイシー・アフレック、ダコタ・ジョンソン、ジェイソン・シーゲルら人気俳優陣がメインキャストを担当します。
映画『Our Friend/アワー・フレンド』の作品情報
【日本公開】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
OUR FRIEND
【監督】
ガブリエラ・カウパースウェイト
【キャスト】
ケイシー・アフレック、ダコタ・ジョンソン、ジェイソン・シーゲル、チェリー・ジョーンズ、グウェンドリン・クリスティー
【作品概要】
ジャーナリストのマシュー・ティーグが雑誌「エスクァイア」に寄稿したエッセーの映像化作品。末期がんに侵された妻の死という悲劇に直面した家族と、彼らを支えた一人の親友との愛と友情を描きます。
2017年に映画『Megan Leavey』で長編劇映画デビューを果たしたガブリエラ・カウパースウェイトが作品を手掛けます。
キャストには『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『インターステラー』などのケイシー・アフレックと『サスペリア』『ソーシャル・ネットワーク』などのダコタ・ジョンソンが家族の夫婦役を担当、『ガリバー旅行記』『ザ・マペッツ』などのジェイソン・シーゲルが夫婦の親友役を務めます。
また脚本はアフレックも出演した『ファーナス/訣別の朝』などを手掛けたブラッド・イングルスビーが担当しました。
映画『Our Friend/アワー・フレンド』のあらすじ
ジャーナリストのマット・ティーグ(ケイシー・アフレック)と妻で舞台女優のニコル(ダコタ・ジョンソン)は、自分の仕事とともに二人の娘の育児をこなし、慌ただしく毎日を送っていました。
ところがある日ニコルは末期がんを宣告され、闘病生活を余儀なくされることに。これによりマットは介護と育児に追い詰められ、仕事もままならない状況に陥ります。
そんなとき、二人の長年の親友であるデイン・フォシュー(ジェイソン・シーゲル)が彼らの助けになることを決心します。
以前、自分が生きる希望を失いかけた際に二人の存在で救われた思いを胸に、彼はティーグ一家をサポートすべく遠方から駆け付けますが…。
映画『Our Friend/アワー・フレンド』の感想と評価
本作は一流雑誌「エスクァイア」に掲載されたエッセーの実写化であり、単なる記録のストーリー化にならない、物語に秘められたメッセージをしっかりと映し出すことが焦点となります。
例えば「家族の一人がまもなくその命を終えることになる」というその一事象に着目して描かれた物語はたくさんあります。
韓国のイ・ジョンジェ、イ・ヨンエによる映画『ラスト・プレゼント』などは、死にゆく妻が胸に秘めた思いに対して夫は不安と疑惑を迎えるも、最後は美しい愛情を映し出すといった展開でした。
『Our Friend/アワー・フレンド』がユニークなのは、これらの作品に対してどちらかというと完全に美しい姿などは映し出されていないという点にあります。
妻ニコルには夫に言えない秘密があり、それを知った夫マットはニコルに疑いの目をかけ醜い表情を見せる。そして親友デインには人生に失望したという悲惨な思い出があり、今でもどこか世間に対してうだつの上がらないところがあります。
登場人物にはどこかに何らかの汚点があり、どこかひたすらストレートに愛の美しさ、尊さを描いた作品とは違った筋道が引かれていますが、逆にそのもつれた展開がかえって最後のシーンを迎えるにあたり強い絆をさらに強調する向きを与えており、終わってみるとやはり先述の『ラスト・プレゼント』のエンディングに感じるような、胸を締め付けられるほどの複雑な思いを見るものに与えてきます。
結論的には昔からストレートに描かれてきた物語と共通するものがありながら、こうした現実に目を向けざるを得ない、醜い部分ももれなく描こうとする姿勢はある意味時代に即した傾向も感じるところであり、現代で原作のエッセーが高い支持を得て映画化まで望まれたという経緯を改めて感じられるものであります。
また本作で印象的なのは、二人の娘の表情にもあります。
何らかの展開が発生した際に見せる不安な表情、憤りのようなやるせなさを含んだ表情などさまざまな顔を見せていますが、実はここに物語の絶対的な視点が埋め込まれているようでもあり、物語のバランスに対して絶妙な均衡性を与えています。
これは特殊な時間軸の使い方を行われている本作の構成においても、理解しやすさをもたらす効果を見せているようでもあります。
そしてこのような作品作りを行うにあたり、カウパースウェイト監督の抜擢はある意味正解であったといえます。
ガブリエラ・カウパースウェイト監督は、かつてドキュメンタリー映画『BLACKFISH』で「殺人シャチ」と呼ばれたシャチのショッキングな飼育状況や生態、水族館の裏側など、ステレオタイプなイメージからは見ることのできないシャチという動物の真実に迫り、高い評価を受けました。
原作のエッセーを読み解きその真意に迫るにあたり、ガブリエラ監督自身の視点は少なからず発揮されたことがうかがえます。
まとめ
俳優陣の演技としては、ダコタ・ジョンソンが中心となり家族、デインらの繊細な人間関係が形成されています。
役柄的にも彼女が演じたニコルが大きく運命に翻弄されながらもどちらかというと感情の起伏を抑えがちな、落ち着いた性質であることもあいまって、役者たちをうまくまとめ上げています。
さらにジョンソンを軸にケイシー・アフレック、ジェイソン・シーゲルがそれぞれ「複雑な展開に揺れ動く心情」を秀逸に表現しています。この役者同士のやり取りで生み出される雰囲気は、この作品の大きな見どころともいえるでしょう。
そして彼らが生み出したその空気感、世界観は、改めて人間の不完全さ、そしてそんな人間たちの間で生きていくということを改めて考えさせてくれます。特にオンライン化が促進され相手の姿が見えづらくなっている今だからこそ、逆に人々の胸に響いていく可能性をもった物語であるといえるでしょう。
映画『Our Friend/アワー・フレンド』は10月15日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!