1999年に制作された映画『17歳のカルテ』は原作スザンナ・ケイセンによる実話。
彼女は精神神経の医療機関に入院した経験を持ち、このようなこと語っています。
「どうしてあんなところに入ったのか、と人は尋ねる。彼らが本当に知りたいのは、自分たちもそこに入るなんてことがあるだろうか、ということ。本音の方の質問に、私は答えられない。言えるのはこれだけ…入るのは簡単よ」
スザンナ役にウィノナ・ライダー、またリサ役にアンジェリーナ・ジョリーなどの若手女優共演作『17歳のカルテ』をご紹介します。
1.映画『17歳のカルテ』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【原題】
Girl, Interrupted
【日本訳原作】
思春期病棟の少女たち (草思社文庫)
【監督】
ジェームズ・マンゴールド
【キャスト】
ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー、クレア・デュバル、ブリタニー・マーフィ、エリザベス・モス、ジャレッド・レト、ジェフリー・タンバー、バネッサ・レッドグレーブ、ウーピー・ゴールドバーグ、アンジェラ・ベティス、ジリアン・アルメナンテ、トラビス・ファイン、ブルース・アルトマン、メアリー・ケイ・プレイス、ケイディー・ストリックランド
【作品概要】
1994年に出版されたスザンナ・ケイセンによる自伝『思春期病棟の少女たち』を原作に映画化。
女優ウィノナ・ライダーは、自らも境界性パーソナリティ障害と診断され精神科入院歴のあったことから、原作に興味を抱き製作総指揮と主演を務め、演出は『ウルヴァリン:SAMURAI』や『LOGAN/ローガン』のジェームズ・マンゴールド監督。
作品の傾向性から『カッコーの巣の上で』と比べられるが、今作はノンフィクションの実話となっています。
ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリーをはじめ、ブリタニー・マーフィやエリザベス・モスなどの若手演技派女優の競演。なかでもアンジェリーナ・ジョリーの演技は高く評価され、第72回アカデミー助演女優賞を受賞。
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2.映画『17歳のカルテ』のあらすじとネタバレ
大量なアスピリンとウォッカを飲み病院に担ぎ込まれたスザンナ・ケイセン。
病院に運ばれ処置がおこなわれた後、自死未遂を疑われてカウンセリングを受けています。
しかし、スザンナは自死しようとした訳ではない反抗的な態度をとり、カウンセリングを受けようともしません。
スザンナの症状を重くみたカウンセラーは、クレイムア精神病院に入院措置させることを決めました。
彼女は何をしたらいいのかもいのかわからずにいた、不安定な女の子でした。進学校を卒業するも、大学には進学せず、父親の友人の大学教授と肉体関係を持ち、そして毎日は自殺を考えていたのです。
自分に相談もなく入院の手続きが進められたことに憤るスザンナですが、両親の保護下にある彼女に逆らうことなど許されるはずもありません。
彼女は自宅が遠ざかって行くタクシーの窓からを恨めしそうに振り返りながらも、スザンナはクレイムア精神病院に向かいます。
カーラジオからは流行歌の楽曲「恋のダウンタウン」が流れていて、運転手は「何をしでかしたんだ?」とスザンナに話しかけますが、彼女は返事もせずに後部座席に揺られていました。
クレイムア精神病院の門前に、看護師長のヴァレリー・オーウェンスが待ち構えていました。
スザンナを好意的に迎え入れると病院内を細かく案内をしてくれました。しかし彼女は初めて訪れた精神病院とその患者の様子に戸惑いを隠せません。
顔の半分が焼けただれた少女、奇声を上げる女、また稀有な目でスザンナを見詰めてくる患者たちに彼女は言葉も出ません。
そこに痩せこけた金髪ロングヘアーの少女が、看護師たちに連れられてやって来ました。少女は病院に長く入院している患者で脱走常習犯でもあるリサ・ロウでした。
リサの戻って来たことに喜ぶ患者たちにリサも大げさな態度で話しかけます。
他の患者たちとは明らかに雰囲気の違うリサに、スザンナは警戒心を抱きます。それを感じとったリサはスザンナに挑発的な視線を向けて来ます。
