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【ネタバレ】アントマン3|結末感想とあらすじ評価解説。クアントマニアの意味は?MCUフェーズ5の本格始動作

  • Writer :
  • 糸魚川悟

“アベンジャーズ”の新たな敵が登場するフェーズ5始動作!

今やハリウッド映画の代表格ともなっているアメコミ映画シリーズ「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」。

23作目『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)をもって、宿敵サノスと「アベンジャーズ」との決戦を描いた「インフィニティ・サーガ」は終結しました。

その後も作品は拡大し続け、ドラマ『ワンダヴィジョン』から物語は「マルチバース・サーガ」に移行しましたが、サノスのようなシリーズ共通の敵が登場せず、その登場をファンは待望していました。

今回は次なる「アベンジャーズ」へとつながる最凶の存在「カーン」が登場するシリーズ最新作『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の作品情報


(C)Marvel Studios 2022

【日本公開】
2023年(アメリカ映画)

【原題】
Ant-Man and the Wasp: Quantumania

【監督】
ペイトン・リード

【脚本】
ジェフ・ラブネス

【キャスト】
ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー、ジョナサン・メジャース、キャスリン・ニュートン、ミシェル・ファイファー、マイケル・ダグラス、ランドール・パーク、デヴィッド・ダストマルチャン、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ビル・マーレイ、コリー・ストール

【作品概要】
元泥棒の“アントマン”ことスコット・ラングを主人公とした「アントマン」シリーズ3作目であり、MCUシリーズ31作目となる映画。

ドラマ『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』で高い評価を受けたジョナサン・メジャースが、ドラマ『ロキ』から引き続きカーンを演じました。

映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』のあらすじとネタバレ


(C)Marvel Studios 2022

量子学の権威であるハンク・ピム博士の妻にして“ワスプ”ことホープの母・ジャネット。量子世界に取り残された彼女は、原生生物に襲われているところを「旅人」に救われました。

一方、「アベンジャーズ」の一員してサノスとの決戦に大きく寄与したことで、現在は有名人となった“アントマン”ことスコット・ラングは、離婚した元妻との一人娘キャシーが警察に逮捕されたと呼び出しを受けます。

恋人のホープとともにキャシーの身柄を預かったスコットは、キャシーが自分やジャネットに内緒で、ホープやピム博士とともに「量子世界(クアントマニア)」の研究をしていたことを知ります。

キャシーは量子世界を探索する装置を作り出し、装置から発信される信号によって研究を進めていましたが、30年間量子世界に取り残されていたキャシーは、彼女の研究に危険性を覚え即座に装置の電源を切ります。

しかし、電源を切ったはずの装置は突然暴走し、部屋の中の人間やモノを全て量子世界へと引きずり込みました。

スーツを装備したスコットはキャシーを保護し、スーツを着用していたホープもジャネットとピム博士を保護したものの、それぞれ量子世界の底に落下。

スコットとキャシーは原生生物に襲われたところを、量子世界に生きる人間たちのコミュニティに保護されます。コミュニティを指揮するジェントラは、2人にスライム状の仲間であるヴェブの身体を飲ませると、2人は現地の言葉を理解できるようになりました。

ジェントラは「征服者」によって滅ぼされたコミュニティの生き残りを集め、征服者への反抗の機会を伺っていましたが、まだその時ではないと判断し「上の世界」から来た2人をコミュニティから追い出そうとします。

一方、ピム博士やホープに固く量子世界の研究を禁止していたジャネットは、2人からの質問攻めに答えることなく、征服者の目を逃れるためにかつての知り合い・カイラーが指揮する街・アクシアを訪れます。

かつてともに征服者と戦ったカイラーと再会したジャネットでしたが、カイラーはすでに征服者の傀儡と化しており、ジャネットはピム博士やホープと協力して飛行機を奪いアクシアから逃げ出しました。

飛行機の機内にてジャネットは2人に、量子世界に取り残された際に出会った「旅人」の話を聞かせます。

「カーン」と名乗った旅人は「マルチバース(多元宇宙)」を移動する船で量子世界にやってきましたが、船が座礁したことでこの世界に取り残されてしまったとジャネットに語りました。

