Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち|あらすじ感想評価レビュー。シリアを逃れ、シリア紛争・地震を経て“爆撃のない世界”で続く2人の戦いとは|いま届けたい難民映画祭2026vol.1

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム『いま届けたい難民映画祭2026』第1回

難民映画祭は、難民をテーマとした映画を通じて、日本社会で共感と支援の輪を広げていくことを目的とした映画祭で、世界各地で今まさに起きている難民問題、1人ひとりの物語を届けています。

2026年11月5日(木)〜12月6日(日)開催の第20回難民映画祭では、困難を生き抜く難民の力強さに光をあてた作品をオンラインと劇場で公開。公開される8作品をCinemarcheのシネマダイバー菅浪瑛子が紹介します。

今回紹介するのは、シリアの紛争を14年間撮り続けてきたハサンとファディが自分たちのイギリスでの避難生活を見つめたドキュメンタリー『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』。

シリアで革命と紛争の日々を記録してきた映像制作者、ハサン・カッタンとファディ・アル=ハラビ。

爆撃や破壊の中でもカメラを回し、人々の恐怖や希望、笑い、悲しみを映像に残してきた2人は、イギリスで難民認定を待つことになり、自分たちをカメラで記録し始めます。

記録し続けてきたシリアのこと、離れた家族、失った家族や友人を見つめ、先行きの分からない避難生活の自分たちを見つめ……爆撃のない世界で、続く2人の問い。

第21回難民映画祭は2025年11月5日(木)〜12月6日(日)までオンラインにて開催され、『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』はオンライン上映のほか、11月5日(木)のオープニング上映イベントとして『FREE FISH ―ガザの漁師たち』と共にTOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映されます。

※ドキュメンタリー映画『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』には、凄惨な映像も流れます。

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2026』一覧はこちら

映画『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』の作品情報

【日本上映】
2026年上映(イギリス・シリア合作映画)

【原題】
Allies in Exile

【監督】
ハサン・カッタン、ファディ・アル=ハラビ

【作品概要】
戦場を離れた後も続く避難生活の現実を当事者の視点で描いたドキュメンタリー『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』。監督のハサン・カッタンは、「難民映画基金/Displacement Film Fund」による支援を受けて本作を制作しました。

「難民映画基金/Displacement Film Fund」は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)親善大使を務めるケイト・ブランシェット氏とロッテルダム国際映画祭のヒューバート・バルス基金により共同で創設が発表された基金です。

映画『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』のあらすじ

シリアの紛争を14年間記録してきた映像制作者、ハサンとファディ。

爆撃や破壊の中でカメラを回してきた2人は、故郷を離れトルコで生活をしていました。

しかし、イギリスの映画祭に参加した際に、トルコへの帰国ができなくなり、イギリスで難民申請をすることになります。

いつ申請に進展があるのか、先行きの分からない状況で不安の中、2人はカメラを回し続けます。

爆撃のない世界で、2人の問いは続きます。

映画『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』の感想と評価

シリアの映像作家であるハサン・カッタンとファディ・アル=ハラビ。親友同士でもある2人は、14年に渡り、シリアの革命や紛争を記録し続けていました。

2023年に、トルコ・シリア地震が起きます。それは2人にとって全てを変えてしまった出来事でした。

ファディは地震で家族を失ってしまいました。絶望の淵にいてもなお、2人はカメラを手に取ります。トルコ・シリア地震を映し出したドキュメンタリーは、ファディの物語でもありました。

トルコ・シリア地震を映し出したドキュメンタリーを映画祭で上映するために、イギリスに渡った2人に思いもよらぬことが起きます。シリアから逃れ生活していたトルコへの入国が禁じられたというのです。

そのまま2人はイギリスで難民申請をすることになります。しかし、難民の申請がいつ通るのかは全く不透明です。中には、何年も待っている人もいると言います。

仕事もできず、ただ難民申請者向けのホテルで過ごすだけの日々。今まで2人は、シリアの革命や紛争を撮影し、戦火の中生き延びてきましたが、イギリスではまた違った戦いが2人を待ち受けていました。それはただ待つだけ、という戦いです。

