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Entry 2020/07/31
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映画『蒲田前奏曲』中川龍太郎監督作「蒲田哀歌」感想と考察評価。弟の彼女と蒲田の町で出会った意味とは|映画という星空を知るひとよ12

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第12回

中川龍太郎、穐山茉由、安川有果、渡辺紘文という4人の監督による連作スタイルの長編映画『蒲田前奏曲』。

新しいスタイルのこの作品が、2020年9月25日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森ほか全国順次公開されます。

蒲田で生活する売れない女優蒲田マチ子を中心に巻き起こる、過去と現在と未来の出来事。エンターテインメント界への皮肉が存分に込められたオムニバス映画です。

まずは、中川龍太郎監督作品の第1番「蒲田哀歌」をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『蒲田前奏曲』第1番「蒲田哀歌」の作品情報

(C)2020 Kamata Prelude Film Partners

【公開】
2020年(日本映画)

【英題】
Kamata Prélude

【監督・脚本】
中川龍太郎

【プロデューサー】
松林うらら

【キャスト】
古川琴音、須藤蓮、松林うらら

【作品概要】
『蒲田前奏曲』は、4人の監督による連作スタイルの長編映画です。中川龍太郎(第1番「蒲田哀歌」)、穐山茉由(第2番「呑川ラプソディ」)、安川有果(第3番「行き止まりの人々」)、渡辺紘文(第4番「シーカランスどこへ行く」)という監督たちが、各自の手法でコミカルに手掛けることで長編作へと仕上げていった意欲作。

売れない女優・マチ子を通し、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を、周囲の人々との交わりを介しながら描いています。

第1番「蒲田哀歌」を務める監督は中川龍太郎。最新作『静かな雨』(2016)が釜山国際映画祭上映、東京フィルメックス観客賞受賞など、国内外の注目を集めています。『飢えたライオン』(2017)で主演を務め、舞台、TVドラマなどでも活躍する松林うららが、自身の地元である蒲田を舞台にプロデュースし、自らも出演しました。

映画『蒲田前奏曲』第1番「蒲田哀歌」のあらすじ

(C)2020 Kamata Prelude Film Partners

蒲田に住む売れない女優、27歳の蒲田マチ子。

ある日、中川監督作品の看護師役のオーディションを受けました。コスプレのように丈の短い看護服が気に入らず、あまり乗り気のないオーディションでしたが、なぜかマチ子は監督の目を引いたようでした。

その後、マチ子はラーメン屋「味の横綱」のアルバイトへ。疲れて帰宅すると、同居している大学生の弟・タイ蔵が先に帰っていて、カレーを作っていました。

食事をしていると、タイ蔵から「彼女ができた」と言われます。ちょっとショックを受けたマチ子。

それからしばらくして、タイ蔵が彼女・野口セツ子を伴ってマチ子のバイト先に現われました。

「彼女がお姉さんに会いたいというから」と、タイ蔵から正式に紹介されました。

セツ子は看護師だそうです。はきはきとして笑顔が素敵な彼女ですが、「食べられるときに食べておかないと」などと言い、タンメンのお代わりをして、2人を驚かせます。

ちょうどそこへ先日受けた看護師役のオーディション合格の連絡が入りますが、マチ子は「辞退したい」といいます。

「何のために演技するんでしょうかね?」。弟の彼女であるセツ子の出現も伴って、いろいろ考えだしたマチ子……。

セツ子はレトロな雰囲気を持った掴み処のない女性でした。気になるマチ子は、彼女の近辺を探ってみたりします。

ある時、セツ子がひとりで「味の横綱」にやって来ました。

「お姉さん、このあと時間ありますか? お付き合いしていただきたいのです」。

『やりたいことノート』に書いたことをやりたいというセツ子の申し出を受け、マチ子は2人で出かけます。

映画『蒲田前奏曲』第1番「蒲田哀歌」の感想と評価

(C)2020 Kamata Prelude Film Partners

4人の監督の作品からなるオムニバス長編映画『蒲田前奏曲』。第1番は中川龍太郎監督の「蒲田哀歌」です。

売れない女優蒲田マチ子は、オーディションとアルバイトのつまらない毎日を繰り返しています。そこへ、仲の良い弟・タケ蔵の彼女野口セツ子が現れました。看護師というけれど、どういう素性の女性なのかとマチ子はやきもき。

一方、マチ子は日ごろからコスプレのような衣装で演技をする役者業に抵抗を感じていました。やり場のない怒りでイライラしていますが、ここで弟の身を案じる優しい姉の顔がのぞきました。

女優という殻を脱ぎ捨て、真に弟を思うリアルな演技に親近感が湧いて来ます。

また、ビデオカメラが好きなタケ蔵が、マチ子やセツ子にカメラを向けてインタビューするシーンでは、インタビューを受ける2人の答えの違いはとても興味深いものでした。

「趣味は何ですか?」「3億円あたったらどうしますか?」「過去に戻れたら何をしたい?」

マチ子はもちろんどの質問にもテキパキと答えています。

同じようにハキハキと質問に答えるセツ子ですが、ただ一つ「一番怖かった時は?」の質問に、顔がこわばり「答えたくありません」と言ったのが印象的でした。

セツ子が書いた『やりたいことノート』にも注目です。ご飯をお腹いっぱい食べる、看護師の仕事に従事する、男性と2人で食事する、エイ子ちゃんに会いに行く、などなど。

そこに書かれていることは、普段いつでも出来そうなことばかり。特別なことは何もないようですが、それがセツ子の“やりたいこと”で、マチ子は最後まで付き合います。

セツ子につき合っているうちに、マチ子も普通にしていることの楽しさを思い出したのではないでしょうか。

前半のマチ子の険しい表情から一変し、少し柔和な顔つきに変わっているのが、心境の変化と見て取れます。

下町情緒漂い、レトロ感いっぱいの蒲田の町並みも見どころの一つ! 昭和感にしばらく浸れます。

まとめ

(C)2020 Kamata Prelude Film Partners

映画『蒲田前奏曲』は、蒲田マチ子を演じる女優松林うららが制作したそうです。

「女性の置かれている立場や生きづらい部分を女性目線と男性目線を交え、1人の女性が環境によって顔が違って見えるというテーマを元に、何か新しい表現ができないか」と思い立ったことから出来た作品といいます。

その後、4人の監督のシナリオが出来上がったとき、それだけではない女性に対する普遍的な問題提起になるのではないかと感じ、1番をはじめ2番、3番のプロデューサーを務めあげたそうです。

第1番は「蒲田哀歌」。古川琴音演じる野口セツ子の存在がキーポイントになっている作品です。

古川は、台本を初めて読んだ時、「野口セツ子の掴みどころのなさや、物語の制限の無さにしばらく混乱し、監督の持つイメージを表現出来たのか、とても不安だったけれども、監督から“映像詩”というヒントをもらって演じることができた」と言います。

そのかいあってか、松林うららと一緒に蒲田を散策する場面では、現代と過去が行き来する不思議な世界観を醸し出していました。

現実と映像詩がマッチしたノスタルジックな本作に、作中のマチ子同様に観客も、過去への懐古な想いを掻き立てられることでしょう。

次回は『蒲田前奏曲』穐山茉由監督の第2番「呑川ラプソディ」をご紹介します。

映画『蒲田前奏曲』は、2020年9月25日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森ほか全国順次公開!

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら




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