映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』は2021年3月26日(金)より全国順次ロードショー!
音楽家マックス・リヒターの楽曲『眠り』をテーマとした『SLEEP』の真意に迫ったドキュメンタリー映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』。
本作は楽曲『SLEEP』をテーマに、作曲者リヒターや周囲の人、観衆などの声からその曲の持つ真価、思いに迫ります。
音楽、エンタテイメントをテーマとした映像を手掛けてきたナタリー・ジョンズ監督が作品を手掛けており、劇中ではロサンゼルスで行われた8時間にも及ぶコンサートの模様も合わせて映し出されています。
CONTENTS
映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』の作品情報
【日本公開】
2021年(イギリス映画)
【原題】
Max Richter’s Sleep
【監督】
ナタリー・ジョンズ
【キャスト】
マックス・リヒター、ユリア・マール、グレース・デイヴィッドソン、エミリー・ブラウサ、クラリス・ジェンセン、イザベル・ヘイゲン、ベン・ラッセル、アンドリュー・トール
【作品概要】
クラシックとエレクトロニック・ミュージックの融合である『ポストクラシカル』音楽のマックス・リヒターが作り上げた楽曲『Sleep』の真相に迫るドキュメンタリー。
8時間超におよぶ『SLEEP』を、ベッドや寝袋に入って横たわる観客に向けて演奏するライブの模様、舞台裏とともに、リヒター自身の思いや周囲の反応などからこの楽曲の真意を問います。
監督を務めるのは『アイ・アム・タレント』で初めてドキュメンタリー作品を手掛けたナタリー・ジョンズ。サム・スミス、チャイルディッシュ・ガンビーノ、モリッシー、ジョン・レジェンドなど、さまざまなミュージシャンたちとのコラボレーションでも知られています。
映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』のあらすじ
ロサンゼルスの総合芸術施設グランド・パークで2018年7月に、ポストクラシカルの旗手で映画音楽などの作曲でも知られる音楽家マックス・リヒターが、眠りをテーマとした曲『SLEEP』を演奏するコンサートを開くためにやってきます。
その演奏予定時間8時間以上という長きにわたるもの。
そして会場には座席の代わりに、多くのベッドが。
リヒターや演奏者たちが入念な準備を終えると観客たちは入場し、寝袋を出したり、毛布を広げたりして開演を待ちます。
やがて幕は上がり、リヒターが脳科学者デイヴィッド・イーグルマンの協力のもとで作られた、睡眠のための曲『SLEEP』の演奏が始まるのでした。
映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』の感想と評価
主観を重点に置いたドキュメンタリー作品
ナタリー・ジョンズ監督はさまざまなミュージシャンとのコラボレーションでも知られる映像作家であり、『アイ・アム・タレント』以前にもミュージカル的なテレビドラマ『Great Performances』、ニューヨークの作曲家ニコ・マーリーの姿を追った『Essie Jain, All Became Golden』(いずれも日本未公開)といった表現者の姿を追った作品を手掛けています。
ゆえに本作はどちらかというとその視点はドキュメンタリーである一方で『SLEEP』という曲の本質や演奏の見え方、聴こえ方という点に重点を置いた構成となっています。
作中ではリヒターやそのパートナー、そして彼らを取り巻く人たちや観衆へのインタビューも収録されていますが、これらは『SLEEP』という楽曲やコンサートの補足を行いながら、演奏シーンを印象深いものとする演出の効果を担っています。
一方、本作のイメージを作り上げた根源としては、どちらかというとジョーンズ監督の主観性が感じられます。
ドキュメンタリーフィルムは事実を追うという点において、どちらかというと客観性を求められる傾向にありますが、この作品では単にありのままを映すというだけでなく、明らかに見え方の目標を見据え作り上げた映像を映し出しています。
このことからは、マックス・リヒターの『SLEEP』という作品がどのようなものなのかという、その見え方の印象を、あくまでジョンズ監督自身の印象を具体化したものと見ることもできるでしょう。
ドキュメンタリーというジャンル性を考えると非合理的に思えるかもしれませんが、芸術というジャンルに絶対的な答えがないことを考えると、ある意味これはもっともな描き方であるともいえます。
そしてこの構成の中で『SLEEP』という楽曲と“Sleep”、すなわち「眠る」という言葉自体の意味合いをさまざまに解釈し、印象を広げさせてくれるような求心力を埋め込んでいます。
単純なドキュメンタリーとして映像を作り上げたのであれば、単に資料的な意味合いでしかその価値を残すことはできませんが、本作は映像の美しさ、『SLEEP』という楽曲の響きの美しさと相まって、ある種のエンタテイメント的な側面を持ち合わせ、見終わった後に非常に心地よい気分を味わえる作品となっています。
まとめ
本作の映像の魅力は、ドキュメンタリーというジャンルである中で、作品を美しく作り上げている点にあります。
大概においてはドキュメンタリー作品では、インタビューシーンなどは単にカメラの前に人を座らせてそのまましゃべらせるなど、リアルな映像、当時性を求めた映像が選ばれることが多いのですが、本作はコンサートの模様やインタビューなど細部にわたるところまで、いい意味で作為的な画作りがなされています。
単にハンディーカムで狙った瞬間を逃さず撮りまくり作り上げた、というよりはリヒターの紡ぎ出す「Sleep」よりジョンズ監督が受け取ったポジティブな印象を、しっかりと練り上げられた映像で撮り切って構成されているという印象です。
時にドキュメンタリー作品は、その主題によっては見る側から「予備知識がないとなかなか受け入れられない」「興味のないジャンルだと内容がわからない」という印象を持たれるケースもありますが、本作はそんなドキュメンタリーの固定観念にも一石を投じ、多くの人に受け入れられるものを目指して作り上げられたものとも見ることができるでしょう。
映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』は2021年3月26日(金)より全国順次ロードショーされます!