東京国際映画祭では一般の上映と同時進行で国内外マスコミ関係者・買い付けを検討する国内外の配給会社向けの試写が行われています。
会場にお越しいただいたことがあれば見たことがある風景かもしれませんが、明らかに上映を行っているのにスケジュール表にもチケット販売一覧にも表記がされていないものがあります。それが関係者向けの試写会です。
映画のニュースをお届けするマスコミ関係者、映画の権利購入を検討する人々、中には自分の映画祭に作品を呼ぼうと考えている人々もいます。
そんなわけで、クロージング作品を先行してみることができたりもします。
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特別招待作品クロージング『GODZILLA 星を喰う者』
初の劇場用アニメーションとしてシリーズ展開されている通称“アニゴジ”のシリーズ最新作にして、三部作の完結編。
『GODZILLA 怪獣惑星』では怪獣の星となって地球を捨てた人類が帰還を果たしゴジラと対決するまでを。
『GODZILLA 決戦機動増殖都市』では、主人公ハルオたちの前に現れたゴジラアース(なんと、体長300メートル!)に対抗するものとして開発されたナノマシーンの集合体メカゴジラが発展したメカゴジラシティでゴジラ―アースを迎え撃つ物語が描かれました。
圧倒的な工学知識を持つビルサドと神官的な存在のエクシフという宇宙人種が地球人とともに己の領域の知識を持ってゴジラに挑む展開となっています。
『決戦機動増殖都市』でナノマシーンと一体化してまでゴジラに挑むものの、倒すことのできなかったビルサドは対ゴジラに対して行動・発言の面で一歩後退、代わりに神の代弁者エクシフがゴジラアースに挑みます。
メカゴジラシティでの決戦で自分慕うユウコを失ったハルオはもはやゴジラアースに対峙する気力も起きません。
©2018 TOHO CO., LTD.
そんな中、すべての文明の崩壊は文明が進んでいく中の当然の流れで、ゴジラアースの登場もまた自然のものであるという考えを前面に押し出してくエクシフは、自分の文明を崩壊させ、今は神として敬っている“王たるギドラ=キングギドラ”を召喚させて、ゴジラアースと対決させます。
しかし、ギドラの力はゴジラアースだけでなく場合によっては地球という惑星そのものを喰らいつくしかねません。
それに対してハルオは地球に残った人種フツアの神モスラの力を借りて、最後の対決に挑みます。
アニメでしかできない『GODZILLA』の描写はやはり独特で、少なくとも現時点では実写では実現不可能なものでしょう。
やはり“GODZILLAブランド”の認知度は国際的にも高く、試写会場には海外の方も多くいました。
東京国際映画祭での日本映画が上映されるにはいくつかの意味があります、もちろん国内へのPR効果にもなりますが、それだけではなく日本の作品・才能を海外に広く知らせるということもあります。
ここで海外に認知させることで作品やスタッフ・キャストに格を上げたり、海外からの招集の機会を与えたりすることができます。
コンペティション部門や日本映画スプラッシュ部門などなどにエントリーされた作品は、すべて次の大きなステップを踏む可能性があることになります。そんな日本映画から。
特別招待作品『ハード・コア』
『オールドボーイ』などで知られる狩撫麻礼原作のコミックを山田孝之、佐藤健、荒川良々というキャストで映画化された本作。
監督は『山田孝之の東京都北区赤羽』「山田孝之のカンヌ映画祭」シリーズなどで山田孝之に振り回される髭の人としてすっかりお馴染みになった山下敦弘。
右翼団体の構成員の兄、商社マンの弟、口下手な牛山、そして突然現れたロボットのロビオが織りなす奇妙でオフビートなコメディ映画です。
半分“出オチ”に近いギャグは海外からの参加者でも自然と笑うことができるようです。
©2018「ハード・コア」製作委員会
山田孝之のキレキレのキャラ設定、荒川良々の個性爆発のキャラクターも楽しいですが、佐藤健の廃れ具合もなかなか見ることもできず、貴重で楽しめます。
そしてなんといってもそんな中に登場するロボットのロボオはやはり違和感とインパクトがたっぷりです。
物語としてはだいぶ無理のある話の進み方なのですがこのロボットがドーンと登場すると些細なことがらは何でもないような気がしてきます。
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日本映画スプラッシュ『銃』
日本映画でも特にキャリアの浅い監督の作品をピックアップする日本映画スプラッシュ部門にエントリーした一作。
芥川賞受賞作家中村文則のデビュー作品を、4年前に日本映画スプラッシュ部門に『100円の恋』で登場して、一気に注目の監督となった武正晴監督が今回は他の映画を迎え撃つような立ち位置になって再びこの部門に帰ってきました。
主演は若手のホープ村上虹郎。共演に広瀬アリス、リリー・フランキー、日南響子、新垣里沙。そして虹郎の実父の村上淳との共演も実現しています。
©吉本興業
偶然、拳銃を拾ってしまった青年トオルは拳銃を持っているという優越感にひたって高揚感に溢れた日々を過ごすことになりますが、やがて、拳銃を撃ってみたいという暗い欲求にとらわれていきます。
浮遊感溢れる演技を見せる虹郎と彼を支えるいっぽうで危うさを抱えるヒロインの広瀬アリス、ともに新境地といった演技を見せてくれます。
一方で短いシーンながらも主人公に決定的な揺さぶりを与える刑事を演ずるリリー・フランキーも相変わらずの特異な存在感を味わうことができます。
ほぼ全編モノクロで進む映画ということでも独特の味わいのある映画です。
まとめ
そろそろ、映画祭も終わりが見えてきました。
海外からのゲストも、順次帰国していくなど少しずつ寂しくなっていきます。
アワード授賞式はネットでも中継されていますので、よろしければご覧になってみてください。
将来のヒットメイカーを見つけることができるかもしれませんよ。