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『ひな菊の人生』映画原作ネタバレあらすじと結末の感想評価。『犬王』湯浅政明監督がアニメで描く吉本ばなな×奈良美智コラボ作品

  • Writer :
  • 星野しげみ

著・吉本ばなな×絵・奈良美智の小説『ひな菊の人生』が2026年にアニメーション化決定!

世界30カ国以上で翻訳・出版され、著者累計700万部を超えるベストセラー作家・吉本ばなな。その作品の一つ、焼きそば屋で働く女性の人生をファンタジックに描いた小説『ひな菊の人生』が、自身初のアニメ化となりました。


(C)YOSITOMO NARA

監督は、『夜は短し歩けよ乙女』(2017)や『映像研には手を出すな!』(2020)などを手がけ、『犬王』(2022)で第80回ゴールデングローブ賞にもノミネートされた湯浅政明監督。

本作は、2025年2月にアスミック・エース、アニプレックス、コミックス・ウェーブ・フィルムを交えて設立した監督自身のスタジオ「ame pippin」の第1作でもあります。

アニメーション『ひな菊の人生』は、2026年に全国公開。映画公開に先駆けて、小説『ひな菊の人生』をネタバレありでご紹介します。

小説『ひな菊の人生』の主な登場人物

【ひな菊】
主人公。子供の頃にたった1人の家族だった母を事故で亡くす。

【ダリア】
子供の頃のひな菊の親友。

小説『ひな菊の人生』のあらすじとネタバレ


(C)吉本ばなな『ひな菊の人生』書影

25歳の女性・ひな菊は、叔父さん夫婦が営むやきそば屋で働いています。

ひな菊には父親がいません。シングルマザーだった母が妹夫婦が営む焼きそば屋で働いて、小さなひな菊を育ててくれました。ですが、その母もひな菊が小学生の時に交通事故で亡くなってしまいました。

ぽとぽとと冷たい雨が空から絶え間なく落ちて来る梅雨のことでした。学校へ車でひな菊を迎えに来た母は、雨の中を運転していて前から来た自転車をよけようとして電柱に衝突したのです。

母はそのまま亡くなり、ひな菊は足に怪我をして気を失います。朦朧とする意識の中で母がひな菊の頭をものすごい力で押してきて、ひな菊は再び気を失います。

次に気が付いたとき、ひな菊は病院のベッドの上でした。足の怪我は重症でリハビリもつらかったのですが、無事に退院できました。その後、一人残されたひな菊ですが、優しい叔父夫婦のもとにそのまま引き取られて育ちます。

ひな菊のあまり楽しい思い出のない子ども時代の唯一の楽しい記憶が、幼馴染みのダリアという少女でした。

叔父さん宅に居候しているので電話など使えないと思っていたひな菊は、考えた末にダリアと会いたいときに良い連絡方法を思いつきます。ダリアはひな菊の家の近くに住んでいたため、長く寂しい梅雨の夜など、小さなひな菊はひとり、たて笛を吹くことにしたのです。

ダリアは、その音を聞きつけてやって来て、ひな菊とおしゃべりしたり、森の中へ遊びに行ったりします。寂しいひな菊を唯一支えたのは、親友のダリアだったのです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『ひな菊の人生』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『ひな菊の人生』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

その後、ダリアが母の故郷ブラジルへと旅立ちました。それから十数年の月日がたちました。

25歳になったひな菊は、叔父さんたちとも揉めるともないのですが、自立を求めて家を出ていました。一人暮らしでよく見る夢には、いつもダリアが出てきます。

ある日、ひょんなことから知人の男性の家に同居していたひな菊は、しばらくダリアの夢を見ていないのに気が付き、不思議に思いました。

そして、その知人宅も訳あって出ることなったひな菊。また叔父さんの家に戻って来て、現在も叔父と叔母が営むお店で焼きそばをつくりながら居候生活続行しています。

梅雨のある日。母を亡くした夜と同じ土砂降りの中、ブラジルから1通の手紙が届きました。

差出人はダリアの母で、ダリアが死んだことが書かれていました。手紙と共にダリアの写真もたくさん入っていました。

ダリアは少し変わった死に方をしたと書いてあります。旅行に出て車にぶつかり、怪我もほとんどなかったのに、打ち所が悪かったのか、その夜亡くなったというのです。

旅行に行く前に、「ひな菊ちゃん元気かしら。写真をひな菊に送りたいから住所を調べておいて」と言ったそうです。ダリアの母親の手紙には、「嫌じゃなかったらこの写真をもらってください」と書かれてありました。

