SF映画の金字塔『ブレードランナー』の30年後を舞台にした続編がついに公開。
監督は今最も世界から注目を集めるドゥニ・ヴィルヌーヴ。
主演には今や世界的スターとなったライアン・ゴズリング。
今年最大の注目作と言っても過言ではないSF映画『ブレードランナー2049』をご紹介します。
以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『ブレードランナー2049』の作品情報をどうぞ!
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CONTENTS
1.映画『ブレードランナー2049』の作品情報
(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【原題】
Blade Runner 2049
【監督】
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
【キャスト】
ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、シルビア・ホークス、ロビン・ライト、マッケンジー・デイビス、カーラ・ジュリ、レニー・ジェームズ、デイブ・バウティスタ、ジャレッド・レト、バーカッド・アブディ
【作品概要】
製作総指揮は前作を手掛けた名匠リドリー・スコット。
監督は『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。
主演は『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリング、前作に引き続きデッカード役としてハリソン・フォードも出演。
さらに、撮影監督にロジャー・ディーキンス、音楽にハンス・ジマー(ベンジャミン・ウォルフィッシュとの連名)と豪華な顔ぶれが集結。
物語としては30年後、現実時間では35年越しに語られる驚愕の真実とは・・・。
2017年現在の技術が詰まった新たな傑作SFが誕生。
2.『ブレードランナー』とは
フィリップ・K・ディックの原作小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を元に映画化され、現在もSF映画の金字塔としてカルト的な人気を誇る1982年公開のリドリー・スコット監督作。
世界観やファッションを含めたビジュアルイメージはその後、映画界だけではなく様々な分野において多大な影響を与えました。
酸性雨の降りしきる2019年のロサンゼルス。今では当たり前になったディストピアSF、荒廃した未来がそこには映っていました。
ネオンサインが怪しく光り、多国籍的な(特にアジア的)な屋台が立ち並ぶ雑多な街並み。
特に「二つで充分ですよ」はあまりにも有名な日本語のセリフとして映画ファンには馴染みが深いでしょう。
人間そっくりに作られた機械のレプリカントと、それを追うブレードランナー。
その物語の正統な続編として、30年後を舞台に製作されたのが本作『ブレードランナー2049』です。
そのため前作を鑑賞していることが物語の前提となりますので、本作は『ブレードランナー』を観てからの鑑賞をお勧めいたします。
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3.『ブレードランナー2049』に至るまで
元となった『ブレードランナー』と本作『ブレードランナー2049』の間は30年空いています。
その間に一体何が起こったのかでしょうか?
公式HPを元に、正式に公開された前日譚3作品と共にまとめました。
2019年 『ブレードランナー』
レプリカントのレイチェルと、ブレードランナーのデッカードは共にロサンゼルスから逃亡。
2020年 ネクサス8型の流通
4年の寿命しかなかったこれまでのネクサス6型とは異なり、ネクサス8型のレプリカントは寿命に制限がなく、簡単に識別できるよう右の眼球に製品番号が刻まれている。
2022年 大停電が発生
参考映像:【渡辺信一郎監督による前奏アニメ解禁!】「ブレードランナー ブラックアウト 2022」
アメリカ西海岸で大停電が起こり、電子データのほとんどが消滅、財政や市場も全世界的に停止し、食物の供給も切迫。レプリカントの仕業と非難され、レプリカントの製造禁止を求める声が大きくなった。
2023年 レプリカント禁止法の制定
レプリカントの製造を無期限に禁止する法律が制定され、ネクサス6型は退役、生き残ったネクサス8型も解任。
2025年 ウォレス社の躍進
天才科学者のニアンダー・ウォレスは遺伝子組み換え食物を開発し、その技術を無償で提供。世界的な食糧危機を解決に導いたウォレス社は世界に進出、異星の植民地にもその力を広げる。
2028年 タイレル社倒産
ウォレスはタイレル社の負債を買い取る。
2030年代 新型レプリカントの開発
タイレル社の遺伝子工学と記憶移植の方法を強化し、より従属的で制御しやすいレプリカントの開発を進める。
2036年 レプリカント禁止法廃止
参考映像:【『ブレードランナー 2049』の前日譚】「2036:ネクサス・ドーン」
ウォレスは新型のレプリカント、ネクサス9型を発表。
2040年代 ブレードランナーの組織を強化
ブレードランナーたちは、違法レプリカントであるネクサス8型を探し出して解任する役目を担った。
2048年 ネクサス8型のサッパー・モートンの正体が発覚
参考映像:【『ブレードランナー 2049』の前日譚】「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」
トラブルに巻き込まれたサッパーは、ブレードランナーの捜査対象に。
そして、物語は待望の映画『ブレードランナー2049』に繋がっていきます。
4.映画『ブレードランナー2049』のあらすじとネタバレ
(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
2049年、貧困と病気が蔓延するロサンゼルス。
人類は異星に移住する金持ちの人々と、汚染された地球に取り残される貧しい人々に分かれていました。
