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Entry 2020/02/17
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映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』インタビュー|田口智久監督が語る“シリーズを壊す”という挑戦と感謝とは

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』は2020年2月21日(金)より全国ロードショー公開!

“デジタルワールド”に呼ばれた“選ばれし子どもたち”とパートナーデジモンの成長と絆を描く人気アニメシリーズ「デジモンアドベンチャー」。

そして、20周年を記念して制作された劇場版作品『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』がついに公開を迎えます。


(C)Cinemarche

このたび映画の劇場公開を記念し、本作を手がけられた田口智久監督にインタビューを行いました。

本作で描いたテーマをはじめ、ご自身もデジモン世代である田口監督が思うシリーズを“アップデート”する意味やデジモンへの感謝について、たっぷりお話を伺っています。

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“選ばれし子ども”が“大人”になる


(C)本郷あきよし・東映アニメーション

──「デジモンアドベンチャー」20周年記念作品でもある本作を制作するにあたって、そのストーリーをどのように構築されていったのでしょうか?

田口智久監督(以下、田口):「デジモンアドベンチャー」は1999年に劇場版と、テレビアニメ作品として始まり、その後もシリーズ展開され、劇場版作品やOVA作品も制作され続けていた中で、本作をどのようなストーリーとして描くべきなのかは非常に悩みました。

一方で、「太一たちが高校生になり、何を感じ、考えるか?」という前作『デジモンアドベンチャー tri.』から続くテーマに対し、「そこから、さらにもう一つ段階の進んだ形でテーマとストーリーを描けないか?」という思いを抱いていました。というのも、本作に登場する太一やヤマトはもう22歳の大学生であり、その年齢に至ったとき、たとえば「世界を破滅させんとする悪のデジモン」といった相手と闘う様を描くのはあまりにも現実感がないと感じてしまったんです。

これまでに制作された映画では、太一たちは“選ばれし子どもたち”と呼ばれ、時にはヒーローのように扱われる描写もありました。ですが、だからといって彼らが、“選ばれし子どもたち”というだけで生きていけるわけではない。彼らも普通の人間と同じように就職し働かなくてはいけないし、自分たちなりの「夢」や「将来」といったものを見つけなくてはいけない。

だからこそ、「彼らがどのように成長するのか?」「どのように過去の自分自身と向き合い、自分の進むべき道を見つけていくのか?」と“子どもから大人へ”というさらなる段階への成長をテーマを起点とし、ストーリーの展開を考えていきました。

過去を清算するために


(C)本郷あきよし・東映アニメーション

──本作では、太一たちの子どもから大人への成長にくわえ、彼らの成長とデジモンたちの進化の関係性も終局へと向かいますね。田口監督ご自身は“成長”と“進化”の関わりをどのように考えられているのでしょうか?

田口:これまでの作品では、「“選ばれし子供たち”が成長するにしたがってデジモンたちも呼応するように進化し、同時にパートナーとしての絆も深まる」という、「デジモン」にとって不可欠な物語展開が常に描かれてきました。

ですが、太一たち自身が“大人”という存在に向かっていくにつれて、子どものころのように純粋に、劇的に物事を受け止めたり、その展開が生まれる出来事や心の動きがだんだんと少なくなっていく実感が観客のみなさんにもあるはずです。

大人になっていく、年齢を重ねていく中で、手放さなくてはいけないものは必ずありますよね。子どものころに誰もが持っていた可能性、あるいは未来を保持し続けて成長することは、不可能なことといっても過言ではないでしょうから。

どこかで、太一たちが過去を清算しなきゃいけないタイミングが絶対に訪れる。僕自身が感じとったそんな思いを踏まえた上で、デジモンの進化、そして太一たちとのパートナー関係がどのような形を迎えるのかを本作で言及しようと考えたんです。


(C)本郷あきよし・東映アニメーション

田口:それに、「昔はよかった」と表現されがちな感情は、誰もが抱いたことがありますよね。大人として社会を生きていく中で、あらゆる体験に楽しさを見出せていた子どものころ、夢や希望、可能性に満ち溢れていたころを思い返し、「懐かしいなあ」「あのころに戻れたらなあ」と感じてしまう。

