生きることは簡単なことじゃない。
それでも生きる意味がある。
有村架純と坂口健太郎、W主演で放送されたWOWOWオリジナルドラマ「そして、生きる」の劇場版。
東日本大震災後のボランティアで出会った2人が、運命に翻弄されながらも困難を乗り越え、懸命に生き抜いていく物語。
岩手県と宮城県、東京、そしてフィリピンを舞台に、すれ違う2人のせつない恋を描いています。
神様はこうも2人を苦しめるのか。自分の存在の意味、生きる場所を求め続ける2人を引き裂く運命とは?『劇場版 そして、生きる』を紹介します。
映画『劇場版 そして、生きる』の作品情報
【日本公開】
2019年(日本)
【監督】
月川翔
【キャスト】
有村架純、坂口健太郎、知英、岡山天音、萩原聖人、光石研、南果歩
【作品概要】
WOWOWオリジナルドラマ「そして、生きる」の劇場版。東日本大震災後のボランティアで出会う2人の主人公に、有村架純と坂口健太郎が共演しています。
脚本はNHK連続テレビ小説「ひよっこ」でお馴染みの岡田惠和のオリジナルストーリーとなっています。
監督は映画『君の膵臓をたべたい』『君は月夜に光り輝く』など、切ないラブストーリーを得意とする月川翔監督。テレビドラマでは放送されなかった未公開シーンも追加されています。
映画『劇場版 そして、生きる』のあらすじとネタバレ
2011年3月初旬、ここは岩手県盛岡市。生田瞳子はいつもの道を自転車に乗り、バイト先の喫茶店へ到着しました。
瞳子は、3歳の時に交通事故で両親を亡くし、盛岡で理髪店を営む伯父・生田和孝に育てられました。
大事に育てられた瞳子は、その可愛らしさから地元では劇団に所属しモデルとしても活躍しています。夢は、オーディションに合格し女優になること。そして、和孝を楽にしてあげることです。
2011年3月11日、明日は瞳子の東京でのオーディションの日です。盛岡の家を出ようとしたその時。
時刻は14:46。突然の大きな音と共に激しい揺れに襲われます。東日本大震災。地震により発生した巨大津波により、東北沿岸地域を中心に甚大な被害をもたらしました。
2011年9月。日本各地から東北へ集まったボランティアの中に、瞳子の姿もありました。瞳子は同じバイト先の友達、韓国人のハン・ユリを誘い宮城県気仙沼市にボランティアに訪れます。
そこで瞳子は、ボランティアの運営委員として東京から来ていた大学生・清水清隆と知り合います。
瞳子たちが配属されたボランティア先の気仙沼商店街は見るも無残な姿でした。瞳子は実家と同じ理髪店の泥出しをしています。洗っても洗ってもキリがない状態です。
経営者の坂本は、妻と娘を津波で亡くしていました。それでも明るく瞳子たちを迎えてくれる坂本。見つけた家族写真に、瞳子はたまらず涙を流します。
瞳子とハンは、気仙沼の商店街が復興するまでボランティアに通うことを決意。何度も通ううちに地元の人々やボランティア仲間との交流が深まっていきます。
気仙沼の商店街が仮説オープンを迎えます。瞳子たちのボランティア活動も一区切りとなりました。
ボランティア仲間として同じ目標に向かって力を合わせてきた瞳子と清隆も、お別れの時です。
瞳子と清隆は、同じ境遇で育っていました。清隆の父親の病死で、母が自殺。清隆は叔母の清水美恵子に育てられました。
自分は、いてもいなくても良い存在なのではないかと思ってきた清隆。ボランティアに参加したことで、「自分でも人の役に立てることがある」と感じることが出来ました。
自己満足のためにボランティアに参加したのは瞳子も同じでした。2人はどこか負い目を感じていたことを皆に打ち明けます。
それを聞いた気仙沼の坂本は、「それでも、来てくれてありがとう」と、2人に感謝の言葉を述べます。どんな理由であれ、生まれた絆が確かにありました。
2012年12月。瞳子の働く喫茶店に清隆がやって来ます。
清隆は、母親の期待通り、大手総合商社に就職が決まっていました。しかし自分の進みたい道とは違うと感じていた清隆は、内定式を抜け出して瞳子に会いに来ます。
清隆は瞳子へ自分の夢を語ります。「まずは、一番好きな人に話を聞いてもらいたかった」。瞳子へ告白する清隆。瞳子もまた、清隆のことが好きでした。
瞳子の東京でのオーディション合格を目指し、遠距離恋愛を始める2人。共に歩む将来への希望であふれていました。
映画『劇場版 そして、生きる』の感想と評価
2011年3月11日の東日本大震災で、被災者の皆さんはもちろん、運命が大きく変わってしまった人たちが多くいます。
映画『劇場版 そして、生きる』は、当時のボランティアの学生だった主人公たちを通して、非日常な体験をした者たちの心の痛みをリアルに表現しています。
ボランティア最後の夜、それぞれの参加理由を語るシーンでは、自分の抱えている問題から逃げるように集まった若者たちの葛藤が語られます。
どんな参加理由であれ、力を合わせ復興を目指す経験は、ボランティア仲間、そして地元の皆さんとの絆を深いものにして行きます。
自分も人の役に立てるんだ、頼りにされている。その体験が、若者たちに生きている実感を与えたのです。
しかし、その後ひと段落した後に襲ってくる虚無感。まだ、自分には何かできることがあるはずだ。自分の存在意義とは。
日常に戻り、今後の人生を考えた時、ボランティアで感じた充実感は得られるものではありませんでした。
物語に登場する、気仙沼の坂本の言葉に被災地の人たちの心が込められていました。
人生に挫折し苦しむ清隆が、気仙沼で瞳子に再会したあと、坂本に泣きつきます。「何かしたいです。何でもします」。
坂本は答えます。「ここは、うまくいかなくて逃げてくる場所ではない。あの時間やあの経験は普通の社会ではないこと。心を弱くしてしまったのは俺らかもしれないな。嬉しいけど嬉しくないよ」。
自分の人生を、自分の力で切り開いていってほしい。坂本の願いが込められていました。
そしてまた、清隆と瞳子が人生の様々な苦しみを乗り越えて、前に進むことが出来たのは、あのボランティアでの経験があったからとも言えます。
今の自分を受け入れ、選んできた道だから後悔はしていない。それは、災害で犠牲になった者たちへの誓いでもあります。
そして、生きる。生きていればまた会える。生きていることが大切なのです。
そのことに気付いた瞳子と清隆は、たとえ結ばれなかったとしても、それぞれの人生を精一杯生き抜く強い心を得られました。
まとめ
2011年の東日本大震災のボランティアで出会った2人が、その後の8年間、運命に翻弄されながらも人生を強く生き抜く姿を描いた『劇場版 そして、生きる』。
人生には、災害に限らず、悲しい出来事が必ずやってきます。大切な人との別れ、失恋、失敗、後悔など、悲しみにキリはありません。
しかし、辛いことがあった時、人生を諦めず前に進むために心の支えとなる存在。それは経験だったり、大切な人との出会いなのかもしれません。
誰よりもお互いを理解し思い合っていながらも、すれ違う主人公の瞳子と清隆。有村架純と坂口健太郎の実力派俳優2人の演技に、最初から最後まで涙が止まりません。