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Entry 2020/06/17
Update

映画『TECHNOLOGY』感想レビューと評価。遠藤麻衣子監督が手掛ける新次元の映像体験|SF恐怖映画という名の観覧車107

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile107

物語や脚本、そして俳優は映画にとって重要な要素であり、映画の評価の多くはこの部分に集中されています。

しかし、物語や脚本より最初に目に入る「映像」や「音楽」は、映画にとっての骨子であると言えます。

今回は映像作家の遠藤麻衣子が手掛けた「映像作品」であり、そして「映画」でもある『TECHNOLOGY』(2016)をその魅力と共に紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『TECHNOLOGY』の作品情報

(C)A FOOL, the cup of tea

【公開】
2020年(日本・フランス合作映画)

【監督】
遠藤麻衣子

【キャスト】
ボビー・サルボア・メネズ、トリスタン・レジナート、スレンダー

映画『TECHNOLOGY』のあらすじ


(C)A FOOL, the cup of tea

名前も正体も分からない月から地球へと降り立った少女(ボビー・サルボア・メネズ)。

暴力の絶えない地球で彼女は様々な男性と出会いその運命を変えていく…。

「セリフが殆ど無いから」こそ感性が試される


(C)A FOOL, the cup of tea

『TECHNOLOGY』には一部を除きセリフらしいセリフは存在せず、登場人物の精神描写は全て「映像」と「効果音」によって表現されています。

絶えず争いの続く地球と、争いを知らないような少女の出会いと交流は一切の会話がなく、だからこそ神秘的で、尊さすら感じます。

本作の「セリフの不在」は映画にとっての重要な要素を排していると同時に、どうしても取り払うことの出来ない映画上での「国境」を取り払うことに成功しています。

翻訳や吹き替えによる言語の変換は、存在しない言葉の存在や複数の意味の取捨選択を迫られることとなり、作り手の100%の意味は原語を理解している人しか受取ことが出来ません。

しかし、本作はセリフをあえて取り除くことで、言葉による「国境」を破壊することを可能とし、鑑賞者に100%の意味を届けようと試みていました。

「表現の違い」の意味とは


(C)A FOOL, the cup of tea

映像作家の遠藤麻衣子が作り出した『TECHNOLOGY』の世界では様々な映像が眼前に広がり、その映像に対する理解は映画を鑑賞する各々に託されています。

例えば「モノクロ」と「カラー」で差別化されているシーンでは、「モノクロ」の部分では水を被りつくように飲んでいたり、暴力をにおわせるシーンを描写しています。

一方で「カラー」のシーンでは少女と男性の交流や、街を歩くシーンなどが鮮やかに映し出されています。

2つの表現には意味を感じ、例えば「モノクロ」では欲求に身を任せる「動物的部分」を描き、「カラー」では精神面やコミュニティなどの「人間的部分」を描いています。

この2つの描写の受け取り方は鑑賞者によって違うものの、様々な受け取り方を些細な表現方法の違い方からも受け取れる先鋭的な映像作品です。

透明性の高さが映える俳優たち


(C)A FOOL, the cup of tea

主人公の少女を演じたボビー・サルボア・メネズ(2019年1月にインディア・メネズより改名)は、エイミー・アダムスやジェイク・ギレンホールが出演した『ノクターナル・アニマルズ』(2017)にも出演する実力派の俳優であり、ボビーの持つ独特の雰囲気が本作を形成したとも言えます。

ボビーの持つ透明性はまさしく「絵画のような神秘性」であり、作中の少女は「水」との共演が多くその姿はジョン・エヴァレット・ミレーによる有名な絵画「オフィーリア」のようにさえ映ります。

少女が交流を持つ男性を演じたトリスタン・レジナートやスレンダーもそれぞれが真逆の「現代人っぽさ」を持ってはいるものの、所作や表情によって心の中にある彼らの「透明度」を受け取ることが出来ます。

セリフが殆ど無い映画だからこそ、その俳優の持つそのものの雰囲気が引き出された上で重要な意味を持つ、俳優の魅力が作品の一部となっているような感覚を味わえる経験です。

遠藤麻衣子監督による『TOKYO TELEPATH 2020』


(C)A FOOL, the cup of tea

インドとアイスランドを舞台に制作され、その街並みの魅力を映像作家らしい表現で引き出しており、鑑賞後はインドやアイスランドに足を運んでみたくなること間違いなしの本作。

俳優だけでなく街の魅力も引き出すことにも長けた遠藤麻衣子監督の新作映画は、2018年の東京を舞台とした『TOKYO TELEPATH 2020』(2020)。

残念ながらオリンピックは延期となってしまったものの、遠藤麻衣子監督が2018年の東京が持つ「映像」としての魅力を最大限に引き出す最新作は必見の作品であること間違いなし。

主演に起用された女優の夏子の持つ独特な雰囲気が『TECHNOLOGY』と同じく作品に奇妙な神秘性を与えてくれることを楽しみにしたい作品です。

まとめ


(C)A FOOL, the cup of tea

劇中全体を通し淡い光のような映像に満ちている本作は、雄大な自然の音やクラシックギターの音声と合わせ鑑賞者にリラックス効果を与えてくれます。

目や耳など全身を使って味わって欲しい映画ではあるものの、同時に映画を観ることが「癒し」ともなり、エンターテイメントとしてのあるべき姿を体感することが出来ます。

そんな本作『TECHNOLOGY』は、遠藤麻衣子監督による『TOKYO TELEPATH 2020』と合わせシアター・イメージフォーラムほか全国で2020年10月に公開予定。

映画は「映像」と「音」が骨子にあることによって成り立つものである、と言うことを再度教えてくれるような本作をぜひ劇場で鑑賞してみてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

(C)THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD

いかがでしたか。

次回のprofile107では、ワンシチュエーションサメホラーの秀作『海底47m』(2017)のまさかの続編『海底47m 古代マヤの死の迷宮』(2020)の魅力をご紹介させていただきます。

6月24日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら


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