本作にはメノアというキャラクターが登場しますが、彼女もまた自身の過去に対する後悔を抱えていて、いってしまえば大人になってしまった自分を責めている。そこに、彼女が大人になりつつある太一たちに働きかける動機があるんだと感じています。

見方によっては「偽善的だ」と受け取られるかもかもしれませんが、彼女は後悔とともに生きてきたからこそ「自分自身はもう過去に戻れないけれども、他者がこれから抱こうとしている後悔をなくすことはできるのではないか」という思いに行き着いたんです。

──過去に対する懐古と後悔に対し、田口監督は「誰もが抱いたことがある」と語られました。もしかするとご自身もまたそういった感情を抱き、その思いを本作へと投影されているのでしょうか?

田口:僕自身の過去が具体的に投影されている描写があるかどうかは自身で判断することはできませんが、“過去”という概念に対する僕自身の考えが表れているとは感じています。

過去に戻ることは誰にもできない。人間は死という終わりを迎えるまでは、ひたすらに進み続けるしかない。だからこそ、過去に囚われすぎるのはよくない。そういった思いを、映画の中にちりばめました。

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アニメと実写、自分だからこそできる画面作りを


(C)Cinemarche

──田口監督がアニメーション業界へ入られたきっかけとはなんでしょう?

田口:昔から、アニメや漫画が好きで、子どものころは『アンパンマン』や『ドラえもん』といったアニメをVHSのテープが擦り切れるほど見た記憶があります。ただ、僕は岡山県の田舎町に住んでいたので、アニメの放送自体も決して多くはなく、あっても東京のような大都市より何週間か遅れての放送でした。そのため、本格的にアニメを見る機会が増えたのは大学生ぐらいになってからでしたね。

もともとは実写の映画を作りたくて、大学でも自主制作の映画を撮っていたため、「卒業後も映像に関わることを仕事として続けたい」という思いがありました。そして実際に就職活動を進めていく中で、大学の就職課にアニメーション制作の関連会社から募集がかかっているのを偶然にも見つけたんです。「映像関係だし、演出の仕事もできそうでいいな」「挑戦してみたいな」と思った当時の僕は、その募集を通じてこの世界へと飛び込んだわけです。

今でも実写作品の制作に興味はあるものの、アニメにはアニメの良さや魅力がもちろんありますし、アニメでしか表現できないもことも沢山あると感じています。そのためにも今は、アニメだからこそ可能な表現を上手く利用した画面作りに力を入れて取り組んでいきたいと思っています。

一方で、より自由に映像を思考するためにも、実写作品を撮っていたころの感覚を持ち続けていたいとも感じています。例えば本作であれば、舞台となる街をできる限り正確に再現したいと考えた結果、画面レイアウトに街を撮影した写真を重ねることで画面作りを進めていただきました。

アニメと実写、両方のよさや魅力を取り入れることで、自分だからこそできる画面作りをこれからも常に意識していきたいです。

「デジモン」シリーズへの恩返し


(C)Cinemarche

──監督は「デジモン」シリーズをリアルタイムで視聴されていた世代かと思いますが、長く愛されてきたシリーズにスタッフとして参加された感想を改めてお聞かせ願えませんか?

田口:本作を制作するにあたって、僕は「デジモン」シリーズがコンテンツとして非常に優秀なのだと再認識しました。プロデューサーをはじめとするスタッフの方々、そしてファンのみなさんの愛が詰まったシリーズに参加できたことは、ありがたい経験でした。

その反面、「デジモン」シリーズを大規模な変化もなく今後も続けるとなると、10年後には太一たちが30代になってしまう。“子ども”だった太一たちが“大人”になるために、彼らがこれからの「デジモン」シリーズを“誰か”に託すために、本作のストーリーが生まれました。

プロデューサーはじめスタッフ全員が、これまで続いてきた「デジモン」シリーズを“一度壊さなければいけない”という意識を共有していました。ですから僕は、今まで作り上げたものを敢えて壊した上で、デジモンというコンテンツを新たにアップデートするための“地ならし”をしたいという思いの中で取り組みました。


