Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

映画『カーテンコールの灯』あらすじ感想と評価レビュー。不器用な父がロミオ役に抜擢!? 心が離れた家族の再生を感動的に描く

  • Writer :
  • 松平光冬

心がバラバラになった一家の父親がシェークスピア劇と出会い…

映画『カーテンコールの灯』が、2025年6月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国ロードショーとなります。

「セイント・フランシス」(2022)の脚本・主演ケリー・オサリバンと監督アレックス・トンプソンの共同監督が手がけた、壊れかけた家族の絆の再生を描くヒューマンドラマの見どころをご紹介します。

映画『カーテンコールの灯』の作品情報

(C)2024, Ghostlight LLC.

【日本公開】
2025年(アメリカ映画)

【原題】
Ghostlight

【監督】
ケリー・オサリバン、アレックス・トンプソン

【製作】
イアン・カイザー、アレックス・ウィルソン、ピアース・クレイブンズ、エディ・リンカー、チェルシー・クラント、アレックス・トンプソン

【脚本】
ケリー・オサリバン

【撮影】
ルーク・ダイラ

【編集】
マイク・S・スミス

【キャスト】
キース・カプフェラー、タラ・マレン、キャサリン・マレン・カプフェラー、ドリー・デ・レオン、ハンナ・ドウォーキン、トミー・リベラ=ベガ、アルマ・ワシントン、H・B・ワード、デクスター・ゾリコッバ、ディアナ・ダナガン、フランシス・ギナン

【作品概要】
『セイント・フランシス』(2019)の脚本・主演のケリー・オサリバンと、監督のアレックス・トンプソンが共同で監督を手がけたヒューマンドラマ。

キャストは、『ダークナイト』(2008)、『パブリック・エネミーズ』(2009)のキース・カプフェラーと、実生活でもキースの家族である妻のタラ・マレンと娘のキャサリン・マレン・カプフェラーが、劇中でも家族役を演じます。

その他の共演に、『逆転のトライアングル』(2023)のドリー・デ・レオン。

キースは本作の演技でシアトル国際映画祭主演男優賞、サテライト賞ミュージカル・コメディ映画主演男優賞を受賞しました。

映画『カーテンコールの灯』のあらすじ


(C)2024, Ghostlight LLC.

アメリカの郊外の街に暮らす建設作業員のダン・ミューラーは家族に起きた悲劇から立ち直れず、妻シャロンや思春期の娘デイジーとすれ違う日々を過ごしていました。

そんなある日、作業現場で激昂していたダンはリタという女性に声をかけられ、彼女が参加するアマチュア劇団の舞台『ロミオとジュリエット』に参加することに。

当初こそ乗り気でなかったものの、個性豊かな劇団員たちと過ごすうちに居場所を見い出しはじめたダン。そんな中、突然のキャスト変更でロミオ役に抜擢されることとなり……。

映画『カーテンコールの灯』の感想と評価


(C)2024, Ghostlight LLC.

実の家族、親交あるスタッフが手がけるヒューマンドラマ

2022年に、女性の心身のリアルな本音をユーモラスに描き、SXSW映画祭観客&審査員賞を受賞した『セイント・フランシス』の主演兼脚本のケリー・オサリヴァンとアレックス・トンプソン監督。

私生活でもパートナーである両者の次作となる『カーテンコールの灯』は、父ダン、母シャロン、娘デイジーらミューラー家を主軸に描かれます。

ダン役のキース・カプフェラーは、『ダークナイト』やテレビドラマシリーズ「シカゴ P.D.」(2012~23)といったシカゴがメイン撮影地の作品に多く出演してきた俳優で、シャロンとデイジーをそれぞれ演じるタラ・マレンとキャサリン・マレン・カプフェラーは、実生活でもキースの妻であり娘です。その他キャストや多くのスタッフも、監督たちと親交のある面々で構成されています。

キャサリンが、「この映画で親と一緒に仕事をすることは本当にユニークでした。何故なら、すでに私たちには強い関係があったので、家族を演じる必要がなかったからです」と振り返るように、キャスト・スタッフの間に流れる親密な空気感が功を奏し、リアルさと温もりをもたらす一作となっています。

シェークスピア劇をセラピーに

(C)2024, Ghostlight LLC.