2人は自分たちが撮り続けてきた、シリアの人々の悲痛な叫びや紛争の中にあっても続く日常を見つめ、今の自分たちの状況を見つめるためにカメラを回し続けます。

2人はカメラを手に取ることで乗り越えられた部分があると話していました。カメラを通して自分自身を見つめると共に、彼らが撮り続けていたのは、難民一人一人の物語です。その物語は、もちろんハサンとファディの物語もあります。

当事者ではない私たちはどうしても「難民」と一括りにしてみてしまいます。しかし、そこには一人ひとりの苦しみがあり、物語があり、未来があるのです。

まさに本作のようなドキュメンタリーが私たち観客に一人一人の物語を届けてくれているのです。

まとめ

戦場を離れた後も続く避難生活の現実を当事者の視点で描いたドキュメンタリー『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』。

ドキュメンタリーの中では、親友同士であるハサン・カッタンとファディ・アル=ハラビの出会いや、2人の何気ない会話など、どのような状況にあってもユーモアを忘れない姿も映し出しています。

南門映画祭で映し出されるドキュメンタリーが私たちに伝えてくれるのは、「難民」と一括りについ見てしまいますが、一人一人が様々な事情を抱え、様々な物語があること、そして私たちと変わらない生身の人間であることです。

そして、本ドキュメンタリーは、2024年にイギリスで難民申請が通るのを待つ2人の姿が映し出されていますが、2024年の12月にシリアでは、独裁政権であったアサド政権が崩壊します。

アサド政権の崩壊が各国の難民申請の許可を待つ人々の与えた影響や、シリアの今も映し出しています。

第21回難民映画祭は2025年11月5日(木)〜12月6日(日)までオンラインにて開催され、『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』はオンライン上映のほか、11月5日(木)のオープニング上映イベントとして『FREE FISH ―ガザの漁師たち』と共にTOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映されます。

難民映画祭詳細はHPにて

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2026』一覧はこちら



関連記事

連載コラム

SF映画2019年公開おすすめランキング!ベスト5選が面白いと感じさせた内容とは【糸魚川悟セレクション】|SF恐怖映画という名の観覧車82

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile082 2019年も残すところ1週間となり、まとめの時期が始まりました。 映画好きにとって1年の楽しみはやはり、今年観た映画をまとめることにあり …

連載コラム

トルコ映画『湖上のリンゴ』あらすじと感想レビュー。吟遊詩人の少年が忘れることのできない存在|TIFF2019リポート29

第32回東京国際映画祭・コンペティション部門『湖上のリンゴ』 2019年にて32回目を迎える東京国際映画祭。令和初となる本映画祭が2019年10月28日(月)に開会され、11月5日(火)までの10日間 …

連載コラム

『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』あらすじ感想と評価考察。実話映画として艦長の“海に生きる者”としての生き様を活写|映画という星空を知るひとよ210

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第210回 戦時下でも決して失われることのなかった、海の男たちの誇りと絆を描いた重厚な戦争秘話を描いた映画『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』が、2024年7月 …

連載コラム

ドキュメンタリー映画『太陽の塔』岡本太郎が2つの代表作品に込めた祈りの表現とは|映画と美流百科12

連載コラム「映画と美流百科」第12回 1970年の大阪万博のシンボルとして岡本太郎によって作られた≪太陽の塔≫が耐震修復工事を終え、今年2018年3月に約半世紀ぶりにその内部が公開されました。 そして …

連載コラム

『燈火(ネオン)は消えず』あらすじ感想と評価解説。香港映画の夜景を彩るネオンに纏わる夫婦愛をシルヴィア・チャンとサイモン・ヤムが魅せる|映画という星空を知るひとよ179

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第179回 中華圏を代表する映画賞・金馬奨で主演女優賞に輝き、第96回米アカデミー賞国際長編映画賞香港代表作品にも選ばれている香港映画『燈火(ネオン)は消えず』 …

『還り花』
Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学