(C)本郷あきよし・東映アニメーション

田口:本作を作り終えた際に、「デジモン」シリーズの初代プロデューサーである関弘美さんから「いい意味でデジモンを壊してくれる人たちが出てきてくれた。新しくデジモンというIP(知的財産:Intellectual Property)が成長していくためには、この解体作業が必要で、それを担う存在が現れてくれた」という風に言っていただけたのが、とても嬉しかったですね。

僕自身も「デジモン」シリーズを見てきた世代ですから、本作には幼かった自分を楽しませてくれたデジモンに対する恩返しのような思いも込めています。時には可愛らしく、時にはカッコよかったデジモンたちへ、「今までありがとう」と自分なりに感謝するために作品を手がけましたし、その思いが本作を観てくださるファンのみなさんへも届けばいいなと感じています。

インタビュー・撮影/出町光識
構成/三島穂乃佳

田口智久監督のプロフィール

岡山県出身。自主映画制作を経て、大学卒業後、アニメ制作会社に所属。

テレビアニメ『双星の陰陽師』(2016〜2017) や、映画『PERSONA3 THE MOVIE #2 Midsummer Knight’s Dream』(2014)、『PERSONA3 THE MOVIE #4 Winter of Rebirth』(2016)、『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』(2017)などで監督を務める。

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映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』の作品情報

【公開】
2020年2月21日(日本映画)

【監督】
田口智久

【原案】
本郷あきよし

【脚本】
大和屋暁

【スーパーバイザー】
関弘美

【キャスト】
花江夏樹、細谷佳正、三森すずこ、田村睦心、吉田仁美、池田純矢、榎木淳弥、M・A・O、坂本千夏、山口眞弓、重松花鳥、櫻井孝宏、山田きのこ、竹内順子、松本美和、徳光由禾、片山福十郎、ランズベリー・アーサー、朝井彩加 山谷祥生/野田順子、高橋直純、遠近孝一、浦和めぐみ、小野大輔/松岡茉優

【作品概要】
“デジタルワールド”に呼ばれた“選ばれし子どもたち”とパートナーデジモンの成長と絆を描く「デジモン」シリーズ。1999年放送のテレビアニメ第1作「デジモンアドベンチャー」では八神太一らの活躍が描かれ、2000年放送の第2作「デジモンアドベンチャー02」では新たな“選ばれし子どもたち”である本宮大輔らが大冒険を繰り広げました。

シリーズ20周年を記念する『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』では、世界中で再び異変が巻き起ころうとしたことから、大学生となった太一らが集結。「“八神太一とアグモンたち”の最後の物語(アドベンチャー)」の幕が上がり、1999年の夏からはじまった長い冒険の終わりの時が近づきます。

監督は、デジモン世代でありシリーズ初参加となる田口智久監督。また、シリーズを支えてきたキャストに加え、ゲスト声優として本作のオリジナルキャラクター・メノア役を、シリーズのファンでもあるという女優の松岡茉優、メノアの助手・井村京太郎役を人気声優の小野大輔が務めます。

映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』のあらすじ


(C)本郷あきよし・東映アニメーション

太一とアグモンたちが出会い、デジタルワールドを冒険した夏から十年以上が経過した2010年。初めての冒険時に小学生だった太一は大学生になり、ヤマトやほかの“選ばれし子どもたち”もそれぞれの道を進み始めていた。

そんな中、世界中の“選ばれし子どもたち”の周囲である事件が発生。太一たちの前に現れたデジモンを専門に研究する学者・メノアと井村は、”エオスモン”と呼ばれるデジモンが原因だと語り、助力を求めてくる。

事件解決に向けて、太一たち選ばれし子どもたちが再び集結。エオスモンとの戦いに身を投じるが、その中でアグモンたちの“進化”に異変が起こる。その様子を見たメノアは、太一たちに「選ばれし子どもたちが大人になると、パートナーデジモンは姿を消してしまう」という衝撃の事実を語り……。

映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』は2020年2月21日(金)より全国ロードショー公開!




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