ひな菊はダリアの母に自分の写真を送ることにしました。「友だちらしく、似たような人生を歩んでいました」という一文を添えて……。

※※※※※※※※

ある夏の午後、ひな菊は母の墓参りに行きました。

墓参りの後、誰もいない林の中を歩き、ダリアと過ごした子どもの頃のことを思い出します。

そしてこう思いました。

私という箱には、私が想像できる全部のものごとが詰まっているのだと。もし、私が死んでも、その箱があったことだけは残るのでしょう。宇宙のなかにその箱は浮かんでいて、ふたには「ひな菊の人生」と書かれているのでしょう、と。

小説『ひな菊の人生』の感想と評価

本作は、1998年11月号から2000年1月号まで月刊誌『CUT』で連載された吉本ばななの小説です。ページの随所には、何とも言えない表情の少女たちが描かれています。

本作を読んで喚起されたイメージを画家の奈良美智が描き、またその絵の力をイメージしながら、吉本ばななが書くというやりとりで物語が紡がれていったそうです。

たった一人の家族であった母が交通事故で亡くなり、寂しい子ども時代を過ごすひな菊の心の拠り所は、親友のダリアと、ダリアを縦笛の合図で呼出し、2人で遊ぶひとときの時間でした。

後半で明かされるダリアの死は、‟突然に来る永遠の別れ”をひな菊に諭すものでした。ですが、ひな菊は寂しさと共に「それも自分の人生」と素直に受け入れます。

本当の寂しさを身をもって体験するひな菊の気持ちが、背景となる自然や季節の繊細な描写で、より鮮明に伝わってきました。

小学生2人がこっそりと縦笛の合図で会っていたということを、とても微笑ましく思います。

作者自身の体験を組み入れたそうで、目に浮かぶのは古き良き昭和の時代の情景……。決してハッピーエンドではないラストなのですが、なぜかその世界観にどっぷりと浸ることができる、不思議なお話でした。

アニメーション『ひな菊の人生』の見どころ

吉本ばななが瑞々しい感性で物語を描き、その背景とイメージを余すところなく挿絵で描き出す奈良美智。この2人のタッグによって、原作小説は絵本のようになっています。

そんなファンタジックな原作を基に、『犬王』(2022)で第80回ゴールデングローブ賞にもノミネートされた湯浅政明監督がアニメ化しました。

脚本は『散歩する侵略者』(2017)『寝ても覚めても』(2018)など、黒沢清監督や濱口竜介監督など実写映画の作品で活躍する田中幸子が担当。

主人公・ひな菊の幼少期のキャラクターは、世界の主要美術館に作品が所蔵される美術家・奈良美智の原作挿画をもとに制作したと言い、湯浅監督&吉本ばなな原作&奈良美のキャラという、奇跡のコラボレーションが実現しました。

数多の話題を持つ本作は、2025年度仏アヌシー国際アニメーション映画祭「Work in Progress」部門への選出が決定しています。

また同映画祭のクリスタル受賞歴もある気鋭の仏スタジオMiyu Productionsと共同製作されています。日仏共同制作の劇場アニメーションは、どんな作品になるのかと、期待は高まります。

アニメーション『ひな菊の人生』の作品情報

【日本公開】
2026年(日本映画)

【原作】
著・吉本ばなな、絵・奈良美智『ひな菊の人生』(幻冬舎文庫)

【監督】
湯浅政明

【脚本】
田中幸子

【キャラクター原案(幼少期)】
奈良美智

【アニメーション制作】
ame pippin(日本)、Miyu Productions(フランス)

まとめ


(C)YOSITOMO NARA

吉本ばななの小説『ひな菊の人生』をご紹介しました。作者も子どもの頃に隣の友だちとお互いに縦笛で曲を吹き、呼び出していたそうです。

ほっこりするようなエピソードをストーリーに組み入れ、ひな菊の感情と思い出が美しい描写で瑞々しく表現された本作は、「奈良美智とのコラボレーションで生まれた夢よりもせつない名作」と説明されています。

そんなコラボ小説『ひな菊の人生』が、湯浅政明監督の手腕でさらにパワーアップして、2026年に劇場公開されます。

物悲しい縦笛の響きと湯浅監督流の演出が今からとても楽しみです。



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