人生どん底の男と、風俗嬢としての生き方しか知らない女。
2人が出会った事で、新たな人生の歯車が回り始めるラブストーリー『どうしようもない恋の唄』。
今回は本作『どうしようもない恋の唄』の内容を、8月9日に行われたトークショーの様子と共に紹介します。
CONTENTS
映画『どうしようもない恋の唄』の作品情報
(C)2018 クロックワークス 草凪優/祥伝社
【公開】
2018年(日本映画)
【原作】
草凪優『どうしようもない恋の唄』(祥伝社文庫)
【監督】
西海謙一郎
【脚本】
龍一朗、石川均
【キャスト】
カトウシンスケ、藤崎里菜、間宮夕貴、髙橋里恩、佐々木心音、石川均、大高洋子、榊英雄
【作品概要】
「この官能文庫がすごい2010」で大賞に輝いた、草凪優の同名小説を映画化。R18+指定作品。
映画『ケンとカズ』で主演を務めた カトウシンスケが、主人公の矢代を演じ、風俗嬢のヒナ役を「有名広告代理店の現役OLがヌードになった」と話題になった藤崎里菜。監督は『チェリーボーイズ』の西海謙一郎。
『どうしようもない恋の唄』のあらすじとネタバレ
(C)2018 クロックワークス 草凪優/祥伝社
京成立石を、遠い目をしながら歩いている男、矢代。
矢代は事業に失敗し借金を抱え、家族にも逃げられ孤独の身となっていました。
死に場所を求め、彷徨っていた矢代は、偶然通りかかったソープランドに入店します。
そこで出会った風俗嬢のヒナ、矢代はヒナのサービスを受けながら、行為の途中で泣いてしまいます。
その日の夜、韓国料理屋で、1人で飲んでいた矢代は、仕事帰りのヒナと偶然遭遇します。
2人でお酒を飲みながら、自身の境遇をヒナに語る矢代、「死に場所を求めて、ここに来た」と語る矢代に、ヒナは同情し泣き始めます。
韓国料理屋を出た矢代は、ヒナを自宅まで送ります。
そのまま立ち去ろうとする矢代を、ヒナは「泊まって行ってほしい」と誘います。
ヒナの誘いに根負けして、ヒナの家に宿泊した矢代、その部屋は隣のカップルの喧嘩している声が丸聞こえの酷い部屋でした。
次の日、矢代が目を覚ますとヒナの姿は無く、2千円と「あの店で待ってて」というメモ書きが残されていました。
その日の夜に、矢代は韓国料理屋に向かいますが、満席で入店できませんでした。
仕事を終えたヒナが韓国料理屋に行くと、雨の中、ずぶ濡れで矢代が店の前に立っていました。
それから、矢代はヒナの部屋で、ヒモのような生活を送りながら、ヒナとの肉体関係を深めていきます。
ある日、洗濯をしていると、隣に住んでいる青年、大蔵が矢代に話かけて来ます。
2人はそのまま銭湯に行き、自分の現状について語り合います。
大蔵は、恋人のレイコが、六本木でナンバー1キャバ嬢として働いていますが、「これまでの借金で給料がほとんど残らない」と語ります。
そして「自分は、このまま終わる気は無い」とも。
その日の夜、韓国料理屋で食事をしながら、矢代は大蔵の事をヒナに伝えます。
DV疑惑のある大蔵と仲良くなった矢代を、ヒナは心配した様子でした。
次の日、矢代は、ある工場を訪ねます。
工場の社長と仲が良い矢代は、預けていた物を受け取ります。
その日の夜、再び事業を立ち上げて復活する事を決意した矢代は、その事をヒナに報告。
ヒナは、矢代の口から「また、向かいに来る」という言葉が無かった事にショックを受け、「また都合の良い女か」と愚痴をこぼします。
矢代はヒナと共に、自分が考えている「精力剤の販売事業」について、レイコに相談しますが、レイコに一蹴されます。
ですが、レイコは、矢代に新たな事業のヒントを与えます。
『どうしようもない恋の唄』トークイベントリポート
『どうしようもない恋の唄』を上映している「シネマート新宿」では、出演者や監督を招いて、トークイベントを開催しています。
今回は、8月9日に「シネマート新宿」で映画上映前に開催された、西海謙一郎監督と、ヒナ役の藤崎里菜さんのトークイベントの様子をお伝えします。
イベントは西海監督の「本日のお目当ては、藤崎さんでしょうから、藤崎さんにドンドン質問する形で進めていきます」という宣言から始まりました。
役作りの為に実際のソープランドで指導を受けた
藤崎さんは、ヒナの役作りの為に、西海監督と助監督と共に、実際のソープランドに行き、風俗嬢の指導を受けました。