指令を受けたLAPD(ロサンゼルス市警)所属のブレードランナーKが人気のない農場に降り立ちます。
仕事を終えて帰宅した農夫サッパー・モートンを待ち構えるK。
Kがレプリカントを始末するためにやって来たブレードランナーであることを悟ったサッパー。
激しい格闘の末、Kがサッパーを射殺。
Kはドローンによって周辺の撮影を行い、上司ジョシの元へと帰ります。
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5.映画『ブレードランナー2049』の感想と評価
(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
SF映画の大きな魅力は、今まで観たこともないような映像体験が味わえることだと思います。
歴史に名を刻んできた名作たちは、作り込まれたデザインや世界観の構築によって、時を経た今もなお色褪せぬ輝きを放っています。
『2001年宇宙の旅』(1968年)しかり『スター・ウォーズ』(1978年)しかり。
その意味で『ブレードランナー』(1982年)という作品は未見性に満ち溢れていました。
ストーリーは、レプリカントという報われない存在が自らの意味を創造主である人間に問い、人間らしさとは一体何なのかを考えさせられるものでした。
レプリカントという全く身近ではない存在に大きく心を揺さぶられ、その美しい死に様にいたく感動してしまうのは映画という映像を介した媒体の持つ大きな力だと思います。
そして、35年越しに作られたその続編は前作『ブレードランナー』への愛に満ちた素晴らしい作品でした。
私が感じたのは深化と進化。
まずは、前作が作り上げた世界を決して壊すことなく、テーマと共に丁寧に掘り下げる深化。
今回の『ブレードランナー2049』はあくまでもライアン・ゴズリング演じるKの物語であり、ハリソン・フォード演じるデッカードではないのです。
くしくも一昨年公開された『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015年)もあくまでレイやフィンの物語でありました。
デッカードとハン・ソロ、どちらにおいても伝説であるハリソン・フォードはやはり凄いのですが、オリジナル公開当時はまだ生まれてすらいなかった私たちの世代はリアルタイムでその熱狂ぶりを体感しておらず、憧れと共にどこか疎外感を抱いていました。
しかし、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』、そして今回の『ブレードランナー2049』そのどちらも、決してオールドファンを喜ばせるだけのものではありませんでした。
散々伝説を聞かされていた私たちはやはりそこに大きな喜びを感じてしまいます。
これは今の私たちに向けられた物語なのだと。
自分は何かしら特別な存在なのではないか、誰しもがそう思ったことがあるでしょう。
しかし、現実はそんなに甘くないし、いずれは死がやって来る。
Kが選択する良い人間としての行い、正しいと感じた方へ進むその勇気に、胸が熱くなりよくやったと拍手を送りたくなります。
ライアン・ゴズリングの演技も素晴らしく、切なくも美しいラストはオリジナルの魂を表したショットそのものでした。
脇には周りましたがもちろんデッカードとレイチェルの愛の物語も非常に感動的(ここも『スター・ウォーズ』のハン・ソロとレイアを想起しますね)。
そして、2010年代現在の技術を使ってそのビジュアルやデザインも進化。
2017年現在、AIが進化し、アンドロイドの技術も進んだことでよりその世界が身近に感じられるようになってきています。
本作では、AIのジョイとKの純粋で美しい恋愛が描かれています(アナ・デ・アルマス超美人かつキュート!)。
AIとの恋愛といえばスパイク・ジョーンズ監督作『her/世界で一つの彼女』(2013年)がありました。
こちらも素晴らしい作品でしたが、両作には同じ擬似的な身体接触シーンが登場します。
本作はそれをより進化させた本当に見たことのないラブシーンが描かれていますが、なんとあのシーンだけでポストプロダクション(撮影後に映像として完成させるために行う作業全般)に1年をかけたそうです。
その他にも、霧雨にプロジェクションマッピングを投影して作り上げたという幻想的な映像や音声で指示に従うドローンなど、絶妙な近未来感がありました。
それと同時に日本語や韓国語などの看板や雑多なアジア感が混ざっていたり、留之助ブラスターやスピナーといった古臭さや無骨さが共存するオリジナルの魅力はそのまま。
蒸気、煙、雨、霧、そして光といったものをうまく使って、ここまで未見性に満ちた映像を作り上げられるとは・・・。
名カメラマンのロジャー・ディーキンスの撮影も本当に美しく、音楽というよりは音響も重低音が響く壮大さで物語を大きく盛り上げていました。
オリジナルも決してヒットはしなかったように、本作も当たるような作品ではありません。
上映時間も164分と長く、トーンも重々しくテンポもよくないので決して万人にお薦めできるような作品ではありませんが、映画に見たこともない驚きを求める方にはぜひ観ていただきたい。
映画館の大スクリーンで味わう価値のある濃厚な映画体験ですので、この機会を逃すことなく足を運んでみてください。
まとめ
(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
オリジナルはもちろんのこと、前日譚3作品を観てから本作の鑑賞をお薦めします。
うち2作はなんとリドリー・スコットの息子ルーク・スコット監督作。
そして残りの1作を手掛けたのは、TVアニメ『カウボーイ・ビバップ』で有名なアニメーション監督の渡辺進一郎。
ショートとはいえ前日譚が3本も作られること自体が、いかに『ブレードランナー』という作品が特別なものなのかを表しています。
それにしてもドゥニ・ヴィルヌーヴの手腕は凄まじいですね。間違いなく新作を追い続けるべき監督の一人です。
前回取り上げた『猿の惑星』シリーズもそうですが、今続編を製作する意義をきっちりと提示し、予想を上回る出来でファンの期待に応える理想的な続編でした。
一度では味わいきれないその世界に幾度となく足を運んでしまう魅力に溢れたSF映画の新たな傑作です。