建設作業員のダンは、どこか気持ちが落ち着かない日々を送っており、怒りの導火線に火が付くこともしばしば。娘のデイジーも感情のコントロールが上手くいかず、学校でトラブルを起こし停学処分になってしまいます。

どうやらミューラー家には過去に悲しい出来事があったことが示唆され、ダンの妻シャロンは、その過去を払拭しようと努めています。

そんなある日、とあるきっかけでアマチュア劇団に誘われたダンは、近々行われる『ロミオとジュリエット』に参加することに。演技経験もなくシェークスピアもよく知らないながらも、劇団員との触れ合いを通し、家族に内緒で稽古に行くようになります。

本作で脚本も担当したオサリヴァンは、2020年の新型コロナウィルスによるロックダウン中に観た、ナショナル・シアターの『ロミオとジュリエット』の予告編に想を得たそう。「予告編を見終わった時、私は泣いていました。舞台に感動したのではなく、ただただ孤独で、誰かと一緒に何かを作り上げることが恋しかった」と振り返ります。

演劇やドラマを用いて心の問題や精神的ストレスを解決する、「ドラマセラピー」と呼ばれる治療法がありますが、オサリヴァンはコロナ禍であらゆるエンターテインメントが闇に閉ざされた中で、シェークスピア劇をセラピーに作劇欲を保ち続けられたと言えます。

そんな自身の経験を軸に、彼女は喪失感に苛まれた者がシェークスピア劇で立ち直るというエモーショナルなドラマを上梓したのです。

(C)2024, Ghostlight LLC.

まとめ


(C)2024, Ghostlight LLC.

演劇経験のあるデイジーから『ロミオとジュリエット』の台詞回しを教わり、芝居に打ち込むようになっていくダン。

ところがその悲劇的結末を知り戸惑い、さらには配役変更で自身がロミオ役に抜擢されたことで、それまで覆われていた喪失感を呼び覚ましてしまいます。

ミューラー家が背負う悲しみとは? そして、「ロミオとジュリエット」との予期せぬ類似とは?

本作の邦題『カーテンコールの灯』とは、暗転した劇場を照らす一個の電灯「ゴーストライト」(原題でもある)を意味します。

クライマックスで、ゴーストライトが照らすものとは何か? ぜひともその目で確かめてください。

映画『カーテンコールの灯』は、2025年6月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国ロードショー。

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)



関連記事

ヒューマンドラマ映画

【映画ネタバレ】ザ・サンThe Son息子|結末あらすじ感想と評価考察。ラスト真相の鍵はポスターに描かれた“父と子の輪廻”⁈

愛しているのに届かない親子の心、その距離を描いた慟哭の物語 今回ご紹介する映画『The Son 息子』は、初監督作『ファーザー』(2022)で第93回アカデミー脚色賞を受賞した、フロリアン・ゼレール監 …

ヒューマンドラマ映画

『東京ランドマーク』あらすじ感想と評価解説。藤原季節の初主演作は東京の片隅で懸命に生きる“若者たちの心の揺れ”

映画『東京ランドマーク』が2024年5月18日(土)から新宿K’sシネマにて全国順次公開 藤原季節の初主演映画『東京ランドマーク』が、2024年5月18日(土)から新宿K’sシ …

ヒューマンドラマ映画

映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』あらすじと感想評価。ゾーイカザンらキャストの演技力が光る感動作

映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』は2020年12月11日(金)公開。 2020年12月11日(金)より、映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』が、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBI …

ヒューマンドラマ映画

映画『イージーライダー』ネタバレラスト感想と結末あらすじの解説。理不尽な最後の意味とその裏にある“現実のアメリカ”を若者の死で描く

1960年代のロードムービーの全ては、映画『イージー★ライダー』の中にあった 公開当時からおよそ50年の時を経た今もなお、映画ファンを魅了しつづける『イージー★ライダー』。 2人の若者が、ロサンゼルス …

ヒューマンドラマ映画

映画『デイアンドナイト』あらすじネタバレと感想。山田孝之がキャストでなくプロデューサーに徹した意欲作

映画『デイアンドナイト』は、2019年1月26日より全国公開! 俳優の阿部進之助と監督の藤井道人が映画化を念頭に置いていた企画『デイアンドナイト』に、『クローズZEROⅡ』『十三人の刺客』で阿部と共演 …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学