次第に風俗嬢の指導がエスカレートし、西海監督が「そこまで映さないから」と、静止しても止まらなかったそうです。
藤崎さんは「結構、ハードな事を教わりましたけど、作品に活かされてます?」と疑問を持っており、西海監督は「活かされてます!大丈夫です」と答えていました。
最初はヒナの気持ちが理解できなかった
西海監督の「撮影中に辛かった事は?」という質問に、藤崎さんは「演技指導を受けている時に、ヒナの気持ちが理解できなかった」と答えています。
藤崎さんは、『どうしようもない恋の唄』の原作を読み「自分の外見は、ヒナに似ているんだろう」と感じましたが、撮影前に、西海監督から演技指導を受けている際には、ヒナの考えている事が理解できず、かなり苦しんだそうです。
ですが、実際に撮影が始まると「ヒナの気持ちが理解できるようになった」と語っています。
今後も女優としてやっていきたい
藤崎さんは、1度芸能活動を引退し、某大手企業「D社」で働いていましたが、スカウトされた事で、芸能界に復帰しました。
今作『どうしようもない恋の唄』が、映画初出演となります。
西海監督の「今後の目標は?」の質問に、藤崎さんは「女優としてやっていきたい」と答えており、長年交際していた恋人と、「今後も濡れ場を演じる事があるだろうから、彼の気持ちを考えて」別れて女優の道に進んだ事を明かしていました。
また、西海監督の「女優の楽しさは?」の質問に、「普段は出せない声や感情を出せる所」と答えていました。
最後に、この日満席となっていた事に西海監督からお礼の言葉があり、約20分間のトークイベントは終了しました。
映画『どうしようもない恋の唄』感想と評価
(C)2018 クロックワークス 草凪優/祥伝社
西海監督が「登場する人物は、全てダメ人間として描いた」と語っている通り、一般的な社会から脱線した人達の物語となっています。
そして、ダメ人間の描き方が、リアルな印象を受けました。
主人公の矢代は、生きる気力を失っていましたが、ヒナに助けられた事で、希望を持ちます。
ヒナに感謝し、最初は優しく接していましたが、ペットフード事業が成功した辺りから、ヒナへの態度が厳しくなり、やくざに目を付けられて以降の、ヤケクソ感が凄いキャラクターとなっています。
「家族に逃げられたのは、事業の失敗だけじゃないんだろうな」と、観客は感じるでしょう。
その矢代を支える、ヒナが純粋で、本当に痛いほど純粋です。
特にヒナと矢代がバドミントンをするシーンがあるのですが、初めて遊ぶバドミントンを楽しもうとするヒナに対して、風俗嬢として、他の男にもサービスをしているヒナに怒りを感じている矢代が、バドミントンのシャトルを、何度もヒナに激しく打ち込んでいきます。
ヒナは笑顔を浮かべながら嫌がりますが、何度もシャトルを打ち込み続ける矢代に対して、最後に「酷いよ」と悲しそうな声を出します。
ヒナの純粋さと、矢代のエゴがぶつかった、このシーンの痛々しさは非常に日常的リアルに感じます。
ですが、最後に矢代とヒナは、2人で生きていく事を決めます。
やくざに「お前ら、どうしようもないよ」と言われるほど、他の人から見ると「どうしようもない2人」となるでしょう。
大蔵とレイコも、2人の前からいなくなりました。
でも、孤独になり死を考えていた矢代は、ヒナと出会えて2人となり、そして次の場所に行く活力を得たのは事実です。
作中で「私たちは生きなきゃいけないから、忙しい」というセリフがありますが、生きていくのは大変で、とにかく忙しい事、他人から「どうしようもない」と思われても、とにかく生きていかなきゃいけない、次に進まなきゃいけない、人生は大変だけど、立ち向かわなきゃいけない。
そんな事を感じた作品でした。
まとめ
(C)2018 クロックワークス 草凪優/祥伝社
登場人物全員が、それぞれトラブルを抱えており、それに立ち向かったり、挫折したりする姿を、リアルな人物描写で描く本作。
西海監督は「下半身が反応するか、それだけではなく感情も反応するか、それをぜひ皆様にジャッジしていただいて」と語っていますが、個人的には感情を揺さぶられ、明日への活力になる1本でした。
映画『どうしようもない恋の唄』は、8月4日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋にてレイトショーで上映中です。