久しぶりに人間と会話ができたことに感動したジャネットは自身の技術力を使い、量子世界内のものでカーンの船をともに修理しました。

カーンが乗っていた船は遥か未来の技術を使っており、カーンの神経と接続されていたエネルギーコアを修復したことで、彼の過去の記憶がジャネットにも伝わりました。そこで彼女は、カーンがある目的を持って多くのマルチバースを破壊してきた暴君であると知ったのです。

「失った時間を取り戻す手伝いをする」というカーンの誘いを振り切ったジャネットは、物を拡大・縮小させる「ピム粒子」を全て使うことで、エネルギーコアを利用不可なサイズにまで拡大させました。

量子世界からの脱出法を失ったカーンは、自身の持つ科学力と戦闘力を駆使し量子世界内に帝国を築き上げ、エネルギーコアを元に戻すことのできるジャネットやスコットの存在を待ち続けていたのです。

一方、スコットたちが身を寄せるジェントラのコミュニティをカーンの軍隊が襲い、スコットとキャシーはカーンによって捕らわれてしまいました。

スコットはカーンの船の中で、かつてピム博士の会社を乗っ取り軍事拡大を目指していたダレンと再会。カーンによって虐殺兵器に改造され、現在は“モードック”と名乗るダレンは、カーンによる軍事侵攻の兵士として活動していました。

スコットの前に現れたカーンは、この宇宙の崩壊を止めるためにスコットに手を貸すように求めますが、「別のマルチバースでアベンジャーズを殺した」という彼の言葉から断ります。

するとカーンはキャシーの命を人質にとり、エネルギーコアとキャシーの命を交換すると迫ります。スコットは仕方なく、巨大化したエネルギーコアの下へと向かうことになります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『アントマン&ワスプ:クアントマニア』のネタバレ・結末の記載がございます。『アントマン&ワスプ:クアントマニア』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)Marvel Studios 2022

エネルギーコアでホープたちと再会したスコットは、ホープとともに巨大化したエネルギーコアの縮小に成功します。

その場に現れたカーンにキャシーとの引換を求めるスコットでしたが、カーンは応じることなくスコットとホープからエネルギーコアを奪い、ジャネットまでも攫ってその場を去りました。

飛行機で駆けつけようとしたピム博士はダレンに襲われ墜落しますが、ピム博士が溺愛し、ともに量子世界へと落ちていた蟻たちが、成長した知能でもって博士を救いました。

スコットとホープ、そしてピム博士と蟻たちはカーンから全てを奪い返すことを決意します。

その頃、カーンに捕らわれていたキャシーは、着ていたスーツを使って見張りの兵士を倒すと、同じく捕らわれていたジェントラを解放。キャシーはジェントラと協力して捕虜を救出し、カーンの装置を使って量子世界内のすべてのコミュニティに「反乱」を促すことを計画します。

カーンと再会したジャネットは、カーンの目的がそれぞれのマルチバースを支配し、遊び半分で時間を弄ぶ自身(カーン)の変異体への反乱と、時間軸同士の衝突(インカージョン)の阻止であることを知ります。

戦いに敗北し量子世界に追放されたカーンは、量子世界を脱出した暁にはすべてのカーンを排除し新たな世界を作ることを語りますが、「そのために何億何兆の人が死のうが関係ない」という彼の意見に、ジャネットは決して同調しませんでした。

カーンは全住人に「カーン王朝(カーン・ダイナスティ)」の設立を宣言しようとしますが、キャシーとジェントラによる反乱の扇動放送によって阻止されます。

すると、基地にスーツによって巨大化したスコットとホープが突撃。戦力差にスコットは押されますが、キャシーの計画通りに行動を開始した反乱軍の乱入によって基地内は乱戦状態に陥り、スコットは次々と基地の施設を破壊していきます。

キャシー殺害を命じられたダレンは彼女を襲って追い詰めますが、キャシーが巨大化するピム粒子を使いこなしたことで敗北。

キャシーは幼少期を含め2回にも渡って自身の命を狙ったダレンを殺すことはせず、「クソ野郎をやめることはいつだってできる」と言い残すとスコットの元へ向かいました。

次元を越えようとしているカーンの船はスコットにより破壊され、カーンは自ら出陣し次々と反乱兵を殺害。キャシーと再会したスコットやホープは3人がかりでカーンに立ち向かいますが、圧倒的な戦闘能力によって3人は倒されてしまいます。

