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Entry 2025/11/26
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映画『ピアス 刺心』あらすじ感想と評価考察。心理スリラーが描く“フェンシング試合中の悲劇”をめぐる兄弟の愛と疑念

  • Writer :
  • 松平光冬

敬愛する兄は、悪魔なのか──

『KANO 1931 海の向こうの甲子園』(2013)のツァオ・ヨウニン主演の映画『ピアス 刺心』が、2025年12月5日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショーとなります。

フェンシングを題材に、兄弟の愛と疑念が対立する様子を描いた心理スリラーの見どころをご紹介します。

映画『ピアス 刺心』の作品情報


(C)Potocol_Flash Forward Entertainment_Harine Films_Elysiüm Ciné

【日本公開】
2025年(シンガポール・台湾・ポーランド合作映画)

【原題】
刺心切骨(英題:Pierce)

【監督・脚本・編集】
ネリシア・ロウ

【製作】
サム・ウェイシ・チュア、ジェレミー・チュア、パトリック・マオ・フアン、イザベラ・イゲル、ジョン・M・ロウ

【撮影】
ミハウ・ディメク

【共同編集】
エリック・メンデルソン

【音楽】
ピョートル・クレク

【キャスト】
リウ・シウフー、ツァオ・ヨウニン、ディン・ニン

【作品概要】
台湾の新進スターのリウ・シウフーと、『KANO 1931海の向こうの甲子園』のツァオ・ヨウニンのダブル主演で贈る心理スリラー。共演は『青春弑恋』(2021)、Netflixドラマ『次の被害者』(2024)のディン・ニン。

本作が長編デビュー作となるネリシア・ロウが、シンガポールのフェンシング代表として活躍した経験と、台湾で実際にあった事件などをベースに脚本も執筆。

イエジー・スコリモフスキ監督の『EO イーオー』(2023)でロサンゼルス映画批評家協会賞最優秀撮影賞、全米映画批評家協会賞最優秀撮影賞を受賞したミハウ・ディメクが撮影監督を担当。

本作はチェコのカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最優秀監督賞、フランスのラ・ロッシュ=シュル=ヨン国際映画祭でグランプリを受賞しました。

映画『ピアス 刺心』のあらすじ


(C)Potocol_Flash Forward Entertainment_Harine Films_Elysiüm Ciné

フェンシングの試合中に対戦相手を刺殺してしまった兄のジーハンが、少年刑務所から7年ぶりに出所し、弟ジージエと再会します。

相手を刺したのは「事故だ」と語る兄の言葉を信じ、ジージエはジーハンからフェンシングを教わることに。

疎遠だった時間を取り戻していくも、ジージエは幼い頃の記憶に苛まれていました。

兄への確信と疑念が深まる中、悪夢のような事件が起こり……。

映画『ピアス 刺心』の感想と評価


(C)Potocol_Flash Forward Entertainment_Harine Films_Elysiüm Ciné

兄への確信と疑念に惑わされる弟

家族の者が人を死なせてしまった。それは偶然か、それとも故意によるものなのか……本作『ピアス 刺心』の主人公となる2人の兄弟は、そんな疑念がキーとなります。

フェンシングの選手として、試合中に相手を刺殺してしまい少年刑務所に収容されていた兄のジーハンが、7年ぶりに出所することに。しかし、そのことを弟ジージエは直前まで知らされていませんでした。

なぜなら、実の母が「ジーハンは故意に相手を殺した」と考え、ジージエと接触させないようにしていたからです。

しかし、同じくフェンシングに打ち込んでいたジージエの元に姿を現したジーハンは、「あれは事故だった」と身の潔白を訴えます。その言葉を信じ、母の目を盗んで兄からフェンシングの指導を受けるジージエ。

全国大会で優勝した実績を持つ兄の指導の甲斐あって剣さばきに磨きをかけていく一方、自身も気づかなかった友人への淡い想いを後押ししてもらったジージエは、空白だった兄弟の時間を取り戻していきます。

それと同時に、幼少時に川で溺れた記憶に悩まされることに。あの時、なぜ兄はすぐに手を差し伸べなかったのか……兄への確信と疑念が交差していくさなか、悪夢のような事件が起こることとなります。

フェンシングは心理のメタファー


(C)Potocol_Flash Forward Entertainment_Harine Films_Elysiüm Ciné

監督・脚本を手がけたのは、短編2作目の『Freeze(原題)』(2016)が70を超える国際映画祭で上映され、長編デビューが待ち望まれていたネリシア・ロウ。シンガポールのフェンシング代表として活躍し、その後ニューヨークで映画制作を学んだという経歴の持ち主です。

2014年に台湾で実際に起きたという殺傷事件と、一緒に育った自閉症の実兄の存在を元にストーリーを構築。『Freeze』では自身の体験を元に、自閉症の兄と暮らす妹を描きましたが、本作ではさらにその要素を膨らませています。

「兄が自閉症であることに対処するためか、私は子どものころに自分の愛情を兄に投影し、兄がいつも手を握ってくれる思いやりのある存在だと想像していた。それが生きる支えだった」として、ジージエの頭の中で作られた兄弟愛が、本物の愛なのかという問いを探求したと語ります。

そんな兄弟をつなぐ大きなファクターが、監督のバックボーンでもあるフェンシング。

「フェンシングは戦略と駆け引きのスポーツ」と語るロウ監督。対戦相手の隙を“突く”ことで勝利するフェンシングは、いわばジーハンの心理のメタファーでもあります。

ジーハンの剣先は、はたして誰に向けられるものなのか? 緊張感が高ぶる兄弟関係に目が離せません。

『Freeze(原題)』(2016)

まとめ


(C)Potocol_Flash Forward Entertainment_Harine Films_Elysiüm Ciné

本作のサブタイトルの「刺心」には、「感情的な体験や出来事が心に深く響く」といった意味合いがあります。

それは、「感動や共感を覚える」というポジティブな意味と、「心に痛みを与える」というネガティブな意味の両方があります。

兄は殺人鬼なのか? そしてその愛は、ガスライティング(心理的虐待)なのか?

破滅的な真実の先に待ち受けるラストの衝撃が、観る者の心を“突く”ことでしょう。

映画『ピアス 刺心』は、2025年12月5日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)



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