このようなことから、はじめはリサと距離を図っていたスザンナでしたが、医師や看護師たちに反発するリサの姿に次第に同調していくことで、他の患者たちとも打ち解けていくことができるようになります。
ある夜、リサは看守の目を盗んでに見つからないように他の患者たちを呼び集めて、地下通路へと向かいます。
そこで患者のドクターの診療室に忍び込むと患者のカルテを盗み見します。スザンナのカルテには「境界性人格障害」と書かれていることなども知りました。
また、雪の降る寒い日には看護師ヴァレリーに連れられて患者たち一緒にアイスクリームを食べに病院から外出します。
そこでスザンナが肉体関係を持っていた教授の妻と娘と出会いました。
その妻はスザンナに感情をあらわにして喧嘩越しに話しかけて来ると、彼女を何事にも強きなリサが守ってくれました。
翌日になると、スザンナは面会に訪れた元彼氏と会いました。彼は戦争に兵士として出征するから一緒にカナダ逃げようと誘いますが、スザンナはここには友達がいるからと断ります。
3.映画『17歳のカルテ』の感想と評価
この作品を観ていると直ぐに気がつくことは、クレイムア精神病院に入院させられていたのは精神病患者だけではないことです。
例えば性同一性障害を持つ者も病気扱いさせられ入院させられていることなど、あまりに酷い扱いの実話であるということです。
また、当時の実社会と精神病院内ではどちらが異常であるかというボーダーラインも曖昧に描いています。
その辺りの演出を務めたのが、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』や『3時10分、決断のとき』、また『LOGAN/ローガン』などで手腕を見せる実力派監督のジェームズ・マンゴールドということもあってユーモアも効いています。
ヴィクター・フレミング監督『オズの魔法使い』(1939)
例えばスザンナが病院で来た当初不安であった際に、クレア・デュヴァルが演じたジョージーナが『オズの魔法使い』好きである隠喩を通して、この物語の構図が名作『オズの魔法使い』と同じ構造になっていますよと見せてくれます。
ドロシー ⇆ スザンナ
案山子・ブリキ男・ライオン ⇆ 患者たち
オズの大魔法使い ⇆ 精神病院(カウンセラー・医師など) ⇆ 実社会
*ほかにも猫や女優ジュディ・ガーランド(映画撮影当時に薬物漬けにされた事実)など、共通点は多々見ることはできるでしょう。
今作『17歳のカルテ』についてジェームズ・マンゴールド監督は、インタビューで次のように語っています。
「私が腰を据えて描こうと思ったのは、原作がいざなう世界でもあるんだが、だれもが狂っているということだ。だれもが狂っている、突き詰めればそういうことだ。主人公がこの病棟という世界に入り、他の若い女性達に出会うというのはまるで魔法のようで、最初はみんなとても極端で恐ろしい人間たちのように思えるのに、すぐに正常に見えてくる。外の世界よりも正常なほどに見えてくるんだ」
先に触れた『オズの魔法使い』もその一つの演出ですが、ジェームズ・マンゴールド監督はこの映画の世界観や観客の誘い方が巧みなので、その辺りをみつけるのも楽しみの一つです。
また、当然ではありますが、この物語を観客の道先案内人になってくれる主人公スザンナも役柄として上手く機能しています。
そんな病院でのスザンナの状況について、ジェームズ・マンゴールド監督はこのように述べています。
人生には足をすくわれるようなところがあって、懸命に泳いでいないと、たとえ一瞬でも休んであたりを見回していたりすると、たちまち沈み始める。だからって狂ってるわけじゃない。だけどこの世界は、止まるのを許しちゃくれない。止まると置いていかれてしまうんだ。(中略)
周囲の若者達は大学に進学するし、世の中も動き続けているわけだ。彼女の最大の罪は、自分というものを見極めようとして止まったこと。それは許されない。ひじょうに脅威を感じさせる態度なんだ。だけどおかしなことに、彼女のとった道は自分を探す役に立った。
この作品を鑑賞を終えた時に、あなたも実社会や実生活から自分というものを見極めようと映画を見ている訳ですから、もしかすると何か自分を探すヒントを掴めるかもしれません。
この映画が見せるのは精神病院とい稀有なものだけではありません。何処か女子学生寮のような雰囲気があるのも映画の面白いところです。
このことについて、原作者のスザンナ・ケイセはインタビューでこのように触れています。