カーンが勝ち誇ったタイミングで、ピム博士が蟻を引き連れて乱入。恐ろしい程の蟻の群れにカーンはシールドを張るのがやっとの状況になりました。

そして、キャシーの言葉に感化されたダレンは、命を投げうってカーンのシールドを破壊。カーンは蟻の大群に飲み込まれていきます。

ジャネットがエネルギーコアを使って元の世界へのゲートを開けると、ピム博士とホープ、ジャネットとともにゲートを潜って現実世界へと帰還しようとします。

しかしキャシーがゲートを潜ろうとすると、蟻に装備をすべて破壊されながらも生き延びていたカーンがゲートを潜ろうと突撃。スコットはキャシーをゲートに押し込むと、カーンと対峙します。

装備を破壊されながらもカーンの力は圧倒的であり、追い詰められたスコットはエネルギーコアにピム粒子を使ってゲートを破壊しようとします。急ぐカーンはゲートへと走りますが、ゲートの中からホープが現れ、その行く手を阻みました。

スコットはエネルギーコアにカーンを押し付けます。暴走したエネルギーコアにカーンは吸い込まれていきました。

現実世界に帰還したキャシーによってスコットとホープは救い出され、スコットの有名人としての日常が帰ってきました。

スコットは「手を組まなければ宇宙が崩壊する」というカーンの言葉を思い出し、自分はとんでもないことをしたのではと不安を覚えますが、楽観的な彼は深く考えないことにしました。

その頃マルチバースのカーンたちは、量子世界に追放したカーンがアベンジャーズによって倒されたことを知り、アベンジャーズがマルチバースに手を出し始めたことに不安を覚えます。

すべてのカーンを招集し、本格的な行動を開始することを決断したカーンたち。その会場には、数千を越えるカーンの姿がありました。

時間変異取締局(TVA)の制服を着るロキとメビウスは、「ヴィクタータイムツリー」の舞台で、「時間を作り出せる」と豪語するカーンを恐ろしげに見つめていました。

映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の感想と評価


(C9Marvel Studios 2022

「マルチバース」を巡る壮大な戦いの幕開け

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)で「マルチバース(多元宇宙)」を巡る物語が描かれてきたMCUシリーズ

「マルチバース」の存在は、さまざまな事情により参加不可能とされた俳優やキャラクターたちの登場を可能としたことからも、ファンにとっても嬉しい概念となっていました。

しかし、マルチバースそのものはMCUの全体に絡むことはなく、あくまでもそれぞれの物語単体にのみ影響を及ぼしてきました。

ところが『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では、ついにシリーズ全体にマルチバースの存在が影響を及ぼし始めたことが示唆され、本作をもって「マルチバース・サーガ」が本格的に始動したことが明らかになります。

ドラマ『ロキ』によって動き出した征服者カーン


(C)Marvel Studios 2022

本作から本格的に「アベンジャーズ」の脅威となる征服者カーンですが、実は本作が初登場ではなく、ドラマシリーズ『ロキ』から登場していました。

ロキ』に登場したカーンは時間変異取締局(TVA)を創設し、危険を及ぼしかねない存在や時間軸を排除することで時間軸の保護に努めていましたが、「異物」とみなされ人生を奪われたロキの変異体シルヴィに殺害されます。

また、ロキ』のカーンは死の間際「別のマルチバースの支配」を目論む危険なカーンの存在を示唆しており、実際に彼の死によってTVAのロキも大きな時間の変化を感じました

スコットは『ロキ』でのカーンが示唆していた脅威を打ち破ることに成功はしましたが、そのことが全マルチバースのカーンに知られたことで、更なる脅威がアベンジャーズを襲うことになります

MCUシリーズは「マルチバース・サーガ」の総決算として、2025年の公開を目標に『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ(原題)』と『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ(原題)』を計画中。本作はその物語の転換点となる作品でもありました。

まとめ


(C)Marvel Studios 2022

シリーズを象徴する新たな敵の登場によって、コメディ要素が強めな「アントマン」シリーズの中でも異色のシリアスさとなった『アントマン&ワスプ:クアントマニア』。

しかし、スコットのお茶目なキャラクターは例え最凶の敵となるカーン相手であっても健在であり、決してコメディ色が完全に排除されたわけではありません。

量子世界(クアントマニア)を題材に、小さすぎる世界で繰り広げられる壮大な反乱の物語は、シリーズファンにとってはもちろん、本作からMCUシリーズに入門する方にもオススメの作品です。



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