この映画が最もよくとらえていると思うのは…とても重要な側面なので私としても喜んでいるんだけど…娘達のあいだに同級生のような気分があること。寄宿舎の雰囲気なのよね。それがよく出ていて、見ていてうれしかった。演技のアンサンブルもすばらしかったし。バランスがとれていて、グループで出てくるとグループの感じが出ていた。私があの精神病院にいるのが好きだったのはそれがあったからで、だからうれしかった。原作でもそのことが重要な一部となっているの。
精神病院について原作者のスザンナ・ケイセは、個人の自由などはなかったとしながらも、寄宿舎や中級ホテルみたいな雰囲気であるといい、一方では陰険で恐ろしく人を閉じ込めておく場所だとも述べています。
さて、ここまで今作『17歳のカルテ』について述べてきたことをまとめると、実社会こそがある意味では狂っているのかもしれませんし、ある意味ではそんな病んだ社会からの避難場所で病院はあるのかもしれません。
それでも病院内で精神的に病んだ患者たちを見つめ直し、原作者スザンナ・ケイセは、自分の意思で病院から出たいと望むようになりました。
それは“逃げない”や“立ち止まらない”と決めたのかもしれません。
何かが“狂ってる”とか“おかしい”と、特別扱いや揚げ足をとってボーダーラインを引き区別することは、意外に簡単なことです。
困難を前に向き合うことに正常や異常とかでなく、逃げないというのは自分に嘘をつかないことなのかもしれませんね。
まとめ
実話を映画特有の描き方で作られた作風として、とても面白い作品なのですが、60年代の精神病院を舞台にしているだけに陰鬱な部分も当然のことながら登場します。
60年代の病院などに関して、原作者スザンナ・ケイセはインタビューでこのように述べています。
60年代というのは、多くの大人達にとって恐ろしい時代だったと思う。その時代を生きた私にとっても怖かったし、60年代を生き抜いてきて、怖かったと思うのは私だけではないでしょう。そのことについては本でも触れているけど、大人にとっても、とても不安な時代だったと思う。だからつい過保護になってしまったのよ。「子供達を自由にして、好きなことをさせてやりなさい」なんて安易にいえなかったんだわ。いろいろなことがこれまで以上に崩壊の兆しを見せ、これまでとは違う形で崩壊していった。それもあってわたしは入院させられたんだと思う。1958年だったら入院していなかったでしょう。1978年でも1988年でもね。
さて、あなたもちょっとスザンナの入院した精神病院を覗き見して見ませんか?
ましてやこの作品は、今をときめく多くの若手女優も数多く出演しています。
境界性人格障害のスザンナ役にウィノナ・ライダー。反社会性人格障害のリサ役にアンジェリーナ・ジョリー。
空想虚言症のジョージーナ役にクレア・デュバル。神経性大食症のデイジー役にブリタニー・マーフィ。
過去に反抗挑戦性障害から外傷後ストレス障害になったポリー役にエリザベス・モスが登場します。
また、この作品は黒人問題にも触れていて、看護師のヴァレリー役のウーピー・ゴールドバーグにも注目してください!
さて、最後になりますが、リサ役にアンジェリーナ・ジョリーは、主役を喰うほどの圧倒的な演技力が高く評価され、アカデミー助演女優賞、ゴールデングローブ賞助演女優賞、全米映画批評家協会賞新人賞を受賞。
アンジェリーナ・ジョリーはリサの個性について彼女らしい発言でインタビューに答えてその存在を見抜いています。
私の演じているキャラクターは、世の中のことをよくわかっている。平和だの愛だの…世の中、こうあるべきだという一般通念には欠陥がある、と思ってる。ひじょうに現実的で、何かと闘ったり、世の中を変えたり、環境を整えたり、恋をして子供を持ったり…そういうことトライすれば、人並みの成果はあげられるという自信がある。それで結局は…これでいいんだ、世の中こういうものだと思ってる。どこにも幻想なんかない。彼女は存在していて、その意味を理解している。
彼女はリサの役柄を演じるにあたり、当初キャラクターに苛立つと思っていたそうです。しかし実際に演じた際に楽しんで演じて自分の新しい面を発見したとも語っています。
1994年に出版された原作スザンナ・ケイセン自伝『思春期病棟の少女たち』の映画化に、製作総指揮として力注いだウィノナ・ライダー!
圧倒的な演技力のアンジェリーナ・ジョリー!ぜひ、ご覧いただきたいオススメの作品です!
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